うちはサスケに転生して、欲望の限りを尽くす   作:量々

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第14話 第四次忍界大戦

「戦争、やっぱり起こったわね」

「上は分かってたフシがあるけどな」

 

 誰が見ても分かる、当然の結末だ。

 

「つまり、どういことだってばよ?」

「風の国を併合したのは戦争が前提だったってことだ」

「は?」

「上でどういう話があったのかは知らないけどね」 

「そもそも、木ノ葉の上層部がその話し合いにどこまで関われたのかも怪しいがな」

「へ?

 戦争するのは木ノ葉なんだから、五大国の話し合いに関わってたんじゃ」

「正確には、話し合いに参加したのは火の国であって木ノ葉じゃない」

「えっと……つまり?」

「火の国の大名が、木ノ葉なら勝てると思えば戦争は起こるってことよ」

「はぁ!?」

「まぁ、そこまで酷くはないでしょうけど」

「最低限、木ノ葉から三カ国を相手に勝算がある程度の話は受けていただろうさ」

 

 無策で三正面作戦を決行するほど火の国の大名は馬鹿じゃない……はずだ。

 

「どんな勝算だってばよ?」

「それを、これから聞くのよ」

 

 そう、俺たちは火影に呼ばれていた。上忍昇格の決定とともに。

 

=====================

 

 上忍への昇格は、なにか試験があるわけではない。火影が任じればそれで上忍だ。とはいえ、平時は学力やら実績やらを火影が見極めて上忍に選ばれるもので、実力があればなれるというものでもない。……が、今は平時とは程遠い。戦争に置いて上忍の方が都合がいいから実力がある俺たち三人を上忍へ昇格するらしい。俺とナルトはともかく、サクラまでなのは予想外だったが。修行で強くなったのか、医療系の方で動かすために上忍にするのか。後者なら特別上忍でいい気もするが。他には我愛羅も上忍へ昇格する。

 

「来たか」

 

 集まっていたのはナルト、俺、サクラの他に、カカシ、ガイ、我愛羅がいた。我愛羅は分かる。上忍への昇格通達だろう。カカシも俺達の担当上忍だ。それも分かる。だが、ガイはなんだ?

 

「戦時下のモノとはいえ、上忍昇格おめでとう。そして、お前らにS級任務を与える」

 

 正式なS級任務を与えるための上忍昇格、というように聞こえるな。

 お前ら、というのはガイとカカシに俺たち上忍昇格組の計6人にということなのだろう。

 

「任務の内容は――」

 

====================

 

「ふー」

 

 一週間後、か。

 俺は隣で眠るサクラを抱き寄せつつ、火影に聞かされた策を思い返す。

 

 今回の三国同盟と火の国の戦争。これは大名たちに決められたものであり、今までのように奇襲から戦争が始まることはない。一週間後、決められた時間から始められる。大名が関わる上に、ある意味お互いが勝利を確信しているからこそ成立するような話だ。

 

 木ノ葉にいる忍は約9500。先の戦争で死んだのが500人程と言うのは非常に少ない人数だ。特に中忍以上の忍は丸ごと残っているし、ここに砂の里の生き残り500を足せばちょうど1万。これは各五大国それぞれの忍の数に相当する。つまり、砂の里は約9500の忍が死んだということだ。

 それはさておき、今回問題になるのは、岩の里、霧の里、雲の里、合計3万の忍と5匹の尾獣、もとい5人の人柱力をどう抑えるか、だ。木ノ葉とは忍の数で2万の差、尾獣の数で3匹の差が付いている。この時点で絶望的な戦力差と言っていい。…………が、一応この戦争が決まる前に、火の国が田の国、つまり音の里と同盟を結び、雲の里一万の忍を音の里が抑えるという話が付いている。木ノ葉と雲の里の間には音の里が存在するので、自然、音の里はどちらかに付くことを迫られていたのだ。そして、音の里の忍頭、大蛇丸は俺の傀儡になっているので当然木ノ葉に付く。現火影、綱手は訝しんでいたが、火の国の大名は田の国の大名の言葉を信じることに決めたようだ。少し前まで戦争をしていた相手を当てにして戦争始めるなど、どうかしていると木ノ葉の上層部は考えているようだが、火の国の大名に雇われている側の木ノ葉に決定権はない。それに、大蛇丸なら雲の里の忍一万を抑えることが出来るかもしれないと力が認められているのもまた事実だ。ただ、この忍一万の中に尾獣は入っていない。

 

 つまり、雲の里の尾獣二匹は木ノ葉の方でなんとかしてくれという話だ。これは俺が一ヶ月で音の里に用意した戦力が尾獣にまでは対抗できないという事でもある。雲の里は人柱力二人ともが完全に尾獣化できるため、尾獣玉をなんとか出来るようでなければ話にならない。1万の忍を抑えながら尾獣まで相手にする戦力は流石に用意できなかった。もし、四代目雷影を相手するのにあの戦力を回さなくて良くなるのなら、八尾くらい抑えられたのだがな。

 

 火の国が残り二万の忍、4匹の尾獣を相手にする策、ある程度妥当なものだとは思うが、八尾を相手にする戦力が若干心配だった。

 

「まさか、ガイとカカシ、サクラの三人で当たるとはな」

 

===================================

 

 戦争当日。

 

「火影も無茶を言う」

 

 月夜の中、我愛羅が無表情のまま岩の里方面を眺めて呟く。

 

「お前は前も似たような任務を受けてたな」

 

 元風の国領と土の国領の境にいるのは、俺と我愛羅だけ。

 俺たち二人が受けた任務は岩の里侵攻軍1万の忍壊滅と二人の人柱力の討伐。つまり、岩の里全軍を俺、サスケと我愛羅の二人だけで相手するわけだ。

 

「地の利がある分、今回のほうがマシだ」

 

 この元風の国領は見渡す限りが砂漠。その莫大な量の砂を支配し、津波のように使うことで1万の忍を丸ごと飲み込む。それが我愛羅に与えられた今回の任務だ。そして、そのやり方では拘束できないであろう尾獣二匹の討伐が俺の任務である。我愛羅は前回、木ノ葉の里において砂の中忍以上の忍100人で抑えられる木ノ葉の忍を除いたほぼ全てを相手に勝利することが任務だった。

 

「そうか」

「それに、今回は尾獣を相手にしないで済む」

 

 代わりに中忍以上の忍が100人ぐらい多いけどな。

 

「そろそろ準備するか」

 

【輪廻眼】 

【完成体仙人スサノオ】

【口寄せ・穢土転生】

 

「穢土転生……お前も使えるのか」

 

 我愛羅からしてみれば、穢土転生は大蛇丸の細胞を取り込んだカブトが使用した術だ。この術の開発者は二代目火影。二代目火影は戦争時に穢土転生を使った卑劣な忍者としても有名なので、木ノ葉出身の大蛇丸やその部下カブト、そして俺が使えることにも特に疑問は抱かないのだろう。

 一応木ノ葉でも禁術で、今では使用者どころか巻物でしか伝えられることもないなんて事は木ノ葉の一部でしか知る由もない。

 

「こいつらは俺のチャクラ供給源として使う」

 

【封術吸引】

 

 他の術を使用しながらの封術吸引。輪廻眼を手に入れて間もないサスケには出来ないだろうと原作九尾に言われていたモノである。無限影分身修行がこれを可能にした。完成体スサノオ内部に大量の穢土転生体を保有する俺は外から見たらさぞ異様な存在に見えるだろうな。生贄はこの一ヶ月の間に大蛇丸のアジトから手に入れてきた実験体などの忍達だ。呼び出すのは大蛇丸の細胞に侵され、蛇の仙術チャクラと呪印の仙術チャクラを纏う者達。いくら穢土転生体は無限に回復するとはいえ、その場で持っているチャクラ最大量は生前と変わりがない。よってできるだけ大きなチャクラを持ち、縛りやすい忍が好都合で、この簡易量産型大蛇丸は最高に適した存在だった。

 

「無限のチャクラ、それがチャクラの化物たる尾獣を二匹も相手取れると判断した理由か」

「そんなとこだ」

 

 ・

 ・・

 ・・・

 

「始まるな」

「だな」

 

 時刻は朝の6時。戦争は日の出とともに行われることになっている。

 そこで、俺は印を組み始めた。

 

「まだ距離があるぞ」

 

 俺たちは、地の利を活かすべく、国境より大分元風の国領の内側で待っている。そこの砂には我愛羅が予めチャクラを練り込んである関係上、この位置でなければならない。よって、戦争が始まったはいいが、まだ俺たちの視界には敵の一人も映っていない。

 但し、俺は先行させた一体の穢土転生体から、元風の国の国境を超える岩の忍達が見えていた。

 

「この術は、この距離でこそ、最大の効果を発揮する」

 

【完成体仙人スサノオ・天碍震星】

 

=============================

 

「よーやく、借りを返せるってもんじゃぜ」

「借り?」

 

 儂は部下の赤土に運ばれながら、元風の国領を見下ろす。

 三代目土影たる儂は、幼き頃、師である二代目土影と共に、木ノ葉に負けておる。いや、木ノ葉にと言うよりうちはマダラに、じゃ。手も足も出ないほどの力量差がありながら、奴は儂らにとどめを刺さなかった。

 だからこそ、儂は今まで生きながらえておる。

 

 他の国に尾獣を配り、戦力バランスを整え、ありもしない平和な世界を目指した木ノ葉の里。

 

「あの時見逃したことを、後悔させてやるんじゃぜ」

 

 その時、儂らの進行方向に影ができた。

 

「あ、アレはッ!?」

「…………あ?」

 

 見上げた先には、天を覆う程に巨大な何かが。

 

「敵の先制攻撃じゃぜッ!」

「あ、ありえねぇ」

 

 孫娘である黒ツチが固まる。

 

「隕、石?」

 

 黄ツチが呟いた。空から降ってくるアレは強大な岩山。つまり、隕石だ。こんなタイミングに運悪く降ってくるなんてことはありえない。アレが忍術である事自体も同じくらいありえないが、木ノ葉には永遠の万華鏡写輪眼を開眼したうちはの小僧が居ると聞く。マダラ並に、いやそれ以上にありえない化物になっていることすら、考慮しなくてはならなかったか。

 

 マダラと初代火影の戦いは地図を書き換えたと聞くが、このレベルの忍術合戦が行われたなら、それも伝説では済まされない。

 

【土遁・軽重岩の術】

 

「儂が行くッ!」

「じぃっ!」

 

 軽重岩で自らに掛かる重力を軽減し、空を飛ぶ。超軽重岩の術であの岩山を支えるしかない。

  

「退避ーッ!」

 

 その間に忍一万を――

 

【尾獣玉】

 

「――ナイスじゃぜ」

 

 どうやら人型レベルの尾獣化と尾獣玉の発射が間に合ったようだ。あれは山一つ吹き飛ばす威力がある。岩山となれば一撃とはいかんようだが、落下速度が落ち、二人目の人柱力が放った尾獣玉が、今度こそ岩山を破壊した。

 

「破片が落ちてくる!

 土遁の壁で……ッ!?」

 

 下で指示を出していた黄ツチが、目を見開く。

 破壊した煙に紛れ、二発目の岩山が落ちて来ていたからだ。

 

【超軽重岩の術】

 

「ヌォォォォ!」

 

 今度こそ、岩山に触れ、その重力を一気に軽減していく。

 止める必要もない。

 時間さえ稼げば尾獣玉で、

 

「ありえん」

 

 黄ツチの視線の先には、3発目が。

 

「こんな馬鹿げた忍術の連発、チャクラが持つわけが」

 

「ガァァァァァッ!!」

 

 爆音が響く。うちの人柱力は雲の連中と違って、尾獣を完全に制御することができない。人型での尾獣化はできるが、完全な尾獣になり、それを制御することはできないのだ。しかし、この声は…………視線を背後に向けると、確かに完全に尾獣化した猿型の四尾と白い馬型の五尾が天を見上げていた。人柱力が死ねば、尾獣も死ぬ。暫くして尾獣は復活するが、尾獣が自ら死を選んだという話を聞いたことはない。人柱力がわざと制御を手放したか、尾獣のほうが死に物狂いで暴走させたか。

 

「どちらにせよ、一蓮托生じゃぜ」

 

 尾獣の方に肉体の操作権がある暴走状態とて、このタイミングでは逃げられまいて。

 

【尾獣玉】

 

 二匹の尾獣は、儂が抑えている大岩と、新たに降ってくる大岩にそれぞれ尾獣玉を放つ。完全に尾獣化した上で放たれるその威力は先のものとはわけが違う。儂は自身の重力を戻し、全力で離脱。空中で衝突した尾獣玉は爆風を撒き散らしながら大岩を粉砕。儂はそれに煽られながら着地した。

 

「進めッー!」

 

 黄ツチが号令をかける。

 尾獣がこの大岩を抑えてる内はこの隕石落としの術者が無防備になる。そこを数の暴力で討ち取る。木ノ葉は霧の里、雲の里の対応でこの術者以外に大した戦力は配置されていないはず。

 

「フン。

 この勝負、わしらの勝ちじゃぜ」

 

===============================

 

「あんな術もあるのか」

「天碍震星。

 天に大岩を造って落とす術だが、尾獣玉で防がれるのか」

「それでも、馬鹿げた規模だ」

 

 もう少し俺のチャクラが多ければ天涯流星で6発くらい同時に落として終わりだったんだがな。チャクラ供給量は問題ないが、最大チャクラ量が足りない。やはりアレは十尾の人柱力にでもならないとできないか。もしくは六道から力を貰うか。後者は六道仙人の意思しだいで、前者は体が真っ白になるからなぁ。

 

「尾獣を抑えているのだから、予定通りか」

「ああ。

 後は俺がやる」

 

 我愛羅が両手を砂に付ける。以前までの我愛羅では1万の忍を相手にできるほどの砂を動かせるチャクラはなかった。チャクラを予め砂に練り込んでも尚、だ。しかし、俺が写輪眼の幻術で尾獣を制御化に置いたお陰で、我愛羅は無制限に一尾からチャクラを引き出せる。

 

「…………気づかれたか」

 

【獄砂埋葬】

【流砂漠流】

======================

 

「気をつけてください!

 この砂、チャクラが練り込まれています!」

「総員止まれェ!」

 

 そういった瞬間、足元の砂が地中に向かって落ちていく。前方1000人近くが掛かったようだ。ただ、この術に掛かっていない後方が救出すれば殆どは助かるだろう。土遁系の忍術は儂らの十八番じゃぜ。

 

「前方、来るぞぉぉぉッ!」

 

 そう思った瞬間、津波のように流砂が迫る。忍術にしては規模が大きすぎる。これは尾獣の仕業か。

 

「中央は儂がやるッ!」

 

【塵遁・原界剥離の術】

 

 あらゆるモノを分子レベルで分解するこの術なら、チャクラの込められた砂を無力化できる。一尾の人柱力は砂を操るゆえに土遁の壁で防ぐ程度では一時しのぎにしかならん。軽重岩で空を飛べる忍ならまだやりようもあるが、アレは上忍以上の一部の忍しか使えん。

 

 流砂の波の中央が消し飛び、その周囲を土遁系の忍が壁で防いだ。

 

「じぃ!

 まだ来るぞ!」

「チィ!」

 

 人柱力とチャクラ量を比べるなんて、馬鹿のやることじゃぜ。

 そんな事を、隕石を落とし続ける輩を見て思う。

 

「儂は術者を直接叩く! 

 黒ツチッ!」

「行くダニッ!」

 

 儂は黒ツチの背に張り付き、黒ツチごと空を飛ぶ。コイツは儂の側近。空を飛ぶのが好きで、コンビネーションはコイツとが一番やりやすいんじゃぜ。

 

================================

 

「あれは……」

「来たか」

 

 ようやく、か。わざわざ天碍震星連発で尾獣の動きを止めていたのは、続ければチャクラが減るのは尾獣だけな上ノルマをこなすことが出来る。という面もあるが、最大の問題、土隠れで俺を殺せるだろう唯一の忍、三代目土影の攻撃範囲外にいられるというのが一番大きい。一応土影を止めるのは我愛羅の役目だが、尾獣を相手している間に横槍を入れられるのは不味い。飛雷神の術で回避できるだろうが、塵遁・原界剥離の術は正方形型の範囲を指定して消し飛ばす方法と、ビームのように飛ばして触れたものを消し飛ばす方法の二種類が存在する。前者は見てから飛雷神の術が余裕で間に合うだろうが、後者は気づかなければ危うい。スサノオが先に消えるために間に合うとは思うが、確証はない。

 

 しかし、唯一俺に対抗できる忍が一人……いや、僅か二人で現れてくれたのは本当に助かる。

 

「いいのか?」

 

 印を組むのをやめた俺を見て、我愛羅に問いかけられる。

 

「問題ない」

 

 天碍震星をやめれば、尾獣が自由になる。

 しかし、尾獣が迎撃していた地点は遠い。

 

【万象天引】

 

 尾獣が来る前に終わらせる。

 

 引き寄せられたことに驚きつつも、土影が塵遁を、側近が土遁で盾を作り出す。空には身を隠すところがないからな。それでもこの距離なら問題ないと踏んでいたか。

 

 スサノオに弓矢を引き絞らせつつ、俺は術の準備をする。

 

【塵遁・原界剥離の術】

 

 正方形の消滅地点を指定する方ではない。ビームのように原界剥離の術が飛んでくる。スサノオの攻撃ごと消し飛ばすつもりだろうが、無駄だ。

 

【封術吸引】

 

 これは俺に触れた術を吸収する術。この場合はスサノオも俺の一部だ。弓矢は発射せず、原界剥離を吸収していく。

 

「馬鹿なッ!」

 

 土影が原界剥離を止めて、こちらが生きていることに驚く。万象天引が切れたことでこちらが死んだと思ったらしい。原界剥離が当たって相手が生きているなど、想像だにしなかったのだろう。万象天引と封術吸引が同時に使えなかったために万象天引をやめただけだと言うのに。

 

「終わりだ」

 

 スサノオの矢を飛ばす。もちろん側近が用意していた土に遮られるが、当然のように貫通。背後にいた一人を貫いた。

 

「黒ツチッ!」

「しぶといな」

 

【万象天引】

 

 土で視界が遮られた時、土影を庇ったか。土で僅かに逸らされたのも効いたんだろうな。さすがは土影の側近。

 

「チッ!」

 

 すぐに原界剥離の構えを取る。恐らく原界剥離を止めるには万象天引を止めなくてはならないことに気づいたな。尾獣の抑えがなくなったせいで、コイツは時間稼ぎさえしていれば有利な状況にある。もちろん、今も我愛羅が一万の方の忍を虐殺しているのだろうが。

 

「来るぞ」

 

 我愛羅が呟く。地平線の先に、完全に尾獣化した状態で走ってくる二匹の尾獣が見えた。特に五尾が思ったより早い。

 ……が、やはり問題にはならない。

 

【原界剥離の術】 

【完成体仙人スサノオ・迦具土の剣】

【封術吸引】

 

「なっ!」

「今度こそ、終わりだ」

 

 原界剥離を使っている間は動けない。そして、封術吸引をしている俺本体も大した動きは出来ないが、スサノオは動ける。空を飛び、塵遁を吸収しつつ、土影に一直線に飛び上がった。

 

【二刀の舞】

 

「くぅ…………無念じゃぜ」

 

 土影が二刀で四分割され、残った肉体が黒炎で焼き消えるのを見届ける。

 

「サスケッ!

 前だ!!」

「ん?」

 

 声に引かれて正面へ振り返ると、巨大な尾獣玉が直ぐ側に。

 

 そうか。

 土影は、俺が死ぬところを見れなくて無念だと言ったのか。

 そんな事を思った。

 

===================================

 

 やったか。

 

 俺は五尾の中で尾獣玉が空飛ぶ天狗にぶち当たったのを見てそう思った。

 尾獣玉は超高密度のチャクラの塊だ。完全な尾獣が放つそれは里一つを滅ぼす。元々人に撃つような規模ではない。更に、尾獣玉はチャクラを込めれば込める程火力が上がる。ギリギリまで溜めた超火力の尾獣玉。耐えられるわけがあるまい。

 

 五尾の視点がやや下がったように見える。尾獣は肉体をチャクラで構成している。使いすぎればその肉体は小さくなっていくのだ。それほどのチャクラをあの尾獣玉に込めたということだろう。それにあの隕石を処理するのにもかなりチャクラを消費した。だからといって、五尾の完全尾獣化を解く訳にはいかない。一度解けばもう一度完全尾獣化する体力は俺にはないし、そもそも制御を手放す形で完全尾獣化したために意図的に解くこともできんのだが。

 

「ガァァァァァァ!」

 

 そのまま五尾は一尾の人柱力に向かっていく。あれを倒せばこっちの忍一万も侵攻を再開できるはず。

 この戦争、俺達の勝ちだな。

 

【天照】

 

 は?

 

「グァァァァァァ!?」

 

 先ほどとは違い、悲鳴をあげる五尾。俺の背中も焼けるように熱い。ありえない。うちはの人間は一人しかいないはず。

 この黒炎は、まさか――

 

「まずは一匹」

 

 ――生きていたのかッ!

 

==============================

 

 本当に危なかった。

 

 多くのモノを制御していた結果、時空間忍術である飛雷神の術が間に合わなかったからな。もちろん印を組む暇もなかったし、封術吸引ではあの尾獣玉を吸いきるにはまるで足りなかった。だから、足りない分は防御力と回復力で補ったのだ。

 

 特大の尾獣玉を喰らった瞬間、印を組まずに発動できる雷遁・チャクラモード、もとい仙法隠遁・チャクラモードをスサノオと自身に全力で発動。元々の仙人スサノオと仙人モードの体内液化による耐久力も相まって、多少のダメージが通るだけで済んだのだ。そのダメージは、本体に通る前から治癒を始めるカブト式の治癒方法+蛇仙人モードの回復力で治癒した。この術も大蛇丸の記憶から影分身修行で習得したものだ。

 

 その後、爆煙が晴れる前に、この砂漠のあちこちに用意しておいた飛雷神の術式で尾獣の背後に周り、天照をブツケたわけだ。

 

「ウガァァァ!」 

 

 俺の周囲に影ができる。

 五尾は足が早いのが特徴の一つである。つまり、その背後に回り込んだ俺の後ろには四尾がいるわけだ。四尾は溶遁を使うゴリラ、もとい猿。この影は溶遁なのだろう。尾獣玉には溜めがいる。即時発動できる術を優先したのだろうが、流石に火力不足だな。

 

【完成体仙人スサノオ・迦具土の剣】

 

 先程の尾獣玉で壊されたスサノオを再構築。ただ、先程スサノオが壊れた際、穢土転生体が散らばり、回収していない故にチャクラ無限状態ではなくなっている。さっさと決める必要があるだろうな。一応飛雷神の術で一旦撤退する選択肢もあるが、こちらの役割を考えればありえない。我愛羅に尾獣玉を撃たれて1万の忍が侵攻を再開してしまう。俺にとって尾獣より一万の忍のほうがよっぽど厄介だ。

 

 だから、

 

【二刀の舞】

 

 背後に振り返り、視界を遮る程のマグマに斬りかかる。黒炎による斬撃波はマグマを散らし、燃やし始めるが当然多少スサノオにも降りかかる。この程度ならなんの問題にもならないが。

 

「アァァァ!」

「フン」

 

 すると、その先に拳を振りかぶった四尾が。いくら溶遁の速度が大したことないとはいえ、スサノオと剣の生成、二刀の舞を発動する時間を考えれば、追加で隠遁チャクラモードを発動する時間はなかった。そして、スサノオは意外に素の殴り合いは強くない。……なら、殴り合わなければいい。スサノオは先程の尾獣玉で一度解けているし、その時隠遁チャクラモードも解けた。だが、仙人モードは解けてない。溶遁の向こう側にいた四尾を、視覚的に捉えることは出来なくとも、あんなバカでかい四尾を仙人モードによる危機感知、嗅覚感知能力で捉えられないはずがない。

 

 故に、俺は視界に映る前から迎撃体勢を取れていた。

 

【二刀の舞】

 

「ウガアッァァァァ」

 

 俺は永遠の万華鏡写輪眼で見切った拳を掻い潜り、四尾を斬りつけた。チャクラの塊たる尾獣を斬り捨てる、とまではいかなかったが、それでいい。斬りつけた四尾は、思った通り黒炎の痛みで転がり回っていたからな。

 

「これでノルマクリアだ」

第8話(中忍試験第三試験予選後半)~第9話で、どの戦闘シーンが一番良かったですか?

  • 我愛羅VSイノ
  • テマリVSテンテン
  • サスケVSチョウジ
  • ナルトVSガマブン太(ガマ親分)
  • なし

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