転生業務課は本日も大忙しです   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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自分で組んでいるプロットに比べて話の進みがおそすぎる!

……でも進んでいるんだからいつか終わるんや。

というわけで更新です。読んでください。


第六話:チートで無双らしいです②

「姉さん。この宿の女将さんが作る魚のパイは絶品なのよ。夜はそれを食べましょ」

「へ?え、ええ。そうね」

 かなりハッキリとした声で呼びかけられたというのにネフティスはまるで耳に入っていないかのように呼びかけてきた男を無視した。

 俺はと言うとどうしたら良いか一瞬だけ迷ったものの、ネフティスは男を無視してずんずんと宿へ入っていってしまったため、男を一瞥だけして慌てて宿へと続く。

「えっと……。良かったの?」

 宿の扉を閉めてから小声でネフティスに男の事を問いかけると、ネフティスは純粋な眼で、

「何が?」

 そういった。

「な、なんでもないです」

 本格的に男のことを居ない者として扱っているネフティスの笑顔に若干の恐怖を覚えつつ、これ以上の刺激をしないように俺も宿の前に居た男は忘れることに―

「―っだぁ!無視すんなよ!」

 バァン!と大きな音と共に扉が開け放たれた。音に驚いて反射的に振り返ると、そこには先程の男が憤慨した様子で立っていた。

 まあ、そりゃあ目の前で無視されればそうなるよな。

 しかし、やはりネフティスは男の事など意にも介さずに、

「あら……?扉が勝手に。風かしら?ごめんなさいねキチンとしめてなかったみたい」

 などと(のたま)いながら扉に近づくと、扉で男を押し出すように閉じようとした。

「おい!こら!待てって!ちょちょ、腕、腕挟まってるから!痛い!痛ぇんだけど!ちょっと!?」

 男は慌てて宿の中に入り込もうとしてネフティスに腕を挟まれてしまった。ネフティスはというと「あら……おかしいわね。何かが引っかかって扉が閉じないわ」とか言いながら尚も無理やり扉を閉めようとしているので流石にストップをかけた。

 これ以上は男に怪我を負わせかねない。

 俺がネフティスの肩に手をおいて止めるように伝えるとネフティスは男に向かってわかりやすく舌打ちをしてから扉から手を話した。

 ネフティスの反応から察するに、この男が明日、俺が戦わなくてはならない“ザコッシュ”とか言われていた冒険者なのだろう。

「いってぇ……。腕が千切れるかと思ったぜ……」

「そのまま千切れれば良かったのに」

「他人事みたいに言ってるけど千切れそうになった原因はお前だよ!?」

 それにしてもここまでネフティスが嫌悪するなんて、一体どれだけ深い因縁があるのやら。

 それから俺は事あるごとに噛みつこうとするネフティスを(なだ)めながら、宿の女将さんに騒ぎのことを謝罪してついでに食事のこともお願いした。そして次に男の方にも謝罪をしてエールを1杯奢る事で許してもらった。

 男は単純だから美人に謝られたら無条件で許してしまうものだ。うむ。わかるぞ。俺も初めてイナンナに会った時、地雷臭を感じつづも働くことを選んでしまったからな。

 今日、街を練り歩いた時も思ったけど、美人ってのはそれだけで得なのだ。

「先程は妹のティースがご迷惑をおかけしてごめんなさい。私はティースの姉の……イエナと申します。そのお腕の方は本当に大丈夫でしょうか?」

「あ、いえ。だ、大丈夫です!俺、頑丈なのが取り柄なので!お、俺はザコッシュって言います!」

 やはりこの男がザコッシュだったか。

「鼻の下伸ばしちゃって、私の姉さんに手を出したらアンタのポークビッツ切り落とすからね」

「相変わらず怖ぇ女だな……。別に変な事はしねえよ」

 ネフティスの言葉にザコッシュが身震いした。そして俺も密かに下腹部にキュッとした感覚を覚えていた。そうなのである。こんな(イナンナの)姿ではあるが下は付いたままなのだ。姿を真似るくらいはできても完全な女体化まではまだできないのだ。

 というかネフティスさん随分と恐ろしいことをサラッと言いますね……。

「で、アンタは何しに来たわけ?」

「何しにとは御挨拶じゃねぇか。俺はお前の言い出した特別昇級試験のせいで受けていた依頼(クエスト)を急いで片付けて戻ってくるはめになったんだぜ?」

「あっそ。急いで疲れてるなら好都合ね。さっさと姉さんにみっともなくやられてさっさと醜態(しゅうたい)(さら)すといいわ。みんなもまさか1等級冒険者様ともあろう者が初心者冒険者にやられるなんて思わないでしょうね」

 しかし、ネフティスはなぜこんなにもザコッシュのことを嫌っているのだろうか。見ている限りでは人も悪くなさそうだ。それに行儀も良い。女将さんが淡々と運んできた料理と酒にお礼も言っていたし、食べ方もきれい。育ちが良いのかもしれない。

「はん。俺の速さについて来れる奴なんて居ねぇよ。忘れたならまた思い出させてやろうか?」

「早いだけのアンタに姉さんの防郭(ぼうかく)は抜けないわ」

「ほーう?そうなのか?」

 だからネフティスさん。私怨に俺を巻き込むのやめていただけませんかね…。

 俺は心の中でため息をついてからも表情には決して出さないように気をつけてから笑顔で、

「さあ、どうでしょう?」

 とはぐらかした。下手に答えてしまうと実力を見抜かれかねないからね。

 俺の答えにザコッシュは少しだけ目を細めて、そしてニヤっと笑った。どういう意味の笑みかはわからないが、なんとなく(あざけ)られたような気がする。

「どれほどの防郭を使うのか知りませんが、守りに徹するだけじゃ俺には勝てませんよ?」

「……勝てなくても負けなければ良いのです」

「ほう、大した自信だ。明日が今から楽しみですよ」

 口調こそ穏やかなものだったが、今度の笑みと口ぶりから明らかにこちらを挑発していた。

 どういう訳かは解らないが、先程までのやり取りから察するにどうやらザコッシュはネフティスより強いらしい。そして既に俺より強いつもりなのだろう。

 いや、その通りなんだけど。

 挑発して俺のやる気を出させるつもりなのだろうが、俺は自分が弱いことを痛いほど理解しているし。こいつのスピードを捉えられるとも思わない。

 当然だ。俺は昨日のワイバーンですら尻尾の動きとか見えていなかったのだから。爆発の推進力を利用して人間離れした速さで動き回る奴なんて見えるはずがないだろう。

「精々、俺を楽しませてくれよな」

「善処しましょう」

 ザコッシュはニカっと笑うと、手に持ったエールを一気に煽ってから金を机に置いて「俺の奢りだ」と言い残して宿から出ていった。宿は取っておらず、ギルドで寝泊まりするそうだ。

 ちなみに置いていかれたお金は3人分の食事代を払っても尚余るほどだった。

「っち……。1等級なら金貨くらいポンと置いていけよ」

 ネフティスさん。そういう毒は内に秘めてもらえませんかね。昨夜の出来事が胡蝶(こちょう)(ゆめ)だったんじゃないかと思えてきちゃうだろ!

 それからお酒を飲みつつイライラした様子のネフティスが落ち着くのを待ってから、部屋に戻り明日の対策を立てることにした。

 具体的にはどうやってザコッシュに攻撃を当てるかについて。防御面に関しては天の衣を貫けるわけないとネフティスが断言したので議論が始まる前から終わっている。

「攻撃を当てるのなんてケーシ様が天使の力を使いこなせれば余裕だと思いますけどねぇ。なんなら時間圧縮したっていいでしょうし」

「そんな簡単に言われても……」

「実際、簡単なはずなんですよ。天使は生命の樹(セフィロート)を介して知識と力を授けられているんですから。本来は赤子が息をするように力が使えるはずなんです。元の姿に引っ張られ過ぎなのでは?」

 前にもそんなことを言われた気がするけれど、俺の常識は地球で生まれ育てられた物なのだから仕方ないと思うんだ。大体、目に見えない不確かな力をどう知覚しろというのか。

「そういう意識が問題なのでは?」

「あの、天界の住民は読心が基本能力なんすか?」

「?」

「ナンデモナイデス」

 思わず口をついて出た言葉にネフティスは「何言ってんだこいつ」みたいな顔をした。

 イナンナといい、イザナミといい。どうして考えを読んでくるのか。そんなに考えが読みやすいのか?

 まあ、ネフティスの言わんとする事もわかる。自分でも人間でなはいという事の本質を理解しきれてない感覚はあるのだ。その気になればイスラのような力を使えるはずなのに俺の意識が邪魔してるようなそんな感覚が。

「……なんかもう考えるの面倒くさいんで、とりあえず明日は強く当たって後は流れでお願いしますね」

「雑に丸投げしないでよ……」

「あのですね。こう言ってはなんですが、今のケーシ様にどんな作戦を立てたところで無駄だと思うんです。まともに使えるのは翼に頼った飛行とよく見知った特定の相手への変身だけですよね。転移は座標補佐があってようやく使える。天の衣は天界に生きるものとして勝手に機能しているに過ぎないのですから」

「ぐうの音も出ないです……」

「であれば、もう細かいことは考えずに天の衣一点に頼れば良いと思うんです。ザコッシュはかなりの実力者です。が、それはあくまでもイカニモナにおけるもの。天の力が使えるわけではありませんから、ケーシ様の天の衣は私共で作った聖剣でも使われない限り破られないでしょう」

「待て待て待て、それは盛大なフラグじゃないのか」

 聖剣を持ち出されたら天の衣が破られる恐れがあるとか嫌な予感しかしない。もしも、本当にこれがフラグになったら―

「フラグというか、実際にザコッシュはアパラジタと呼ばれる聖剣を持っていますよ」

「駄目じゃん!」

「あー、心配は要らないかと。試験で使われるのはギルドで用意する安全処置の施された武器なので」

「聖剣を持っていても使われるわけではないのね」

 それを聞いて少しだけ安心した。すくなくともやられてしまう心配は要らなくなったのだから。別に勝たなければならない訳ではないし、これはもう実質勝ちですね。

 ……などと浮かれていられるはずもなく、俺は明日の戦いへの不安でいっぱいだった。

 喧嘩すらろくにしたことのない俺からすれば武器を扱うと言うだけで怖い。ヘンリーと対峙したときに初めて知った殺気というもの、あの時は俺がブーティカの刺客ではないとすぐに理解してくれたヘンリーが剣を収めてくれたが、今回の試験は俺も剣を持ち相手と戦うために対峙しなければならない。

 一応、ワイバーンと戦う前に腰に下げてるスモールソードの使い方をネフティスに手ほどきしてもらったが、ド素人の付け焼刃など全く当てにはならないだろう。

 そんなこんなで不安だらけな俺はまたしてもネフティスの腕に抱かれながら眠りについた。おかげで起きたときの気分は最悪だった。女性慣れしてないこともあり寝起きにネフティスの寝息が髪に触れる感覚で一気に動悸(どうき)が激しくなり、おまけに寝たままがっちりと俺の頭をホールドしており、昨日はワイバーンショックのためか気にならなかったがネフティスからはなんか良い匂いまでする。

 無理に腕から逃れようとしたら胸に顔をこする事になりそうで動くに動けず、俺はネフティスが目を覚ますまで部屋中に響いてるのではと思うほどに激しく大きな音を立てる自分の鼓動よりもハッキリと聞こえてしまうネフティスの寝息と匂いにドギマギしながら、反応してしまっているマイサンに「静まれ、静まれ」と念を送りながら過ごした。

 おかげで解放される頃には心身ともに疲れ切ってしまっていた。心なしか2徹した時よりも疲労感が強い気すらする。

 それでも試験から逃げられるわけでもなく、俺は疲労感を感じながら準備をしてギルドへと向かう。ネフティスはというと、まだ寝ぼけていて女将さんが世話をしてくれているはずだ。本当は不安なので一緒に来てほしかったが、起きるのを待っていると約束の昼前に着けそうもなかったので仕方がない。

 社会人たるもの5分前には目的地についておかねば。この世界に日時計と水時計しかないから5分前とかわからないけどね!

 ギルドに着くと、一昨日とは比べ物にならないほどの人が集まっていた。どうやら皆、俺の特別昇級試験の様子を見に来たらしい。それを知った俺は顔が引きつりそうになった。

 ギャラリーが居るとか聞いて無い!そう叫びたい気持ちを抑えて、俺は受付カウンターの側に居るザコッシュへ近づく。

「こ、こんにちは!い、いやよく逃げずに来ましたね!」

 ザコッシュはやたらとでかい声で、ややどもりながら挨拶をしてきた。

「あら、ザコッシュさん。こんにちは。本日は、よろしくおねがいします」

「こちらこそ!試験は全力で来てください!不肖(ふしょう)ながら1等級冒険者ザコッシュ・ヨワギス、胸をお貸しします!」

 テンション高いな―この人。そう思った。

「そういえばティースのやつはどうしたんですか?」

「あの子はお寝坊さんなので……。もう少ししたら来ると思うんですけど」

 ザコッシュに聞かれてそう答えると、ギルドの中には「ああ、なるほど」と言った感じの空気が流れた。どうやらネフティスの朝の弱さは周知の事実らしい。

「ティースの事、待つ?」

 ギルド長のエルファが気遣ってそう言ってくれたのだが、ギャラリーがこれだけ居る中で試験の当人ではないティースを待つために予定を遅らせるのは気がひけるのでティースを待たずに試験を開始することにした。

 ギルドが用意した武器の中から、腰に下げているものに近いスモールソード風の模造剣を手に取りギルドの裏手に広がっていた訓練場でザコッシュと相対して立つ。

 さあ、試験開始だ。

 

 

 

 

To Be Continued





本来の予定としてはザコッシュとの戦闘が終わるくらいまで書くつもりでした。
なーんか進みおせぇよなぁ?
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