誤字脱字報告ありがとうございます。
7月初旬。
今日も民族伝承学科の研究室でもある考古学部第2資料室に向かう。
この一学期、民族伝承学科のゼミ生徒になってから、放課後はあそこで過ごすことが多くなった。
だからと言って、法学部の勉強を疎かにしているわけではないわ。
今期の期末テストや課題をほとんどA判定でクリアしている。
私は警察官になるべく法律を学ぶためにこの大学を選んだのだから、他にかまけて成績を落としましたなんて、本末転倒な事にならないようには努力してきたし、それこそ成績を落としたら、学費を出してくれてるお姉ちゃんに申し訳ないもの。
考古学部第二資料室では、主に資料整理や文献の精査、各地域の郷土史などの歴史資料収集などを行っている。
私は主に資料整理を行っていたのだけど、この頃は文献の精査などもやらせていただけるようになった。
少しは成長したとは思う。
最初は全く興味がなく、選択学科で単位を取得するためだけに受けた学科だったのだけど、
あの山際の神社の異世界に触れてから、興味が湧き始め、今では積極的にゼミに参加し、充実感まで感じている。
でも、少々気になってることがある。
今更なんだけど、放課後は鳴上さんと二人きりになる事が多いわ。
ゼミ生は私だけだから、当然といえば当然なのだけど、恋人でも無い男女が二人きりの状況というのは、お互いに外聞的にあまりよくないとは思う。
でも、第二資料室で二人きりの時は、お互い資料整理など作業に没頭しているし、それに鳴上さんの民族伝承学への熱意の方が大きくて、それに引っ張られるように集中するから、普段は男の人として意識はしていないというよりも、出来ないといった方がいいわ。
でも、周りから見ればそうは見えないわよね。
確かに鳴上さんの整った顔立ちに優し気な笑顔はまぶしく感じるし、私だって男の人と二人きりと考えたら、意識もするし敬遠するけど、第二資料室での鳴上さんとは、なぜかそういう考えに至らない。
充実感と安心感の方が勝っているということなのかもしれない。
でも、今はまだ私が民族伝承学科のゼミ生だということを知られていないからいいものの、もし知られて、いつも鳴上さんと二人きりだと知られたら、鳴上さんのファンの女子学生達からどんなやっかみに遭うか……。
今更、考えてもしかたないことだけど。
それはそうと、春の様子が最近少しおかしい。
その理由は分かってる。
鳴上さんが春の喫茶店に来るようになって、春は鳴上さんに会うたびに声が上ずって慌ててるのよね。
春は誰に対しても自分の意見をはっきり言うし、誰に対しても物怖じしないのに、鳴上さんの前ではわかりやすいぐらいにあんな感じで意識するの。
でも、本人にそれと無しに鳴上さんを意識しているのか聞いてみると、慌てて否定するばかりで……。
本人に自覚がないのかしら?
そういえば、春の浮いた話を聞いたことがないわ。
もしかして、初恋だったりして……。
今はそっとしてあげた方がいいのかもしれないわ。
私はそんなことを考えながら、歩みを進める。
「フフフン♪フフフン♪フンフンフン♪」
第二資料室の前まで到着すると、資料室から陽気な鼻歌が聞こえてくる。
あの鼻歌、また、かなみさんが遊びに来てるみたいね。
私は扉を開け、挨拶をする。
「こんにちは」
「あっ、真さん!こんにちはーです!」
ボリュームのある髪を三つ編みで二つ括り両側に降ろし、前髪は揃え、黒縁メガネに緑色ジャージ、いつもの地味な恰好のかなみさんが元気よく挨拶を返してくれた。
「こんにちはかなみさん。かなみさん一人?鳴上さんは…いないみたいね」
私は資料室内を見渡したのだけど、鳴上さんの姿はない。
通路を挟んだ給湯室にもいなかったわ。
「悠さん、教授と出かけちゃいました。でも、3時半ぐらいには戻るって言ってましたから、もうすぐ戻ってきますよ」
高畑教授と一緒ということは大学の教授会議かしら?それとも緊急案件の依頼があったとか?
どちらにしろ、直ぐに戻られるみたいね。
それよりも、かなみさんはこの頃週一でこの資料室に来ているわ。
アイドルの仕事の方は大丈夫なのかしら?
かなみさんは立ち上がり、頬を膨らませながら私にずいっと迫る。
「真さ~ん、聞いてくださいよ~、りせ先輩がおしゃれしろってかわいい服を買って渡してくるんです~。ひどいと思いませんか?」
かなみさんは不満そうにそうい言うけど、いい先輩じゃない。
わざわざ服まで買ってきてくれて渡してくれるなんて、なかなかそこまで気を使ってくれる人はいないわ。
「いい先輩ね」
「そうですか~?私はジャージがいいんです!普段の自分を見失わないべし!」
家では多少ラフな格好はいいのだけど、かなみさんの今のその恰好で外出は厳しいと思うのだけど、おしゃれに無頓着すぎるのもどうかと思うわ。
でも、そのジャージ姿は誰もアイドルのかなみさんとは認識できないような変装にもなっているのだから、ある意味間違ってはいないから困るわね。
「ところで久慈川さんはどんな方なの?」
「ええ~りせ先輩は!凄くかわいくて、美人です!それでダンスもうまくて、歌もうまくて、演技もうまくて……、私と全然…違うんです…う、ううう……私なんて、私なんて……」
あら、また自信を無くしちゃったわ。
話の流れで久慈川りせさんの事を聞こうと思っただけだったのだけど、この話題はダメなようね。
久慈川りせ。
かなみさんの先輩でタカクラプロ所属のアイドル。
かわいらしい容姿から近頃は大人の美人へと、歌やダンスも上手で、最近では演技も高評価を受け、非の打ち所がない正真正銘の日本のトップアイドル。
そして、鳴上さんの友人。
それと気になることが一つ、かなみさんの事があるから、もしかすると久慈川りせさんもペルソナ使いかもしれないわ。
「かなみさんだって久慈川さんに無い良いところあると思うわ」
「ええ!本当ですか!?どこですか?どこですか?」
急に元気になったわ。
でも、困ったわ。
何処と言われても……
「えーっと」
「えーっと?」
キラキラとした期待した目で見つめてくるかなみさん。
りせさんに無くて、かなみさんの良いところは……。
胸が大きいところ?
いえ、それは違うわね。
見た目ではなくて、アイドルとしてのかなみさんの良いところは……
「元気なところとか?」
「それよく言われます~。でも、元気なのはみんなも一緒ですよ。その褒め言葉、小学生とかちっちゃい子に使う褒め言葉ですよ~」
かなみさんは拗ねたように私を横目で見る。
どうやら、私が出したこの答えはダメ見たい。
確かにそうよね。21歳になるかなみさんに使う褒め言葉じゃなかったわ。
それ以外では……えー、何かないかしら?
かなみさんに出会ってから、かなみさんが出演している番組に目を止めるようになった。
テレビの人気アイドル真下かなみのキラキラした姿恰好は全くの別人に見えるから、最初は違和感があったのだけど、仕草や言動は目の前のかなみさんと一緒だから、だんだんテレビの前のアイドル真下かなみも、目の前でこうやって親しく話してるかなみさんに見えてきちゃうのよね。
だから、どうしてもアイドル真下かなみという見方ができないのよ。
「親しみやすいところかしら?」
「うーん、どんな感じにですか?」
「りせさんは近づきがたい感じがするのだけど、かなみさんはもっと近しい感じがするわ」
とは言ってみたものの、久慈川りせさんとは面識がないし、かなみさんとはこうして親しくお付き合いしてるからかもしれないわね。
「うっ、なんかアイドルとしてオーラがないって言われてる感じがします~」
「いえ、そうじゃなくて……」
しまったわ。
また、かなみさんがネガティブな方向へ。
そんな時、第二資料室の引き戸がガラリと開く。
「ただいま」
鳴上さんが戻って来た。
「こんにちは、鳴上さん」
「こんにちは、新島さん」
丁度鳴上さんと私は目が合い、挨拶を交わす。
「悠さ~ん、私の良いところって何ですか?」
かなみさんが鳴上さんに駆け寄り、質問をする。
「ん?かなみの良いところ?元気を皆に分けてくれるところだ。皆、元気なかなみを見て元気になる」
「本当ですか?悠さんも元気になりますか?」
「ああ、そうだな」
「えっへん!元気はかなみんのとりえですから!!皆にも溢れるぐらい有り余った元気を分けてあげるべし!!」
鳴上さんの返事で、かなみさんは一気に元気を取り戻し、胸を突き出し自信満々にポーズを決める。
流石は鳴上さん、かなみさんの事をよくわかってるわ。
しばらくして、高畑教授が第二資料室に来られ、打ち合わせが始まる。
作業用の大きな長テーブルの上座に高畑教授、私と鳴上さんが体面に、なぜかかなみさんが嬉しそうに鳴上さんの隣に座りちゃっかり参加していた。
高畑教授がわざとらしく咳払いをし、席を立ち上がり、少々仰々しく話始める。
「え~、民族伝承学科開設し、初の夏季休暇を迎えるわけだ。そこでだ。夏合宿を行う!!」
「いぇーい!」
かなみさんだけがそれに拍手をする。
……かなみさんは参加できないでしょ?
アイドルのお仕事があるから纏まった休みは取れないんじゃないかしら?
そもそも、ここのゼミ生でも、ましては大学の学生でもないでしょうに。
「かなみは仕事があるだろ?」
流石の鳴上さんもテンションが上がってるかなみさんを窘める。
「そ、そうでした!私、夏ライブがあったんでした!でもでも、私も夏合宿行きたーい。真さんばかりずるいです~」
かなみさんは肩を落とし、私を恨めしそうに見る。
「それで、どこで何をするんですか?」
私はかなみさんの視線を気にせずに、鳴上さんと高畑教授に合宿の話の続きを促す。
「長野で伝承と伝統の地域調査を1週間から10日程度で予定している。新島さんの予定が空いてる日だけでもいい、全日参加しなくてもいいから、手伝ってくれると助かる」
鳴上さんに優し気な笑顔でこう言われると断りにくい。
それに、民族伝承学に基づく本格的な学術調査みたいだし、興味はあるのだけど。
「あの、参加メンバーは教授と鳴上さんと私だけですか?」
「あー、一応募るつもりだけど、たぶんそうなるんじゃない?大学生がさ、夏休みにわざわざ辛気臭いこんな地味な調査さ、誰もやってくれないし~」
高畑教授がそれを言ったらダメじゃないかしら?
それに、そういうことじゃなくて……。
「その、これでも私、女性なので……」
男の人二人と1週間から10日間も寝泊りするのは……、私もこう見えても女性なんです。
鳴上さんが何かするとは思えないけど、お姉ちゃんに男性二人と合宿行くことを伝えると、たぶん許してくれないと思う。
「あ、ごめん」
「ふはははははっ、悪い悪い、そりゃそっか。いつも悠と二人だったからな~、寝る部屋は別々だって言っても、そりゃ新島ちゃんも女だもんな。俺が嫁に怒られるところだったぜ」
鳴上さんは私が言わんとしたことを直ぐに理解してくれて、謝ってくれるのだけど、教授の言い分には釈然としないものがある。
……普段から女性として見られていなかったってことかしら?
そんな中かなみさんがこんなことを言い出し、余計にわけがわからないことに。
「いいな~真さん、悠さんとお泊りなんて~」
「かなみちゃん、俺も一緒だけど?」
「さすがに、それは困ります」
「え?何?新島ちゃんは悠と一緒は良くて、俺が居たらダメってこと?」
「そうじゃなくて!」
鳴上さんと二人きりがいいということではなくて、そもそも恋人でも無い男性と宿泊することが問題であって……。
「じゃあ新島さん、大学の友人を誘えないか?もしくは奥村さんでもいい」
「え?他校の春でもいいんですか?」
「学術研究ということで、他校の学生でも参加ができる」
「言い忘れてた。今回は予算からちゃんと新島ちゃんにも少ないけどアルバイト料が出るし、もちろん参加してくれる学生にもね。そんなに難しいもんじゃないし、空いた時間は観光でもレクリエーションでも好きにしてくれていいし」
「声をかけてみますね」
それなら、春も来てくれるかも。
でも、喫茶店の仕事があるから無理強いはできないけど、全日ではなくてもいいから、来てくれるとうれしいわ。
他のみんなはどうかしら?
杏は学生ではないから、たぶんダメよね。
双葉は高校生だから一応学生だけど、高校生は難しいかもしれないわ。確認が必要ね。
竜司はちゃんと学術研究してくれなさそうだし、祐介は海外留学でそれどころじゃないわ。
蓮は事情を話せばついてきてくれるかもしれないけど、教授や鳴上さんにああいった手前、男性が増えるのは本末転倒よね。
高校の友達は春以外に仲のいい子は英子ぐらいだけど、英子はこういう研究や堅苦しいのは苦手だと思うし。
大学の知り合いには、私が鳴上さんのゼミ生だと知られたくないし。
そういえば私、親しい友達って怪盗のみんな以外にほとんど居ないかも……。
仕方がないわ、モルガナにでもついてきてもらおうかしら?
「悠も誰かいい子いないのか?やたら声と態度がでかい完二って奴はいいや。男だし余計にややこしくなる」
教授は鳴上さんに合宿に参加してくれる女性の知り合いがいないか聞いてくれる。
「そうですね、直斗なら来てくれるかもしれない。忙しいかもしれないですが」
「直ちゃんか~、いいね。あの子だったら調査も捗るかもしれないし!」
鳴上さんの後輩かしら、でも直斗って男の人の名前よね。
教授が直ちゃんと呼んでるし、女性かもしれないわ。
教授も知ってるということはこの学校の学生かしら?
「ブーブー、わたしも行きたいです~。自分たちばっかりずるいです~」
かなみさんは机にうつ伏せながらダラリと手を伸ばし顎を乗せ、行儀の悪い恰好で文句を言っていた。
「かなみは学生でもないし、仕事があるだろ?」
「え~、でも~、あっ、そうだ!一泊旅行だったら大丈夫!悠さん一泊お出かけしましょうよ!何かおいしいものが食べられる所に行くべし!」
かなみさんがこんなことを言いだした。
それって、鳴上さんと二人で泊まるってことよね。
その、デートのお誘いどころか、それはもう……。
「もちろん真さんも一緒ですよ!」
「えっ?私も?」
かなみさんの意外な言葉に私は思わず目が丸くなる。
鳴上さんとかなみさんと私?
かなみさんはどういう意図で?
もしかして、かなみさんと鳴上さんが付き合えるように私にフォローを求めているのかしら?
「はい!真さんも一緒です~。だって、一緒の方が楽しいじゃないですか~」
……かなみさんは何にも考えてなかったようね。
ただ単に、お泊り旅行に行きたかっただけということかしら。
でも、鳴上さんが難色を示せばこの話は無よね。
「そうだな。だったら来週はどうだ?丁度、来週三泊四日で奈良に行く予定だ。3日目の午後からは予定が入ってないからどうだ?」
「本当ですか!スケジュール、スケジュール!あっ、丁度3日目と4日目の2日間空いてます~!やったー!」
来週の奈良ということは、鳴上さんが奈良でリニューアルオープンする県立民族博物館のオープニングセレモニーとゲスト講演に呼ばれて、一人で参加する件ね。
確か鳴上さんは初日のセレモニーと二日目の単独講演、それ以外に懇親会に参加する予定とあったわ。
「真さんも行きましょうよ~!」
「え?私も?でも……」
日程は空いてるけど、旅費も必要だし。
「新島ちゃんも行ってくればいい!当大学からスタッフ枠で予算が出てる!」
「教授、それは聞いてないですが?」
「4月に悠の参加が決まってただろ?当時は俺も嫁さんつれてついて行こうと計画していた!悠がメインだから俺達はついて行くだけ行って、奈良旅行を満喫しようと思ってたんだよ。部屋は二つ用意されてるはずだ。もちろん嫁の分は実費だぞ。でもよ。1か月前にオーストラリアに出張が決まっちゃって、そっちに嫁と行くことに決めたから」
「また、勝手にそんなことを……」
「ははははっ、ぶっちゃけ奈良の方をキャンセルするの忘れてた!だから!新島ちゃん!行ってもらえると非常に助かる!!予算だけ取って誰もいかないなんて、大学に知られたら今度こそ何を言われるか!ここは人助けと思って!部屋も別にとってるし!そもそも嫁と一緒に泊まるためにそこそこいい部屋を頼んだし!だからかなみちゃんと泊まってくれ!かなみちゃんは実費だが、一緒に泊まれるぐらいいい部屋だから!!この通り!!」
私はこんな理由で教授に頼み込まれる。
また教授の暴走で大変なことに……。
でも、旅費がかからずに行けるのなら、行ってもいいかな。
「真さーん!行きましょうよ!きっと楽しいですよ~」
「新島さん、本当にごめん。ただ、初日のセレモニーにはスタッフとして参加してもらえると助かる。後は自由にしてくれればいいから」
でも、部屋は別々だけど一日目と二日目は鳴上さんと泊まる事になるのよね。
いい部屋だと言うからにはちゃんとしたホテルか旅館だろうし、鳴上さんとなら大丈夫よね。三日目にはかなみさんが来てくれるのだし。
「わかりました。夏合宿の件も含めて一応家族と相談させてください」
私は少々考えをまとめてから行くことを決め、返事をする。
「やったー!旅行!旅行!お泊り旅行!」
嬉しそうなかなみさん。
まだ行けるとは言っていないのだけど。
家に帰ってさっそくお姉ちゃんに相談をすると、もう大人なのだから自分で判断しなさいと言われる。
だけど、心配してくれてるのか夏合宿は友人を連れて行くことを強く言われたわ。
4日後、来週の月曜日から3泊4日で鳴上さんの助手として奈良に行くことに。
助手と言っても、元々鳴上さん一人で行く予定だったものを、私がついて行くだけだから手伝えることは無いのが、少々後ろめたい。
高畑教授みたいに、旅行だと割り切ればいいのでしょうけど、民族伝承学科のゼミ生としてそうはいかないわ。
7月中旬。
鳴上さんと早朝に大学で待ち合わせし、 タクシーで東京駅に到着、新幹線で京都駅に、京都からは近鉄線で奈良の大和八木駅、そこからタクシーで民族博物館に到着。
私は大学入学時に使用した地味目の黒のスーツを着てるから、少々窮屈で新幹線や電車での長時間の移動は疲れたわ。
因みに鳴上さんは普段とあまり変わらないカジュアルスーツね。
近代的な平屋建て作りの民族博物館のエントランス前にタクシーを付けてもらい降りる。
回りは見渡す限りの山々と生い茂る木々、この建物以外に人工的な物はほとんど見えない。
かなり自然豊かな場所ね。
空気も澄んでおいしいように感じる。
敷地は広大な公園となっており、四季折々の草花が植えられている。
事前にネットで調べたのだけど、民族博物館が目的ではなく、公園としての利用客が多いみたい。
民族博物館が人里離れたこのような辺鄙な場所にあるには理由があった。
ここには飛鳥時代の古墳が大小合わせて三基と、集落跡地があり、それを復元し展示するために民族博物館も併設することになったとガイドには書かれてある。
「間に合いましたね」
「助かった新島さんが事前に乗り換えルートやタクシー乗り場を調べてくれたおかげだ」
始発の東京発新幹線に乗って11:00のセレモニー開始30分前に到着。
結構乗り換え時間がタイトで事前に乗り換えルートや乗り場を調べておいてよかったわ。
民族博物館の館長や大学教授や研究員の方々に鳴上さんと共に挨拶をし、その後に今日のゲストとして招かれた町長や議員さんなどの紹介を受けて挨拶する。
他の大学教授や研究員の方々は鳴上さんに好印象な方が多いようだけど、議員さんの中には鳴上さんが若いからなのか明らかに侮っているような人もいたわね。
それでも鳴上さんは笑顔で対応していた。
その後、民族博物館のリニューアルセレモニーがエントランスで行われテープカットと共に開始し、私と鳴上さんはパイプ椅子が並べられたゲスト席で、その後に館長の開催の挨拶、町長や議員さんの挨拶と続く。
こういう挨拶ってどこに行っても同じ感じよね。
特に市長さんや議員さんなんて、もう定型文を張り付けただけと言っていいのではないかしら?
聞く方もこういうものだと割り切るしかないわね。
その後は、館長さんが博物館内を私達やゲストの皆さんを引き連れ案内していただく。
奈良県中部の縄文時代から現代までの歴史や文化についての展示が時系列で並んでいる。
私は鳴上さんの横について見学を。
高校や中学の歴史教科書で見たことがある埴輪や土偶から始まって飛鳥古京の復元図など、思っていたよりも面白いかも。
それに鳴上さんが時折、私に展示物についてわかりやすく説明してくれるから尚更。
昼頃に小ホールで併設されてるお食事処の料理が運ばれて、ビュッフェ形式の昼食を兼ねた懇親会が開かれる。
参加者は50人程、ゲストの方以外にリニューアルに関わった業者さんの方やオープニングセレモニーではお見掛けしていなかった関係者の方々も。
それにしても関係者やゲストの方々はほとんどが男性ね。女性は副館長の方と研究員の方が3人だけね。
そもそも考古学を本格的に学ぶ女性が少ないから致し方が無いわ。
しかも、この中で私が一番若いと思う。
私は助手の名目で付き添いとして参加させてもらったのだけど、本来学生がゲストとして参加するものではないのかもしれない。
でも、鳴上さん自身が若いし、この中では私の次に若い。
その鳴上さんは気後れなど全くせずに、他の大学の先生や研究員の方々と情報交換を行っていた。
私は流石に話に入っていけないため、挨拶だけをし、割り切ってビュッフェを楽しむことにした。
そういえば、ここのお食事処の名物が苺タルトと博物館のエントランスに張り紙が張ってあったわね。
タクシーでの道中、いちごやいちご狩りののぼりや看板をよく見かけたわ。
奈良は苺が名物なのかしら?
私は苺タルトが無いかビッフェ台を探す。
あった。
うん、おいしそう。
でもカロリーが高そうね。
私はケーキサーバーで苺タルトを一つ取り皿に移す。
すると後ろから声をかけられる。
「こんにちは」
振り向くと、取り皿を手にした女性研究員の方がいらっしゃった。
「こんにちは」
私は軽くお辞儀をして挨拶を返す。
「やっぱりここと言えば苺タルトよね。少しお話いいかしら?」
私は女性研究員の方に話を聞きたいと、誘われる。
どうしよう、考古学の話とかできないわ。
私、全然歴史とか詳しくないし、鳴上さんが今取り組んでいる研究の事しかわからない。
でも、この場に参加して、誘われてるのに断るのもおかしな話だし。
何か考古学の事を聞かれても、正直に考古学の事はわからないと言うしかないわ。
只の付き添いで今日ここに来たと。
「その、考古学の事は勉強中であまり詳しくなくて……」
「そんなにかしこまらなくていいわ。せっかくなのだし少ない女性同士で話しましょ」
私はそう言われてしまっては断ることもできず、女性研究員の方に誘われテーブル席に。
私は30歳前後に見える女性研究員の方々3人とお互い自己紹介をする。
皆さんお知り合いらしく、2人は奈良市にある奈良県立博物館の研究員で、1人はここの専属研究員とのこと。
「新島さんはまだ学生で、しかも2回生なんだ。若いはずだわ。私と肌の艶が全然違うもの」
「それにしても、鳴上君じゃなかった。鳴上准教授が助手を連れて来たのを始めて見たわ」
「鳴上君の授業ってどんな感じなの?」
心配をよそに考古学の事を聞かれることはなく、本当に女子トークが展開され、私の事や学校の事や鳴上さんの事で質問攻めに。
「いいな~、私も鳴上君の授業を受けてみたい」
「大学卒業してすぐ准教授だなんて、凄い人よね」
「普通はあり得ないわ。鳴上君は大学院にも行ってないのよ。私なんて大学院出て、ここで働いてるのに」
やはり、鳴上さんはここでも有名らしい。
女子トークに花が咲き、電話番号とラインの交換を行い、最終的に彼女らを鳴上さんと引き合わせ少々話しをする事に。
皆さんはまた、女子トークを行うものだとばかり思っていたのだけど、鳴上さんの前では考古学や民俗学の話がメインに……。
私は聞いていることしかできなかったけど、なんだかちょっとは考古学の世界の一員になったような気分。
懇親会を終えて、鳴上さんと民族博物館の公園内を散策することに。
色鮮やかな花々が広大な敷地一面に植えられている。
花を目当てで来客される方が多いのも納得だわ。
「鳴上さんは花が好きだったりするんですか?」
「特に好きというわけじゃないけど、こうやって花々を見たり植物を鑑賞するのは嫌いじゃない。じゃあ新島さんは?」
「私ですか?私も特に好きというわけではないのですが、こういうところに来ると気持ちがいいというか……」
あれ?これって鳴上さんと同じということよね。
「なるほど、一緒ってことか」
「そ、そうですね」
鳴上さんを見上げて話してたのに、急に恥ずかしくなって視線を逸らす。
そんな笑顔で一緒なんて言うのは、不意打ちすぎるわ。
そういうところですよ、鳴上さん。
女性に優しくとは言いますが、鳴上さんのそれは誘惑的すぎます。
前方後円墳の復元場所に到着し円墳部の高台に上り、二人並んで風景を見る。
「昔の人はこの形に何の意味を見出していたのか、それを調べ考えるのも考古学の一つで……」
鳴上さんは私にこの古墳の事や、地形やこの土地の事について楽しそうに説明してくれる。
そんな鳴上さんの顔をふいに見上げると、直ぐに下を向く。
その……顔が見れないというか。
気恥ずかしいというか。
大学の第二資料室で二人で過ごしてる時はそんなことはないのに、なぜ?
いつもと違う場所だから?
それに何となくだけど、周囲から視線を感じるわ。
その、もしかすると端から見るとデートに見えるのかしら?
そ、そんなはずはないわよね。私の考え過ぎよ。
鳴上さんは民族考古学者として、知識が薄い私に説明してくれているだけよ。
公園散策中、私はいろいろと考えすぎてしまって、終始落ち着かない感じに……。
その後、館長さんと明日の講演について打ち合わせをし、タクシーを呼んでもらって民族博物館を後にする。
タクシーがしばらく川沿いに山裾を進むと、集落が見えてくる。
狭い道路の両脇には二階建てから三階建ての木造長屋のようなレトロな雰囲気の建物が立ち並ぶ、何かしら?昭和?いえ江戸時代?
タイムスリップしたような幻想的な風景が目の前に。
ここは天川村洞川温泉、温泉旅館が立ち並ぶ日本有数の温泉地。
そんな温泉街を進み、ひときわ大きく立派な和風建築の建物の前にタクシーが止まり、タクシーを降りると仲居さん達がお出迎えを。
タクシー運転手さんがトランクから取り出したキャリーバックを仲居さんが預かってくれる。
ここって明らかに高級旅館よね。
こんな立派なところに泊まった事なんてないわ。
「凄い立派なところですね」
「……教授、こんなところを予約してたのか」
私達は軽く会釈し、仲居さんの案内で入口へと向かう。
どうやら、鳴上さんもこんなに立派なところだと知らなかったみたいね。
教授が確かに良いところって言ってたけど、さすがにこれは……。
教授が大学側に行けなくなったとは言いにくい理由がわかったわ。
玄関に入ると、広々とした畳が広がっていた。
「ようこそ、天の川白石旅館へ」
綺麗な着物を着こなす美人が正座で深々とお辞儀を……。
女将さんなのかしら?私達とそれ程歳は変わらないように見えるから、若女将?
切れ長の目に艶のある黒髪、色白の肌、とても綺麗な人。
純和風美人とはこういう人の事をいうのかしら。
「ん?天城?なんでここに?」
「え?鳴上君?」
鳴上さんと美人の若女将がお互い顔を合わせ、驚きの表情を。
え?知り合い?
新たな出会いは、天城雪子さん。
真×雪子×かなみを混ぜるとどうなるか。
私自身が楽しみにしてました。
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