とある集落に内気な男の子がいました。その子は活発な男の子と女の子と仲良しで一緒に山や川に行っては夕暮れ時まで遊んでいました。
夏の日に活発な男の子が、大雨の日に川を見に行こうと言い出しました。大雨の日の川は危ないと親から聞かされていた2人は当然反対します。けれどその子は2人を言いくるめて川に行く約束をしました。
そして大雨の日、内気な男の子は家族には内緒で家を抜け出して集合場所に向かいました。そこには既に言い出しっぺの男の子が来ていました。2人は女の子を待つけれど来る気配がありません。親に見つかって止められたのだろうと判断して2人は先に川へと向かいました。
川に到着すると普段浅瀬で泳ぐことの出来ない川が大雨によって増水していて、2人は目を輝かせました。橋から眺めているとどこからともなく「やろか、やろか」という声が聞こえ、2人は顔を見合わせます。そして再び声が聞こえ、思わず「寄越せるものなら寄越してみやがれってんだ」と男の子は答えてしまいました。
内気な男の子は顔を青ざめながら早く逃げようと言いました。なんでと問いかけてみても「いいから早く」と急かします。彼の真剣な物言いに橋から離れようとするけど、それより早く上流から濁流が迫り、2人は橋ごと飲み込まれました。
けれどそれは一時的なもので、すぐに橋が姿を現しました。男の子は咳き込みながら内気な男の子に声を掛けました。しかし声が返ってくることはなく、流木をどかしながらその子を探したけど見つかりませんでした。彼は濁流に飲み込まれた際に川に流されてしまったのです。
男の子はすぐに助けを呼び、村総出で流された男の子を捜索したけど見つかりませんでした。内気な男の子と仲良しだった2人はすごく後悔しました。大雨の日に川を見に行こうなんて言い出さなければ……、ずっと反対して止めていれば……と。
後日、内気な男の子は下流の方で遺体となって発見され葬式が挙げられました。そして大雨の日に2人が聞いた「やろか」という声はやろか水という特定の返事をすると水害を起こす妖怪のものでした。
数年後、その橋で内気な男の子の幽霊が度々出現するようになりました。ある人は逃げ帰り、ある人は泣きました。ある人が既に死んでいることを伝えると、
「く、来るな!僕は信じないぞ」
そう言って橋の向こう側へと消えていきました。それからというもの、干ばつが発生したり伝染病が流行して村人はその男の子の祟りだと考え始めました。幽霊となった男の子を説得しようと努力しても死を受け入れてもらえず村人は困り果て、成仏ができるようお坊さんに頼みました。
お坊さんは件の橋に向かうと男の子の幽霊が佇んでいました。男の子の幽霊に近付きながら声を掛けると、
「く、来るな!村の人みたいに僕を騙そうとするんでしょ!」
彼はそう言って路上の石ころをお坊さんにぶつけ逃げていきました。お坊さんは腕で顔を防御して幽霊の後を追いかけました。
「どうしてここまで追いかけてくるの?」
暫く山の中を逃げていた男の子の幽霊が立ち止まりお坊さんに尋ねました。君と話をしたいからと言いながらお坊さんは彼に近づきます。
そしてお坊さんはあの大雨の日の出来事で伝聞した事を話しますがその男の子はやっぱり信じてくれません。お坊さんは次の手段として彼をお墓まで連れていきました。自分自身のお墓を見て驚愕する男の子の幽霊に追い討ちをかけるように当時の新聞を彼に読ませました。
「本当に僕、死んじゃってたんだね……」
男の子は自分が死んだという事実を受け入れて無事成仏出来ましたとさ。
モンストに出てくる疑心暗鬼という降臨キャラの短編を書いてみました。あの子の撤退ボイスと撃破ボイスを聞いてると心悲しくなってくるんですよね……