A:ちょっと色々あって……
Q:色々?
A:EDFとかFGOとか
Q:遊んでたんですね?
A:はい
Q:挙句書けたのがこの程度なんですか?
A:許して
春。
出会いの季節とか言われるけど、ただ中学校で三年生に進級しただけの僕らにとってはあまり関係がない。
昨年度までに見た顔ぶればかりの教室で、そこに劇的な変化などなく。
とは言っても現代はヒーロー社会。
登校中に新たなヒーローの活躍を目にした僕はちょっとテンションが上がっていた。
僕だけじゃなく、同じ光景を目撃したクラスメイトもそれは同じようで。
「えー、おまえらも三年生ということで!本格的に将来を考えていく時期だ!……ま、みんなヒーロー科志望だよね」
先生の言葉に、クラスメイトたちが各々"個性"を発動する。
顔が膨らんだり、拳から針を出したり。発動型ではない"個性"でも、牙のような歯をむき出しにしたりと、皆が皆目立っていた。
が、一応校則では"個性"は発動禁止。当然、先生がそれを軽く咎める。
教室が騒がしくなったその中で、一際目立つ声で叫ぶ子がいた。
「せんせえー、『皆』とか一緒くたにすんなよ!」
僕もよく知る幼馴染、爆豪勝己、通称かっちゃん。
「爆豪は雄英高校志望だったな」
「国立の!?」
「倍率やべーんだろ!?」
先生の言葉に教室がさらにざわついた。
国立雄英高校。誰もが知っているトップヒーロー、オールマイトが通っていたヒーロー育成教育機関。
その偏差値も倍率も半端ではなく、全国から多くの受験生が挑戦するが、実際にヒーロー科に通えるのは毎年50にも満たない。
が、そんなことはこの暴君かっちゃんにはあまり関係がない。
「模試じゃA判定!俺は
「あ、緑谷も雄英志望だったな」
間。
騒がしかった教室が静まり返る。
いや先生なんでこのタイミングで言っちゃうんですかね。
「はああ!?緑谷ぁ!?無理っしょ!!」
「勉強できるだけじゃヒーロー科は入れねえぞー!」
クラスメイトは口々に言う。
しかしそれは中学から一緒になった人たちばかり。
同じ小学校から進学した人はそれを否定してくれる。
「いやでも緑谷は結構すごいぞ」
「"個性"も強力だしな」
僕の内気な性格が災いして、親しい人というのはいないが、付き合いの長い人はそれなりの数がいる。
そういった人たちがこうしてフォローをしてくれるのは、素直に嬉しいと思った。
「は?緑谷が?」
「周り涼しくするだけのエアコン"個性"じゃん」
エアコンて。
まあ確かにうちの中学は空調機ないから、夏場に"個性"で教室を冷やしたりしましたけれども。
それでもエアコンて。
……いやお母さんも最近は『出久の"個性"で電気代がちょっと浮くわ』とか言ってた。僕はエアコンだった……?
「お前らは知らないだろうけどな、小学校では緑谷は伝説なんだぞ」
「えー、緑谷があ?」
「爆豪曰く"クソナード"だろ?」
―――BOOOM!!!!
教室に爆音が響く。
その音源は、僕の幼馴染の右手。
爆風は彼の机を吹き飛ばし、椅子も立ち上がった勢いで倒れる。
グルンと体ごと首を回し、僕を睨みつける。
そしてツカツカと歩み寄り、僕の襟元を掴んで、無理矢理立ち上がらせた。
「おいデクてめえ!!どういうことだ!?」
「違うんだよかっちゃん……!別に張り合おうとか、そんなんじゃなくて!!」
「そうじゃねえ!!俺は聞いてねえぞ雄英志望だってこと!!」
「あっそこなんだ」
思っていたブチ切れポイントと違った。
伝えなかったのは意図的に隠していたわけではなく、普段僕が話しかけると怒り出すので言い出す機会がなかっただけなのだ。
「一線級のトップヒーローは学生時から逸話を残してる。……そういう意味じゃてめえはすでにその条件を満たしてる」
かっちゃんの言う『逸話』。クラスメイトの言う『伝説』。
それは小学生の頃の、あのショッピングモールでの火災のこと。
あの日のことはしばらくニュースで報じられ続け、僕のこともちょっと話題になった。
……うん、実は全然ちょっとじゃなかった。
ニュースそのものでは僕の個人情報は明かされなかったけど、あの場には同級生もいたわけだし。人の口には戸を立てられないという言葉の通り、僕のことは学校や地域には広がってしまって。
ちょっとした時の人みたいな扱いを受けつつ、僕は小学校を卒業するまで好奇の目に晒され続けたのだった。
まあその過程は今は省くとして。
「雄英、二人で受かるぞ」
「かっちゃん……!」
珍しく僕に優しい言葉をかける幼馴染にちょっと涙した。
僕がんばるよかっちゃん。
「じゃあ今日から特訓だ」
「特訓」
「雄英の実技は戦闘だ。―――これから毎日模擬戦だ」
「模擬戦」
だいぶ殺意高そうな目つきしていますけど、模擬戦で済むのかそれは。
手加減など知らなさそうな幼馴染に震え上がった。
僕こわいよかっちゃん。
「いやお前ら、教師の前で堂々と校則破り宣言しないでくれる?」
「すみません……」
「チッ」
「俺も期待してるから見逃すけど」
「それでいいんですか先生」
一瞬助かったと思ったのにこれだよ。
舌打ちまでされたのに許しちゃうんですか、先生めっちゃ心広い……。
「放課後空けとけよ、デク」
完全にカツアゲの雰囲気ですよこれ。
今日無事に家に帰れるのだろうか。
僕の明日はどっちだ。
授業中にふと思う。
かっちゃんは相変わらず暴君ではあるが、実のところその実態は以前とだいぶ変わっている。
小学生の頃は弱い者いじめなんかもしていたかっちゃんだが、今はそういった行為は鳴りを潜めている。
もちろんみみっちい性格のかっちゃんだから、問題にならない程度の問題行動をしている可能性もあるわけだけど、ここ数年の周りからの評判は『すぐキレるけど悪いやつではない』とか何とか。
そういう様子が見られるようになったのは、やはり6年前の火災の後からだったか。
入院していた僕の病室までやってきて、開口一番に、
『俺はテメエに助けられたわけじゃねえぞ!』
と叫んでいた。
僕が目を白黒させている間に、かっちゃんは同伴していた彼の母親にぶん殴られてて、さらに困惑したのをよく覚えている。
退院して学校に戻る頃にはかっちゃんはすでにイジメや恐喝をしなくなっていたと思う。
あの事件で何やら思うところがあったのだろうとは感じ取れたが、その心境は謎のままだ。
とはいえ、口が悪いのは変わらなかったし、気に入らないことにはよくキレていたので、この変化は表面的なものか、根本的なものか、僕には判断がつかなかった。
ていうか僕に対しては態度全然変わらなかったし。
すれ違うだけでよく舌打ちされたし、うっかり登校時間が被ろうものなら爆破で追い払われていた。
僕に対してだけ殴りかかったりもしていた。
そういう点を踏まえると、今朝のかっちゃんはかなり優しい。
しかも放課後、僕を誘って特訓とまで言う。
……どうしよう、今日僕死ぬんじゃないか。暗殺とかされないよな。
なんて心配もしていたのだが。
特に何事もなく放課後を迎えて、かっちゃんは僕の首根っこを掴んで駆ける。何事起きてますね、すごくくるしいです。
「離して……」
「じゃあ自分で歩けクソが!」
「問答無用で連れ出しておいて酷くない……?」
苦言を呈すが完全無視。
いつもならここでついて行くとめっちゃ怒り出すんだけど、今日に限ってはかっちゃんについて行ってもいい日なわけだ。
ここで踵を返して帰るとたぶんブチギレるので大人しく後ろを歩く。隣歩いたら絶対爆破されるからね!
「ここだ」
で、かっちゃんに連れてこられたのは街外れの工場跡。
何年か前に会社が潰れて廃墟と化した建物だが、工場だけあって造りはしっかりしているらしい。
ところどころ屋根や壁に穴が見えるが、崩落している様子は見られないし、何より中のスペースが広い。
稼動していたころの機械とか、どこに消えたんだろうか。
「んなもんとっくに売られたり盗まれたりだわ」
「やだ治安悪い……そうだよ、こういうところって不良とかの溜まり場になってそうな気が」
「追い出したわそんなん」
「やだ治安悪い……」
そういう人だよね、かっちゃんは。
それはもう容赦なく爆炎掲げて脅したんだろうな、と想像できた。
「ここなら遠慮なく"個性"が使える」
「可燃物とかやばそうだけど」
「全部片付けた」
みみっちい性格のかっちゃんだが同時に几帳面でもある。
ちゃんとそういったものは処理したようで、この工場跡は『爆破』という派手に燃え上がりそうな"個性"でも、引火することはなさそうだ。
というかこんな場所いつ見つけたんだろうか。小学校からずっと一緒だったけど、全然知らなかったぞ。
「中学入学してからだな」
「じゃあ二年もここで"個性"の特訓してたんだ」
様々な"個性"が溢れつつも、原則として使用は禁じられている現代、隠れて"個性"を使う人は多い。
それが人様のご迷惑になるとヒーローや警察のご厄介になったりするわけだが、まあどういうご時世であれ上手く隠れてみせるやつってのは多いもので。
どうやら僕の幼馴染もそれに当て嵌まっていたらしい。
「そういうのはどうでもいい、それよか今お前がどのくらい"個性"で戦えるかだ」
僕の"個性"は戦闘向きじゃないんですけど。
「―――ってのは建前だろ。お前こそゴミ溜めの浜辺で"個性"の特訓してるの、知ってんだからな」
「うぐっ」
どうやら見られていたらしい。
そう、僕は例の火災以降、目立つのを避けるために大っぴらに"個性"を使うのを避けていた。
だからこそ人があまり寄り付かない、近所では有名なゴミ集積所と化している浜辺でこっそり"個性"を鍛えたりしていた。
「直接戦闘に向かない"個性"でも、鍛え方次第では武器になる。そういう分析はデクこそ得意分野だろ」
「うーん、褒めてくれるのは嬉しいんだけど、本当に『使える』選択肢はそう多くなくてね?」
どうしたかっちゃん、今日はめちゃくちゃ優しいぞ。ちょっと気持ち悪いぞ。……なんて思ったけど、そういうのはぐっと飲み込んで。
「何から話そうかな……」
「話さんでいい。とりあえずやるぞ」
「え、何を」
「ンなもん決まってるだろ、特訓だ」
そう言ってかっちゃんは僕との距離を詰め、右腕を振りかぶり、
―――BOOM!!!
「危なっ!?」
「避けんなクソが!!」
「いや避けるよ!?」
不意打ちで殴りかかるとかどうかと思うんだけど!!
「いちいちデクの長ったらしい説明なんて聞いてられるか、こうした方が早ェ」
「肉体言語だなあ!!!」
かっちゃんは再び右腕を振りかぶる。
が、その動きは知っている。
「……!?」
「かっちゃんの初撃は、右手の大振り!!」
かっちゃんの右腕を包むように持ち、背負い投げの要領で振り回す。
そのまま床に叩きつけようとするが、
「ンなもん食らうか!!」
BOM、と爆破ですり抜け、その勢いのままかっちゃんは宙に浮かぶ。
爆破でその勢いを殺して、空中で姿勢を変えて殴りかかってくる。今度は左手だ。それも大振りではなく、鋭い一撃。
容赦なく顔面を狙うそれを両腕でガードするが、
「もういっちょォ!!」
追撃で右腕が伸び、僕の腕の隙間に入る。
「ぐっ……」
ガードを崩され、露になった僕の顔面を再び左腕が狙う。
今度は拳ではなく、手の平。
―――BOOOOM!!!
爆音が響く。
常人なら熱で皮膚が焼かれてしまうが、
「チッ、やっぱ効かねェか」
僕なら耐え切れる。
僕の"個性"は『吸熱』。その"個性"の利点として、僕の体は熱に対して高い耐久性がある。
周りの熱を吸収し、自身のうちに溜め込むことができるからこそ、どこまでも熱に対して強い身体なのだ。
しかし、それは熱に対してという話なので。
「熱はどうにでもなるけど、衝撃は殺せないんだよなあ……」
ダメージ皆無とはいかない。
火傷こそないが、僕の右頬はこの後腫れあがるに違いない。
「どうした、"個性"使って反撃してこいよ!!!」
「戦闘向きじゃないんだって!!」
「そりゃさっき聞いたわ!!!」
かっちゃんは自身の背後に向かって左手で爆破、勢いをつけて右のストレートを放つ。
僕はそれを左に大きく避けるが、それは悪手であった。
通り過ぎた右手は、爆破で軌道を変える。手の甲が僕の右脇腹に刺さる。
「ぐえっ」
隙だらけの僕の右腕が掴まれ、回るように引き寄せられた。
このままでは地面に叩きつけられる。直感した僕は、左手をかっちゃんの頬に伸ばし"個性"を発動した。
熱を手の平に集中させる。
「熱っ……チッ」
一瞬であるが、怯んだ隙に掴まれた腕を振りほどく。
また掴まれるわけにもいかないので、後ろに下がり距離を取る。
「『吸熱』じゃねェのかよテメエの"個性"はよォ!!」
「吸収した分は保管して、発熱で引き出せるんだよ」
「『熱操作』って申請し直しとけ!!!」
「考えとく。―――こういう技もあるんだけど、避けてね?」
「アァ!?」
熱を喉の奥に集める。
口の中を焼くような吐き気のままに、それを放つ。
―――THOOOOOM!!!
僕の口から放たれた熱線はかっちゃんの右頬を掠り、奥の壁に焦げ目を作った。
後ろを振り返りつつ、かっちゃんが言う。
「……何だ今の」
「ビーム」
「何がどうしたら『吸熱』がビームになるんじゃボケェ!!!」
「お父さん似かな……」
お父さんの"個性"は口から火を吹けるのだ。
火とは熱と光。
つまり熱線になってもおかしくない。うん完璧な理論。
「ンなわけあるか!!!」
「ですよねー」
「今のどの辺が戦闘向きじゃねェんだ!!!」
「いやこれ直撃はやばくない?」
そういう意味では『使えない』札なのだ。
火傷で済めばいいのだが、制御間違えると消し炭にしてしまいそうだ。
いやそんな火力出るのか試したことがないんだけど、少なくとも個人では使えないよね。進学して然るべきヒーローの管理下で鍛えたい技だ。
「お前自分の"個性"も制御できねェのかクソが!!」
「いやいや、『吸熱』はちゃんと使えてるよ。……でもそうだね、もうちょっと『使える』札を出すかな」
内に溜め込んだエネルギーを、脚に集中させる。
今度は熱としてではなく、純粋なエネルギーのまま。
僕の意思に応じるように、両脚が僅かに光を帯びる。
そして、一歩でかっちゃんとの距離を詰めた。それと同時に振り下ろすように右手で殴りかかる。
「……ッ!」
かっちゃんは僕の拳を、反り返るように体勢を変えて回避した。
僕はもう一歩踏み出し、今度は振り上げるような形で左手を伸ばした。狙いは脇腹。
しかしその手はかっちゃんの右腕で振り払われ、行き場をなくした。
「『身体能力の強化』……ますます『吸熱』から離れてるぞ」
「めっちゃ効率悪いんだけどね」
具体的には今の一瞬の脚力強化で、今朝から一日かけて集めていた分の熱量がなくなった。
こんな消耗率じゃ常時強化なんてできないし、その強化の具合だって微々たるものだ。
とはいえビームに比べれば十分『使える』範疇の技なので、今後鍛えて効率を上げられればもっと応用が利くだろう。
「だが強化したところで、格闘のフォームがなってねェ。そんなんで敵に当たるかボケ」
「かっちゃんほど殴り慣れてないから……」
「アァン!?」
「なんでもないです」
凄まれて黙る。
心に染み付いたかっちゃんへの恐怖心は簡単には拭えないのだ。
「チッ……戦いになるかはともかく、戦うすべがあるのは分かった。今日はこれで終わりだ」
「よかった……このままガチ殴り合いになるかと……」
「それは明日からだ」
「えっ」
「戦うのに慣れるまで戦うんだよボケ」
「えっ」
僕の寿命が縮まりそうなんですがそれは。
本格的に今年中に命日を迎えそう。
「死なねェように殺したるわクソが!!!」
「矛盾してますけど!?」
まあ意外と面倒見のいいかっちゃんのことだから、僕がある程度形になるまで本気で殴りかかってくることはないとは思うんだけれど。
……ないよね?ないって願ってる。そう思っておこう、僕の心の平穏のためにも。
その後話し合いの末、週一でバトルを繰り広げることにして、あとは各々で自主トレということになった。
かっちゃん曰く『デクに時間割いてやるだけでも感謝しやがれ』とのことなので、素直に喜んでおこう。今日のかっちゃんマジで優しい。
「フン、だがこれでテメエの弱点もモロバレになったわけだ」
「やだなあ、『札』を全部見せたわけないじゃないか」
「なんだとクソが!!!さらせや!!!」
嫌だよ、負けたくないもの。
僕だって男の子なのだ。
実際のところ数日に1回、1000字くらい書いては消してを繰り返してた。
プロットとか何もないんで、思いついたままに書いています。
今回の話も最初書き始めたときと全く違う内容になったしな。