IRIAM5期生、桜もちさんを題材にしたお話です。
1話限りの正真正銘の単発です。
続く事はありません。

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着物のあの子は素直になれない

別れと出会いがある春、俺は彼女に出会った。

丈の短いピンクの着物に桜の花びら等散りばめられており、風車の髪飾り、そして…ガーターリング。

気付いたら俺は目で彼女を追っていた、勇気を振り絞り声を掛けお茶に誘った。

彼女は嫌な顔一つせず応じてくれた、初対面でいきなり声を掛け、そしてお茶にも付き合ってくれるのは今のご時世そんなに無い。

普通なら不審者扱いで通報されるのがオチだ。

 

 

話している内にカラオケで何を歌うかの話になった。

彼女はアニソンとボカロが好きらしい、後は…演歌も歌うとかとも言っていた。

叶うならボーカロイドにもなってみたいとかも呟いていた、試しにやってもらうと良い感じにボーカロイドになっていたと思う。

素質があるからといってすぐなれるとは思えないが、そこは彼女の頑張り次第にもなるだろう。

 

 

その後連絡先を交換する事も出来、何回か会うようになった。

何度か会う事で、お互い緊張も無くなっていき口調も柔らかくなっていった。

彼女は所謂ツンデレというものらしい、たまに恥ずかしくなってちょっとキツい物言いになる事がある。

それもまぁ1つの個性や魅力でもある、俺はむしろ好感があった。

 

 

ずっと名前を出してなかった事に気が付いた、彼女の名前は桜もち。

桜餅ではない、名前はひらがなで、もちだ。

たまにピコハンを持ってる事があるが、理由を聞くと「変質者を叩くため」と言っていた。

果たしてピコハンで撃退出来るのか疑問だったが…そこは深く考えないようにしておこう。

 

 

そんなある日、もちの方から和菓子屋に行かないかと誘われた。

普段会う時は俺の方から誘ってる為、もちから誘われるのは初めてだった。

俺は快諾し、日時を決めた。

メールでのやり取りだったが、内容から嬉しさが伝わるのが分かった。

 

 

待ち合わせ場所は俺が何時も誘ってるカフェ、もちが誘ってくれた和菓子屋の場所を俺は知らない為一度合流してから向かう事になってる。

 

 

待ち合わせの時間より30分早く着く、だが驚いた事に既にもちがそこに居た。

向こうが俺に気付くと「お、おはよ…遅かったじゃない」と言ってきた。

俺はまだ時間じゃない事を告げると「何?楽しみで早く来ちゃっただけなんだから!あなたの事待ってた訳じゃないんだからね」と、ツンデレのテンプレをいただいた、赤面のおまけ付きで。

何とかもちを宥め、和菓子屋へ向かう事にした。

 

 

どういうのが置いてあるのか聞いてみると「着いてからのお楽しみ」としか答えてくれなかった。

ただ、向かってる間もちはずっと俺から顔を背けていた。

 

 

和菓子屋に着いた、創業90年という歴史があり、老舗と呼ばれるみたいだ。

中に入るとお婆さんが座っており、ニコニコしていた。

中は注文した和菓子を食べるスペースもあり、とても出来てから90年とは思えない造りになっている。

 

 

「お婆さんこんにちは、何時ものお願い出来る?後この人には…」

 

「おやまぁ…もちちゃんもようやくかい?生きてる内に見れて嬉しいよぉ」

 

 

もちとお婆さんは何か話してるようだ、途中もちの顔が赤くなってたりしてたが、内容までは聞こえなかった。

 

 

数分後、お婆さんが俺達の元に和菓子とお茶を持ってきてくれた、お茶はサービスらしい。

俺達は休憩スペースに移動する、気のせいかお婆さんが増えててこちらを見てずっとニコニコしている。

 

 

「早く食べましょ?」

 

 

もちが急かすように言ってくるので、俺も食べる事にする。

注文したのは俺がみたらし団子、もちはいちご大福だ。

ふと疑問に思い、もちに桜餅はどうなのか聞いてみた。

返ってきた答えは「桜餅より…いちご大福の方が好きなの。何よ…悪い?」とジト目されながら言われた。

俺はそれから何も言わず、みたらし団子を食べた。

団子は柔らか過ぎず、かと言って固過ぎず良い食感だ。

タレも程よい甘さで美味しい。

 

 

食べてる間、もちがずっと俺の事を見ていた。

どうかしたのか聞いてみると「べ、別に何でもない」とそっぽを向かれた。

仕返しに今度はもちがいちご大福を食べてるとこを見てると

 

「何ジロジロ見てるのよ、変態」と言われてしまった。

 

見られたから見返しただけなのに…と思ったが、女性はジッと見られるのが好きじゃないのが多いだろうから仕方ないと思っておく。

だがいちご大福を食べてる時のもちの顔は、とても幸せそうで笑顔で溢れていた。

 

 

「ちょっと席外すね」

 

 

もちはそう言うと席を立ち、お土産コーナーへ向かった。

すると受付に居たお婆さんがこちらへ向かってきた。

 

 

「お前さん、あの子のコレかい?」

 

 

お婆さんは指を上げて俺に小声で言ってくる、俺は真っ向から否定した。

もちとはそんな関係じゃなく、お茶仲間という認識だった。

もちは可愛いし、一緒に居て楽しい気持ちになるが…

 

 

「あの子はね、何時も一人だったんだよ。ほら、たまにキツい言い方するだろ?そのせいで友達があまり出来なくてねぇ…それを今日初めて他の人を連れてきた、しかも男だよ?あたしゃ一瞬とうとう彼氏を連れて来たのかと思っちまったんだ。思い過ごしだったけどねぇ、まぁあの子と今後も仲良くしてやっておくれ。」

 

 

お婆さんはそう言いまた受付に戻っていった。

そして入れ替わるようにもちが戻ってくる。

 

 

「お婆さんと何話してたの?」

 

 

もちはそう聞いてきた、果たしてさっきの内容を話して良いのか悩んでしまう。

お婆さんの口振りからすると事情は割と知ってそうではあった、それを簡単に話してきたと伝えるとお婆さんの信用問題にもなりかねない。

 

 

「まぁ良いわよ、無理に聞かないから」

 

 

俺が答えるのを渋っていると、もちは諦めていちご大福を食べ始めた。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

俺は店を出るが、もちはまだ出ずお婆さんと何か話していた。

 

 

「もちちゃん………かい?もう………だろ?」

 

「良いの……だし………から」

 

 

あまり聞こえないが、もちの表情は曇っていた。

店を出ると、もちの表情は普通に戻っていた。

 

 

「待たせてごめんね、行こっか」

 

 

もちは先に歩いて行ってしまう、俺はそれを追うように歩く。

歩いてる最中、さっきの和菓子屋の味の感想を話してた。

話してる時は笑顔だったが、日が傾いてくるともちの表情も曇り、歩みも遅くなった。

俺はどうしたのか聞いた、もちは俯きながら

 

 

「もちね、引っ越すんだ。ずっと…ずっと遠いところ…だからね、あなたと会うのもこれが最後になるんだ。」

 

 

俺は黙って話を聞く、夕暮れもありもちの表情は儚さを増していた。

 

 

「だからね、最後に…最後にもちの好きなお店で…一緒に過ごしたかったの。凄く楽しかったよ、ありがとう」

 

 

もちの笑顔は何時も可愛かった、でも今の笑顔は…消えてしまいそうな笑顔だった。

 

 

「もちと会えないからって、だらけた生活しない事。良い?……じゃあね、バイバイ!」

 

 

もちはそう言うと、走って行ってしまう。

彼女は高さのある下駄を履いてる、走るのには向いてないはずなのに。

俺は無意識の内に彼女を追った、追わなかったら…二度と会えない気がしたから。

 

 

どれくらい走っただろうか、もう辺りは暗くなっていた。

何時の間にか俺は、もちと最初出会ったとこまで戻って来ていた。

暗い中、明るい色の着物を着てる人物を見付けた、もちだ。

俺はもちに近付いて行った、もちもこちらに気付いたようだ、しかしもちは俺から離れていった。

 

 

「何で…?何で追ってきたの?今あなたの顔見たら…」

 

 

もちはそう言うとまた走り出そうとする、俺はもちの腕を掴んだ。

もちは暴れて振りほどこうとする、傍から見れば俺がもちに暴力を振るってるようにも捉えられてしまう…

 

 

「離してよ!もうバイバイって言ったじゃん!もう会わないんだよ!なのに…どうして…?」

 

 

もちの目には涙が溜まっていた、その訳は俺には分からない。

どうして最後まともに会話せずに走って行ったのか、どうして今も俺から離れようとするのか…ダメ元で聞いてみた。

もちは割とすぐ答えてくれた。

 

 

「もちはさ、こんな性格だから友達居なかったんだよね。居てもすぐいなくなるから…自分から作らなくなったの。だからあなたに声を掛けられて、お茶をした時もすぐ帰ろうとした。でも…あなたはもちの本性を知っても変わらず接してくれた、キツい事言っても…普通に対応してくれた。それが何より嬉しかった、会う度に、話す度に、もちの心はあなたで…いっぱいに…ぐすっ…」

 

 

話す度にもちは涙を流して身体を震わす、俺はもう腕を掴むのを止めた。

もちはもう逃げないと思ったから。

 

 

「なんでそんなに優しくするの…?もちは…もういっぱいいっぱいで…辛いよ…今日で終わらせようって、忘れようって思ったのに…今会ったら忘れられないじゃん…!」

 

 

もちは鋭い目つきで、涙を流しながら俺を睨んだ。

俺は再び腕を掴み、自分の方へ引いた。

 

 

「あっ…」

 

 

もちの身体は冷たく、震えていた。

 

 

「やめてよ…離してよ…!」

 

 

もちは腕の中でもがくが、男と女の力の差は分かる通り、もちは抜け出せない。

 

 

「バカ…バカぁ…!もう止められないじゃない…!好きの感情を…止められないじゃない…!」

 

 

もちの言葉をただただ俺は受け止める。

 

 

 

 

どれくらいの時間もちは泣いたのだろうか、もう涙が乾いてるぐらいになっていた。

もちは何時ものもちに戻りつつあった。

 

 

「はぁ…何でこんな人好きになっちゃったのかなぁもちは。別にあなたを責めてる訳じゃないからね?そこんとこ勘違いしないでよね!」

 

 

…うん、何時ものもちだな。

このツンデレ具合で調子が戻ってきたと確信した。

俺は抱き締めていた腕を解放し、もちと距離を置こうとする。

が、もちは離れようとしなかった。

もちの腕が俺の背中に回っていた。

 

 

「あんなに熱い抱擁した癖にもう離れようとするの?まだ満足してないんだけど?」

 

 

………マジか、さっきまで自分から離れたがっていたとは思えないぐらいくっ付いてくる。

いや離れたくないなら良いのだが、ここは公衆の面前な訳で…

周りにガッツリ見られている状況だ。

 

 

「良いじゃない別に、見せ付けてあげましょうよ。」

 

 

離れたがっていた子の発言とは思えなかった、だが…もちと一緒のとこを見られるのもまた…良いのかなと思い始めてる自分がいた。

 

 

 

 

思えば俺があの時もちに声をかけなければこんな事にはならなかったと考えると、声をかけて良かったと思ってる。

可愛くて、ちょっと素直になれないこの子を…

 

 

「あのさ…これからはお茶じゃなくて、デート…になるんだよね?もちね、お家デートとか…水族館とか…遊園地に憧れてるんだ。離れ離れになってあんまり会えなくなるかもだけどさ…また会えたら…デート…してくれる?」

 

 

もちは頬を赤らめながらそう問う、俺は首を縦に振り肯定する。

するともちは腕に抱き着いてきた。

 

 

「絶対だよ…?」

 

 

街灯に照らされる2人の影は、1つに重なった…

 

 

 

 

 

 

 

もちが引っ越して1ヶ月、頻繁に連絡をとってはいるがそれでもやはり寂しさを感じる。

結局何処に引っ越したのか教えてもくれなかった、だけど連絡をとってる時に元気にやってるような事を聞いてるので、あまり心配はしていない。

ただ、今はもちに会いたい…

 

 

 

その時携帯が鳴る、相手はもちだ。

 

 

「後ろ、向いてみて?」

 

 

メールはそれしか書いておらず、振り向いてみると

 

 

「こんにちは、元気…してた?」

 

 

もちが居た、姿を確認すると俺は周りを気にせずもちに抱き着いた。

 

 

「ちょっと…積極的なのは嬉しいけどさ、恥ずかしいじゃない…」

 

 

もちは困ったように、でも困ってなさそうに呟いた。

1ヶ月の間何をしていたのか聞いてみると

 

 

「ちょっと実家にね、あなたの事話したら是非来てくれってなったの」

 

 

俺の知らない間に話が進んでて困惑してる、でももちの家族にも会ってみたさはある。

 

 

「じゃあ決まり!早速行きましょ?そのままもちの家でデート…とかね♪」

 

 

 

(そのまま家族に紹介とかも…はまだ早いかな…?ふふっ♪)


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