Twitter上で開かれている「#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負」にて、「ありえない偶然」「色違いの瞳」「大好き」のお題で扱った作品です。

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隠れる瞳。

 雨粒がポツポツと、外の地面を埋めていく。数秒しないうちに、外はどしゃ降りの雨で覆われた。

 高校生の晶がカバンだけを持って校舎から出る。

 こりゃ濡れて帰るしかないよな。晶は傘立てに置いたハズの、自分の傘を無くされたことに不機嫌になりながら外を出ると。

 

 「あ、あの!コレっ!」

 

 横から同級生の結子がいきなり飛び出して頭を下げ、傘を晶に差し出した。

 どうしてと驚いている晶に、結子は傘を差し出したまま無我夢中で接近してくる。

 

 「か、傘ないですよね!! わ私のでよければ、ど、どうかぜひ!!」

 

 「あ、う、うん、ありがとう、とりあえず落ち着こ!」

 

 早口になって少年に迫る結子は、真っ赤な顔を上げた。おかっぱで、実年齢よりずっと幼い顔立ち。

 そこだけ見れば可愛いと思えるのだが、彼女は左目を普段から眼帯で覆っている。痛ましいような変なような、とりあえず普段なら距離を取ってしまう面。

 晶も普段は彼女から距離を置いている。そんな彼女が自分に迫ってきていて、彼は困惑した。

 

 「えぇっと……この傘を借りたら、結子さんはこの雨の中をどう帰るの?」

 

 「え、えっと……」

 

 結子の見える方の片目は泳いでいて晶と目を合わせない。

 言おうかやっぱり言えないか、口から中々言葉を出せておらず、指を繋いでは離しと挙動不審だ。

 

 「傘がこれしかないなら……一緒に帰る?」

 

 「ハ、ハイ!!」

 

 結子のあたふたした様子から、今日は落ち着いて帰れそうにないと晶は思った。

 

 

 晶は自分の家まで、結子と帰ることに決めた。

 

 「知ってます……学校の近く、ガラス細工の小物店ですよね」

 

 道順を説明したあとに結子からそう言われ、晶は頭をかいた。

 

 「行ったことあるの? 俺は客の顔を大体覚えられるんだけど、結子さんがウチに来たの、見たことないよ」

 

 「み、店の前を見たことあるだけで、中に入ったことはないです……」

 

 「ウチで何かアクセサリーとか買ってく?」

 

 「い、いえ……小物を付けて、目立ちたくはないです……」

 

 晶は結子の横顔をチラリと窺った。結子の左側、眼帯をしている方に並んでいるため、結子は顔を見られていることに気づかなかった。

 一つの傘に二人の高校生、男子の晶はともかく、結子も近くで見ると体格は大きい方であり、お互い入りきらず肩などを少し濡らしている。

 

 「結子さんってさ、どうして眼帯してるの?」

 

 会話に詰まり、晶は質問を変えた。不躾だなと言ってから思い、謝る前に結子がこちらに顔を向けた。視線は結子に向いたままであったので、彼女の目があった。

 

 「えっ、えっと……私、片目の色が大きく違うんです……何か、宝石のようにキラキラしていて……」

 

 結子は眼帯を手で隠す。晶も視線を彼女から外し前を向いた。

 

 「それでその……昔から色々言われたので、普段は隠しているんです……」

 

 晶は質問の答えを知っていた。学内じゃ有名な話であったからだ。

 眼帯の結子の目は宝石のようで、しかも人の心が見えると。クラスじゃ誰もが結子を遠巻きに見ていて、晶も普段は結子を遠くから見つめていた。

 

 「そうなんだ……嫌なこと聞いてゴメン」

 

 「い、いいよ! 気にされること慣れてるし……晶なら、気にしないでしょ」

 

 「ん? 結子さん、俺を見たことある?」

 

 「う、うん……」

 

 言ってから晶は自分の口を手で覆い隠した。

 晶の失言に、結子は気づいているかいないか、固めを俯かせ頷いた。

 

 

 「ここだよ」

 

 「は、はい……」

 

 晶の自宅に、相合傘の二人は着いた。

 

 「結子さん……今度返してね」

 

 玄関に入る前、晶は結子に念をおした。

 結子はハッとなり、身体を縮ませ「ごめんなさい」と一言返した。

 

 「渡り廊下から結子さんが俺の傘を取っていたのを見たけどさ……どうしてわざわざ外で俺を待ってたの?」

 

 「……朝、晶さんが持ってる傘を見て……その……」

 

 結子は頭を大きく下げた。罪悪感と羞恥心で、頬が真っ赤になり涙目になっている。

 

 「い、一緒に帰りたかったんです……だけど、私と一緒にいてくれる人は誰もいなくて……『考えてること知られるのが嫌だ』って……だから、こういうヒドイことするしか思いつかなくて……本当に、ごめんさないっ!」

 

 晶は頭をかき、結子を見つめる。肝心の理由は分からない。だけど、何となく分かってしまい、晶も恥ずかしさで頬を真っ赤にしていた。

 

 「結子さん、さっき俺を見たことあるって言ったよね?」

 

 「は、はい……」

 

 

 「もしかして……その……一目で結子さんを好きになったことも、見えちゃってる?」

 

 

 「……はい」

 

 雨粒が、気まずい沈黙と合わせるようにまたポツポツと小さい音に戻っていく。

 

 

 「わ、私も、その……変な目とかそういう考えて持たずに……純粋に好きって気持ちで普段から見てくれて……」

 

 「言わないで! もう言わないで!!」

 

 噂とか関係なしに、結子に一目惚れして毎日見ていたことがバレた晶は、顔を覆い隠して苦悶した。

 

 「わ、私も何か応えたいと思ってて! だけど、どうすればいいか分からなくて……ふぅ」

 

 結子は一呼吸ついたあと、決心した様子で眼帯を外した。黒の右目と反対に、結晶のように輝く白い目。

 結子と左目と晶の目が合う。

 

 「……ありがとう、晶さん」

 

 たまたまその目と遠くからあった初対面の時の気持ちを晶は思い出し、そしてその思いを見られていることに気づき顔を更に赤くする。 

 だが、今度はしっかりと結子と目を合わせる。告白同然の思いを、晶は自分の心に埋まらせ、結子を見つめる。

 結子も恥ずかしがるように体を震わせ、だけど初対面と違う……寂しかった頃の表情と違い、この出会いに満面の笑みで嬉しさを感じていた。


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