転生業務課は本日も大忙しです   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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創まりの軌跡をやってました。
ごめんなさい。反省はしてません。


第五話:如何にもな異世界みたいです②

「それで交易の街へはどうやって行くんだ?」

 いつまでも落ち込んでいては仕方ないので気持ちを強引に切り替えてネフティスへ問いかける。この世界については知らないことだらけなので下手に口を出すより、ネフティスに任せたほうが計画も上手くいくだろう。

「西の門から出てそこからは転移してしまいましょう。座標の調整は私がしますので、転移の力はケーシ様に行使をお願いします」

「わ、わかった」

 前回のエルラドでもレオに座標を指定してもらいながら転移しているので、大丈夫だとは思う。

 少しだけ何故ネフティスが転移の力を使わないのかと思ったが、すぐに理由は思いついた。転生課として制限なく天の力を使える俺と違って、ネフティスはほとんどの力を制限されている状態だ。例え、この世界(イカニモナ)で見れば破格な力を扱えたとしても。

「ここから飛ぶのは駄目なんだっけ?」

「城下には結界のようなものが貼られているようなので天の力を使った転移は悟られる可能性があるかと」

「え」

 そう言われて、目を閉じて意識を研ぎ澄ます真似をしてみるがよくわからなかった。

「慣れれば判るようになりますよ。ひとまず、私が気配遮断の魔法を使いますので西門まで行きましょう」

「わかった」

「本当はサクッと屋根の上を跳びたいところですが、この世界の魔法を使うのは厳しいでしょうから歩いていきましょう」

「ごめんね。助かるよ」

 偵察の際にも使っていたという気配遮断は魔法だったようだ。今回のように天の力を使うわけに行かない現場がこれからも出てくるとしたら、世界に準ずる天の力とは別の不可思議な力。いずれは俺も各世界でその世界にあった力を扱えるようにならなければいけないかもしれないな。

 管理部からイカニモナへ降りた際にも城壁の外から歩いて入ったため街の様子もある程度見ていたが、この街は城下と思えないほど閑散としており、さながらゴーストタウンのようになっている。戦争になるかもしれないということで質素倹約に努め国のために耐えよとお触れが出ているせいだ。

 ネフティスが調べた情報によると、このお触れを出したのは宰相だそうだ。久々津の手から民を守るためだろうというのがネフティスの考察。

 国の中枢がこれでは経済的には大打撃になっているはず。酒池肉林を楽しみたい久々津の意には背いているように思える。どうして久々津は放置してるのだろうか。

「…まもなく城門です。なるべく気配を抑えるようにお願いします」

「了解…」

 石で作られた門を守る衛兵の横をそろりそろりと抜け、忍び歩きのまま衛兵の死角になるところまで移動した所で大きなため息が出た。

「っぷはぁ…。息が詰まるな…」

「あはは、まあ次に通るときは堂々と歩けますから。今回だけですよ」

「だと良いんだがな…。じゃあ跳ぼうか、補助を頼むよ」

「お任せください」

 ネフティスが俺の肩に手を当てて転移先に関係する情報を直接脳へと流してくる。それを頼りに俺は〘転移〙した。

 一瞬だけ視界が白に染まり、次の瞬間には木々に囲まれた大きな街が目の前に現れた。

 街の周りには堀があり、入り口は対面になるように2箇所、門というよりは柵に近い扉が街の出入り口を守っている。とても陳腐(ちんぷ)な言い方だが、まさしくファンタジーな世界に出てくる冒険者の街と言った表現がしっくりと来るような見た目。

「あの街へも気配遮断を使って入るのか?」

「いえ、あの街へは普通に入りましょう。大丈夫です。これでも私はあの街で有名な冒険者なのですよ」

「ネフティスはすでに冒険者登録を済ませているのか」

「ええ、度々歪み散らしに現界へ来るので活動しやすいように。ああ、そうでした。あの街に着いたら私のことは“ティース”とお呼びくださいね」

「ティースだな。わかった」

「それと、そろそろ女性型へ変化をお願いします。…イナンナ様の姿に関しましてはなんとか慣れるように頑張るので」

「うっ…。わ、わかったよ」

 なるべく考えないようにしていたが、ついに来たか。イカニモナについて身を隠した後に、イナンナの姿では緊張すると言うことで元の姿へと戻していたが、結局またイナンナの姿を借りることになるとは。

 俺はイナンナの姿を想像し、それを自分の姿に合わせるような感覚で身体を変化させる。

 数秒とかからずに変わった姿は、先程までより数センチほど目線が低くなり、世界が少しだけ広くなったような錯覚を覚える。

「見事な変化ですね…。イナンナ様そっくりですよ。心臓に悪いくらい…」

「なんかごめんね?」

 少し萎縮(いしゅく)したような様子で引きつった笑顔を見せるネフティスに申し訳なく感じながら自分の身体を見る。

 普段の“長瀬啓示”としての身体よりやや小さいイナンナの身体。その感覚を確かめるように腕を伸ばしたり手を握ったり開いたりしみる。

「うーん。動くと違和感あるなあ」

「あの、それより前に服装に違和感をもってほしいのですが」

「あー、ぶかぶかだもんね」

「そうでは無くてですね?」

「?」

 呆れたようにため息をついてからネフティスは俺の身体を指差した。

「スーツはおかしいと思いませんか?」

「………そうだね」

 あまりにもスーツが身体に馴染みすぎて何も思わなかったが、確かに真っ黒なこの服はこの世界に合わないなんてレベルではないだろう。

「服装も身体を変化させるのと同じように変えられますよ」

「やってみる。ありがとう」

「いえ、ケーシ様は天使に成り立てですし仕方ありませんよ」

「はは…」

 いくら新人とは言えど、先方にフォローしてもらってばかりなのはなんだか複雑な気持ちだ。早く使いこなせなければ。

 その後、服を変化させてみるもののなかなかうまく行かず。最終的にネフティスから「スーツの穴(翼が生えていた所)を無意識のうちに直しているのだからできるはず」と助言を貰い何とか服を変化させることが出来た。

 淡いブラウンのジャケットにタータン柄と呼ばれる模様のついた薄緑のキュロットを合わせたキルトの衣装。初めはスカートだったのだが俺がどうしても受け入れられず、 ネフティスに相談した結果、キュロットスカートと呼ばれる巻きスカートに見えるズボンに落ち着いた。

 それでもやや足元に違和感があるが、スカートよりはマシだ。

 武器を持っていないのも不自然だという事でレイピアの様に細身のスモールソードを腰の左側に下げ、ようやくこの世界でも違和感の少ない見た目になることが出来た。武器を扱ったことがないので戦えるかと問われれば「無理」と即答できる自身があるが。

 ともあれ、少なくとも街に入る分には問題ない。

「左肩が下がってますね」

「仕方ないだろ…。思ったよりも剣が重いんだよ」

「その剣は1kg(キログラム)もないはずですが?」

 確かにネフティスの言うようにこのスモールソードという剣はとても軽い。が、1kg近い重さを腰に釣れば重心がずれてしまうのも仕方ないと思う。

 スモールソードは一応、刃は付いているものの基本的には刺突剣らしい。普通の剣術すら出来ないのに刺突剣なんか下げてどうるんだと思わないこともないが、どうせ飾りなので気にするだけ無駄である。

「そういえば俺…じゃなくて、私の名前はどうしますか?ケーシ様のままなのは(いささ)か違和感があるかと思うのですが」

「そうですね…。というかどうして急に敬語に?」

「一人称を私にするときは自然とそうなると良いますか、癖みたいなものですよ」

「…まあ良いですけど」

 少し不満げながらもネフティスは納得してくれた。別に普通に話せないこともないのだが、取引先と話している感覚で居たほうが言葉にボロが出ないと思ったのでありがたい。普通に話しているとなにかの拍子に“俺”と言ってしまいそうだし。何より敬語なら女言葉である必要もないし。

「名前ですが『イエナ』とかどうですか?とある世界の“示す”という言葉から取ったんですが」

「私の名前の『啓示(けいし)』から連想したのですね。とてもいいと思います」

「ではそれで。そうそう、私達は姉妹という事にするつもりですのでご了承願います」

「わかりました。頑張って妹を演じますね」

「え…」

「え?」

 敬語キャラは妹のイメージだったのだが、俺を見るネフティスの目は「何言ってるのこの人」と物語っていた。つまり俺をお姉ちゃんにするつもりなんだろう。もういいさ、乗りかかった船だ。

 せめて姉妹とわかりやすいようにネフティスには敬語を止めるようにとお願いした。敬語で話し合う姉妹とか違和感しかないからな。それと、どうせ俺がお姉ちゃんになるならばイシスに話すように喋ってもらったほうが姉妹館も出るだろう。

「それでティース?街での予定はどうするのですか?」

 街へ入る門の目前まで来た所で俺はネフティスに今後の計画の確認をした。

「まずは冒険者ギルドでイエナの冒険者登録をしま…するわよ」

「冒険者登録…」

「その(あと)は、一党(いっとう)を組めば私と同じランクまで依頼を受けらるから、高ランクの依頼(クエスト)をこなして悪目立ちするの。大丈夫よ。イエナならどんな魔物でも楽勝だから」

「あの、私は武術経験なんて皆無ですよ?」

「天界と変わらない力を自在に使えるのに現界で死ぬわけないでしょ…。それどころか傷をつけることすら出来ないと思うわ。天の鎧があるのだから」

 そう言えば天の鎧は天の力か同等レベルの力じゃないと打ち砕けないのだったか、異世界チートも真っ青な性能だな。天の力があれば冒険者で高ランクになるのも余裕って訳か。まさにオレツエーだな。

 今更だけど、目立つことが目的だからとはいえ計画が雑すぎる。どんな依頼があるかわからない以上仕方ないのかもしれないけど、ほら、活動拠点とかさ。

「街では基本的に宿酒場で部屋を取って活動するつもりよ。イエナには悪いけれど同じ部屋で過ごしてもらうからそのつもりで居てね」

「うぇ!?ちょ、ちょっとそれは聞いていませんよ!」

「今は女同士、なんなら姉妹なのだから気にすることないわ。むしろ部屋を分けるほうがおかしいと思わないかしら?」

「それは、そうですけど…」

 今更だけどこの姿(イナンナの身体)で過ごすと言うことは裸を見ることになるのか。いや、風呂の時は元の姿になればいいだけ、勝手に姿を借りておいて裸を見るなんて最低なことはしない。しちゃいけない。

「さ、門を潜るわよ。覚悟は良い?」

「ええ、行きましょう」

 先を行くネフティスを追うように門の外に立つ門番へと近づく。

 ネフティスは手慣れた様子で門番と話しをして、俺に簡易入門書なる木札を発行してくれた。冒険者ギルドで冒険者カードを作るまではこれが無いと街の出入りは出来ないそうだ。

 また、何か問題を起こせば簡易入門書はすぐに剥奪されるとの說明も受けた。

「ティースのお姉さんなら心配は無いだろうがな。はっはっは」

 なんて言っていたけれども。

 特にこともなく門を抜けた俺達を待ち受けていたのは城下町とも違う、まるでおとぎ話に出てくる国のような煉瓦と木造の家々が並んでいた。

 

 

 

To Be Continued




ネフティスとの二人旅です。ヒロイン…ではないですが、やっぱ女の子ってほしいじゃん?
啓示はイナンナの姿を借りてるので女の子が2人居ますね!実質百合じゃね?

ネフティスの「ティース」は良いとして、啓示の「イエナ」は本当に悩みました。
ちなみにアラビア語で“示す”のことをタバィヤナンみたいな発音するっぽいです。グーグル先生頼りなので当てにしないでください。

偽名なんてなんでも良いんだよ!(暴論)


それでは、次回『異世界チート無双』お楽しみに。
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