転生業務課は本日も大忙しです   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

22 / 34
更新ですー。
ちょっと章管理でサブタイを大幅に変えてしまいました。
わかりにくかったら申し訳ありません。


第七話:ザドキエルの役割らしいです

 交易の街から馬車に揺られること1週間程、俺達はようやくセレブダロウの首都リッチダモンに到着しようとしていた。

 馬車に乗るのは生まれてはじめてのことだったが、乗り心地は決して良いものとは言えなかった。

 サスペンション、つまり衝撃吸収機構が無いといえばわかるだろうか。車軸に車輪が付いているだけの簡素な作り。車輪だって木製。山道では車輪の壊れる馬車なんかもあり時間もかかった。

 とは言え、これでも早く着いた方ではあるが。

 ネフティスの助言で一時的に負の資源(ダメージリソース)を近づけないような結界を作り出したのだ。これによって負の資源の塊である魔物は馬車に近づけなくなるため戦いを避けて来られたのである。

 ほんっとずるい能力っすね。

「皆様!間もなくリッチダモンの門を通過します!怪しまれないようお静かにお願いしますよ!」

 御者をしている純白の騎士が中に居る俺達にそういった。

 馬車の中に居るのは俺とネフティス、そして純白の騎士が1人だ。

 程なくして街へ入る門へと辿り着いた俺達の馬車は検閲(けんえつ)を受けるために一時停止した。

「……積荷は?」

「王が招待した交易の街の冒険者姉妹だ」

「ああ、ではこの2人が例の……」

 御者の騎士が衛兵と話している間、俺はやや緊張していた。外を見たいが、あまり見ては怪しまれるかと思いとりあえず正面に居る騎士へと目を向ける。

 騎士は拳を膝の上で握り頭は斜め下、どことなく震えているようにも見える。顔はヘルムで隠れているが、おそらくあの下で目をキョロキョロとさせていることだろう。

 騎士の様子を見て俺は逆に肩の力がフッと抜けた。自分より緊張している者を見て安心したのかもしれない。

 そんな息の詰まる車内でネフティスだけが堂々としていた。

「2人も堂々としてろ。特にお前は悠然(ゆうぜん)と構えていなければ怪しまれるぞ」

 ネフティスが緊張している騎士の男にそう言った直後、馬車のドアがキィっと音を立てて開かれた。

 いきなり聞こえた音に跳ね上がりそうになりながらも、馬車の入り口へ目を向ける。視線の先には衛兵が居て、俺達の様子を舐めるように見ていた。舐めるようにとは言ったが、決していやらしい目では無く少しの異常も逃さぬとという意思を感じる目。

 無言のまましばらく馬車の中を見つめ、やがてドアをパタンと閉じた。

「……もらっていた人相書き通りだ。問題ないだろう」

「では、入っても?」

「……いや、最後に1つ聞きたいことがある」

 御者の騎士が馬を出そうとするところを衛兵が止めた。

「確か貴様らの隊が出た時はパイザ殿が隊を率いていたと記憶しているのだが、パイザ殿はどうした?」

 衛兵の問いに俺と眼の前の騎士がビクンと身体を跳ねさせた。幸いにも音を鳴らさなかったため衛兵は中にいる俺達の様子に気づかなかったようだが、俺は驚きと緊張のあまり、かつて無いほどに高まる鼓動(こどう)が聞こえてしまうのではないかと気が気でなかった。

 御者の騎士がどう答えるのか、バレやしないか、不安が顔に出ては居ないか、思わず振り返りたくなる気持ちを抑え、手をぎゅっと握って待つ。

「パイザ様は交易の街の領主に用があるとかで残られた。3日後に迎えにあがる予定だ」

「……あの街に用だと?」

「俺達に聞いてくれるなよ。内容までは聞いてないのでな」

「そうか、悪かったな引き止めて、行っていいぞ」

「どうも」

 門を抜けしばらく走り門が遠ざかった辺りで俺は詰まっていた息をプハァと吐く。同じように目の前の騎士も息を吐き、それからヘルムを取った。

「どうもこういうのは苦手だ……。窒息(ちっそく)するかと思ったぜ」

 ヘルムの中から出てきたのはザコッシュだ。本来、彼が来る予定は無かったのだが、いざセレブダロウ城へ向かおうというタイミングで現れて『女2人は心配だ』と言って着いてきたのである。

 そのまま馬車に乗せていると怪しまれそうだったので、騎士の中から体格の近かった者を交易の街に残し、代わりに鎧を着て乗ってもらった。

 ちなみに先程、話に出ていたパイザは、あの使者を名乗っていた男の事。

 今は交易の街で残っている騎士の見張りで宿屋に監禁している。

 騎士達の方は隷属の術(れいぞくのじゅつ)をかけられていただけで、解呪したら俺達の味方になってくれた。

 彼らは元々セレブダロウ王の近衛騎士だったそうで、今の城の状況を不審に思い調査していたところがバレて意思の無い人形にされていたようだ。

 あ、解呪したのは俺です。俺。ネフティスがパイザを尋問している間に頑張りました。

 それから騎士達と話し、協力を得たわけだ。内部に協力者がいる状態で入城出来ると言うだけでかなり安心感が違う。

「……この時間から城へは入れさせられないので今日のところは申し訳ありませんが、私の家で過ごしてもらいます」

 御者の騎士がそう言った。

 彼は近衛騎士団の団長だそうで、隷属化の解けた騎士達を取りまとめてくれている。

 城下町は宿ですら戦争の気運を受け営業を止められており、泊まる場所がないらしく俺達は揃って団長さんのお屋敷で世話になることになった。

 俺達を屋敷に降ろした後、団長さんは他の騎士を連れて一度、王城へと向かった。

 戻ってきた団長さんから話を聞いたところ俺達が城下に着いた事と、明日に登城(とじょう)させるまで城下の宿を無理やり開けさせて過ごさせている事にして宰相に伝えてきたそうだ。

 他の騎士達は、自宅を持っている者は帰り他の者は王城にある近衛兵の詰め所へと帰ったらしい。

 食事の前、俺達は団長さんのご厚意で湯浴みまでさせてもらった。ちなみにネフティスと一緒である。言っておくとやましいことは微塵もない。初めは使用人の方が付いてくれることになっていたのだが、俺は变化が完全ではなく身体には男の()()がついている。それを隠すために「姉妹で入らせてほしい」とネフティスから言ってくれたのだ。ふたなりなんて世界の神秘みたいな身体をこの世界の人間に見られるわけにはいかない。

 俺はどうやって隠すかで頭の中がてんやわんやだったので、こういう起点が聞くネフティスは本当に心強く思える。

 まあ、俺のホルスの槍が反応しちゃってなかなか上がれなくなったんだけど。

 一緒に風呂に入るのは初めてという訳では無いのだが、どれだけ見たところで慣れるとは思えない。無理です。童貞には刺激が強すぎます。

 実を言うと一緒に寝るときも度々反応してました。初めは約得だと感じていたのだが、まじで眠れなくなるので一緒に寝るのは止めたかったのだが、どうやらネフティスは誰かに抱きついていないと眠れないらしく、イシスさんに相談した所「申し訳ないのだけれどぉ、ネフティスのぉ抱き枕になってあげてもらえませんかぁ?」と甘い声で頼まれてしまったため受け入れざるを得なかった。

 頼まれると断れない日本人の性よ……。

 一応、私の名誉のために話しておくと決して手を出したりはしていない。反応はしてしまった時はネフティスの身体に俺のホルスの槍が当たらぬように腰を引き心頭滅却(しんとうめっきゃく)煩悩退散(ぼんのうたいさん)と頭の中で唱えて過ごしている。

 ()(ぜん)食わぬはなんとやらと言うが、彼女は決して俺を誘っている訳ではない。第一、俺は彼女の所属する管理課から依頼を受けて転生課を代表して派遣されている。手を出したりなんてしたら転生課に泥を塗ってしまう。

 などと言い訳をしながら耐えている。もはや約得感は無い。これは拷問です。正直、ネフティスが「いいよ」って言ってくれないかなとか頻繁(ひんぱん)に考えてます。

 そんなこんなでゆでダコになりかけながら風呂を出た。

 そう言えば、使用人も居たし、家に風呂があるし、団長さんはかなりの金持ちなんだな。もしかしたらお貴族様なのかもしれない。

「だ、大丈夫ですか?」

「ご心配なく、久々の風呂に少々長湯してしまっただけですから、とーってもいい湯でした!ありがとうございます!」

「気に入ってもらえたのなら良かったです」

 風呂上がりに赤くなっている俺の顔を見て団長さんが少し心配そうにしていたが、俺が礼を言うと喜んでくれた。どうやら風呂にはこだわりがあるそうだ。

「お?やーっとあがったのか、待ちくたびれたぜ。本当に女は風呂が長いな。一緒に入ったって良かったろうに、いっちょ前に恥ずかしがりやがって」

 欠伸をしながら風呂の順番待ちをしていたザコッシュが現れる。

「あんたはどうせ姉さんの裸が見たかっただけでしょ。この助平」

「あのなぁ!同じ風呂つったって仕切りはあるし、そもそも街の風呂は混浴が基本だろ!」

 そうなのである。街にも銭湯のようなものは有ったが、同じ風呂に簡単な仕切りが立てられているだけだったのだ。現代からでは考えられないが、そもそも日本の風呂も昔は混浴だったと聞くし、風呂が貴重な時代では普通なのかも知れない。

 喧嘩に発展しそうな2人を団長さんが「まあまあ」と(たしな)める。

「ザコッシュ殿が風呂から上がったら皆様に話したいことがあります」

「私、お腹空いたんだけど」

「こら!ティース!厚かましすぎますよ!」

「えー、姉さんだってお腹すいたでしょ?」

「それは、まあ……。でも耐えられない程では―」

 ―グゥ

 厚かましいことを言うネフティスを姉らしく注意しようとしたが、タイミングが良いのか悪いのか俺の腹の虫が音を鳴らしてしまった。

「ははは、ご心配なく。今、食事も作らせていますよ。話も食事をしながらにしましょう」

 団長さんは笑ってそう言ってから、俺とネフティスを客室へ案内してくれた。

 案内された部屋は広く、2人でも余るほどだった。ベッドも大きくて見るからにフカフカ、何より清潔感のある白。宿屋のベッドが汚かったわけではないが、明らかにこちらのほうがきれいに見える。

 高級ホテルも目じゃない程の部屋で思わず気後れしてしまいそうになったが、ネフティスは気にしていない様子でベッドまで歩いていくとポフンと座ってしまった。

 ネフティスの体重でゆっくりと沈むベッドを見て俺も飛び込みたくなったが、今の俺は女性の姿だ。そんなはしたない姿を団長さんに見せられない。

 というか、ベッドに座るのもどうかと思うのだが、団長さん目をそらしてますけど。

「じゅ、準備が出来たら使用人に呼びに来させますので、それまでゆっくりしてください。で、では!」

 団長さんは早口で言い残すと照れた様子で部屋を出ていった。

 もし何かあれば部屋の入口に置いてあるベルを鳴らせば、部屋の近くで待機している使用人が来てくれるらしい。いたせりつくせり過ぎる。なんていうかヤバイですね☆(小並感)

 俺は豪華(ごうか)さに感動しながらも団長さんの足音が十分に遠ざかったのを確認して、部屋に遮音(しゃおん)結界を張った。

 

 

…To Be Continued




今回は首都に戻ってきた所までです。
啓示が1月あまり悩んでいた問題について触れた回でもあります。
イラストとか無いのでネフティスの容姿はハッキリとわかりませんが、一応、私の脳内ではキレイ系の美女です。
イシスは超カワイイ系。

啓示はふたなりの状態なんですけど、ふたなりってホルモンバランス崩れそうですよね。
まあ啓示は人間じゃないので問題ないですね。

豆知識ですがふたなりは俗称で、日本語では「両性具有(りょうせいぐゆう)」、英語では「インターセックス」と言うそうです。


ではまた次回!お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。