東都ドームの地下闘技場にやって来た宮本明と鮫島。
囚われの身となった大切な仲間、勝っちゃんを救うため、二人は地上最強の吸血鬼を決めるバトルトーナメントへの参加を決意する!
という建前の全選手入場パロ。


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東京ドーム(東都ドーム)
闘技場
全国の吸血鬼の猛者たちが集まってくる
最強の吸血鬼を決める武闘会


サバイバルホラー漫画でこれらのワードと遭遇してしまったので勢いに乗って初投稿です(本当)



『鉄檻』

 2003年6月!

 日本近海にポツンと佇む森と海しかない小さな孤島、彼岸島。

 その地で行われていた──かつて人間であり人間でなくなった者、吸血鬼軍とそれに対抗する人間軍の戦争は吸血鬼たちの圧倒的な勝利によって幕を閉じた!!

 

 本土に進出した怪物たちは吸血鬼ウイルスを持つ蚊を首都東京にてばら撒くことに成功!

 刺された国民の大半が吸血鬼と化したことで日本という一国家は呆気なく滅び去った!

 

 運良く生き延びた人間は吸血鬼や変異種・邪鬼の存在に怯え震えながらドブネズミのように生活することを余儀なくされる!

 

 半年後、彼岸島から一人の人間が上陸する。男の名は宮本明!

 人間軍の最高戦力として縦横無尽に暴れ回った彼の活躍の場は本土へと移行した!

 各地域で吸血鬼たちの軍団を蹴散らし、新しい仲間を得た明はとうとう東京への進軍を果たす──!

 

 

 

 

 

 東京は後楽園に居を構える多目的スタジアム。名を東都ドーム。

 かの徳川氏の直系が秘密裏に建設したとの噂もある、本来存在しないはずの地下六階に君臨する闘技場は過去最高の熱気で包まれようとしていた。

 そこでは捕らえた人間をなぶり殺しにする公開処刑ショーを筆頭に様々な催し物が開催されており、血気盛んな吸血鬼たちのストレス発散のための娯楽施設となっている。

 だが、似たような企画を続けていてはいつしか観衆に飽きが来てしまうもの。

 

 

 マンネリを打破すべく運営が打ち出した新企画は、吸血鬼を歓喜させるに余りある内容だった。

 

 ────地上最強の吸血鬼を決める武闘大会の開催。

 

 地上最強。誰でも一生の内一度は夢見る称号を強欲な吸血鬼たちが欲しがらない訳もなく。

 吸血鬼から吸血鬼へ、人から人へ、人から吸血鬼へ。大会の報は瞬く間に拡散していき、数週間後には全国から吸血鬼の猛者たちが続々と集結していった。

 インターネットも交通インフラも機能していないのに何故こんなにも早く集まったのか。それは誰も知る由もない。

 

 

 ヌッ。

 

 

 遮蔽物や飾りつけの一つもない、巨大なリングの中央に初老の男性が現れる。

 時代錯誤なコーディネート──編み笠に着物を着た農家のオッサンのような吸血鬼を視界に映すや否や、グルリとリングを囲う観客席から爆発にも似た歓声が沸き上がった。

 

「救世主様の側近様だァァ!!」

 

 ワーワー。地下そのものが揺れていると錯覚する程の絶叫を耳に入れながら、司会者は声の主たちである観客を見渡した。

 彼らは当然のことながら皆吸血鬼であるのだが──ふと服装に違和感を抱く。

 ファー付きのロングジャケット。アロハシャツ。真っ裸。タートルネック。厚手のコート。ランニングシャツに短パン。夏なのか冬なのか季節感がまるでない。……はて、今は何月だったことやら。

 

 ──まァどうでもいいかそんな些細な事はと思考をリセット。

 あまりの音量に声が届かないことを危惧したのか、口パクで『ヨ』『テ』『イ』『ジ』『カ』『ン』『ニ』『ナッ』『タ』と手を振りながら連絡サインを送る前方の係員にOKマークで返答する。最大ボリュームに調整したマイクを片手に、観客たちの声に負けてたまるかと言わんばかりの咆哮が唸った。

 

「地上最強の吸血鬼を見たいか──ッ」

 

 オオオオオオ

 

「ワシもじゃ ワシもじゃみんな!!」

 

 吸血鬼の言葉に皆が応える。観客と司会者の心は僅かなやり取りで既に一つとなっていた。

 

 

「さァ!これから始まるのは予選を勝ち抜いた32名による純粋な一対一の決闘によるトーナメント方式による勝ち抜き戦じゃ! まァ何人かクソ人間たちが混じっているようだが……」

 

 合いの手のように観客たちがブーイングを送り、それが期待通りの反応だったのか吸血鬼はご満悦の表情でうむうむと頷いては声量のギアを更に一つ上げていく。

 

「あの御方は公平じゃ! 優勝者にはこの高そうな古代ローマパンクラ何たらのベルト! そしてあの──」

 

 パチン、と指を鳴らしスポットライトが地下闘技場の壁面を照らした。

 

 ヌッ。

 

 上空からゆっくりと吊り下げられてくるのは、これまた巨大な金属の箱。

 どういう訳か本土の各地にどこにでも大量に大小問わず存在する──ありふれた代物。鉄檻には大量の人間たちが正座の姿勢でズラリと並び、捕らえられていた。

 

「若くて新鮮なクソ人間共100人が景品として送られる! 参加者の人間共はせいぜいコイツらを助けられるよう頑張るこったな!」

 

 再び怒号が跳ね上がった。吸血鬼たちにとって人間の血とは自身の肉体を邪鬼へと変貌させないために必要な栄養であり、同時に何ものにも代え難い甘美な麻薬でもあるのだ。100人の血を独占できると想像しただけでも絶頂物。悲しいかなベルトの方には誰も興味を示さない。

 またある者は吸血鬼に歯向かう愚かな人間出場者たちの処刑を今か今かと待ち望んでおり、哄笑しては囃し立て、ひいと人間たちに金切り声を吐き出させる。

 誰が言ったか。『大人でも、絶望するとよくクソを漏らす』

 言葉通り、檻内は既に大量に撒き散らされた小便や大便によって強烈な汚臭を放っていた。

 

 裸にひん剥かれ涙を流している大人たちの中に混ざる小さな影は微動だにしない。少年は何者かに殴られたのか、顔が見るも無残に腫れ上がり凛々しかった相貌はすっかりと鳴りを潜めていた。しかし嘆き悲しむだけの人間たちとは違い、その瞳には輝きがある。

 ──絶対にあいつが助けてくれる。確固たる想いを秘め、少年は毅然とした表情で闘技場を眼下に見つめていた。

 

 

 

 いよいよ始まる。選び抜かれた一騎当千の古強者たちによる最初で最後の大宴が。

 男もまた彼岸島での激戦を戦い抜いた猛者。嘗てないほどの戦いに思いを滾らせ武者震いを起こしつつも、その震えを断ち切るように腕を上げる────

 

 

「選手入場!!」

 

 

『全選手入場です!!!!』

 

 

 

 

 

 

『吸血鬼殺しは生きていた!! 

 更なる研鑽を積み義手刀使いが甦った!!

 また太刀が重くなったようだなッッ怒れる鬼神!! 宮本明だァ――――!!!』

 

 

『必要なアイテムはすでに俺が完成している!!

 見ての通り頭の良い奴!! 実家は文具屋・西山徹だァ――――!!!』

 

 

『近付きしだい糞投げまくってやる!!

 ジョスコ代表 吉昭だァッ!!!』

 

 

『彼岸島の戦いはメンタル強度がものを言う!!

 明パーティのクソ強メンタル吸血鬼 あだ名はケンちゃん 斉藤健一!!』

 

 

『真のメインヒロイン(笑)を知らしめたい!! 明の幼馴染 坂下 ユキだァ――――!!!』

 

 

『本土のヒロインはユカポンだが彼岸島のヒロインは俺の物だ!!

 明の相棒 隊長だ!!!』

 

 

『吸血鬼化対策は完璧だ!! 薙刀使い宮本 篤!!』

 

 

『全邪鬼のベスト・再生力は俺の中にある!!

 炭鉱の神様が来たッ 百目邪鬼!!!』

 

 

『クソ人間相手なら絶対に敗けん!!

 凡骨の意地見せたる 量産型邪鬼だ!!!』

 

 

ブーリ・ブゥーリ(ウンコ勝負)ならこいつが臭い!!

 実験場の赤ん坊(ピュア)・ファイター 大糞赤子だ!!!』

 

 

『五重塔から炎の犬が上陸だ!! なまはげフェイス チワワ様!!』

 

 

『邪鬼と戦いたいから風来坊(バガボンド)になったのだ!!

 武人のダルマ落としを見せてやる!! アマルガム・金剛!!』

 

 

『めい土の土産にウンコとはよく言ったもの!!

 巨大金玉袋が今 巣鴨でバクハツする!! クソ喰い爺だ―――!!!』

 

 

『母乳こそがお母さん最強の代名詞だ!!

 まさかこの女がきてくれるとはッッ 牛乳女!!!』

 

 

『目が合ったからここまできたッ 邪鬼化背景一切不明!!

 炭鉱の百足(ムカデ)ストーカー 姫だ!!!』

 

 

『ワシたちは最強ではない二人で組んで初めて最強なのだ!!!

 御存知スコ爺&太郎!!!』

 

 

『人類NO.2の称号は今や自分の中にある!! 暴れ足りねェオレを満足させる奴はいないのか!!

 変態だ! 変態鮫島だ!!!』

 

 

『デカァァァァァいッ説明不要!! 全長!!! 体重!!! 測定不能!!!

 眠り女だ!!!』

 

 

『丸太は全局面で使えてナンボのモン!!! 超ゴリ押し丸太術!!

 人間軍から師匠こと青山龍之介の登場だ!!!』

 

 

『母乳はオレのもの 邪魔するやつは思いきりバットで殴り思いきり蹴るだけ!!

 少年野球経験者 石田 亮介』

 

 

『オマ』

 

 

 

 突然止まった口上に吸血鬼たちが困惑する。

 ──一呼吸置いて、紹介を再開した。

 

 

 

『ンコォォ! の匂いを嗅いで会場へきたッ!!

 童貞の俺が女の股で死ぬのか!! 弩級の変態・エテ公!!!」』

 

 

『あざといショタ属性に更なる磨きをかけ

 "ホッケーマスク" 鮫島精二が胃袋から帰ってきたァ!!!』

 

 

『地獄谷の地形を利用した自分に死角はないッッ!!

 人面巨大ゴキブリファンネル使い 満腹爺!』

 

 

『ちくしょう早い追いつかれる!!!

 何をやっていたんだか、行方知れずの邪鬼が今ベールを脱ぐ!!

 彼岸島から 襟巻蛇邪鬼だ!!!』

 

 

『ユカポンの前でなら僕はいつでもギンギンだ!!

 見せてやろぜ皆に僕らの愛を!! アイドルファンの吸血鬼!! ユカポンを追って登場だ!!』

 

 

『明との約束はどーしたッ 武人気取りのバカ鳥疑惑、未だ消えずッ!!

 悪辣の息子!! 姑獲鳥だ!!!』

 

 

『特に理由はないッ ヤンデレキャラが強いのは当たりまえ!!

 あの御方にはないしょだ!!! 盲目の邪鬼!

 椿がきてくれた―――!!!』

 

 

『クソ人間で磨いた実戦セックス!!

 煩悩の化身、デンジャラス・ボーイ エロ金剛だ!!!』

 

 

『序盤のホラー演出ならこの邪鬼を外せない!!

 怖いか人間よ!! 己の非力を嘆くがいい!! 秋刀魚邪鬼だ!!!』

 

 

『超一流斧使いの超一流の投擲斧だ!! 素顔を拝んで石投げやがれッ

 彼岸島の鋼鉄武人!! 斧神!!』

 

 

 

 

サバイバルホラー(シュールギャグバトル)漫画はこの男が完成させた!!

 ヤングマガジンの切り札!! 宮本明(最後の47日間)だ!!』

 

 

 

『我らが王者が帰ってきたッ

 どこへ行っていたンだッ マスターバンパイアッッ

 俺達はあなたを待っていたッッッ雅様の登場だ――――――――ッ』

 

 

 

『加えて負傷者発生に備え超豪華なリザーバーを4名御用意致しました!

 芦ノ湖の怪物 死神!!

 ネズミノオオサマ  妙子!!

 パンツ一丁 田中ナオト!』

 

 

『……ッッ  どーやらもう一名、別エリアを管轄する雅様の息子様のご到着が遅れているようですが、本編に登場次第ッ皆様にご紹介致しますッッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────血戦が、始まる。

 

 

 

 

 




明「ケンちゃんたち死んだんじゃなかったのかよ!」
ケンちゃん「バカ野郎! (バトルトーナメントが)やりたすぎて死んでられるか!」


amazonのKindleストアでは彼岸島(無印)1~3巻までが無料配布されています。
彼岸島はギャグ漫画と良く言われますが、この3巻までは間違いなくサバイバルホラー漫画です。
この作品を見て少しでも彼岸島に興味を持たれる方がいたら何よりです。


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