けものフレンズR ”わたし”の物語   作:むかいまや

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https://seiga.nicovideo.jp/seiga/im9098445 より設定をお借りし、6話Cパート相当の物語を書きました。

さて、改題とあらすじ(なのか?)で何か変わるのか、という疑問。

20/06/11


6-3

――――――

――――

――

 で、それから少しした日のことだ。あたしは足の痛みがなくなったから、ちょっと長い距離走ってみようかなって思って、サバンナを駆け回ったんだ。初めて見るヤツも居た。ぬぼーっとしてるドードーとか、いいヤツだとは思ったけど、苦労しそうなヤツなんじゃないかなぁって思った。まぁ、少し話をした感じ、長生きしてるらしいから大丈夫なんだろうな、うん。

 しばらく走ったら、この前の丘の上に着いた。そこから遠くを見ると、海の方まで見えて、次の機会にでも遠くまで行ってみようかなって思う。うっすらとだけど、きらきらしてたから、絶対に行ったら綺麗だぜって、思うんだ。あたしはあんまり飛べないから、ひとっ飛びってのはムリだけど……なんて考えてたら、またチーターが居た。

「んー……? 寝てんのか?」

 ぼそっと呟いて、あたしはチーターの近くに行く。この前は、何かヤなヤツだなって思ったけど、話したことも無いのに決め付けるのも良くないしな。

「よう、チーター、だろ?」

 木の根元で、陽射しを避けながら寝てたから、凄い眠そうにしながらこっちを睨んできた。ぐぅって声が出そうになったけど、我慢したんだぜ?

「……そうだけど、なによ」

 ふわぁってあくびして、目を擦りながら身体を起こして、開口一番がそれか、って思ったけど、まぁ、話してみないとな。

「寝てたのに、ごめんな。あたしは――」

「ロードランナーでしょ、知ってるわよ。なに、どうしたの?」

 ちょっとだけあたしはびっくりした。なんであたしのこと知ってるんだろうって。

「いや、用ってほどじゃないんだけどな、ちょっと話がしたくてさ」

 細目になってこっちをじっと見つめてきたから、あたしはまたぐぅって声が出そうになる。

「……で?」

 なんだか言葉にトゲがある気がするんだよな。

「お前って――」

「チーター」

 あたしは咳払いをして続ける。

「チーターって速いだろ? コツとかあんのかなーってさ」

「無いわよ? 速いから速いの」

 あたしは言葉に困って、黙っちまった。

「……おわり?」

「お、おう……」

 退屈そうに言われたら、そりゃ何もいえなくなるぜ。お互い黙って、少しの時間が経った。あたしはあたしで何て言ったらいいのかわからなくなって、焦っちゃってた。チーターもあたしのことじっと見てきてたし……。

「あっ、そうだ。プ、プロングホーン様のこと、どう思ってるんだ?」

 色々すっとばして、こう聞いたのは間違いだったんじゃないかな、とは思う。でも、初めて会う性格のフレンズだったから、どうにもわからなくて、緊張してた。

「プロングホーン?  様?」

 チーターのヤツったらくすりと笑いやがった。

「ヘンなの。様、だなんて。しょっちゅう走ってるなーとは思うけど、どうかしたの?」

 あたしはなんだか妙にムカムカしてきた。なんだかコイツとはプロングホーン様の話をしたくなくなってきたから、話題を変える。

「別に……なんでもない。それと、なんであたしのこと知ってんだ? 初めて話したろ?」

 チーターは少し悩んで言った。

「……有名よ? お気楽でお調子者なフレンズだって」

 あたしはむっとした。

「……なっ……だ、誰が……」

「コヨーテだったかしら? ワタシ、あの子と話したことは無いけど、他の子と話してるの聞こえたわよ?」

 あいつぅ……。

「ちょっとコヨーテ探してくる、じゃあな」

 あたしはそう言って、チーターに背中を向けて走り出した。チーターが何か言ったような気がしたけど、もうあたしの頭はコヨーテへなんて文句を言ってやるかでいっぱいで、聞こえなかった。少しだけ聞こえたのは「もっ――」みたいな感じだった。なんだったんだろうな。

 

――――――

――――

――

「そういえば、どうしてコヨーテさんはここに?」

 イエイヌさんが問いかけました。なんだか困った風にあははと笑ってからコヨーテさんは答えます。

「会場の方な、フレンズで一杯なんだよ。夜行性の子も居て、楽しいのはわかるんだが、ちょっと騒がしくてな……」

 なるほど……。

 わたしもイエイヌさんも「あぁ……」というような声を出しました。

「まぁ、悪いことじゃないんだがな……ゆっくり出来なくってな……」

 わたしもひとつ、思い出したことがあります。それは、ロードランナーさんに話して欲しいといわれたことです。

「コヨーテさん。ロードランナーさんに、えぇっと……三日くらい前に『約束』の話をしたんですけれど……なんだったんですか? 『約束』って……」

「ん? あぁ、アレか、ともえ、ありがとうな。……まぁ色々あってな、この運動会に参加しろよ、という話をしてたんだ。アイツ忘れてそうだったからなぁ……」

 呆れたようでしたけれど、どこか愉快気に彼女は言います。

「あはは……あの様子は忘れてましたよ……多分……」

 コヨーテさんは、今度こそ呆れたように笑ったのでした。

「まぁそれはそれとして……約束のこと、ちゃんと話しておけばよかったな。お前達も参加するつもりだったなら、尚更だ……悪い」

 コヨーテさんは軽くお辞儀をする様に頭を下げましたが……。そもそもこの催し自体を知らなかったのです。そんな謝罪を受ける必要なんてありません。

「そんな、コヨーテさんは悪くないですよ……」

 イエイヌさんはそう言って続けます。

「そもそも、アルマーさんとセンさんがこーほー? でしたっけ、で色々回ってたそうですし、タイミングが悪かったんですよ……」

「まぁ……そうかもしれないが……。というか、アルマーとセンに最近会わなかったのか?」

 イエイヌさんは最後に会ったときのことを思い出そうとして考え込みます。

「少なくとも、わたしは会って無いです。そもそも、アルマーさんとセンさんに会うために旅に出たというのもあるので……」

 コヨーテさんは「どうして会おうと思ってるんだ?」と不思議そうな顔をします。わたしが言い終わって少ししてからイエイヌさんが「あぁっ!」と声を上げます。

「確かに、この前お会いした時、話があるんだけどって言ってました……! 色々あってお話聞けずじまいでしたけど……」

 ん? 少しだけ思い当たる節が……というか……。

「もしかして、わたしの事があったからでは……?」

 イエイヌさんはしまった! というような表情になります。ことのあらましを知らないコヨーテさんは「ん? どういうことだ?」と呟いています。

「あ、あの……その、と、ともえさんが悪い訳じゃ……」

 イエイヌさんはわたわたと慌てながら釈明しました。

「大丈夫ですって、そんなこと考えてもいませんよ」

 わたしは、つとめて笑顔でイエイヌさんに告げます。ちょっとばかり罪悪感はありますけど……これはどうしようもないことですからねぇ……。

「わ、悪い、どういうことか説明してくれないか?」

 何度目でしょう。このやり取り……。いえ、仕方の無いことですけれど……。

「えぇっとですね、わたしは少し前まで、ずっと眠っていたみたいで――」

 

――――――

――――

――

 結局、コヨーテに会ったのは次の日だった。アイツの気に入ってるところとかよくいるところとか……けっこー捜し歩いたんだけどな。アイツったらサバンナと原っぱの境目辺りの林にいて、あたしが水を飲みに出かけなかったら、会えなかったと思う。

「おい、コヨーテ」

 あたしが声をかけると、コヨーテは振り返った。

「おう」

 おうじゃない。

「あたしのこと馬鹿にしたな?」

 コヨーテは心当たりが無さそうに首を捻った。

「覚えてないのかよぉ……チーターのヤツが話してくれたぞ」

 コヨーテは少し驚いた表情になって言った。

「ん? チーターと話したのか?」

「まぁな。ヤなヤツだなーって思ったぜ。ってそうじゃなくて、あたしのこと――」

 あたしが本当に言いたい事を言う前にアイツは口を開いた。

「マジかよ……お前がアイツと話すなんて珍しいこともあるもんだ……雪とか降るんじゃないか?」

 心底驚いたように言われると、あたしもコヨーテが何て言ったのかなんかよりも、チーターのほうが、ずっと興味が沸いてくる。

「……どういうことだよ。アイツ、確かにいいヤツじゃないだろうけど、友達のひとりやふたり位、居るだろ」

 コヨーテは首を振った。

「いんや、俺の知ってる限りじゃ、いつもひとりだぞ? ……なんでアイツと話なんか……?」

 あたしはロードランナー様とチーターのことについて話をした。少し長くなりそうだったから、水辺の方まで歩きながらだったけど、コヨーテは茶化したりしないで黙って聞いてた。

「――というワケだ。だから悔しくなって、アイツがプロングホーン様のことどう思ってるのか聞いたんだよ。信じられるか? あたしのこともプロングホーン様のことも馬鹿にしたようなこと言いやがって……」

 コヨーテは何か考えてる顔をしてた。

「……とりあえず、だ。チーターのことを悪く言うのはやめとけ。アイツにもアイツの都合がある。つっけんどんな口調なだけで、悪いヤツじゃないぞ?」

 つっけんどん? は? って聞きたかったけど、馬鹿にされそうだからやめた。

「そうはいうけどよぉ……いっそのこと、何かで一番を決めちまえばいいんだ。かけっことか、そんなのでさ……」

「ほー……面白いこと考えるのな、お前……何で決めるんだ? どうやる?」

 コヨーテはなんだか目をキラキラさせながらあたしのことを見てくる。あたしがコヨーテからこういう風な目を向けられるのって、初めてかもしれない。

「ん? うーん……例えばさ、チーターって足が速いだろ? プロングホーン様が認めてるんだから、そうなんだろ? じゃああのふたりでかけっこでもすればいいんだ。あたしじゃ追いつけないだろうけどさ」

「ふんふん……距離は? どれくらい走るんだ? 得意な距離はフレンズごとに違うだろ?」

「例えば、だぞ?」

 あたしはコヨーテの質問に答えながら、思いついたことを言っていく。どれくらい走るのかとか、得意な長さとか、その調整とか……。時々、コヨーテがあたしの言葉を否定したりもしたけど、馬鹿するような言い方じゃなかった。なんだか真剣な表情と声で、コヨーテってこんな顔や声もするんだなぁなんて思った。

「――っと、こんなもんだろ」

 話が長くなりそうだし、川にもついた。面倒になって切り上げようとしたけど、コヨーテはそっぽ向きながらふんふん言って頷いてた。あたしは横目でそんな様子を見ながら水をひと口飲む。

「……んく……どうしたんだ? ヘンだぞ、コヨーテ」

 流石にヘンといわれたからだと思うけど、コヨーテはあたしの方に向き直った。

「悪い悪い、ちょっとお前の考えが面白そうでな。結構、考えるヤツだったんだなぁ、お前。付き合い長いけど、初めて知ったぜ……」

 ヘンなコヨーテ。

 いつもならもっと気楽そうにあたしのこと茶化したりするだろ……とは思うけど、頼られるのも悪くない気がしてきた。

「ふふん、そうだろそうだろ」

 そしたら、コヨーテはあたしの頭をぺちっと叩いた。

「イタっ」

 別に痛くは無かったけどな。強がりじゃないぞ。

「あまり調子に乗るなって……だから考え無しだって……」

 そういえば……。

「で、話を戻すぞ。あたしのこと馬鹿に――」

 またあたしの言葉を遮ってコヨーテが言った。

「それな、結構前の話だぜ。まだ雨が一杯降ってたころに、えぇっと……シマウマだったかな? お前の話はしたが……あたりにはフレンズの気配もなかったぞ……?」

 あたしも不思議だとは思ったけど、あのチーターだ。

「どうせ聞き耳でも立ててたんだろ。あいつらしい」

「だから、そんな風に言うもんじゃないって言ってるだろうに、まったく……」

 コヨーテは溜息をつくようにして言ったけど、あたしは間違って無いと思う。性格悪そうだもん、あいつ。

「ま、それに関しては、だ。俺の思いつきがうまくいけば、色々変わるかもしれないが……ともかく、一方的な悪口なんて他のフレンズには言うなよ?」

 コヨーテは相変わらず、あたしに諭すように言う。

「広いようで狭いパークだ。ぎすぎすするのが一番困る。仲良くしろ、とまでは言わないが……」

「はいはい、わかったよ」

 まぁコヨーテのいうことも一理ある。あたしだって、顔も合わせたくないようなヤツが居るってのも、居心地わるいしな。

「……で、この後どうするんだ? 一緒にどっか行くか?」

 あたしの提案にコヨーテは首を振って否定した。

「俺はゴリラのところに行くつもりなんだが、お前も行くか?」

 コヨーテは笑いそうな表情で言った。

「あたしが行ったら面倒なことになりそうだし、いいや」

 コヨーテは本当にマジメなヤツだなぁ……なんで行くのか知らないけど、トシヨリクサイ? なんて言ったら良いんだろうな。まぁ、あたしはあんまり得意じゃない。お説教はこりごりって感じかな。わかんねーけど。

 あと、アイツがよく一緒に居るアムールトラも苦手。こえーもん。どんなヤツかは知らないけど……そもそもアイツ喋ってくんねーし。

「よっし、俺は行くぜ、じゃあな」

 川の水をごくごくと飲んで、コヨーテは走ってった。

「せっかちだよなーアイツ」

 速いのはいいことだと思うけど、あたしの返事くらい聞いてもいいんじゃないかな。そう思う。

 

 その後、あたしは何となく原っぱの方に行こうと思って、がーっと走った。海を通らなければ、川を渡ってまっすぐ行くだけだし、距離も別に遠くない。足がどれくらい治ったのかも確かめるのにもってこいだったからだ。

「やっぱこっちは涼しいなぁ……」

 フレンズによっては暑いくらいかもしれない。でも、時期を選ばないと凍えるハメになる。そのまま草の生えていないところを辿る。昼過ぎくらいだったから、他のフレンズものんびりしてるんだろう。あんまり周囲に見当たらなかった。

 

 気付けば広場を通り越して、ヘンな建物があるところまで来た。まるっこくてちっちゃな丘みたいになっていたヤツで、そこには何時もアイツが居た。フレンズじゃなかったけど、皆から、要するに、愛されてた。

「元気してっかなーアイツ」

 あたしはその建物の周りを一周して、誰もいないことを確認する。

「どっか行ったか、それとも寿命か……寂しいよなぁ、こういうの」

 フレンズの寿命。それは基本的に長い……らしい。

 あたし達と仲良くしてたらしいヒトってヤツとあんまり変わらないか、それよりも長いフレンズも居るとか昔、ゴリラが言ってたっけ。実際はどうだか知らないけど、まぁフレンズじゃない子達と比べたら、そりゃあな。

 あたしはアイツがよくいたところの隣にしゃがみ込んで、空を見つめる。

「ふん……ま、仕方ないんだろうけどなぁ……」

 あたしが空を飛べれば、もっとこっちに来たんだろうか。あの子がどうなろうが、あたしの所為じゃないのはわかるけど、ちょっと悲しい。もっと会うべきだったのかなぁ……。

 あたしが珍しくしんみりしてたら、建物の中からフレンズが出てきた。

「あれ……? どなたですか?」

 イヌっぽい子だ。耳とかしっぽが少しだけコヨーテに似てた。きょとんとした表情であたしに問いかけてきたその子は、なんだか若い匂いがした。あたし、別に鼻が良い訳じゃないけどな。あと、なんだか寂しげな目をしてる気がした。

「……!」

 あたしはなんだか涙が出そうになったけど、こういうときの礼儀ってヤツは知ってる。

「あたしはロードランナー。お前は?」

 何となく、わかってるんだけどな。あたしは奇跡って言葉、好きじゃない。なんだかずっと凄いヤツから『貰う』みたいで、悔しいからだ。

 でも、ま、これは奇跡ってヤツなんだろう。認めるさ。認めるよ。

 

――――――

――――

――

「結構大変だったんだな、ともえもイエイヌも……」

 ひとしきり話を終えると、コヨーテさんは呟きます。

「よく言われます……でも、わたしが好きで始めたことなので……しなくちゃいけないって思いもありますけど……」

 わたしの言葉に続けてイエイヌさんが口を開きます。

「私だってそうです。ともえさんのために、私ができることをしたい、私も一緒に居たいって、そう思っただけですから……」

 わたし達の言葉を聴いて、コヨーテさんは考え込むように黙り込んでしまいます。

「……なぁ、ともえ」

「はい、どうかしましたか?」

 妙に真剣な口調に、わたしは身構えます。

「ゴリラに会って来い。一応アイツは島では長老として動いてる。オサとか言うヤツも居る。アイツは否定してるがな……。多分、お前の知りたいことを教えてくれるかもしれない」

 想像もしていなかった言葉にわたしは固まってしまいます。

「お前、ヒト、なんだろう? アイツはまだパークにヒトがいた頃から生きてるからな。お前の知りたいことが全てわかるのかといわれると、わからんが……それとイエイヌ」

 コヨーテさんはイエイヌさんの方に向き直ります。

「こんなことは言いたくないが……自分のことも考えろ」

 イエイヌさんは「へ?」という表情になります。

「いや、軽くでいいから、お前がともえが居ようが居まいがやりたいこと考えておけ。多分、それは大事なことだ」

 イエイヌさんはうーんと考え込みました。そんな様子を尻目にコヨーテさんはぼそりと呟きます。

「俺も年取ったかなー説教することがあるとはなぁ……」

「へ? コヨーテさん、お若いですよ? とてもおばあさんには……」

 わたしの言葉をコヨーテさんは笑いながら否定します。

「違う違う。フレンズだしな。外見じゃなくて、心の問題だよ」

 とんとんと自分の胸を指で叩きながら、言いました。

「は、はぁ……」

 わたしは釈然としない表情をしていたのでしょう、コヨーテさんはくすりと笑います。

「……っと、結構話し込んじまったな、寝ようか、明日は早いぞ」

 彼女が促し、わたし達は眠りにつくことになりました。わたしは寝袋の中に、イエイヌさんは寝袋を下に敷いて、その上に丸くなって寝ることになります。と、何かに気付いたようにイエイヌさんが立ち上がります。

「これ、スイッチ? ですかね……?」

 そう言って彼女はぱちりと部屋の電気を消しました。消灯できたんですね、ここ……。

「おぉ、助かるぜ、ありがとうな、イエイヌ……というか、どこで見つけたんだ? その袋……便利そうだな」

 コヨーテさんの感謝に、イエイヌさんは「いえいえ」と答え、床に寝転がります。

「海の方で、どなたかの忘れ物をお借りしたんです。旅の間だけ、ですけど……」

「そうか、大事に使えよ」

 わたし達はそろって「勿論です」と応えました。そんな風にして、わたし達は眠りにつきます。

 明日の種目発表への緊張感も勿論ありますけれど、ゴリラと呼ばれた方がわたしの何かを知っているかもしれないという事実に心が震えています。明日の朝にでも、水のありかとあわせてコヨーテさんに聞きなおしましょう。

 今更ですけれど、わたしの旅でわたしの過去を知るということ。その目的は一歩でも前進しているのでしょう。そう思いました。

 きっと明日、アルマーさんとセンさんにお会いするという目的は果たせるでしょう。そして「その後何を目的に旅をするのか」という思いだって抱くことになったと思います。それが、当面は、ゴリラという方に会いに行くということで決まりました。偉い方のようですし、なんだか緊張してしまいますが……今から案じていても仕方の無いこと、とにかく今は明日に備えて寝ることが大切でしょう。明日から、忙しくなりそうです……!

 

――――――

――――

――

 イエイヌと会ってから、暫くして、コヨーテがあたしの寝床にやってきた。

「よう、おはよう」

 あたしはいつもの朝やるように日向ぼっこしてた。うとうとしてた所為で反応が少し遅れる。

「……んぉ、おはよ」

 ふふんと胸を張るようにして、コヨーテが言った。

「運動会が開催決定したぞ、お前のお陰だ」

 まるで意味のわからないことを言ってたし、ぼけぇっとしてたから、適当に応えた。

「そう、ふわ、ぁ……」

「何だ、興味無さそうだな。お前の話があったから決定したんだぞ? 喜べ……ってのは違うか。お前も参加するだろ?」

 そもそも運動会が何なのかってのは置いといて……。

「楽しいのか? それ」

「ん? 一応、目的は楽しく身体を動かそうって感じだな。まぁ、順位が決まったりもするが……」

 順位、決まる、身体を動かす。ここで少し興味が沸いてきた。

「じゃあ、やる」

 あたしは欠伸しながら聞いてたけど、コヨーテは凄いウキウキしてたと思う。

「そうか! よし、じゃあかけっこで決まりだな。約束だぞ! 俺も出るからな! プロングホーンとチーターには伝えておくぜ。じゃあな! 後はこっちで連絡係決めて……細かい予定も……」

 あたしはぶつぶついいながら去っていくコヨーテの後姿を見送る。あいつの言葉の中に、チーターやらプロングホーン様やら出てきたから少し興味が沸いたけど、眠かったし、寝なおしたんだな。まぁ、また話されるだろって思ってたしな。

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