転生業務課は本日も大忙しです 作:通りすがりのめいりん君@すきょあ
という訳で続きです。
脚がおぼつかないまま宿に付いた俺は倒れ込むようにベッドへと座る。
ネフティスに起こされてからというもの身体が重たく、今も油断したらベッドに沈み込んでしまうのではないかと思うほどにダル重い。
そもそもいつの間に試験が終わったのか。気づいたら試験は終わっていたしザコッシュは倒れてるし。
帰りすがら軽く聞いた感じだと、試験は中止でザコッシュが倒れていたのはエルファの仕業らしい。なんでもバトルが白熱しすぎて危険と判断されたんだとか。
「長瀬様」
「え?」
いきなり天界モードで話されて
なんていうか便利ですね。ネフティスさん。
「なんか感心した目をしてますけど、これくらい長瀬様でも余裕で出来るはずなんですけどね」
俺の表情から読んだのかネフティスがそんなことを言ってくる。
「うっ……」
そうは言うけど、天の力なんて―
「いま、『自分は人間だから天の力なんて』とか思いませんでした?」
「うぐぐ……」
「……言わせてもらいますけど、貴方が天の力を使えないのはその意識のせいですよ。使えない訳が無い。それどころか貴方はザドキエルに選ばれるほどの天使。そこら辺に居る神よりも高位な存在だってわかってます?」
「ちょ、ちょっとまってくれ!何の話をしてるんだ!」
ザドキエルだとか高位だとか訳がわからない。そんな話は始めて聞いた。
ネフティスがなんで知らないんだって目で見て来てるけど知らないものは知らな─
「―っ!!?」
この感覚、久々だ。覚えた記憶は無いのに
「そうですね。知らないはずがない。だって貴方は天使なのですから」
「…………………」
思い出した。って言い方もおかしいが、俺は知っていた。ネフティスの言う“ザドキエル”が何であるかも。
ザドキエル。天使第2階位、
他にもどうして“俺が智天使ザドキエルなのか”も理解していた。一度に様々な情報が
頭が破裂しそうだ。知らなかった。ついさっきまでは知らなかったはずなんだ。でも
「思い出しましたか?」
頭を抱え、痛みに
「……あ、ああ」
膨大な情報の奔流に思考を放棄したくなる気持ちを抑えつつ、ゆっくりと顔を上げてネフティスの顔を見る。その顔はティースとしての活発な雰囲気はどこにもなく、初めて天界の管理部で会ったときのようなやや冷たさを感じる事務的な顔になっていた。
「神の、正義……。俺は、天使としての使命を全うしようとしたのか……」
「その通り。貴方は天の力を加減無く使おうとしていた。いえ、エルファの静止が無ければ使っていたでしょう。その結果、ザコッシュがどうなるかは想像に難くない」
「持っていたのが木剣だろうと関係なく、ワイバーンの時みたいにスッパリ斬り捨てていたかもしれない……ね」
いつもの俺であれば人を斬るなんて恐ろしくて出来るわけがない。が、あの時の俺は自分の意思が抜けていた。天使にそんな副作用があるだなんて聞いてない。……とは言っていられない。既に実害が出そうになったのだ。
「貴方は転生課の持つ自由な権限を行使し、“神の正義”を為すことが出来る。あまり認めたくはありませんが、女神の私よりも天界における地位が高いですね」
ネフティスは腕を組んで俺を睨みつけてくる。威圧感にたじろくと今度はフッと笑って、
「ああ、別に疎んでいるわけではないので安心してください。天界じゃあ良くあることですから」
そう言った。
「そ、そうなのか」
俺の相槌にネフティスは短く「ええ」と答えた。それから少しだけ沈黙が生まれ、俺達は小さく笑い合う。
「そういえば長瀬様はイスラフィールと親交があるのでしたね」
「うん」
「もう思い出しているかもしれませんが、彼の天使としての名前は“ラファエル”。その名が表す役割は『神の癒し』です」
言われたことで、また頭の中に情報が浮かんでくる。
イスラはあの見た目からは想像もつかないヒーリング能力の使い手で、精神的な疲れすら回復することが出来る唯一無二の能力で神や天使を癒やすのが彼の使命。
その恩恵を一番受けているのは一切休むこと無く働き続ける転生課のイナンナだ。
俺は頭の中でストンと考えが落ちた。だからイスラはイナンナの舎弟なんだな。と。だが、また別に俺は“ラファエル”と言う名前に引っかかりを覚えた。
イスラフィールと言う名前のせいで今まで気づかなかったが、ラファエルという天使の情報は地球にもある。なんせ聞き覚えがある。もしかしたらイスラは地球に来たことがあるのかもしれないな。
「あの時、恐らくですが長瀬様はイスラフィールに成り切ろうとした結果、自我を捨て天使の本能だけが残ってしまったのかもしれません」
「そんなことがあり得るのか?」
「知りませんよ。人間から天使に成ったケースなんて他に知りませんし。私なりに有りそうな可能性を言ってるだけです」
冷たい氷のような口ぶりでネフティスは言った。
それから、ネフティスの説教が始まった。
長かったし、怒られていた時のことを説明したくないので要約すると、『自我を捨てるな』『天使であることを自覚しろ』『堂々としていろ』といった具合の言葉が多かったと思う。
中でも『人間にしがみつくな』という言葉は俺に深く突き刺さった。
これまでも似たような事は何度か言われていた。イナンナにも、イスラにも。それでも俺はまだ自分をどこかで“人間”だと感じている。今でさえその意識は抜けきらない。
人間としての生はとっくに終わっているのに。明らかに人間ではない技を使っているのに、だ。
「―もう遅いので今日はこれくらいで許してあげます」
「……はい」
「明日からの動きに期待してますね」
「……はい」
いつの間にやら日もとっぷりと暮れていて、それだけ長い時間、説教を食らう。もとい話し合いをしていたんだと驚く。
そして時間の経過を自覚した瞬間にグーっとお腹から音が響いた。
「少し遅くなってしまいましたが、女将さんに頼んで何か作ってもらいましょうか」
「賛成ー!俺、もう腹と背中がくっつきそう……」
お腹を擦りながら、お腹を鳴らす俺を見てネフティスはくすくすと笑う。
そんな風にいつも笑っていてくれれば可愛いんだけどな。さっき説教してたときの凍てつく視線は、うん、怖い……。
とは言え、彼女のことも少しは判った。彼女は真面目だけど硬いわけじゃない。状況を飲み込めるし、俺みたいな使えない上司が急に現れても仕事に影響を出したりしない。
俺が今までに会ったこと無いタイプの人間、じゃなくて女神だ。……あれ、普通だな。
まあ、俺が今まで仕事で関わって来た中にロクな人間はほとんど居なかったけどな。まともに仕事をしないで上から下に流すだけの古狸共、
まともなのは主任くらいだった。もっとも、その主任も仕事が立て込んで1月程帰れなかった際に奥さんと子供に逃げられ、自暴自棄で辞めてしまわれたが。
思い出しただけでも泣けてくる。奥さんと連絡が付かず、1月ぶりに帰った家はもぬけの殻で家具の1つも無くなっていたそうだから。
そういう意味では今の仕事環境はとても良いと思える。仕事量を除けばだが。
さて、話を戻そう。
俺達は飯を食った後、部屋で先程詰めた予定を確認する。
当初の目的通り、俺達はギルドの高等級クエストを片っ端からこなすことで悪目立ちを目指す。ちなみに魔物はこの世界で『魔素』と呼ばれるもので出来ているそうだ。この魔素とは
本来は勇者に倒させることで消し去らねばならない存在だ。
以前にも説明されてたように、俺達のような神や天使といった天界の住人は
どれだけ魔物を倒そうとイカニモナにおける負の資源が減ることはないのだ。
「もし負の資源、えっとこの世界だと魔素だっけ?それが増えすぎるとどうなるんだ?」
そう聞いてみたところ。
「負の資源は、資源を消費して生まれて居るので、負の資源が増え過ぎれば当然資源も減ります。つまり大地は荒廃し、水は腐っていく。いずれは生き物の住むことの出来ない世界になってしまうのです」
との答えを得られた。なんでも世界の資源の総量は、その世界が出来た時点で決まっており以後は増減しないらしい。
では勇者が天の力を使い、資源を持ち込んだ場合はどうなるのか。これは俺の知識に有った。
負の資源は悪魂と同じく地獄の業火のための燃料になる。つまり勇者によって負の資源が天界に持ち込まれるのは天界にとっても都合が良いのだ。
それもあって、勇者が使命をこなさないどころか負の資源を生み出す事は管理する側として大問題なのだ。だから使えない勇者は
ここで実は俺がなぜ“ザドキエル”に選ばれているかも関わってくる。
先程から何度か話に上がっていたザドキエルの表す役割『神の正義』。ネフティスは「そこら辺の神より高位」だと言ったが、正しくは『最高神のブラフ』と『イナンナ』を除く全ての神、天使より高い権限を持つ。である。
ただし、履き違えては行けないのがこれは職務を遂行する上での話で俺が天界における№3という訳ではない。
簡単に言うと、俺が転生課として仕事をする上で文句を言えるのはブラフとイナンナだけってことだ。
今回はイカニモナ管理課の意向に沿って仕事をしているが実は俺が女体化は嫌だと言えば突っぱねられる。勿論そんな
だからといってこんな回りくどい方法じゃなくても良いんじゃないかとは思うけどね。
ネフティスは「魔物と戦っていけば天の力の扱いも慣れてくると思いますよ」なんて言っていたので、ネフティスに教わりながら基本的には俺が倒していくことにする。
俺にとっては天の力もそうだが、それ以上に生き物を傷つける事、血を浴びてしまう事に慣れるのも目的の1つだった。
幸い、自分が血を流すことは恐らく無いと思う。なんせヘンリーに首を刎ねられても血は出なかったし。まあ、そもそも天使の肉体が死んでも天界に
そんな訳で魔物を狩って狩って狩り尽くす事、約1ヶ月(※地球換算)。すっかり街の有名人になった俺達の下に城からの使者を名乗る者が訪ねてきた。
…To Be Continued
ドーモ、読者=サン。作者です。
ここでちょっとしたどうでもいい情報。
実は、今回の後半部分。説明が多かったとは思うのですが、これでも削りました()
説明部分だけで+2000字位になりそうだったのかな…。流石に進行しなさすぎだと思って結構大胆に切りました……。
これが私味なんだよ!多分!
そんな拙い私ですが、これからもどうかよろしくおねがいします!
では、また次回!お楽しみに!!