ちなみに8巻は短編集みたいな感じなので割愛しております。
オリ設定
オリ展開
嫌いな人は読み飛ばし!
103話
ソーナ視点
「修学旅行?」
夏休みを利用した文字通りの地獄合宿を終え、オーディン様+アザゼル総督が無駄に日本神話群との会談を望んだせいで突発的に発生してしまった会談の案内役という大役もなんとか無事に終え、ようやく胃痛と頭痛から解放されて普段の生活に戻れる! と思っていた矢先に、匙が神妙な顔をして「今のうちに確認しておきたいことがあります」なんていうから何かと思って聞いてみたら、まさか学校行事に関する質問とはねぇ。
普通に忘れていたわ。
でも、そうよね。私たちは去年行ったからあれだけど、匙は今年だもんね。そりゃ忘れないわよ。だって当事者だもの。
「はい。普通に考えれば『駒王町の管理者である俺たちが任務を投げ出して京都旅行に行くなんてありえないことだ』っていうのは理解しているんです」
「「うぐっ!」」
無自覚に襲ってくる言葉の刃が痛いっ!
そうよ! 去年私と椿姫は管理とかそういうのを全部放り出して(って言うか何も考えずに)京都旅行に行ったのよ!
それが『契約違反』にならなかったのは、たぶん『留守にする間限定だから』って自分を納得させて実家から人員を派遣してもらったから、よね。
ちなみに旅行期間中に実家から人員を派遣してはもらったのはリアスも同じ。
なんていうか……客観的に見たらこの時点で管理者失格よね。
はぁ。当時から私たちのサポートに回っていたはずのシロネ様たちは私たちの行動を見てどう思っていたのかしら?
責任を放棄したことを怒る?
……ないわね。
期待も何もされていなかった私たちを怒るはずかない。むしろ我儘な貴族のお嬢様がいなくなった代わりに、それなりにまともな悪魔が来てくれるんだもの。両手を挙げて歓迎したかも。
で、多分だけど「勝手に京都でもどこでも行けばいい。ただし二度と帰ってくるな」くらいは思われていたはずよ。
はぁ。去年の私ときたら「貴族の誇り」だとか「家に頼らずに統治を学ぶ」だとか偉そうに言っておきながら、一体何をしていたのやら……自分のことながら情けないにも程があるわ。
穴があったら入りたいとはこのことよ。いや、墓穴に入るつもりはないけど。
「そ、それで、そこまでわかっているなら何が聞きたいのかしら?」
あっと。過去を振り返って自己嫌悪と現実逃避をしている私に代わって、私と同じかそれ以上にダメージを受けていたはずの椿姫が話を進めてくれたわ。
うん。椿姫は椿姫で補佐役としては最低最悪に部類されていたもんね。それに、なんだかんだ言っても私は公爵家の時期当主だから周りから直接的な干渉をされる可能性は低かった(ただしオセ様関連は除く)けど、椿姫は名家出身で神器を宿していたとはいえ所詮は元人間の転生悪魔。
一歩間違えたら私に甘いせいで直接注意ができなかったお父様やお母様、それにお姉様から『私を堕落させた元凶』扱いされて殺されたり、オセ様の関係者から『真面目にやれ』って感じで処罰されてもおかしくなかったのよねぇ。
そう。命の危機は私たちが思っていた以上に近くにあったのよ!
で、主従揃って二ヶ月前までは一切自覚していなかった命の危機だけど、今は地獄での折檻……いえ、ありがたい教育的指導によって十分以上に自覚しているわ。
だからこそ私たちはこれ以上余所様に迷惑をかけるような真似を慎まなければならないのよ。
「はい。普通に考えたら俺たちは修学旅行には参加せず、駒王町の管理業務に徹するべき。ですよね?」
「えぇ。そうね」
……自分は旅行に行っておきながら彼らにそれを許さないだなんて最低な行為だとは思うけど、遊びよりも仕事を優先するのはあたりまえの話。
旅行に関してだって、今は無理だけど、私が卒業して管理者じゃなくなった後にいくらでもさせてあげるつもりだし。
匙だってそれくらいは理解していると思うけど。
「もしかして修学旅行に参加できないことに何か不満でもあるのかしら?」
不満がないわけ無いとは思うけど、それは眷属悪魔としては口に出して良いことじゃないわ。
私は王で、貴方は部下なの。
私が甘やかしたせいでそのへんがあやふやになってしまったのは自覚しているけど、それだって合宿で矯正されたはずよね? もしかして足りなかった? また逝く?
「いや、それについては当然だと思ってますんで不満とかはないですよ!」
「あらそう。それは良かったわ」
いやホントに。もしも匙が不満を抱えているのがシロネ様にばれたら『旅行にいけないのが不満? 主従揃って教育が足りませんね』とか言われた後で『逝きたいなら好きなだけ逝きなさい……地獄に』って感じになるはず! 私は詳しいのよ!
「では、結局匙は何が言いたいのですか?」
「えっとですね。俺たちの仕事の内容の確認と言いますか」
「「内容の確認?」」
管理者としてって話よね?
「はい。もう少しでウチの生徒が修学旅行に行くじゃないですか」
「ええ。そうね」
忘れていたけど。
「俺たちは駒王町から動けませんよね?」
「そうよ。お仕事が優先だもの」
まだるっこしいわね。さっさと本題に入りなさいな!
……そう考えていた時期が私にもありました。
「でもウチ、って言うか俺たち? いや正確にはリアス・グレモリー様たち? って今テロリストに狙われていますよね?」
それがどうしたのって……
「「あっ!」」
大問題じゃない! 早く言いなさいっていうか、言われる前に気付かないと駄目なことよね!
「向こうに行った生徒が狙われる可能性とか、もしものときに備えて俺たちが管理……って言うか、護衛しないと駄目なのかなぁって」
「「……」」
どうしよう。
やばい。やばいわよ。駒王町を管理することだけを考えていたせいで『生徒の保護』については何も考えていなかった!
本来なら駒王町の管理者でしかない私たちが生徒を守護する必要は、ない。
だけど私は駒王町の管理者にして駒王学園の生徒会長。なればこそ生徒を護る義務がある。
いえ、正確には生徒会長だからと言って生徒の安全に配慮する必要はない。だってそれは本来教員の仕事ですもの。
だけど相手が私たちを標的としているテロリストとなれば話は別。無関係の生徒が私たちのせいで事件に巻き込まれることは絶対に避けなければならないわよね。
あぁ。もしかしたら『旅行に行った生徒の護衛』っていう名目があったからこそ、去年私たちが京都に行っても『職務放棄』とは見なされなかったのかもしれないわ。
って言うか確実にそうよ。
……なら今回も向こうに人員を派遣しないわけにはいかない、か。
「言いたいことはわかりました。匙の懸念は尤もだと私も思います」
本当にね。よくぞ指摘してくれたわ!
「それじゃあ?」
「えぇ。とりあえず匙たち二年生は旅行に同行してください。あとは……」
どうしようかしら。私の代わりに現場の指揮を執らせるとしたら椿姫を派遣するべきよね?
口実としては『生徒会の副会長だから』じゃさすがに不自然か。なら椿姫は学生としてではなく私の代理として派遣しましょう。こっちには影武者がいれば良いわよね。実際日本地獄に行っていたときはそれで問題なかったし。
「ねぇソーナ」
「ん? どうしたの?」
椿姫も何か良案を思い付いたのかしら?
「いえね。私の代わりにヨシコ=サンを派遣したらどうかなって思って」
「ヨシコ=サンを?」
彼女は学生じゃないから、私たちが普段学園で勉強(周囲からすれば遊びだけど)している間も巡回業務に当たってもらっているわ。
だから彼女の代わりに巡回をしてくれるヒトを実家から派遣してもらえば、彼女がフリーになると言えばフリーになるんだけど、問題は何故そこまでして彼女を派遣するのかって話よね。
「えぇ。本来であればソーナが動けない場合は女王である私が代理として別動隊を指揮するべきよね?」
「うん。そうね」
それはその通り。ときには王の代理となるのが女王の務めだからね。
……グレモリーの女王? 何のことかわからないわ。
「だけど私の能力って防御には向いているけど、護衛には向いていないじゃない?」
「あぁ、確かに」
それもその通り。
もう少し習熟すれば違うかもしれないけど、少なくとも今の時点では椿姫の神器は範囲も対象も絞れないものね。抵抗力のない一般の生徒には毒にしかならないわ。
「守ろうとした生徒の精神を汚染したり破壊したら護衛の意味がないでしょ?」
「うん」
そりゃそうよ。一切否定できないわ。
「その点ヨシコ=サンの神器は応用が効くじゃない?」
「まぁ、ね」
何しろカンザシ・オセ様謹製の逸品だからね!
「それにヨシコ=サンは神器だけじゃなく、兵士としても視野が広いわ。たぶんだけど護衛任務の経験とかもあると思うの」
「ふむ」
確かに私の眷族の中では彼女が一番経験豊富よね。それにエクソシストなら一般人を悪魔や堕天使から護りながら戦うってケースもあったでしょうから、その点も問題はない。
問題があるとしたら『やり過ぎる』可能性があるってことかしら?
「……二つ名は『破壊魔』だったけど?」
その辺はどう考えているのかしら?
「破壊すらできないでテロリストに負けるよりはマシよ」
「ごもっとも」
正解。壊したら直せばいいだけ。それこそリアスがやったように、ね。
いや、証拠隠滅はしないしさせないけどさ。
「それに、シトリー家の力を借りるのは仕方がないにしても、借りすぎはよくないと思うの。あぁ、意地とかそういうのじゃないわよ?」
「それは……わかっているつもり」
ようは程度の問題。
今の私が実家の力やオセ家の助力がなければまともに管理できない若僧だってことは紛れもない事実だけど、全部が全部実家やオセ家に頼るのならば私がここにいる意味がない。
でもね。オセ家の方々がどう思っているかはわからないけど、少なくとも実家は私の成長を望んでいるのよ。
だからこそ私はここで学ぶことをやめるつもりはないわ。
むしろ『使えるものは使う。頼るところは頼る。だけど依存はしない』っていう、貴族として、人を使う立場としてのスタンスを学び、貫くのよ。
……間違っていたらシロネ様が折檻してでも止めにくるでしょうし。
「つまり、今の私たちには椿姫とヨシコ=サンの二人を京都に送り込むだけの余裕はない。それを踏まえた上で椿姫は自分ではなくヨシコ=サンを向こうに送って、私の代わりに眷族の指揮を執らせるのが一番良いって考えたのね?」
「えぇ。そうよ」
なるほどなー。うん。これは椿姫による責任の放棄ではなく、適材適所を実践した結果。
それに、ヨシコ=サンを新参者扱いせず、フラットな視点から正しい評価を下した椿姫の判断は尊重すべきよね。
よし。
「聞いたわね? 修学旅行中はヨシコ=サンに私の代わりとして指揮を執ってもらいます。異論はあるかしら?」
「ありません!」
「結構。他のみんなにも伝えておいて頂戴」
「サー!イエッサー!」
これでよし、と。
「あ、ソーナ。修学旅行で思い出したんだけどさ」
「なに?」
「リアス様のところの眷族はどうなるの?」
「え?」
どうって、何が?
「具体的には兵藤一誠とアーシアさん」
え、いや、だって。
「兵藤一誠は教育中だし、アーシアさんは、あれよ。自衛もできない眷族を一人で出したりはしないでしょ?」
いくら身内贔屓と公私混同に定評のあるリアスだって、まさか、そんな、ねぇ?
「ソーナ。考えたくない気持ちはわかるけど、冷静に考えましょう? リアス様が『学生時代の思い出』を優先する可能性は皆無じゃないわ。それに」
「そ、それに?」
「兵藤一誠が自宅に帰りたがる可能性もあるわ。もしも彼がそれを望んだ場合、修学旅行は格好の口実になると思わない?」
「……確かに」
家族にはお得意の催眠をかけて誤魔化しているみたいだけど、兵藤一誠自身が帰宅を望む可能性は確かにあるわよね。そして兵藤一誠が望んだことをリアスが却下するとは思えない。
「それと護衛に関してだけど、それも問題ないと思う」
「……なにかあったかしら?」
サーゼクス様が動けない今、グレモリー家に余裕なんてないと思うんだけど。
「忘れたの? 現在駒王町にはリアス様の護衛兼教育係として、アザゼル総督がいるわ」
「アザゼル総督? 確かに彼はサーゼクス様とそういう契約を結んだらしいけど、さすがに今の状況で旅行なんていかないでしょ? むしろ止めるんじゃない?」
術式の研究だってあるでしょうし。
「普通ならそうよね」
「普通なら?」
何かあるの?
「アザゼル総督は、先日神使様との会談で京都にいる妖怪勢力と交渉をもつことを認められているわ」
「あ」
そうだった。
「自分から許可を求めてそれが認められたのよ? なら動かないわけにはいかないと思わない?」
「そうよね。それはそうよ」
なにせ、あの場にいたのは神使様だけじゃないんだもの。いえ、神使様だって妖怪勢力からしたら立派な上司なんだけど、さ。
それ以上にやばい方がいたのよね。
あの方々を通じてアポを取っておきながら顔を出さない? ありえないでしょ?
もしもすでにコンタクトを取っていたとしても、駒王学園の教師としての立場もあるわ。ならば修学旅行に同行して顔を出すくらいは当然の礼儀よね?
あれ? その場合って、もしかしたら三大勢力と妖怪勢力の交渉ってことにならない?
だとしたらお姉様も地上にくるわよね? いや、お姉様を相手にするだけなら匙とかヨシコ=サンでも良いとは思うけどさ。それ以外の勢力が関わるとなると……どうしたら良いのかしら?
アーシアさんはまだしも、兵藤一誠は駄目よね? いや、もうそういう段階の話ではないわ。
「「「……」」」
「と、とりあえずアザゼル総督やお姉様に確認してみるわね」
「「よろしくお願いします!」」
くそっ! 二人していい返事しやがってぇ!
確かに現場に出るよりも、こんな感じの面倒な調整こそ上司としての私の仕事なんだけどさ、私の仕事なんだけどさぁっ!
……て言うか椿姫。貴女まさか全部理解した上でヨシコ=サンを差し出したわけじゃないわよね?
原作さぁ。戦争中に修学旅行とか何してんの?
いや、戦争しているって自覚がないにしても、テロリストに狙われているんだからもう少し、ねぇ? ってお話。