うちはサスケに転生して、欲望の限りを尽くす   作:量々

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第10話 中忍試験本戦 第一試合~

 中忍試験の本戦には、風影、火影、他多数の大名、忍頭が見守る中行われる。そこはまるでコロッセオのような闘技場。予選との違いはステージが段違いに広く、多少樹木が生えていることだろう。

 

「じゃあ、第一回戦サクラ、テマリ以外は下がれ」

 

 そう言ったのは本戦の試験官、不知火ゲンマだ。

 俺も会場の観客席に移動する。

 

==========================

 

「では、第1回戦始め!!」

 

「フン!」

 

 始まると同時、私は最速でカマイタチを放った。

 

【1の星・カマイタチの術】

 

 私の対戦相手は華奢な身体つきからは考えられない程の近接パワー型。先の予選を見る限り、一撃貰えば死にかねない程の馬鹿力だ。恐らく、扇子越しでも喰らうのは不味い。下手をすれば腕が逝く。それに、あの予選は同じ里の者同士の戦いだ。殺さないよう力をセーブしていた可能性もある。油断は出来ない。

 ……が、それは火力の話だ。アレだけの力を持っているにもかかわらず、奴本人の速度は大したことがない。素の肉体能力が高いわけではないのだろう。恐らく忍体術の一種で、印を組む必要がない忍術だと考えたほうが近い。

 

 なら、対策は簡単だ。

 

 私が最速で放てる忍術、1の星・カマイタチの術で近づかせなければいい。1の星は射程距離が短いが、横と上には広く、発生が非常に早いから、射程距離に入ったのを見てからでも迎撃が間に合う。

 

 この本戦の開始距離は僅か2mだが、それでも間に合う発生速度だ。

 

 その攻撃を、奴は予想通りバックステップで距離を取って躱す。

 

「おいおい!

 このわたしから距離をとって殺り合えると、本気で思ってるのかい!?」

 

 奴は予選でもそうだったが、速さはないが素早さがある。要は回避がうまいのだ。恐らく、こちらが攻撃に入ったのを見てから足でチャクラを消費するまでの時間が極端に短い。だから、こちらを見ていれば射程距離の短い1の星なら回避されるとは思っていた。ただ、相手も私が遠距離戦に特化していることは分かっているのだ。なら、開始と同時に突撃してくる可能性もあると考えていた。1の星でもひと一人飛ばせるくらいの火力はあるからそれは成立しないのだがな。

 

「…………」

 

 私の挑発を無視し、やつは更に距離を取る。そこまで距離を取れば、1の星を構え続ける必要もないだろう。……もしくは、それが狙いか? 3の星、つまり扇子を最大まで開けば火力と射程が上がる代わりに発生速度が大きく落ちる。その瞬間に何らかの術で懐に入り込むとか。一番有りえるのは瞬身の術か。奴の素早さなら、こちらが扇子を開ききった瞬間、3の星を構える前に発動することも……ッ!

 

 私は奴が親指を噛んだ瞬間、思考を切り上げて扇子を全開で開く。

 

 間に合うか?

 

【カマイタチの術】

【口寄せの術】

 

 ポフン。

 

「チッ!」

 

 カマイタチの術が届く前に、奴の口寄せが成立したか。しかし、口寄せの直後にカマイタチが到達したはずだ。下手をすれば今の一撃で終わってもおかしくはな…………は?

 

「なんだそれは……」

「ナメクジよッ!」

 

 そんな事を聞いてるんじゃない。デカすぎるだろ! そのナメクジは観客席のある辺り、高さだけでも5m、全長に至っては10m以上はある。口寄せの術はそれ自体が中忍レベルの時空間忍術だが、呼び出す対象の強さなどによって難易度や消費するチャクラ量が増加する。別に大きければ強いとは限らないが、ここまで大きいとなると、消費するチャクラも相応のものになるはず。

 それに…………カマイタチを食らったはずのナメクジの顔部分が無傷なのも気になる。試してみるか。

 

【大カマイタチの術】

 

「なっ!」

「…………」

 

 扇子を振ると同時に奴がナメクジの背中で伏せた。それはいいが、大カマイタチが当たったはずのナメクジには一切傷がつかず、その部分のナメクジが分裂していた。しかも、分裂した小型のナメクジらが本体であろう巨大ナメクジに再び合流していく。

 

「これは……」

 

 恐らく、斬撃などのダメージを受けると、その分だけ分裂し、それが本体に合流することでダメージを0に抑えることが出来るのだろう。あの様子から火遁や雷遁に弱いと推測が立つが、私にはどちらも使えない。複数の属性を実践レベルで使えるのは上忍以上の一部とされているので使えない事自体を嘆くつもりはないが……コレは不味い。明らかに私対策の口寄せ動物だ。ナメクジらしくゆっくりとした動きだが、この試合会場がいくら広いと言ってもいつかは端に追い詰められる。

 

 大カマイタチの術は一応上忍クラスの風遁忍術。これでも奴まで術が届かないとなると…………後のことを考えてチャクラを温存、なんて言ってられないな。

 

「うん?」

 

 私は広げた扇子を地面に突き刺し、その影で親指を噛んだ。奴が訝しむが、私は扇子に血を擦り付け、扇子を持ち上げる。

 

「ッ!

 カツユ様!」

 

 血が見えたか。

 だが遅い!

 

【舌歯粘酸】

【口寄せ・斬り斬り舞】

 

 こちらの口寄せを止めるためだろう。あの巨大ナメクジが口から液体を吐き出した。

 

「まさか、それも印なしでッ!」

「それだけじゃないさ」

 

 呼び出したのは鎌を持ったイタチ、カマタリ。コイツは呼び出したその瞬間から周囲数百メールに渡ってカマイタチの斬撃を放ち始める。故に――

 

「くっ!」

 

 ――先にだしたその液体は届かない。

 

 奴が再び伏せたのか、ナメクジの影に入るが無駄だ。半径数百メートルを無差別に切り裂くこの口寄せからは逃れられん。まぁ、その分私のチャクラを膨大に消費するがな。

 

 観客席付近で暗部が結界張ったのが見えた。さすがに重役を守る木ノ葉の暗部は優秀か。

 

 切り裂かれたそばからナメクジが次々と分裂し、吹き飛び、会場中に飛び散っていく。空中に飛び散ったナメクジも、地に落ちたナメクジも、更に細切れに。…………それにしても、こいつら斬撃は完全にノーダメージか。暫くして、本体の巨大ナメクジ、カツユとか言ったか? が完全に分裂し、会場中に散らばりきった。

 

 これで奴まで障害はない。尤も、この術で死んでしまっているかもしれんがな。

 

「……………………いない?」

 

 もし地に伏せているならナメクジだらけで見えんか。仕方ない。一旦カマイタチの術で払うしか――

 

「ッ!」

 

 ――まさかッ!

 

「しゃーんなろー!」

 

 私は背後の気配に振り向き、扇子を振り始めるが、一瞬遅かった。

 

【桜花衝】

 

 私の腹に、もろにやつの拳が刺さる。そのまま会場の壁まで突き刺さり、体の感覚がなくなった。

 

「がはッ!」

「ふー」

 

 …………感覚が戻ってくるが、どうやら生きているようだ。やつの様子を見ると、額にさっきまでなかった入れ墨のようなものが浮かび上がっていた。

 

「な、ぜ」

「このカツユ様の本領は圧倒的な回復力。死にさえしなければ例え胴体が真っ二つになろうとも相応のチャクラと引き換えに傷一つなく回復する」

「そんな……」

 

 胴体がって、まさか臓器すら回復すると? なんて無茶苦茶な。

 

「それと、カツユ様はその体の中に人体を収納し、癒やすことが出来る」

 

 収納できるというのは最後に気づいた。背後からの気配は、私の背後に飛び散ったカツユとやらの一体からだったからだ。

 

 しかし、そのカツユはその後更に切り刻まれ、どう見てもひと一人入る大きさを保っていなかった。恐らく、中身のサクラごと一度真っ二つになり、その後でくっつけたのだろう。カマイタチはしばらくの間続いてたからな。それくらいの時間はあった。時間がかかったのは万が一、ナメクジの影に奴が隠れていないかが気になって出来る限りナメクジを細かく切り裂いたからだ。少なくとも人一人隠れることが出来ないだけの大きさに。

 

 まさか、術者本体が真っ二つになってからくっついて、しかもそのまま即戦闘できるなど夢にも思わなかったよ。

 

「私が、生きてるのは……」

「あー……私、この陰を開放した状態で全力を出すと、人が消し飛んじゃうのよねぇ」

 

 死の森で知ったことだけど、なんて奴は続けた。

 

「怖い、女だ」

 

「第一試合決着!

 勝者、春野サクラ!」

 

====================================

 

「サクラちゃん!

 あの口寄せすごかったってばよ!」

「でしょ」

「無事で良かった」

 

 あの斬り斬り舞がサクラの頭部に命中していたら、果たしてサクラは生き残れたかどうか。

 

「サスケくん……」

 

 サクラがそのまま俺に抱きついてくる。

 

「フン」

「私も、少し怖かった」

 

「くぅ~、俺も彼女がほしいってばよぉ」

 

=====================================

 

「ネジとシカマル、下へ!」

 

 あーめんどくせー。

 

「では、第二回戦」

 

 相手が日向一族のエリート中のエリート。この時点でめんどくせーっていうのに、この試合は相手との距離が2mから開始される。日向一族は体術特化で、一撃貰えばまず終わりだっつのに。

 あー、リタイヤしてぇ。

 

「はじめッ!」

 

 とはいっても、チョウジがあそこまで必死になって戦ったし? 俺もそれを煽ったし。本気にならねぇわけにはいかねぇよなぁ。

 

【白眼】

 

 ネジが開始と同時に突っ込んでくる。対する俺は――

 

「自爆狙いかッ!」

「さて、どうする?」

 

 ――クナイを投げつけただけだ。

 但し、その尻にはワイヤーが伸びて、その先には大量の起爆札が付いている。この距離で爆発すれば、ネジも俺も爆散するだろう数だ。

 

「愚かなッ!」

「ッ!?」

 

 ネジは距離を取ることなく、その場で構えを取った。俺はそれに構わず、全力で退避する。

 

【八卦掌回天】

【瞬身の術】

 

 俺が退避する間際で見たのは、ネジの全身から目で見えるレベルで大量のチャクラが放出されたとこまでだ。予定通り林に退避できた俺は結果を確認しつつ、罠を仕掛けていく。

 

「フンッ」

「まじかよ……」

 

 回避するならともかく、アレだけの起爆札を防げば多少の手傷は負わせられると期待したんだがな。まさか、アレを無傷で迎撃するか。

 

「逃げ足の早いやつだな」

 

 この一ヶ月はこの修業に時間を割いてたからな。体術特化相手なら、とにかく距離を取らなきゃ話になんねぇ。

 

「へっ!」

 

 仕掛けは大体終了。もうぜってぇこの林からでねぇ。

 

「待ち、か」

 

 なんとでも言え。日向ネジは完全に格上だ。開幕の自爆も、このガン待ちも、こっちが格下だからこそ打てる策。格下相手にこんな卑怯な真似をした日にゃ、奈良一族からすら非難の的だ。そんなめんどくせぇことになるくらいならリタイヤするね、俺は。

 

「さー、どうする?」

「いいだろう。

 乗ってやる」

 

 来たッ!

 

 やっぱ自信のある奴は違うな。

 

【影真似の術】

 

 本来は影がないところに距離制限付きで影を伸ばして、相手に引っ掛ける術だが、今回は地形が味方する。この林の影の中なら俺の移動する影がほぼ見えない上に、距離制限がない。影真似の術相手にこの中で戦うというだけで自殺行為だと言うのに、数多の罠を張ってこちらは万全の体勢。

 

 にも関わらず、ネジは正面からここに入って――

 

【八卦空掌】

 

「――がはッ!」

 

 印を組まない中距離忍術!?

 無茶苦茶しやがる!

 

 影真似の印を組んでいた俺には、透明な衝撃波を躱せなかった。

 

 俺が吹っ飛ばされると同時、用意していたポーチから道具が散らばり、俺が任意で起動できるよう手元に用意していた罠も暴発していく。

 

「自爆してでも、などという形でしか勝利を目指せないものに、天は味方しない」

 

 それらを全て紙一重で躱していくネジ。恐らく白眼で全てを確認していたのだろう。こちらとしても罠は所詮陽動。決め手は俺の影真似だったが、体勢を立て直すまでの数秒間、影真似の印が組めない。ネジはその数秒の間にケリを突けるつもりだッ!

 

「ぐッ!」

 

 立ち上がろうとする俺の腹部にキリキリとした痛みが走る。

 

「フン」

 

 まさか、さっきのアレも急所を狙った、てのか!?

 流石にアレで点穴を点かれてるなんてことはないが、明らかに内臓にダメージが入ってやがる。立てねぇ。

 

「くそっ!」

「無駄な演技だ」

 

 演技じゃねーよ!

 ネジは、自身に向かってきたクナイの一つを空中でキャッチ、そのまま前方の木に向かって投げ込む。

 

 サク。

 

 木に刺さる音と共に同時に、俺はその場で伏せ、轟音と爆風が吹き荒れた。

 

「結界法陣。起爆札による上忍クラスの結界忍術だったか。

 大したものだが、この白眼には通じない」

 

 結界法陣の起点となる起爆札にクナイを刺して起爆させたわけだ。

 

「無駄だ」

 

 そして、爆風に紛れて近づいていた影が躱された。

 

「ちっ」

「一度発動すれば印を組まずとも影は動く。

 それは予選で見たな」

 

 影真似の術は秘伝忍術ながら有名な術だ。ネジが対策を打ってくることも予想できたこと。そのための結界法陣もどき。ネジの対策にやられたフリして(実際に立ち上がれなかったが)、結界法陣もどきを見抜き、油断したネジに影真似の術を当てる算段だったが、アテが外れたな。

 

「ここまで段取りしても、だめか。

 冷静過ぎて嫌になるぜ」

「この眼は全てを見抜く。

 焦る必要など、ありはしない」

「へっ!

 言ってろ!」

 

 こちらの影真似を躱したことで、再び距離が開いた。そこで俺は木の陰で忍具を取り出す。こっちはさっきの一撃でろくに動けやしねぇ。

 つまり、これが最後だ。

 

「またそれか」

 

 俺が取り出したのは最初に使ったワイヤーと大量の起爆札が付いたクナイだ。それを木越しに白眼で確認したであろうネジが、俺に悠々と突っ込んでくる。

 距離がある状態で投げてもだめだ。投げる瞬間、中距離忍術で撃ち落とされれば俺だけが爆発に巻き込まれる。仮に撃ち落とされてもその瞬間、ネジと俺が両方爆散する距離で投げ込む必要がある。そのタイミングなら、ネジはさっきのくるくる回転する防御忍術で防ぐはずだ。

 

「今だッ!」

 

 そして、ネジは――

 

「無駄だ」

「――なっ!」

 

 ネジは防御忍術を使うこともなく、先程までの普通のクナイを避けるかのように紙一重で躱してそのまま突っ込んでくる。

 

=====================

 

 シカマルの驚く姿を見て、自身の考えが間違ってなかったことを確信した。

 

 シカマルが八卦空掌を受けた後、俺を結界法陣に誘い込むために焦った表情をしたのは演技だった。しかし、立ち上がれなかったのは演技ではない。俺は八卦空掌でシカマルの内臓にダメージが入ったのを白眼で確認している。だから、ここで投げるはずがないのだ。自身を巻き込む位置で起爆札が大量についたクナイなど。仮に俺が八卦掌回天をしていれば、その起爆札の爆発で、シカマルだけが死ぬ。内臓を痛めたシカマルは瞬身の術が使えない状態にあるからだ。

 なら、なぜこのタイミングで投げたのか。

 

 それはこの起爆札が偽物だからだ。

 

 小賢しい策である。しかし、コレに気づけなければ危なかった。なぜなら、この起爆札が偽物であるのなら、シカマルは八卦掌回天で足を止める俺から逃げる必要がなくなるのだ。

 であれば使える。

 そのタイミングで影真似の術が。

 

 最初の起爆札を付けたクナイは距離を取るためだけではない。このための伏線でもあったのだ。予選で砂の忍を手玉に取っていなければ、気づかなかったかもしれない。しかし、一ヶ月という準備期間でシカマルが相当深い策を練ってくるだろうことは分かっていた。

 

「終わりだ」

 

 ここでやはりシカマルの影が動き出す。だが、俺は八卦掌回天で無防備を晒しているわけではない。躱すのではまた距離が開く。ここは八卦空掌が正解だろう。一度発動した影真似の術が続いていると言っても、奴は影を伸ばしている間足が止まることに変わりはないのだ。それも印を組んで動かしているときよりも遅い。余裕で間に合う。

 

【八卦空しょ――

 

「ッ!?」

 

 ――背後で響く爆音と共に、俺の構えが崩される。

 

 何が、いやコレではッ!

 

「影真似の術、成功」

「なぜ……お前は」

「もう俺が動けないから、あの起爆札は偽物のはずってか?」

「ッ!」

「あの中に一枚だけ本物が混じってた。

 そんだけの話だ」

「…………」

 

 一枚だけなら、巻き込まれても死にはしない、と。いや、あの距離で一枚だけならむしろ八卦掌回天中に強引に影真似を使うことも可能だった?

 だとしたら――

 

「さて、どうする?」

 

 ――あの時点で既に詰んでいた、か。

 

==================================

 

「第ニ試合決着!

 勝者、奈良シカマル!」

 

「驚いたな」

「大分相性悪かったと思うんだけど」

「シカマルが勝ったってばよー!

 ザマーみろ!」

「お前、ネジのこと嫌ってたか?」

 

 この世界では誇り高き失敗者とは到底言えないナルトは、ヒナタに惚れられていない。結果、ヒナタは予選でネジに早期ギブアップしている。

 

「偉そうに運命運命ってヒナタをコケにして気に食わない奴だったってばよ」

「そうか」

 

 ちなみに、ヒナタが早期ギブアップして、我愛羅の相手もやるだけやってギブアップして、原作と違いスパイのやつが大蛇丸の件で予選突破していない都合上、あの予選で一番重症を負ったのはサクラの対戦相手のキバである。

 

「ねー」

「ん、ん?」

 

 そんな事を考えていたもんだから、少し返事に詰まった。

 

「今の試合、ネジの敗因はなんだったのかしら?」

「そりゃー、シカマルを嘗めて林に入ったことだってばよ!」

 

 ナルトが口を挟んでくる。

 

「それじゃー決着つかないでしょ」

「んじゃ引き分けだな!」

 

「いや、ネジなら十分林の中でもシカマルを仕留められた」

「実際には負けてるってば」

「敗因は、ネジが勝負を焦ったことだ」

「焦った?」

「影真似の術を維持し続け、大量の忍具を消費し続けてようやくネジと渡り合えるのがシカマルの現状だった」

「つまり、ネジはシカマルのチャクラ切れ、忍具切れを待つべきだったってこと?」

「卑怯だってばよ」

「そう。

 この卑怯な手を、ネジは選ばなかった。……選べなかったのかもしれんが」

「選べなかった?」

「ネジには白眼でシカマルの忍具も、影真似が発動する瞬間も、影真似を維持してチャクラを消費し続けてることも、最後にシカマルが動けなかったことすら、見えていた。

 すべてを見通していたと思い込んだからこそ、今すぐ決着をつけに行くその一手が、当然の一手に見えてしまったんだろう」

「……でも、実際には」

「そう。

 実際には起爆札が偽物かどうか、白眼で見切れない以上最後の一手は読みでしかない。危うい一手で、あのタイミングだけがシカマル唯一の勝機だった」

 

 サクラが息を呑む。

 気づいたのだろう。

 シカマルが行った全ての策はネジにすべてを見通しているかのような錯覚を与えるための伏線。たった一回。たった一度だけネジに危うい一手を打たせて、そこを突くのがシカマルの真の狙い。

 

「全てはシカマルの手の平の上だったってことだな」

「すごい……」

「ウンウン!」

「ナルト、あんた分かってんの?」

「つまり、ネジがシカマルを嘗めてたってことだってばよ!」

「…………そうね。

 そうなるわね」

 

 釈然としない表情でサクラが勝ち誇ったナルトを睨んでいた。

 

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