Twitter上で開かれている「#創作版深夜の真剣文字書き60分一本勝負」用に一時間で書き上げた小説です。

 お題は「砂糖王国」「小人達の宴会」です。
 宴会は行えませんでしたが、これら以外に出されたお題をちょいちょい入れています。
 今日もノリ任せで書ききってしまいましたが、タイトルで気になれば是非(><)
本文編集

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シュガーキャッスル

 雲の晴れない山岳地帯、その頂上に1つの城がそびえ立っていました。

 全面が白い結晶で出来ていて、わずかな光を反射してキラキラと輝いていました。

 この結晶の城に住むのは、白いとんがり帽子を被った女王一人。家臣も客もいず、今までずっと一人だけで暮らしていました。

 城の中は広く、結晶で作られた装飾は立派です。それらは女王が一人で作ったものでした。扉のノブも階段の手摺も廊下を作る壁も、椅子の背もたれもテーブルの卓上も、全て女王自らがデザインして結晶から生成しました。

 高く大きく立派な城で、女王は日々玉座でまどろんでいました。思いつくものは全て作り、欲しいものは結晶から作れますが、女王は満足感を覚えずボンヤリしていました。

 

 「どうしたいでしょう、これから」

 

 女王は一言だけ呟き、玉座の肘掛けを人差し指でなぞり、その指を舐めました。

 ただ甘いだけの結晶は、女王の空っぽな心を埋めませんでした。

 

 

 天井を見上げると女王を描いたステンドグラスがあります。透明なステンドグラス越しに晴れない曇り空を眺めると、女王は気が沈み外を眺めました。

 この山の下には、自分以外の人達が住んでいます。喋る話は通じます。

 だけど女王は他人には何も求めません。せっかく作った結晶の城を離れて外に出るなど、女王は考えませんでした。

 外に出ることを考えなかったので、女王は城の中でボンヤリするしかありませんでした。

 

 ある日女王は、階段を駆け降りていく何かに気づきました。

 そっと廊下の壁に隠れて目だけを出して見ると、それは小さなとんがり帽子を被った、結晶で出来た体の小人でした。

 女王は城を走る小人の後を追い、城中を走り回りました。スタスタ走る小人は意外に速く、女王は息切れしながらようやく手で捕らえました。

 

 「ゼェ、ハァ……捕まえましたわ」

 

 そう言って床にヘナヘナと座り込むと、足元を駆けていったもう1つの小人に気づきました。

 女王は捕まえた小人を抱えて追いかけます。息切れはしていたが、女王の心は好奇心で一杯でした。

 

 

 女王は手ではもう抱えきれない程の小人を捕まえて、まだまだ出現し続ける小人を一体一体追いかけます。

 追いかけていく途中で、女王は階段が何個か無くなっていることに気がつきました。

 女王は小人が城の材料から生まれていたことに確信を持ちました。そして女王は更なる異変に気がつきます。

 小人を追いかけていく中で、小人が城の装飾から小人を作っている現場を目撃したのです。

 このまま小人を放っておくと、城が全て小人に変わるかもしれません。

 

 「待ちなさい、ちょこまかした小人たち!」

 

 女王は走ろうと足を出しましたが、床につまずいで転んでしまいました。

 起き上がった女王の涙目には、捕まえた小人達が一斉に城中を駆け回る姿が写りました。

 

 

 女王は諦めて、玉座に座って寝ることにしました。階段だけでなく廊下も削られているらしく、玉座のある部屋にはすぐ辿り着けました。

 あの小人がどうして生まれたか分かりませんが、そのうち元の結晶に戻って城の装飾の一部になるだろう。疲労から頭が諦感で埋まり、女王はヘトヘト疲れながら眠りにつこきました。

 

 女王は夢を見ました。自分が操れる白い結晶を集めて城を作り上げる日々、それを操る姿を人に見られたときの不安さ……

 

 女王は起き上がりました。起き上上がった女王が最初に目にしたのは、小人が何かを持って一列に同じ方向へ慎重に走っていくところでした。

 女王は追いかけます。小人の手には、結晶から出来たお菓子が抱えられていました。

 キャンディ、マシュマロ、ふ菓子、クッキー……色んな種類のお菓子は、小人の手で外へと持ち運ばれて行きます。

 女王は爆発するかのような激しい困惑で小人を装飾に戻そうとしますが、何故かその魔法が使えません。

 呆然とする女王を尻目に、小人は削り取った扉から外へと飛び出しました。

 

 「待って、待ってよ私の甘いの……勝手に私から離れないでよ!」

 

 女王は小人を追いかけます。その後ろにもお菓子を運ぶたくさんの小人が続き、城はどんどん小さくなっていきます。

 

 やがて小人は町に着きました。そこに住む一人一人にお菓子を配り終えると、小人は女王の所へ集まります。

 

 「このお菓子って、魔女さんが作ったの?」

 

 更に盛られたキャンディを女王に差し出しながら、一人の女の子が女王に近づきました。

 

 「……う、うん、く、配ろうかなと思って……」

 

 「ありがと、魔女さん!」

 

 女王は赤面しながら、勇気を出して女の子と会話しました。

 女王の元に、貰ったお菓子を手に持ちながら、町の住人たちが微笑んでお礼を次々に言います。

 女王は赤面のまま一人一人と会話し、その顔は徐々に笑顔へと変わっていきました。

 

 空は晴れ、甘い結晶で出来ていた城は、最後の小人となって陽気な町に走り去っていきました。



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