友の追憶   作:DOFO

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第二録「後輩との連み」

 午前の授業が終わると夕方のサークルの飲み会まで暇になった。街に行ってぶらぶらするか家で昼寝でもするか、湊と結月は何をするのか聞くことにした。

 

「湊と結月はこの後どうする?」

 

「私は結愛と用事があるから」

 

 中村 結愛(なかむら ゆあ)、こいつも高校からの付き合いだ。黒髪の三つ編みで眼鏡を掛けて、委員長の様な雰囲気を醸し出してる。高校の頃は学年トップでよく勉強を教えて貰っていた。同じ大学だが学部は違っている。

 

「俺もこの後バイトで忙しい」

 

 そうなると暇なのは俺だけか。そういえばサークル部屋に忘れ物をしていたことを思い出した。帰る前にサークル部屋に寄ろう。

 

 

 

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 サークル部屋に入ると誰かが携帯を触っていた。この子は確か…

 

「あっ、先輩。おはようございます」

 

「あれ?こんな所でどうしたんだ?」

 

 山田 桜(やまだ 桜)、俺がサークル勧誘の時に誘った後輩だ。大人しそうで勧誘しやすそうだったため俺が声をかけた。その時から時々話す程度になった仲である。話しをする内に同じアパートに住んでいることが分かった。

 

「あれ?今日はサークルで新人歓迎会じゃないんですか?」

 

「新人歓迎会は夕方からだぞ」

 

「え、そうだったんですか!?少し早く来すぎました」

 

 少し早いではない、早すぎる。この子は少し抜けている部分がある。

 

「先輩はどうしてここに?」

 

「忘れ物を取りにな」

 

「そうですか、これから暇ですか?」

 

「まあ、家帰って寝るかゲームするかだからな」

 

「じゃあ、レポート見てくれませんか?私、初めてレポート出すので先輩に見てもらいたいなって」

 

「ああ、俺で良ければいいよ」

 

 俺はそんなに頭が良い方ではない、平均値以上ではあるが高いと言える点数ではない。だが去年やったことがある問題だろう、後輩の為にここは一肌脱いだ方がいいだろう。

 

「で、どんなレポートだ?」

 

「はい、このプログラムなんですけど」

 

「……」

 

「先輩?」

 

 俺は後輩の為に力を貸せないようだ。何故ならプログラムは俺の頭では理解不能だからだ。

 

「よし、お前はしっかりしているから俺が見なくても大丈夫だ」

 

「えっ、でもさっき見てくれるって…」

 

「そんなことより夕方まで暇だろ、どっか遊びに行かないか?せっかく受験を頑張って大学まで来たんだ、今まで勉強してきた分の青春を返しに遊びに行こう」

 

「そうですね、何処か出掛けましょうか」

 

 なんとか勉強を回避し、遊びに出掛けることにした。

 

 

 

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 大学を出て、2人で街をぶらぶらしながら暇を潰していた。

 

「そういえば先輩に誘われるのは初めてですね」

 

「そういえばそうだな」

 

 思い返すと今まで桜を誘って何処かへ出掛けるのは初めてだった。と言うよりかは俺自身が家から出ることがあまりないから誘う事も無かった。昔はよく遊びには出掛けていたがあいつが死んでからなんだかつまらない様に感じてきたからだ。もし生きていたならこうやって出掛けていたのだろうか。

 

「あっ、先輩、映画でも見ませんか?」

 

「映画か。暇つぶしにはちょうどいいだろう」

 

 映画館に入ると街中に経っているのになかなかの広さがある空間だった。平日の昼だからだろうか、人が居らず、空いていた。そういえば最後に映画館で見た映画はいつだろうか、ふと思い返すといつ行ったのかぱっと思い出せない。この感覚は一昨日食べた夕食を思い出そうとする感覚に似ている。思い出せそうで思い出せない感覚、時間が経つにつれ気になっていく。なんだったんだろうな。

 

「先輩、これ見ませんか?」

 

 桜が指を指した方向には映画のポスターがあった。ホラー映画、最近話題になっている洋画か。とても怖いというレビューを見たことがあった。少し気になっていた事もあるから見るとするか。俺達はチケットを買い、何か摘もうとコンセッションでポップコーンドリンクのセットを買った。ついでに俺はホットドッグのマスタード抜きを買った。映画館のホットドッグは場所によっては味が全く違う。ドックロールが硬いか柔らかいか、玉ねぎが乗っているか乗っていないか。ドッグロールは硬さが違い、カリカリして食べている感覚を出す場所や柔らかさで食べやすくしているかで別れる。玉ねぎは好みが別れるが俺は乗っている方が好きだ。そんなことを考えながら指定のスクリーンへと入った。しばらくの間、映画のCMが流れていく。

 

「先輩はホラー映画って大丈夫ですか?」

 

「ホラー映画は時々友達見るから平気かな」

 

 まあ、実際はびびりながら見ている。見た日は1人でトイレに行きたくない。

 

「そうなんですね、実は私はホラー映画は苦手なんです。けど見たいっていう気持ちもあって見ようとするんですが1人じゃ怖くて。先輩が居てよかったです」

 

 ホラー映画は苦手だが見て見たいという人は結構いるだろう。俺もそうだ。苦手だが見てみたくなる気持ちがある。鶴の恩返しではお爺さんが鶴に襖を開けるなと言ったが好奇心に負け、見てしまったと言う話しがある。こういうのをカリギュラ効果と言うのだろうか。

 

「あっそろそろ始まりますね」

 

 館内が暗くなってきた。さて、どんな映画だろう。

 

 

 

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 映画の内容はこうだった。ある家族が山小屋のロッジで過ごす話しだ。半年間過ごすことになったんだが幽霊が現れ、次々とポルターガイストが起きた。しかし雪で山からは降りられないという絶望的な状況に陥っている。

 

「きゃあ!」

 

 ハラハラさせるシーンに桜は怯えながら見ていた。その隙に俺は桜のポップコーンを少しづつ食べた。もう俺の分がないからだ。中盤に差し掛かり、ある1人が精神に異常をきたし、憑依されてしまった。憑依された者は暴れ回り、他の人を襲い掛かる。そして若い女性がとうとう捕まってしまった。憑依された者は女性の腕に枷を付け、逃げられないようにした。

 

「あっ…」

 

 なんだろう、何か思い出す。心臓の鼓動が激しくなっていく。冷や汗も出てきた。ホラー映画を見て、ここまで動悸が激しくなることは初めてだ。ダメだ、それ以上は、そう思う。女性は少しづつ傷を付けられ、全身が傷だらけになった。俺の鼓動はどんどん大きくなっていく。そして女性の心臓にナイフが突き立てられ、今にも刺さりそうになっている。

 

「はぁ…はぁ…」

 

 呼吸が荒れてきた、過呼吸になりそうな程に。ナイフが上がりそして…ナイフが女性を突き刺した。その瞬間俺はあの光景が浮かんだ。あの日、あの場所で昨日まで元気でいた親友が殺され俺はそれを見て

 

「うっ!」

 

 俯き前を見るのを辞め、口を塞いだ。胸を締め付けられ

、これ以上見れば吐き出してしまいそうだった。だが耳からは叫び声が入ってくる。聞いたこともない声なのに想像を引き立てる。どうやって殺され、どんな叫び声を出していたのか、考えたくないのに描かれる。

 

「先輩、大丈夫ですか?」

 

 俯いている俺を桜が気に掛けてくれたようだ。

 

「…ああ、ちょっと日に当たって来るよ」

 

 俺は匆惶にスクリーンから出る事にした。それに着いていく様に桜も来た。

 

 

 

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「すいません先輩、無理に付き合ってもらって。ああいうの苦手だと思わなかったので」

 

「ああ、いや、こっちこそ悪い、途中だったのに」

 

 桜にはかっこ悪い所を見せてしまった。俺がまだあのトラウマを引きづっていたとは思わなかった。

 

「先輩、無理なら今日は安静にした方が…」

 

「いや、大丈夫だ。ちょっと今日はホラー抗体の調子が悪かっただけだ。この後どうする?時間もまだまだあるし、遊び足りないんだ」

 

 桜にはあまり不安にさせたくなかった。

 

「そうですか、それなら…」

 

 その後はウィンドショッピングをしたりゲームセンターで遊んだりした。




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