転生業務課は本日も大忙しです   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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戦闘に入るまで書こうと思ったんだけど、文字数が4000超えたんで一旦切りました。


第五話:如何にもな異世界みたいです③

 遠目から見たときも思ったが、カラフルかつ統一感のある木造建築の町並みはとても趣があり、門をくぐって目の前に広がる商店街と思われる建物たちは昔、旅行雑誌でみたノルウェーのブリッゲンの街のようだ。

 交易の街というだけあって商店街はとても賑わっており、様々な店舗や露天が軒を連ねている。

 至る所から美味しそうな食べ物の匂いがして俺の腹をグーっと鳴らした。

「イエナ、姉…さん。えと、…ギルドに行くまえに、お腹すいたなら腹ごしらえしま、する?」

 俺の様子をみてネフティスがしどろもどろになりながらもそう言ってくれた。これでも俺は彼女から見たら上級幹部並の相手に当たるらしいので仕方ないだろうが、俺としては早く慣れてくれとしか言えない。

「美味しいものが食べたい!私はお腹が空きました!」

「ふふっ。それなら私の知るとっておきのお店に連れて行ってあげ、ますね。お昼時なので混んでいるかもだけど」

 やったぜ。

 エルドラでは何故かイギリスの郷土料理しか食べなかったので異世界特有の料理にはとても興味がある。

 …今度エルドラに行ったらウインスにエルフの郷土料理とか作ってもらおうかしら。ヘンリーには悪いけれどスターゲイジーパイは要らない(鋼の意志)

 ネフティスの案内で訪れた店は大通り沿いにあり、看板にはでっかく“酒場トラード”と書かれていた。トラードというのはイカニモナで交易を指す言葉だそうだ。まさに交易の街らしい名前だな。

 店内はネフティスの言っていたように繁盛しており、席はカウンターくらいしか空いてなかった。

 特に店員の案内などがあるわけでもなく、ネフティスはカウンター席へと腰掛けたので俺も習って隣に座る。

「よぉ、ティース!久々じゃねーか!えらいべっぴんを連れてんな。誰よ」

 俺達が座るとカウンターの奥で忙しそうに料理を作る大柄な男がこちらをチラと見て言った。

「やっほ、私の姉さんでイエナっていうんだ。ギルドに登録させようと思って連れてきたんだ。しばらくは滞在するつもりだから親父もよろしく頼むよ」

「任されよ!ティースの姉さんって事は強いんだろ?」

「私なんか比にならないくらい強いよ」

 え?

「お前さんより強いってもうそれ人間じゃねーだろ」

「そうかもな。とりあえず、私達、腹減ったから適当にランチ作ってくれ。エールは無しでいい」

「あいよっ!ちょーっと待ってな!」

 親父さんが豪快に笑いながら鍋を操る。俺は乾いた笑いで流すしかなかった。

 そりゃまあ、人間じゃないし?というか、俺がネフティスより強いとかホラはやめていただきたい。エルドラでヘンリーと戦った時に理解したけれど、どんだけ天の力と言うとてつもない力を使えようが、使いこなせなければ意味がない。

 ヘンリーと同じ様に天の力を使えるであろう久々津と正面からぶつかったら勝てるかわからない。また物理的に首が跳ぶのは嫌だ。あの表現のし難い恐怖は思い出しただけでも冷や汗が出るってもんだ。

 料理を待つ間、俺は念話を使ってイナンナに現況とこれからの予定を伝えることにした。

『長瀬です。今大丈夫ですか?』

 もしかしたらまだブーティカの相手をしていたりで忙しいかと思ったが、返事はすぐに来た。

『大丈夫よ。どうかした?』

『ちょっと報告が―』

 久々津の事、イカニモナの状況をさらっと説明して、これからの予定を伝える。イナンナは俺の話を一通り聞き終えると、

『なんか面白いことになっているわね』

 そういった。

『勝手に姿を借りてしまってすいません』

『別に良いわよ。変なことするわけじゃないなら好きにしなさい。そういえば、その姿なら女湯で堂々と覗けるわよ』

『しませんよ!風呂の時は元の姿に戻りますから安心してください!』

『そうなの?私は気にしないわよ』

『俺は気にしますから…』

『意外と小心ね。まあいいわ。こっちは大丈夫だから向こうに合わせてゆっくりやってらっしゃい』

『はぁ、わかりました』

 茶化すような言葉をかけられ、俺がため息交じりに返事を返すと、先ほどと打って変わって真面目な声色で、

『仕事のためなら私は本当に気にしないから、必要ならその姿を有効活用しなさい。そのためならばその身体を傷つけても、(はずかし)めを受けても構わないわ』

 そう言った。

『姿を変えているだけで心は長瀬君自身に変わりはないから、痛いのは長瀬君だけどね。まあ、頑張ってみて♪』

『は、はい』

 真剣な口調に柄にもなく緊張してしまった。普段は疲れ切っただるそうな声のくせに、こういうギャップはずるいよな。

「百面相なんかしてどうしたんですか?」

 どうやらイナンナと念話で話している間に表情が変わっていたのかネフティスが耳打ちで話しかけてきた。

 念話で表情が変わってしまうのは直さねばならないなと思いながら口に手を当てて表情を戻し、周りに聞こえないように小声でイナンナへ報告をしていた旨を伝えた。

「ふーん…。どこでも気軽に念話が使えるんだ…」

「え?」

「私達みたいな一般の神や天使は現界(げんかい)だと力が大幅に制限されるのは知っていますよね?」

「そう聞いているね」

「例えばですね。現界と、その現界の管理部で念話を繋ぐことは出来ますが、他部署に居る相手には神器(しんき)を使わなければ念話も出来ません。念話1つ取っても能力の制限がどれだけのものかおわかりいただけるかと」

 つまり媒体も無しに好きなだけ念話出来るのは転生課に所属しているものの特権ということか。

「私より強いと言っていたのを冗談かなにかと思われているようですが、本気ですよ。久々津が本気を出せばわかりませんが、基本的にこの世界でケーシ様を害することの出来る者は居ないでしょう」

「天の力の衣、か」

「そうです。ケーシ様の制御を上回る力をぶつけられればわかりませんが、いくら天の力を使える勇者でも余程の鍛錬を積まなければケーシ様の天の衣を打ち破れないはずです」

 思っていたよりも自分の存在がチートめいていて俺は「ははは…」と苦笑を漏らすしかなかった。

 そして俺の中でヘンリーの株がストップ高に達した。今の話から察するにヘンリーは勇者の力に驕らず誠心誠意、世界(エルラド)に尽くし、力を付けたからあんなに強いのだろう。

 …そんな言い訳した所で俺が弱いのに変わりはないが。ヘンリーが強いのはそうなんだろうけど、それ以上に俺が力を使いこなせていないのもあるはずだ。

 それにしても今の話が本当ならば本格的にチートなんだな。転生課って。

 俺は心の中でイナンナへの感謝を述べた。こんなチートな身体に生まれ変わらせてくれてありがとう。と。後、出来ればもう少し仕事の負担を減らして欲しいと。

「またせたな。ほれ、トラード特製ランチ2人前お待ち!」

 そうしてるうちに料理が完成したらしく、親父さんが俺とネフティスの前に大きなランチプレートに乗った料理をドンと置いた。

「おー!これはっ!」

 まさしくマンガ肉!

 細い骨に肉が付き、ボリューミーかつ食べやすそうなサイズ。それが2つと、イモの様なものにパンが乗せられていた。

 マンガ肉からはジュージーな肉汁が垂れており、イモとパンがそれを吸っている。見るだけで美味しそう。

『ケーシ様。今の姿のままがっついたりしないように気をつけてくださいね』

『うっ…そ、そうだね』

 よだれを垂らしそうになっている俺にネフティスが念話を使って注意する。今すぐかぶり付きたいがここは上品にナイフとフォークで食べるべきか。とってもかぶり付きたくなる見た目なのに残念だ。

 俺は慎重にナイフで肉を削ぎ落とし、口へと運ぶ。すると肉はホロッと崩れて口の中に広がった。どうやら肉を細かく切って貼り付けるようにして作られているらしい。ケバブみたいなものなのかな。

 肉は1種類ではなくいくつかのものが混ざっているらしく、柔らかいものもあれば、少し歯ごたえのあるものもあった。

 次はパンに乗せてみる。口に入れると、パンからじゅわっと染み込んだ肉汁が溢れ出る。少々硬いパンではあるが肉と一緒ならば気にならないくらいだ。

 タレに付けられているようだが、感じたことのない風味がする。独特のスパイスが効いたタレが肉に染み込んでいてとにかく美味い。この姿でなければ今すぐにでもかぶり付きたい。

「うまいか?」

「とっても!」

「そりゃあ良かった!」

 親父さんは料理を作る手を止めずにこちらを見て、にっこりと笑ってまた料理に向き直った。

「イエナ姉さん食べるの早いね」

「だってこんなに美味しいんですよ!おかわりしたいくらいです!」

 ネフティスの言葉に食い気味でそう答えると、お皿の上にお肉が1つ追加された。肉をくれた親父さんの方へ顔を向けると、親父さんは照れくさそうに、

「良い食いっぷりだった例だ。食いな!」

「いいんですか!?ありがとうございます!やったっ!」

「ちょっ、姉さん!もう…」

 ネフティスはなにか言いたそうにしていたが俺の顔を見ると諦めたようにため息をついた。

 ごめんよ。男は美味い肉を目の前にすると自制が効かないんだ。

 食事に舌鼓を打ち、一息ついて店を出た俺達はネフティスの案内で当初の目的地である冒険者ギルドへと向かう。ちなみに食事の代金はネフティスが経費として持たされていたお金で払われた。

 俺も自由に使える金がほしいと思ったのでネフティスに通貨を手に入れる手段を聞いた所、これからギルドで高ランククエストをクリアしていけば余るほど手に入るはずだとの事。

 トラードと冒険者ギルドはとても近く、ギルドに着いた俺はすぐさま冒険者登録の手続きを進めることになった。

 書面に自分の登録名と使用する武器、使える魔法の系統などを書き入れる。魔法に関してはネフティスから『天の衣があるので防御魔法とか書いておいたら良いんじゃないですか?』と言われたのでそう書いておいた。

 最後に記入ミスが無いか確認して、更にネフティスにダブルチェックをしてもらった上で書類を受付に提出する。

「はい、確かにお預かりしました」

「登録したばかりですまないんだが、姉さんのランクを早急に上げたいんだ。特別昇級試験をしてくれないか?」

 渡された書類を持ってギルドの奥へ行こうとする受付さんにネフティスがそう問いかけると、受付さんは少しだけ逡巡(しゅんじゅん)した様子を見せたが、すぐに「ギルドマスターへ確認してきます」と言い残してギルドの奥へと消えていった。

 しばらく待っていると、受付さんと一緒に背が高く耳が長い妙齢の人物が出てきた。耳の長さはウインスより少し短いように思えるが、おそらくはエルフだろう。

「ティース!久しぶりね」

「エルファこそ久しぶり」

「特別昇級試験をしろって冒険者が現れたなんて聞いたから誰かと思ったわ。試験を受けるのは隣に居る貴女ね?」

「あ、はい。よろしくおねがいします」

 女性らしく手を前で組むようにして深くお辞儀をする。こういう細かい所でボロを出したくないからな。

「ご丁寧にどうも。私はこの街の冒険者ギルドを取り仕切るギルドマスターのエルファよ。貴女は噂に聞くティースのお姉さんかしら?」

 ネフティスに姉が居ることを知る相手に、姉と名乗っていいか念話でネフティスに確認すると問題ないということだったので、エルファに肯定の意を伝える。

「とーっても礼儀正しいのね。ティースとは大違い!」

「ちょっと失礼じゃない?」

「ふふっ。言っておくけれど、ティースのお姉さんだからといって試験を優遇したりはしないわ。死ぬ気で挑むことね」

 エルファはネフティスの言葉をスルーして俺の肩に手をおいて微笑む。その笑みがとても怖いもののように思えた。

「え、えっと…。試験内容はなんでしょうか…?」

「うちのギルドでNo.1(ナンバーワン)の1等級冒険者、ザコッシュとの一騎打ちよ」

 エルファがそう言うと、ギルドの空気がざわついた。そして同時に先程まで俺に向けられていた奇異の目が哀れみのものに変化する。

 どうやらザコッシュと呼ばれた人物はとても強い相手のようだ。ギルドの等級システムの事はよくわからないけれど、1等級なら最上位と見て間違いないはずだ。

 不安ではあるが、まあ、どんなに強くても天の衣があれば負けはしないだろう。相手は天の力を使えない一般人な訳だし。

「試験は2日後。ギルド裏の訓練場で行うわ。逃げちゃダメよ☆」

 パチンッ!とウインクを飛ばされ、俺はまたしても乾いた笑いを漏らすしかなかった。

 

 

To Be Continued




予定と違って戦闘シーンまで行きませんでしたが、次回こそ本当にチート無双するから!
本当だから!多分!きっと!おそらくね!!
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