「ロック・リー、うちはサスケ、下へ!」
サクラの試合も、シカマルの試合も凄かった。ここに集まっている観客はある程度目が肥えているのでサクラやテマリがどれだけ下忍離れした忍術を使っていたか分かるし、シカマルがどれだけ緻密な策を立てていたかも、ネジがそのほぼすべてを見破り、対処してみせた凄さも理解しているはず。
うちは一族最後の生き残りはこれ以上にすごい試合になる、なんて期待されてる事を思うと、胃が痛いな。
「君とやるのは二度目ですね」
「そうだったな」
中忍試験第一試験前に一戦挑まれて、完封してやった奴だ。もちろん、リーは八門遁甲を開く前に、ガイに止められている。
「あの時止められた技、お見せしましょう」
「ああ、楽しみだ」
頑張れよ、ロック・リー。写輪眼で幻術に掛ければ即終わるだろうが、そんな事をすればブーイングの嵐間違いなしだ。うちはの復興のためにも、ここで目立っておきたいし。体術だから若干地味だが、八門遁甲の存在を知る者にとってはリーの凄さが理解できるはずだ。
そして、それを正面から破れば、うちはサスケの名も轟くことだろう。
「では、始めッ!」
【永遠の万華鏡写輪眼】
リーは手に巻いた包帯を僅かに外し、両腕を交差させる。
「待ってくれるんですね」
「……この試合は、火影達に自分の力をアピールする場だ。
お前が全力を出せないと、俺が困る」
「……それで無様に負けたら、元も子もないでしょう」
「ハッ!」
「…………」
「一度目と同じだ。
お前は俺に傷一つ付けられねぇよ」
「言いましたね。
後悔させてあげましょう!」
【開門・開】
【雷遁・チャクラモード】
俺の体を、雷が包む。
「ッ!」
「さぁ、来い」
「行きますッ!」
どこかで見たような、体勢を崩すための軽い掌打。しかし、速度はこの前よりずっと早い。開門を開けるだけでここまで変わるか。
だが、対応はこの前より圧倒的に楽だった。
「なぁッ!」
リーがこちらの軽い掌打を、腹に受けて吹き飛んだ。
なんてことはない、ただのカウンター。但し、最初に出会ったリーの木ノ葉旋風をカウンターで合わせたのとはわけが違う。カウンターを警戒した上で、なんの抵抗もできずにリーはカウンターを受けたのだ。
それが指し示すのはつまり――
「最初に僕と戦ったときは、そちらも本気じゃなかったということですか」
「フン」
――俺とリーの間に圧倒的な速度差があるということだ。
その認識は間違いである。体術だけという縛りなら十分本気だった。この忍体術、雷遁・チャクラモードはあの時点では使えなかったからな。大蛇丸から得た忍術のデータを元に、穢土転生で得たチャクラによる際限のない影分身修行で習得したのがこの雷遁・チャクラモードである。
「しかも、今の一撃すら手加減しましたね」
「言っただろう?
全力でなければ俺が困ると」
「ッ!」
【休門・開】
また向かってくるが、
「遅い」
やはりカウンターで軽く蹴飛ばす。
「くっ」
【生門・開】
それなりに早くなったな。
だが、
「まだ遅い」
「ぐぁ!」
再び掌打。
【傷門・開】
「ウァァァァァ!」
「…………」
八門遁甲は体を流れるチャクラの量に制限を掛ける八門を開けることで何十倍もの力を引き出す術だ。そして、開ければ開けるたびに体に掛かる負担は増していく。傷門を開けば、体中で内出血が起こり、体が真っ赤に染まる。
次の動きは、流石に早かった。
「ぐッ!」
「ようやくだな」
俺はリーの掌打を迎撃したが、カウンターでぶっ飛ばす程の余裕はなかった。
写輪眼か雷遁・チャクラモード、どちらも無ければ視界にすら映らなかっただろう速度だ。まぁ、どちらか一方でもあれば見える程度ということだが。雷遁・チャクラモードは身体能力だけでなく、反射神経も強化するからな。
「ウォぉぉぉ!」
「フン」
蹴り、掌打、移動、あらゆる手を使って崩そうとしてくるが、単純な練度でこちらが上回っている上に、写輪眼と雷遁による反射神経強化で、常にこちらの技は後出しで成立している。
故に崩されたのは、
「くっ!」
「吹っ飛べ」
リーの方だった。
軽い掌打で壁際まで転がったリーは、
「これで最後です!」
【杜門・開】
「フン」
このままでも、勝つことは容易だ。
しかし、この方が楽しいだろう。
「ッ!?」
俺は、雷遁・チャクラモードに全力でチャクラを注いだ。
それこそ、尾獣並のチャクラを。
それでもリーは正面から、全力の正拳を突き出す。恐らく杜門を開くと、まともな体術の打ち合いなどはできなくなるのだろう。拳を引き絞る際、筋肉が切れる音が聞こえた。言葉通り、これが最後の一撃だ。
そして、それを俺は――
「そんな……馬鹿なことがッ!?」
――真正面から体で受けた。
「お前の攻撃なんて、防ぐ必要すらない」
絶望するリーを、優しく蹴り飛ばし、壁面に叩きつけた。
「ァ…………」
雷遁チャクラモードは最硬の鎧にもなる。防ぐ必要がないどころか尾獣並みのチャクラを注いで防いでいるのだが、見た目的にはそれっぽいだろう。
「が、ガイ先生……ぼくは」
「第三試合決着!
勝者、うちはサスケッ!」
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観客席に戻ると、ナルトとサクラがリーについて話していた。
「アレ、ネジより強くなかった?」
アレ呼ばわりか。原作では助けられることでリーさんと敬っていたが、こっちではただ俺にボコられてるだけだからな。
「ああ。
前の俺だったらやられてたかもしれないってばよ……」
「へぇー。
アンタ、アレに勝てるんだ」
サクラが感心したようにうなずく。
サクラはあくまで医療忍者だ。強くある必要はないのだが、リーに当たっていれば勝つのは相当厳しかっただろう。目があるとすればなんとかカツユを口寄せて、カツユの中で戦闘を全てカツユに任せるくらいか。サクラは単体で戦う際一番相性不利なのが純粋に体術、速度でサクラを上回っているような相手だろうな。リーに怪力が当たるようなことはまずないだろうから。…………創造再生を使えばまた別の話だが。
「へへん!
俺だってこの一ヶ月でエロ仙人にすげー術教えてもらったんだってばよ!
もしかしたらサスケにだって勝っちゃうかもなっ!」
「アレ見た後でよくそんな事言えるわね…………エロ仙人?」
「俺に何だって?」
「あ、サスケ!」
「……サスケくん、最後のアレは心臓に悪いわよ?」
「すまんすまん」
「サスケ…………最近サクラちゃんの尻に敷かれてる気がするってばよ」
サクラの言うことも正論だしなぁ。最後の演出は必要なかったといえば間違いないし。
「ナルト、我愛羅、下へ!」
「馬鹿言ってないで、さっさと行きなさい。
アンタの番よ」
「待ちくたびれたってばよっ!」
ナルトは控室から入場用の通路を通らず、観客席から飛び降りていった。
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「ククク」
我愛羅が攻撃的な笑みを浮かべて、というか若干声に出して笑いながら、ナルトを見ていた。
「気色悪いってばよ……」
「…………」
我愛羅の笑みが怒りの笑みに変わった気がする。
「ナルトのやつ、早速挑発してるわね!」
「ただの素だと思うが」
サクラのテンションが高い。我愛羅とナルトの試合はサクラも楽しみにしていたらしい。
「では、始めッ!」
【九喇嘛モード】
始まると同時、ナルトが黄色いチャクラを身にまとう。
「なに、あれ?
尾獣化?」
「チャクラは確かに九尾のものだが、四本目より更にチャクラが濃いな」
尻尾は出てない。しかし、チャクラの量が圧倒的だ。
「行くってばよッ!」
「来い」
その瞬間、ナルトの姿が消える。
「リーの比じゃないな」
「ぐっ!」
砂のガードが一瞬も反応できず、我愛羅が壁まで吹っ飛んだ。
瞬身の術の一種だろうが、速すぎる。万華鏡と雷遁・チャクラモード、両方なければ俺でも戦いにすらならんな。両方あれば十分やり合えるが。
「あれがナルトの新術……」
「だろうな。
九尾のチャクラが、ナルトの体に負荷を掛けていない」
「完璧にモノにしたってことね」
すると我愛羅が壁際で自身を中心とした砂の球体を作り始める。
「ん?」
ナルトがそれ見て、訝しむ。
いや、
「子 申 任 子 卯……」
それを聞いて訝しんだ。
こちらまでは聞こえていないが、原作知識だ。
「なにかしようってんだな?
待ってやるってばよッ!」
ナルトは九喇嘛モードを解除して、座り込み始めた。
「ナルト……あれって、サスケくんのマネかしら」
「あー」
なるほど。リーが八門を開くまで待ったから、自分も我愛羅が術を完成させるまで待ってやると。
「それにしても、一度解除するってことはあの尾獣化もなにかリスクが有るのかしら?」
「単純に莫大なチャクラを消費するってだけだろう」
「あ、そっか。
四本目以上のチャクラなんだもんね」
仙術があればまだマシだろうが、ナルトはまだ覚えていないだろう。多分。
「サスケくんは、あの砂の球体の中でアイツが何をやってるか分かる?」
「恐らく……尾獣化だろう」
「へぇ…………え?
…………え?」
サクラが二度驚いた。
「あ、アイツも人柱力なの!?」
「だな」
「広いって言っても尾獣同士が殺り合えるような場所じゃ……。
そもそもここは里の中心部よッ!?
砂の里は何を考えて……」
それを言うなら木ノ葉もヤバイ。九尾の人柱力を里の中心部で戦わせてるんだからな。お互い様だろう。もっとも、被害をうけるのは木ノ葉だけだが。
「安心しろ」
「さ、サスケくん!」
「飛雷神の術で逃げる準備は整っている」
「止めなさいよ!?」
「あー、ちゃんと俺と関係を持っている人たちの避難も済んでいるから止める必要はない」
「こうなること分かってたわね!?
しゃーんなろー!」
サクラが何やら叫んでいるが、怪獣大決戦、楽しみじゃないか。
暫くして、それは起きた。
「羽?
…………幻術!」
【解】
【魔幻・鏡天地転】
「来たな」
「どういうこと!?」
「砂の里と音の里が戦争を仕掛けてきたってことだ」
「は!?」
その瞬間、ポフンという音共にバカでかい砂の化物が現れる。
「あれは!」
「よーやく終わったな?
じゃ、行くってばよッ!」
【九喇嘛モード】
「なに、あれ……」
「あれこそが、ナルトの中の九尾だ」
砂のバカでかい狸の前に、狐の化物が現れた。但し、砂の狸、守鶴と違い、完全な実体ではない。チャクラで出来た真っ黄色な九尾だ。その頭の中には九喇嘛モードのナルトが仁王立ちしている。
【尾獣玉】
「ちょっ!
そんなバカでかい尾獣玉使ったらッ!」
「退避だな」
【飛雷神の術】
今回は一人で発動した。この術の開発者、二代目火影の穢土転生体から吸魂の術で知識を奪っているからな。この一ヶ月の影分身修行でモノにした。
「ここは?」
一緒に連れてきたサクラが辺りを見渡す。
「俺たちに戦争を仕掛けてきた砂の里、その少し手前の砂丘の頂上だ」
「なんでそんな所に…………え?
サスケくん、まさか……」
察しが良いな。
「あぁ、ちょっと行ってくる」
【飛雷神の術】
こんな見晴らしがいい場所を確保できたのも、里の中心部まで影分身が忍び込めたのも、全てテマリの記憶のお陰だった。
「いい眺めだ」
里の中心部の塔。その頂上まで転移した。そこからの見晴らしは悪くなかった。五大国、それぞれ一つの里にいる忍の数は約1万人程度。一つの国に1億以上の人達が暮らしていることを考えれば国の軍事力そのものである忍の数はそう多くない。
つまるところ、この里一つ潰せば砂の里はほぼ終わりだ。
【輪廻眼】
「楽しいな」
無限にチャクラを供給できる穢土転生体から、蓄えに蓄えた膨大なチャクラを出来る限り注いだ最大火力だ。
【神羅天征】
「全力で力を振るえるというのは、本当に楽しい」
音は聞こえなかった。
俺を中心として何者にも阻めない、全てを押し流す衝撃波が広がる。
悲鳴も、血も、何もかもが押し出されていく。
力の出発点である俺には何も聞こえない。人を殺した感覚も、物を壊す感覚もない。しかし、里を滅ぼす快感は流れ込んできた。
「爽快だな」
そこには何も残らなかった。
砂の里らしく、クレーターのように凹んだ砂だけが広がっている。そこに里があった痕跡すら残っていない。
【飛雷神の術】
「どうだった?」
「…………すごかった」
放心状態のサクラを見て、もう少し放っておきたい感はあるが、まだお楽しみが残ってるしなぁ。
「次に行くぞ」
そう言って俺はサクラの肩に手を置く。
「……うん」
【飛雷神の術】
「ここは、地下?」
窓の無い部屋を見てそう思ったのだろう。
正解だ。
「波の国にある屋敷の地下だな」
「は?
波の国?」
「橋作りの護衛任務を受けた際、本体である俺は用があるから出かけるとお前には伝えていたはずだ」
「…………女の子引っ掛けてただけじゃないんだ」
木ノ葉の里で引っ掛けた女の子達は大体この屋敷に飛雷神の術で転移させてある。中忍試験本戦前日にな。
俺は穢土転生体であるドスとザクを呼ぶ。
「コイツら、大蛇丸に穢土転生体にされた……誰を生贄にしたの?」
「死の森にいた他国の受験者だな」
「いつの間に…………はぁ。
木ノ葉の里の人間を生贄にされるよりいいけど。
で、こいつらをどうするの?」
「コイツらはチャクラ回復用だ」
【封術吸引】
「なるほど。
サスケくんでも里一つ潰す術を使えば、チャクラも切れるのね」
「まぁな」
輪廻眼で限界までチャクラを溜め込んだ俺のチャクラがほぼ空になるほど注ぎ込んだ神羅天征だ。恐らく原作ペインの神羅天征より火力は高かっただろうし、正確にはもう少し緩めても里は潰せただろうな。
楽しいから全力を出したが。
「これからどうするの?」
「木ノ葉に攻め込んだ砂の忍は約100名。そいつらと戦りにいく」
「……サスケくんって本体修行せずに殆ど遊んでるとこしか見ないけど、戦うの好きよねぇ」
「修行はつまらんが、戦うのは楽しいだろ?」
「勝つのが、でしょ?」
「負けたら終わりだしな」
「…………そういえば、そうなのよね」
若干しんみりしだした。
これで行くな、なんて言われたら困るな。
「俺は負けんよ」
「そりゃ、あれだけ強けりゃね」
「ははは」
そこは心配じゃないんだな。
「但し、怪我したらすぐに戻ってきてね?」
「ああ」