転生業務課は本日も大忙しです 作:通りすがりのめいりん君@すきょあ
時間かかっちゃった()
光に対し
勇者の放った魔法がとてつもない魔力が込められていた。勝手に天の衣が発動している俺はともかくネフティスは無事では済まないかもしれない。
「ネフティース!!」
未だ閃光で目が眩む中、俺は偽名のことなど忘れてネフティスの名を叫ぶ。
「ネフティス!無事なら返事をしろ!」
しかし、返事は無い。
次第に暗順応によって徐々に視界が開かれる。
やがて見えたのは窓際に立っている勇者と
「あああああああああああああああああ!!!!!」
死んだ。ネフティスが死んだ。俺の目の前で、殺された。
誰に?勇者にだ。
世界を救うために天から遣わされた勇者に、ネフティスが殺された。
「よくも!よくもおおお!!!」
怒り、猛り、俺は感情のままにスモールソードを抜き斬りかかる。
「こいつ!さっきより早く……!」
「よくもネフティスをおおお!!」
「っく……!」
「許さねえ!お前だけは絶対に!」
「なんだっ!さっきまでと様子が―」
持っているものが真剣だということも忘れ、ただ目の前の男に暴力を振りかざす。
天の衣という最高の防御のおかげで捨て身のまま剣を振り回す。勇者が何をしようと俺に届きはしないのだから。
無我夢中で剣を振り、目の前の敵を滅さんとする。
「このっ!くそが!避けるな!!」
「っく……。段々早くっ……!」
駄々をこねる子供のように、型も何も無い純粋な暴力を
気迫に押され勇者はじわじわと部屋の端へ追い詰められ、ついに壁際に勇者の足が壁にぶつかった。
「しまっ―」
「―取った!!」
『いけません長瀬様!!』
「!?」
まさに剣を勇者の首へ振り下ろす
謎の声に動揺した一瞬の隙を逃さずに勇者は俺の持つスモールソードの柄を下から突き上げるようにして弾き飛ばす。だが、強引に武器を弾き飛ばした勇者はもはや俺の拳を避けるだけの余裕はなくなっていた。
勇者は油断していたのだろう。勇者も完全ではないが天の衣を持つ、故に剣を弾けば驚異はないと、女の細腕では何も出来ないと。油断したのだ。
「このっ!!」
それだけではなく、俺は勇者に触れた瞬間に勇者の魂を肉体から引き剥がした。理性的な判断をしたわけではない。剣が弾かれなければ俺は怒りのままスモールソードを、全てを天の力で切り裂く剣を勇者の身体に振りかざしていただろう。
勇者が気付けるはずもないが転生課から来た俺は身体に触れられさえすれば魂を引き抜ける。勇者よりもよほどチート地味た存在。俺は単に勇者を殺すために
「…………」
魂を引き抜かれた勇者の身体は、棒立ちになり、目の焦点も合わずに虚空を見ていた。
「やったか」
『いや、やってねぇよ!?え?なにこれ!え、俺が目の前に!?』
「くそっ!目的を果たしたってネフティスが生きてなきゃ意味がねぇだろ!!」
『無視すんなよ。お前、おい聞こえてるんだろ?なんだよこれ!』
「うるせぇ!俺は悲しんでんだよ!」
『え、あ、ごめんなさい』
魂の抜けた勇者の身体はただの抜け殻、管理課がこの抜け殻をどうするつもりかは知らない。新たな魂でも入れて使うのだろうか?
狙ったわけではないが、イシスからの依頼通りにはなった。
『ところでよ。あれ、そのままでいいのか?』
「は?」
声の主が指差したほうを見ると、そこには抜け殻となったはずの勇者の身体だった。
「うそ……だ……ろ…………?」
魂は間違いなく抜いたはずだ。なのに、どうして
勇者の身体はギギギと音を立ててそうな動きでゆっくりと首をこちらに向け、ニヤリとその口角を吊り上げた。
『やべえ!避けろ!!』
そう聞こえたと同時に、紫電の光と空気を切り裂く轟音が響き渡る。
今のは勇者の使っていた魔法、確か
どうして魂が抜けたはずの勇者が魔法を打ってくるのかはわからないが、とにかく今の魔法にはかなりの魔力が込められていた。
現に先程のときとは違い、石で出来ているはずの壁までも焦げ付く程の威力があった。
『
「っ!」
女の子達と聞いて俺は慌てて部屋を見渡す。俺が防郭でふっ飛ばした女の子には俺が個別で防郭を張って保護していたが、部屋に居た全ての子にそれが出来たわけではない。
ベッドの周りに転がっていた女性達は石畳に同化するようにして焦げ消えている。
姿形が残らず、あるのは黒い焦げ跡だけ。人としての形すら残していないおかげで
しかし、幸いにもベッドと、その上に乗っていた女性達は無事だった。これはネフティスのおかげだ。
ネフティスは荒っぽく戦っていたように見えて、気絶した女性達はベッドに放り投げていた。おかげで俺は
床に寝かせていたのでは動きづらいのもあっただろうが、ベッドに投げていた辺りは配慮してたらしい。俺はそうして雑に投げられていたベッドに防郭を貼り守ることが出来た。
何人死んだのかはわからない。もし俺が全ての女性に防郭を貼れていれば、操られていた女性が犠牲になることは無かったはずだ。
グッと拳を握りしめ歯噛みする。不甲斐ない。俺が力を使いこなせていれば助けられた。
『おい!ぼーっとしてる場合じゃねぇぞ!2発目が来る!!』
再び紫電の光が
『やべぇぞ!あんまし撃たれると城が壊れちまう!』
「そうは言っても!」
『どうにも出来ないならせめてアイツを引き連れて外に出れないか!?』
「……やってみる!」
俺は声に従い、部屋の入口まで移動してわざとらしく中指を突き立てる。
「クソ勇者!こっち来てみやがれ!」
「―!!」
勇者が俺を見て怒ったのか、たった1蹴り地を蹴るだけで俺の下まで跳び拳を振りかぶった。
なんとか目で追うのがやっとの攻撃だったが、天の衣があるから大丈夫。そう思った。しかし、俺の身体は衝撃と共に廊下の壁に打ち付けられた。
「―カハっ!?」
肺の空気が一気に吐き出され、全身を打った衝撃で身体が軋む。絶対なる盾と思っていたものに裏切られた。
と、思ったけれど、よく考えたら2度目だった……。
『大丈夫か!』
「なんとかね……」
ノーガードでふっ飛ばされたはずだが、怪我らしい怪我はない。吹き飛ばされたから勘違いしそうになったが、どうやら勇者の攻撃には天の力が使われていないようだ。つまり、天の衣が抜かれた訳ではない。
ならばなぜ吹き飛ばされたのか。わからないけれど、とにかく今は逃げるしか無い。何度も吹き飛ばされては敵わない。
「俺はまだピンピンしてるぞ!どうしたこっち来い!」
精一杯の虚勢を張り上げ、なんとか誘導する。どの道、俺に
どこに?
倒せるであろう人がいるところに、だ。
「
すぐ後ろについている久々津の魂に命令する。そうなのである。俺は確かに久々津の身体から魂を引き抜いているのだ。現に追いかけてきている久々津の身体からは魂の存在を感じない。
『はぁ!?城の外に誘導するんじゃないのかよ!』
「いいから玉座に案内しろ!」
『だぁ!わかったよ!』
俺達が勇者の部屋に向かい、戦闘してる間にどれだけの時間が経っているかはわからないが、読みが間違っていなければいるはずだ。
最高の等級を持つ冒険者が。
『その階段を登って、そのまま真っ直ぐ正面の扉だ』
久々津の案内に従い、長い廊下を駆けて玉座につながる扉を蹴破る。
『おい!丁寧に扱えよ!』
何やら文句を言っているやつがいるが、そんなことを気にしている場合ではない。
広い玉座の間に入ると、部屋の中はやたらとボロボロな状態になっていた。
床はヒビが入りところどころ抉れたように穴が空き、壁や柱は砕け、壁掛けのランプは割れていた。
明らかな戦闘跡、そして部屋をこんなにしたであろう者たちが部屋の奥に見える。
「っは、乱暴な登場だからティースかと思ったが、イエナの方だったとはな。すまないが手伝ってくれ」
部屋に入ってきた俺に気づいたザコッシュが俺をチラ見してからそう言う。
ザコッシュは団長さんを庇うように立ち、マイザと対峙していた。団長さんは負傷している様子は無いものの、誰かを抱きかかえるようにしてしゃがみ込み、視線だけをマイザに向けている。
『あれはポンド王だ!おい!あの盾の魔法で王を守れ!』
「俺は誰かを守りながら戦うのが苦手でな。こいつは俺がなんとかするから2人に防郭を貼って耐えていてくれ!」
ザコッシュはマイザの放つ魔法を防ぐので手一杯なようで思うように攻められないようだった。言われた通り団長さん達の周りに防郭を貼って駆け寄る。
そのタイミングで今度は玉座の間の扉が吹き飛び、勇者が現れる。
まずい。と思った。いくらザコッシュが強くても勇者とマイザを同時に相手できるはずがない。なんといっても勇者はネフティスを倒せる実力があるのだから。
「……イエナさん」
打開策をひねり出そうとしている俺に団長さんが話しかけてきた。
「王を頼みます」
そう言って団長さんは抱きかかえていた王を俺に預け立ち上がり、剣を抜く。
「何をしているのか知らんが、俺はそんなことをするために剣を教えたわけじゃないぞ」
剣先を勇者に向けると力強い声でそう言い放った。
……To Be Continued
あとがき
実はもう終わりまで見えているんですが、暑さにやられて筆が進んでないです。
クーラーがほしいです。扇風機では限界があります。
それはさておき戦闘回が続いてます。描写が難しすぎてハゲそうですががんばります……。
閲覧数が増えるだけでも元気でるんで、読んでくだせぇ……。