転生業務課は本日も大忙しです   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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ちょっと遅刻したけど前回が早かったから許して!



第四話:世界を管理するいう事らしいです②

 前回のエルラドと違いしっかりとした段取りがあることを嬉しく思いながら、イシスが手渡す紙束を受け取る。

「用意した書類は転生課の方へ送らせていただいた物とぉ、変わらない所もあるので適度に飛ばして説明しますねぇ」

「わかりました」

「まずぅ、これから話し合うのはぁ、ケーシさんがぁ、現界(げんかい)に降りてからの行動についてとなりますぅ。ではぁ、渡した書類の1枚目を捲ってください~」

 言われるまま開くと、そこには“転生課の支援が必要な必須事項”と書かれた題字と目録が並んでいた。内容はこうである。

 

 1.勇者の処分

 2.情勢の安定

 3.負の資源(ネガティブリソース)による時空の歪みの除去

 

 《1》の項目については事前に貰っていた資料と変わらないが、《2》と《3》についてはよくわからない。と、言うか《3》に至ってはどう考えても管理課がやるべき仕事に思える。

「1については転生課へ渡しておいた資料と変わらないのでぇ、具体的な内容についてを話しますねぇ」

「お願いします」

 待ってました。

「端的に言いますとぉ、久々津誠一郎(くぐつ せいいちろう)を殺してほしいのですぅ」

「……」

 やはりそうなるか。

 そうであろうと思いながらも、そうであってほしくないと思ってきた事実を突きつけられ、俺は黙って口を固く結んだ。

「でもぉ、ただ殺すだけでは駄目なのですぅ。久々津に悟られる事なく殺さないとダメですぅ」

「暗殺って事ですか…」

「そうですぅ。暗殺してほしいのですぅ。でもぉ、生半可な力だとぉ、勇者を殺せないので、転生課さんの方でなんとかしてほしいのですぅ」

 天界に居る者の殆どは現界で使える力が限られている。だが、その程度の理由だけなら転生課には頼らないだろう。要するに、その暗殺方法に問題があると見える。

「今回ぃ、転生課さんにお願いするのはぁ。勇者の魂を引き抜きと消去(デリート)ぉなのですよぉ。肉体の方は利用価値があるので生かしてください~」

 なるほど転生者の魂への干渉は転生業務課(うち)の特権だ。

 俺は少しだけ安心していた。魂の引き抜きはエルラドで経験済みだし、魂を殺すのだって悪魂(あくこん)と同じ様に書類でちょちょいと処理するだけ。罪悪感も低そうだ。

 思ったより難しいことはないかも。などと呑気な事を思っているとイシスは俺の考えている埒外なこと言った。

「そしてぇ、これが1番重要なのですけどぉ。イカニモナの住民に天界の存在を知られては行けないのですぅ」

「え?」

「イカニモナの管理はぁ、私で二代目なんですけどぉ。先代の管理者様からの方針でぇ、天界からの手出しを悟られないように管理しろと申し送られているのですぅ」

「だから、暗殺…」

 天使の力で強引に近づいてパパっと解決できるかと思ったがそういう訳にもいかなさそうだ。

「はい~。お供としてネフティスを付けますのでぇ、ケーシさんも女性型になっていただいてぇ、勇者の方から誘い入れられるように目立つ行動をしてほしいのですぅ。接触さえできれば後は魂を抜くだけですのでぇ、パパァ―っとお願いしますねぇ」

「……」

「ではぁ、次の―」

「待って待って」

 今さらっと女性型になれとかぬかしませんでしたかね。この幼女。

「女性型はマストですよぉ。ネフティスだけが勇者に呼ばれてもしかたありませんからぁ。それにぃ、女性2人で暴れたほうが目立つと思いますよぉ」

「それは…」

「勇者は気配察知に優れているのでぇ、忍び込むのはかなりリスキーなんですよぉ。なのでバレないようにするためには勇者から招き入れられたほうが良いんですぅ」

「なるほど…」

「納得しましたぁ?ではぁ次の説明に移りますねぇ」

 理屈としては納得できたものの、俺個人としてはあまりあまり納得の行く答えではなかった。確かに天使に厳密な雌雄(しゆう)は無く、姿も変えられる。が、女性になるというのは抵抗がある。

 思うところは多々とあるものの、代案が浮かぶわけでもなく、流されるしかないというのは歯がゆいものだ。

「2つ目のぉ、情勢の安定ですがぁ。これに関してはぁ勇者の暗殺後の話となりますぅ。勇者の勝手で荒れた情勢をある程度でいいので鎮めてください~」

「具体的には何をすれば?」

「えっとぉ、諸国へ勇者が暗殺されたことの通達と、国交及び流通の回復による諸国への謝罪ですねぇ。傀儡となっている王の代わりも探してください~。ちょっと大変そうに感じるかもしれませんがぁ、勇者さえ居なくなればある程度、大胆な行動をしてもバレたりはしないと思うのでぇ、安心してください~」

「わ、わかりました」

「最後に負の資源(ネガティブリソース)による時空の歪みの除去ですねぇ。これは勇者の暗殺に向けて()()()()()()()間にお願いしますぅ。負の資源そのものはこちらで少しずづ対処をしているのですがぁ。細かい歪みまでは探知しきれないのでぇ、現界で情報を集めながら1つずつ潰してください~。これはかなり手間で時間もかかると思いますがお願いしますぅ。これで全てですが何か質問等はありますかぁ?」

「(女性型になれって事を除けば)ありません」

「ではぁ。もう少ししたらネフティスが現界へ降りる手続きを終えて戻ってくると思いますのでぇ、しばしお待ちください~」

 現界に降りてからの行動については実際に行動を共にするネフティスと擦り合わせたほうが良いだろう。

 それにしても、女性型への変身か…。

 嫌というわけではないが、中々に考えさせられる。体の変化は強くイメージを持たなければすぐに長瀬啓示(今の姿)に戻ってしまう。何より、ただ女性になるわけではなく、女性になった上で活動しなければならない。

「あ~!伝えるの忘れるところでしたぁ」

「うわお!」

 頭を悩ませているときにいきなり大声で話しかけられて反射的に体がビクッとしてしまった。

「どうされましたか?」

「えっとぉ、久々津誠一郎はぁ貴方と同じ日本人なんですよぉ。なのでぇ、女性型と言っても日本人っぽい姿はぁやめてくださいねぇ」

「あー…。そうですね。わかりました」

 難題が増えた。これでは人気アイドルの姿を借りる作戦が使えない。言われてみれば当然なのだが、相手も日本人なのであればアイドルの姿なんて狩りたら一瞬で日本人だとバレかねない。

 天界の者とバレなかったとしても転生者であると疑われたら要らぬ警戒を生み接触しづらくなってしまう。

 イナンナめ、厄介な仕事を与えやがって。そう心の中で悪態をついたときに思いついた。そうだ。イナンナの姿を借りれば良いや。と。

 イナンナは普段こそ大きな隈にボサ髪の疲れ切ったOLみたいな姿をしているものの、顔立ちはとてもよい。くたびれた姿ですらわかる程の美人だ。今でこそ見慣れたが、初めにあった時は美人すぎて緊張したほどだ。

 また一度だけ見た外向けの正装姿は絶世の美女、まさしく女神と呼ばれるにふさわしい美貌だった。隈隠しのためか多少メイクは厚いのだろうが、それは日頃からよく顔を見ているから気づけたのだろう。

 日本人っぽさは欠片もなく、美人でスタイルも良い。男であれば特殊性癖を持った人でもなければ大体は目で追ってしまいそうな姿。これ以上に適した姿もあるまい。

 幸いにもあの時の姿は目に焼き付いて離れない。普段のくたびれた姿とのギャップも相まって脳裏に深く焼き付いているのだ。

「現界への顕現(けんげん)手続き、終了しました。おまたせして申し訳ありません。啓示さ…ま……?」

 丁度考えがまとまった頃、ネフティスが小走り気味に戻ってきた。先程とは衣装が変わっており、革のローブのようなものを羽織っていた。

 駆け寄ってきたネフティスは何故か俺の名前を疑問形で呼び、前まで来ると唖然とした表情で立ち尽くしてしまった。

「いえ、対して待っていませんので気にしないでください。それより、今回は一緒に現界へ降りて仕事のサポートをしてくださるとお聞きしてます。よろしくお願いしますね」

 俺は立ち上がって握手を求めながら精一杯の(営業)スマイルをネフティスに向けた。

「え、あ。はい。よろしくおねがいします…。その、イナンナ様自らいらっしゃるとは思いませんで、驚いてしまいました」

「イナンナ…?」

 おずおずと言った様子でネフティスが俺の手を取りそう言った。

 俺もイナンナが来るとは聞いていないので(いぶか)しみながらも辺りを見回す。しかし、イナンナの姿はどこにも見えない。

 不思議に思い、目を丸くしているネフティスに問う。

「失礼、私もイナンナが来るとは聞いていません。その話はどちらからお聞きになりましたか?」

「え?っえ?っえぇ??」

 俺の問いにネフティスは訳がわからなそうに俺の顔とイシスの顔を交互に見た。

 そんなネフティスの姿を見てイシスはくすくすと笑い、机から手鏡を取り出すと鏡面を俺に向けてこう言った。

「ネフティスの言っているイナンナは貴方のことですよぉ。ケーシさん」

 と。

 確かに差し出されている鏡に写っているのはイナンナの姿だ。それも外向けにバッチリ決めているやつ。

 本当に綺麗な姿だな。とか考えて居るときに何かが引っかかった。そう、これは鏡である。目の前の鏡に写る顔と目があっているのである。つまり、この顔は、

「俺がイナンナになってる…」

 イナンナの姿で活動しようと考えていたので問題はないのだが、今は特に変身しようとか考えていたわけではないので少し疑問だが、今は都合が良いので深くは考えないことにする。

「ふふっ。本当に気づいてなかったんですねぇ」

「えっ?じゃあ本当に啓示さんなのですか!?」

「はい、啓示は私です」

 ネフティスは目を見開いて俺の姿をじっくりと眺め、眉根を寄せていた。言葉には出されていないが表情からなんとなく何が言いたいかはわかった。

「(なんでそんな姿なんだ)」

 と言ったところだろう。

「イシスさんの条件に合う女性型に思い当たる節がイナンナくらいしか居なかったもので…。もしかしてやりづらいですか?」

 イナンナは天界のNo.2だ。そんな姿で要られたら居心地が悪いと思うかもしれない。平社員が仕事をするときに真隣に専務が居るようなものだろうから。

「い、いえ…そんなことはないのですが…。その、啓示さんって怖いもの知らずなんですね…」

「え?」

「な、なんでもありません!」

 なにやら思っていた答えと違う言葉が返ってきて反射的に聞き返してしまった。

 もしかしなくても、超お偉いさんの姿を勝手に使っているヤバい奴みたいに思われてはしないだろうか。なんとなく周りからの視線もチクチクとしたものから畏怖のようなものに変わっている気がしないでもない。

「えと…。申し訳ないのですが、私は都合にあった他の姿になれそうにないので、このままやらせてください。中身は私ですので、できれば気にしないでいただけると助かります…」

「善処します…」

 これから言葉だけでなく態度も固くなってしまったネフティスと共に現界へ降りることになる。

「ふふふっ、仲良くするんだよネフティス~。いってらっしゃ~い」

「は、はい。行ってきます。お姉さま」

「ケーシさんもぉ、妹の事をよろしくお願いしますねぇ」

「はい。それでは、行ってまいります」

 初めからこんなギクシャクで大丈夫なのかは(はなは)だ疑問ではあるが、少しすればネフティスの方もこの姿に慣れてくれるはずだ。

 今回はエルラドと違い、管理者が協力してくれている。だからそこまで大変ではないだろう。と簡単に考えていた。

 これから待ち受ける過酷な現界での生活なんて微塵(みじん)も考えること無く、俺はネフティスと共に現界、イカニモナへ《転移》した。

 

 

 

…To Be Continued




今回はここまでです。
次回からはイカニモナ編へ突入となります!

ようやく初められるぜ!異世界物語!(天界も異世界だけど!)

そして話が進む速度も早くなると思います。説明パートはもう十分でしょ!とりあえず今は!!


それとこれはお知らせです。
次回の話は試験的に、ウェブ小説らしく改行と空行を多用したものと、現状と同じく小説として書いた形と両方を同時にアップしたいと思っています。
…一応、Twitterのアンケートでは作者の好きに書けって意見を多く(4票)頂いたのですが、次回はとりあえず試験的にということで!

それでは、次回もお楽しみに!
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