転生業務課は本日も大忙しです   作:通りすがりのめいりん君@すきょあ

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遅くなった上に短いです。
すいません帰省と新すばせかとテイルズに夢中でした。


第八話:転生課の役目を果たすときみたいです③

 抜刀と同時に団長さんは石の床の表面が薄く弾けるほどに床を強く蹴る。

 ザコッシュの爆発とは違う純粋な筋肉の跳躍(ちょうやく)によって勇者の懐まで潜り込んだ団長さんは下から跳ね上げるようにして勇者の右肩を狙う。

「――」

 はっきりいって勇者は団長さんの攻撃に反応すら出来ていなかったように見えた。それでも団長さんの剣は止まった。不可視の何によって。

 天の衣に似ていたが、天の力ではなかった。もっと暗く沈み込むような重たい気配。それが負の資源(ダメージリソース)であることはすぐに解った。

「これは……」

 攻撃を止められた後、跳ねるように距離を取った団長さんが何かに気づいたかのように呟く。

 一方、勇者は攻撃された事など気づいていないかのように首をぐりりと回してマイザに顔を向けた。

 マイザは勇者をちらと見ると黒い炎を放ち強引にザコッシュから離れるともう一度勇者を見てからニヤリと笑う。

「ふふふ、お遊びはここまでにしましょう。ちょうど()も来たことですしね」

「…………」

 勇者の隣まで移動したマイザが片手で2人を牽制(けんせい)しながら高笑いする。

「今日はこの国、いやこの世界にとって歴史に残る日になる!!」

 その手に負の資源と思われる黒いモヤを纏ったまま、マイザはその腕で勇者の心臓を貫き穿つ。

 肋骨が砕け、肉が引きちぎられる音と鮮血の垂れるピチャピチャと言う音が石造りの部屋に響いた。

「ふふ、ふふふふ、今こそ、今こそ!この私が――」

「「――止める!」」

 勇者の血を浴びながら愉悦(ゆえつ)に満ちた笑みを浮かべるマイザに左右からザコッシュと団長さんが交差するように斬りかかる。

――だが、

 グニャリ、とマイザと勇者の周りの空間が歪み、負の資源で作られた黒いモヤに包まれた。団長さんは寸でのところで剣を止めたが、剣を振り抜いたザコッシュの剣先はまるでアイスをくり抜いたようななめらかな断面を残して無くなっていた。

「おいおい、こりゃ反則だぞ」

「魔力を感じない……!?」

 ギュルギュルと音を立てながらマイザと勇者が空間ごと圧縮されていく。

 マイザは負の資源を操る。いや、()()()()()()()()だった。その存在は一般的にこう呼ばれる。

 

――魔王と。

 

「不味くないか……?」

 ザコッシュは場の異常を感じてジリっと後ずさる。団長さんも額に大きな汗をかいて歯噛みしているのが解った。

 どうすればいい?

 俺は知識として()()()()()。だからザコッシュと団長さんの2人では絶対に対処出来ないことが解ってしまう。

 あれは天の力たる資源(リソース)を扱える勇者が居なくては倒せない。

 俺も天の力を扱えるが、天界の住人では駄目だ。魔王を倒せたとしても、負の資源(ダメージリソース)を天へ還元出来ないため、その膨大な負の資源が霧散しセレブダロウ一体が死の大地と化してしまうことだろう。

『おい!お前、天使か女神なんだろ!なんとか出来ないのか、このままじゃ皆が!世界が!』

 久々津は俺にせがむ。魂だけの存在で器用にも頭を地につけて。

 どの口で、そう思った。

『……頼む!この世界を、見捨てないでくれ!』

「厚かましいと思わないのか、魔王が生まれたのも、魔王に国が操られていたのも、ネフティスが死んだのも!全部!お前が、お前の怠惰が産んだことだぞ!」

 俺はネフティスに隠れて色々と調べていた。だから勇者以外にも兵士を操っている者が居ることには気づいていた。その存在が魔王とまではわからなかったが。

 ネフティスと冒険者として各地を巡り、確かに勇者が地域の復興や、農耕技術の普及などに力を入れていたことも、その後の経過を兵士にさせていたことも知っていた。女を招集しているのも勇者の手のものではなさそうだと言うことも。

 だが、実際は与えられた地位と褒美に目を曇らせ堕落していた。

『それは……』

「お前は魔王が居ることにも気づいたはずだ。いや、気づいてなければおかしい」

『……』

 久々津は何も言えず頭を下げたまま固まる。

「イエナ!お前は王を連れて逃げろ!あれが覚醒したら多分俺達じゃ対処出来ねぇ!」

 ザコッシュがマイザだったものを見ながら叫ぶ。

 黒いモヤはもはや球体と化し、不気味にも脈を打っていた。その様子は(まゆ)のように見える。

「久々津。お前はこの世界のために、全存在を賭けられるか」

『え―』

 ふと、口をついてそんな言葉が出た。

「―この世界を守るために自分が消えても良いと思えるか」

 お前は何をしにこの世界に来た?管理部の依頼は何だった?

 そんな考えが頭に浮かび、ぐるぐると回る。思考が勝手に誘導されているような妙な違和感を感じる。

 どうするべきなのか、今この場で俺は何が出来るのかが勝手に頭に浮かんでいく。

『俺は……』

 久々津は顔を伏せる。

「イエナ!早くしろ!そろそろヤバそうだ!」

 外野が五月蝿い。そう感じるほどに思考が変な方向に寄っていくのを感じる。

「どうした。早く答えろ。この世界を見捨てたくないのだろう?“自分の存在が消える程度なんてことない”くらいの覚悟を見せてみろ」

『俺は……。勇者だ。確かに俺は立場を利用して許されないような事をしてきた。女神から与えられた能力を悪用したのも確かだ……』

 久々津は頭を上げ、眼差しを強くして俺を見上げた。

『都合のいいことを言っているのは解っている。こんな俺が頼める立場ではないことも。でも、何も俺は世界が滅んでしまってもいいと思っていたわけではない!』

 勇者は立ち上がり、俺の前に立つ。その瞳には確かな光を宿して。

『元はと言えば俺の責任だ。やってやる!俺の存在を賭けて!せめて最後に勇者として散ってやる!』

「そうか、ならばならば()も神の正義の名のもとに力を貸してやろう。覚悟して見ろ。お前の戦うべき相手―」

 俺は静かに振り返り、“(まゆ)”を指差す。

「―魔王の誕生だ」

 脈打っていた繭は静まり、ピシピシと音を立て、今まさに孵化しようとしていた。

 繭の欠片がポロっと落ち、穴が開く。その瞬間に全身の毛が逆立ち、息を詰まらせそうな空気が玉座の間に充満した。

 ザコッシュも団長さんも繭から視線を外せずに、ただ歯噛みしてその額に汗を浮かべる。俺は一歩ずつ繭へ近づき、2人の前に出る。

「か弱き魂を守れ《天塁壁(ヘブンズランパート)》」

 スモールソードを()()し、虚空にこの世界の魔法文字を描く。天塁壁は天の衣を擬似的に再現し他人に付与する防護術。

「これは、防郭か。助かる、だがなぜ逃げなかった」

 俺はザコッシュを一瞥だけして繭へと視線を向ける。

 負の資源(ダメージリソース)を直接操れる魔王の攻撃相手では心許無いが、彼らほどの実力者なら致命傷を避けるくらいの役には立つはずだ。

 これで2人のことは放っておいてもいい。まずは勇者の器を取り戻すとしよう。

『俺は、何をすればいい』

「我が貴様の器を用意して、場を整えてやろう」

『そしたら俺の、勇者の出番って訳か……』

「そうだ」

 繭の全体にヒビが入り、ところどころ零れ落ち空いた穴から仄暗い空気が地に堕ちてゆく。それに伴い空気は重みを増す。

「―来る!!」

 団長さんの鬼気迫る声の後に繭は弾けた。

 足元を舐めるような冷たい風が吹き抜け、魔力と負の資源の混ざった力が形を成して顕現(けんげん)する。

 黒を基調に金色の刺繍(ししゅう)の入った豪奢(ごうしゃ)なローブを纏い、負の資源によって作られた黒い宝玉(オーブ)と絢爛豪華な宝石をはめ込んだ杖を持ったマイザ()()()存在。

「我が名はグリード」

 身の毛のよだつような低く(おぞ)ましい声が響く。

「金の妄執(もうしゅう)により生まれし魔王也」

 宙に浮き、俺達を見下ろすグリード。

「ははっ。(ほま)れだぜ……!魔王と戦えるなんてよ!!な、団長!イエナ!」

「ええ、こうなったらやるしかありません。ザコッシュさん、イエナさん。共に世界を守りましょう」

 悲愴感を感じさせないように互いに鼓舞(こぶ)し合う2人を無視し、繭が合った場所を見る。繭の残骸(ざんがい)の中に埋もれる無残な姿へ変貌(へんぼう)した久々津の器を。

 2人には俺が器を取るのを邪魔されぬように魔王を止めてもらわねばならない。そう思ったら自然とどんな能力を使えばいいかが解った。

手をかざし辺りの負の資源を消し去る。それだけで重苦しかった空気が幾ばか軽くなる。

「我の目的のために力を貸してもらうか」

 今こそ、神の正義を示す時だ。

 

 

To Be Continued







今回はもう少し書きたかったんですけど、5000超えてきそうだったんで切りよく魔王との戦闘前で止めました。

魔王の名前はグリード。知ってる方も多いかと思いますが七つの大罪の1つ「強欲」の名前ですね。

元々マイザ(守銭奴)って名前なので、類語であるグリード(強欲)なのはある意味わかりやすいかもしれませんね。

言っておいてあれですが、別に7つの大罪は関係ないです。

次回はも少し頑張りたいな……。でもアライズ終わってないし、黎の軌跡 も待ってるんだよね……。

頑張ります(努力目標)

ではまた!
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