「続いて、第五回戦を始めます」
『我愛羅VSイノ』
はぁ。不運というか、ラッキーというか。まさかコイツと当たっちゃうとはねぇ。
別に私は、第二試験でコイツに会ったとか、顔見知りとかそういうのではない。ただ、サスケに聞いていたのだ。あれはサスケとシた後の事。
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「ねーサスケー」
「ん?」
ベッドでサスケに身を寄せて、ピロートークとして話を振った。
「今度の中忍試験、サスケも出るのよね?」
「あぁ」
「他にはどこが出て来るかなー?」
「木ノ葉ではガイ班、紅班も出てくるだろうな」
「あー」
ガイ班って、あのテンテンさんが居るところか。私とサスケくんが寝ているところに割り込んできた変態。……まぁサスケくんが楽しそうだったから許すけど。私もなんだかんだで気持ちよかったし。
そういえば、あの人3人でするの、すごい手慣れてたし、他の娘ともしてるんだろうなぁ。……別にそれならサスケくんと長い時間一緒にいられそうってだけの話で、テンテンさんとしたいってわけじゃないわよ? すごかったけど、私にそんな趣味はないし。……まぁ、サスケくんがどうしてもっていうのなら――
「後、木ノ葉以外では4代目風影の子供達が出て来るって話があるな」
「――達?」
「どうやら息子2人と娘1人で三人一組を作ってるらしい」
「そんなん反則でしょ……」
4代目風影は血継限界の使い手。そうじゃなくても忍は血筋、生まれ持った才能で決まる部分が大きいってのに。エリート3人が組んでるんじゃないわよ! ……カカシ班も似たようなもんだけど。
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そこで私は我愛羅、カンクロウ、テマリについて聞かされた。なんでそんな詳細に知ってるのか不思議だったけど、どうせどっかで女引っ掛けて聞いたんでしょうね。もしくはその眼で聞き出したか。
「では、始めてください」
私は開始と同時に後方に飛び退き、ポーチから巻物を取り出す。
「…………」
我愛羅はそれを静観していた。その余裕、後悔させてあげる。
ポン、ポン、ポン
巻物から口寄せしたのは、毒煙玉だ。
私が対人戦で毒を使うようになったのは主にサクラのせいである。
私はアカデミーに入って早々、くノ一1位の座をサクラに奪われた。忍者の家系で、秘伝忍術を継ぐ山中一族の私は、アカデミーに入る前から勉強と修行を積んできた。だから、最初のテストでくノ一の1位になれたのは当然の事。
そして、次のテストで追い抜かれたのは、正直驚いた。筆記に関してサクラは天賦の才を持っていたと言っていい。すぐにでも追い抜かれると納得してしまうほどだ。しかし、体術や忍術で追い付かれ、追い抜かれるとは思ってもいなかった。
それも忍者の家系ですらない、春野サクラに。特に体術。回避を最優先し、重い一発を当てることを主軸にしたあの異様な立ち回りは明らかにアカデミーで習うものではない。それから私はサクラのことを調べた。サスケくんの所に通っているのはすぐに判明し、そこで私はサスケくんを直接問い詰めることにした。
できれば忍者らしく本人に知られないよう調べたかったところだが、あの屋敷には結界が張ってあると聞く。なら、女に弱いらしいサスケくんを誑かしたほうが早い。そんな事を考えて、私はサスケくんが登校してくるところを狙って、話を聞く約束を取り付けた。
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「すごーい、サスケくんってこんな広いところに住んでるんだー!」
もちろん知ってたけど。
「あぁ、庭の方も見ていくか?」
「うん!」
どうでもいいけど。とりあえずおだてて、気分よくさせなきゃね。
「これは、ため池?」
「そうだな」
広すぎるでしょ。
うちは一族元頭領の屋敷って半端ないわ。
「ここで術の練習とかするの?」
「ああ、一つ見ていくか?」
「うん!」
そういうと、サスケは溜め池に半ばまで掛けられた橋(?)に向かう。
多分、アカデミーでは習わない術を見せてくれるのだろう。溜め池に向かう辺り恐らく火遁。十に満たないこの歳で性質変化を使えれば、女の子はキャーキャーはしゃぐでしょうね。
【影分身の術】
うん?
二人に分身……いえ、これは実体のある影分身!?
【風遁・大突破の術】
【火遁・豪龍火の術】
龍を象った炎が、巻き上がる風によって強大化し、湖の上を踊る。それはとても幻想的で、思わず目的を忘れて見とれてしまうほどのものだった。
「どうだ?」
「すごい……」
それからの私は放心状態で、広間に案内されるまでの記憶がなかった。それくらいありえない光景だったのだ。私はあの術について詳しくは知らないが、最低でも上忍レベルだということくらい分かる。
「で、お前は俺のことをどこで聞いたんだ?」
気がつくと、私はサスケの隣でベットに腰掛けていた。
「えっと、サクラがここの所サスケくんの家に入り浸ってるって聞いて……」
私はようやく動き出した頭で必死に言葉を紡いでいく。
「そういえばサクラが言ってたな。イノを追い抜いた。俺のお陰だって」
「……どういうこと?」
「修行を付けてほしいとか、修行場を貸してほしいって言われてな」
「ッ!」
「1位に成りたいんだとか」
なるほど。私がアカデミー外で覚えた技術でトップに立つなら、あの子も他に師事できる人を見つけたってわけだ。私が幼い頃から教えられているのはあくまで基礎と秘伝忍術について。アカデミーで習うようなことをある程度完成させているだけだ。それも秘伝忍術を教えるためであって、アカデミーで1位を取るためではない。
「サスケくん」
「ん?」
「私にも同じ修行付けてくれない?」
唐突だけど、上目遣いで寄りかかれば、断れる男はいないはず。私は美しいのよ!
「いいぞ」
よっしゃ!
これでせめて、あの子に勝つための手掛かりでもなんでも得られれば……
【幻術・写輪眼】
「じゃあ、まずはこの幻術を解いてみろ」
「え?」
あの眼、確かうちは一族の……そこまで考えて、私はベットに押し倒された。
「あっ」
「お前、はじめからサクラのことを聞くために、俺に近づいたんだろ?」
「ッ!」
サスケくん、気づいて…………いや、違う。これは幻術だ。私が見たくないとも思っているものが見えているだけで、サスケくんがこの映像を作っているわけじゃ……
「悪い子だ」
「離してッ!」
手を掴まれて、動かせない。映像だけじゃない。これはどちらかと言うと相手に恐怖の映像を見せて動きを止めるタイプの幻術。さっきの忍術といい、これも上忍クラスの幻術。
「いいな?」
「え……むっ!」
唇を、塞がれた。これは幻術。そう思っても、心が乱れる。唇に感触が伝わってくる。頬が染まるのが分かる。この幻術、精巧過ぎる。私の腕が、少しずつ動く。完全に相手の動きを止めるような幻術は、解の印を組めないから解くのが難しい。ただ、こんな無駄に精巧な幻術を作っていれば、縛りも緩む。
「ぷはっ」
「男と二人っきりで、ベットに座って、誘ってたんだろ?」
「ち、ちが……んー!」
口を開いた瞬間、また塞がれる。……快感が流れ込んでくる。キス自体、現実でしたことがないから分からないけど、この快感も、五感を支配した幻術によるものだろう。
手が、後もう少しで……
「気持ちいいだろう?」
「っ!」
口がふさがっているというのに、声が聞こえてくる。
「ここは夢の中だ。もう少し楽しんでもいいんじゃないか?」
「……」
「俺のこと気になってたのは本当だろ?
お前はサクラと一緒でイケメン好きだもんな。
サクラもこの幻術は一通り楽しんでから抜けるぞ?」
「ッ!」
サクラも……
その瞬間、視界の隅に、サクラに覆いかぶさるサスケくんが映る。
「サスケくん! サスケくん!」
そう叫ぶサクラはとても気持ちよさそうで……………………あぁ、腕以外は動くんだ。
「ッ!?」
そう認識した瞬間、私は体術でサスケくんと場所を入れ替え、体重をかける。
「イノ?」
「私、やられるのって好みじゃないのよね」
それから私は存分にこの幻術を楽しんだ。
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そんな事があってから、私はサスケくんにサクラと同じ修行を付けてもらって、綱手様にも師事させてもらって、最後はサクラのように私に合った戦い方を身に着けた。
そして、私は我愛羅の戦い方を事前に知っていた。
「それで負ける訳にはいかないでしょ」
毒煙玉を、我愛羅の周り三方向に投げ込む。
ボフンッ!
直接投げ込めば、自動防御の砂で薙ぎ払われる。でも、
「くだらん」
我愛羅は自身の周りを砂で覆った。そうすれば確かに周りの毒煙は吸わなくて済むし、その状態で毒煙をゆっくり払えばいい。
だけど、その状態で我愛羅が周りを見るには砂の眼を形成する必要があるはずだ。
この瞬間、我愛羅は周りが見えていない。
「ここよッ!」
私は我愛羅に向かって駆けながら、自身のポーチから出した解毒薬を腕に注入。我愛羅の砂が、毒煙を払おうと砂を動かしたその時、私は砂の球体に飛び込んだ。
【桜花衝】
「ッ!?」
「行っけぇぇ!」
砂の球体の一部が砕ける。
その穴に、毒煙玉を投げ込んだ。
自動防御の砂がそれを払うが、そこに意味はない。密閉状態だった砂の球体の中に広がる毒煙。むしろガードした砂で私の事が見えなくなっているだけだ。とっさに砂の球体を解除し、我愛羅は下がる。思ったとおりの動きだ。まだ他に砂があるにもかかわらず、この瞬間私への攻撃が来なかった。ガードは自動で行われるが、攻めは全て手動で行わなければいけない証拠である。
それを予期していた私は、毒煙玉を払われた時、更に前へ飛んでいた。だから真下には、下がったつもりの我愛羅が。
印を組みながら、私は叫んだ。
「終わりよ」
「ッ!」
【桜花衝】
踵落としの桜花衝。私の中で最大威力の一撃だ。砂を置いて下がった我愛羅に完璧な一撃が入る、と思ったのだけど。
「ッ!」
瓢箪が砂になってガードしたか。一瞬私の桜花衝を止めて、それから突き抜けた踵で、そのまま我愛羅の頭を蹴り下ろすことは出来たが、桜花衝は最初に触れた場所に衝撃を起こす忍体術。砂でそれが失われている以上、これはただの踵落とし。
砂の鎧を纏っていたようで、傷にすらならなかった。
「死ね」
動きが止まった私に、我愛羅が蹴り落とされた頭を上げる間もなく、周囲の砂が私に殺到する。
ポフン!
「ッ!」
桜花衝に、印を組む必要はない。あれは忍体術であって忍術ではないのだから。あの印は変わり身の印だ。真下にいた我愛羅にはなんの印を組んでいるかまでは見えなかったでしょうけど。
【桜花衝】
「ぐッ!」
今度もやはり砂に守られたが、さっきとは違う。守られることが分かっていたので、これは桜花衝が砂で消費されることを前提とした蹴り飛ばし。砂を纏っている以上、そう大きくは飛ばないし、傷もつかない。
それでも、吹っ飛んでいる間はこちらに攻撃も来ない。私は続けて毒煙玉を放り、一気に後退して仕切り直す。先程我愛羅は顔を上げる間も惜しんで砂を攻撃に回した。倒れ込んでいるところに追撃、なんてのは通じないだろう。
それに、我愛羅は最初の毒煙玉を砂で払い切る暇がなかった。多少なりとも吸い込んでいるはず。特に私に蹴り上げられたところでしっかり息を吸ったところを見た。体が痺れ始めているところに毒の濃度が薄まらないようこの追撃。……致死性の猛毒が使えれば、多分終わってたんだろうけど、今の私にそんな毒の解毒薬を作る技術はない。もしくは私にサクラ並の桜花衝が放てれば、砂ごと中身を殺しきることもできただろう。しかし、私にサクラほどのチャクラコントロール技術はない。
物理的に倒せないなら、この毒を吸わせ続けるしか無いわね。この毒だって吸いすぎれば心筋が止まって死に至る。
「ッ!」
毒煙の上方を、何かが通過した。あれは……我愛羅? うつ伏せになった我愛羅が、砂で空中に浮遊していた。
そんな事もできたの。
我愛羅が、好戦的な笑みでこちらを見る。
「さぁ、これからが」
「ギブアップッ!」
「…………」
私はそう言ってアスマ先生の所へ戻った。
後方支援型の私がここまでやれれば十分でしょう。
「しょ、勝者、我愛羅!」
私はブチ切れそうになっている我愛羅に解毒薬を投げ渡した。
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「そりゃ無いってばよ」
「イノは砂越しに決められる決定力がない。その上空中に浮かれれば、ギブアップもやむなしだろう」
「それでも、あそこまでやったんだからさ!
もう少し粘るとか!
毒も効いてたみたいだし、アイツのチャクラ切れとかさ」
「その可能性がゼロってわけじゃないだろうけど。
イノって思い切りがいいのよね。努力家だし、負けず嫌いだけど、本当に無理と悟ったらすぐ方向転換するの」
確かに、アレだけ努力して得た桜花衝と掌仙術だったが、どうしてもサクラのレベルに達しないと見切りを付けたら毒を使った戦術主体に切り替えた。今では高レベルで専門的な医療忍術を覚えていくより、山中一族に伝わる心転身などの秘伝忍術に力を入れている。イノにはサクラほど飛び抜けたチャクラコントロール技術はない。桜花衝は幻術でチャクラを無理やり操って習得させたが、やはりサクラより威力はない。百豪の術も当然習得できない故に一対一で強敵相手では決め手にかける。
「それが、要領がいいってことなのかもしれないけど」
サクラは少し寂しそうにイノを見た。サクラは元々は内気で、女友達などはほぼいない。俺が接触してからは割と原作通りの性格になったが、恐らくイノが初めての同性の友達というのは原作と変わりないのだろう。そして、出会った時期が遅かったからなのか、イノにはサクラ程の思い入れがない。あくまでイノにとっては自分より出来のいい初めてのライバルってだけだ。
「続いて、第六回戦を始めます」
『テマリVSテンテン』
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「よーやく私の出番ね!」
「では、始めてください」
「フン。
さっさと来な」
「言われずとも!」
私は背後に大きく飛び上がり、巻物を広げる。
【開封の術】
巻物に封印しておいた忍具を取り出す術だ。イノも使っていたやつね。但し、私の巻物は長く、大量の忍具が封印されている。
「これで!」
360℃全方向からのクナイ、手裏剣、千本の雨。そのまま喰らえば終わりだし、避けるのも困難だ。防ぐには何かしら忍術を使う必要があるけど、ここから間に合うかしら?
「フンッ!」
「ッ!?」
私の飛び道具が何かに弾かれた!?
それも全て、過程すら見えずに…………。
「一の星」
得意げに、着地した私を見下ろしながら、そんな事を呟く。
扇子が少し開いてるし、恐らくあの扇子を使ったんでしょうね。何も見えなかった辺り、風遁系の術で弾かれたと考えるのが妥当だけど、流石に印結びを見逃すはずがない。つまり、あの扇子は風遁、もしくはそれに類する忍術を印結び無しで発動できるってところか。
それ、私と相性最悪じゃない。
発動速度は眼に見えないほどで、多少隙を作るぐらいじゃ忍具は通らない。さすが風影の娘。下忍とは思えないわ。
「それで終わりかい?」
「ちッ!」
勝つにはその術を突き抜けるほどの火力か、その術の継続時間が短いことに掛けて連続攻撃を仕掛けるか。
アレを使うしか無いわね。
【開封の術】
青い巻物から、更に大きな巻物を取り出す。
「ハァ?」
【開封の術】
そこから現れたのは弩。但し特大の弩だ。
ふふ。
そもそも予選で使う気がなかったから、この巻物は大切に閉まっといたのよねぇ。可愛い後輩の術を模した、とっておきだから。
「防げるもんなら――」
私は特大の弩を構える。
「フンッ!」
テマリは扇子を最大まで開く。
「――防いでみなさいってのッ!」
チャクラの込められた特大の矢を発射した。
【カマイタチの術】
「なっ!」
「くぅッ!」
弩から飛び出した特大の矢は、カマイタチで僅かにブレながらも直進し、テマリの胸に直撃する直前、割り込ませたテマリの扇子に突き刺さった。
「鋼鉄製だぞ……なんて貫通力だ」
「うぁァァァ!」
しかし、テマリのカマイタチの術も私に直撃。チャクラが練り込まれた風、紛れもない風遁忍術である真空の竜巻に巻き込まれ、私は体中を切り裂かれた。
身動きの出来ない空中から、落ち際にあの扇子で攻撃されたようで、私の意識はそこで途絶える。
「勝者、テマリ!」
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「あの忍具、サスケの弓にそっくりだってばよ」
「一度見せたら随分気に入ったみたいでな」
チャクラを込めて貫通力を増した飛び道具。チャクラ刀辺りと発想は似てるな。速度と威力を両立するために強大化しているが、その御蔭でカマイタチの術を突き抜けたか。それにしても、印を結ばず性質変化を行うあの扇子は便利すぎるな。あの速度で振るえるのはテマリだけだろうが。原作でも砂隠れの里では最強の風遁使いだったはずだし。
「でも、サスケくんの弓矢の欠点も引き継いでるわね」
「構えるのも、発射するまでも遅いってばよ」
そうなんだよな。
スサノオの弓矢はスサノオの防御力と弓矢の決定力が両立してるから強いのであって、防御力がなければ隙が大き過ぎる。
ついでに決定力まで落ちてるせいで相打ちにすら持ち込めなかった。
……というより、あの扇子による術の発動速度が早すぎるんだよな。せめて印を結んで発動していれば防御も間に合わなかっただろうに。ついでにあの扇子が鋼鉄の盾にもなるとか、本当に使い勝手のいい忍具だ。
「続いて第七回戦を始めます」
『サスケVSチョウジ』
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「焼き肉食べ放題だー!」
「では、始めてください」
【倍化の術】
胴体だけ2mほどに膨らむ術だ。ここから、僕の手足と頭を肉体の中に収納。続いてその場から高速で前回転。
【肉弾戦車】
触れただけで骨が砕ける忍体術の一種。アカデミーでしか習わないような術しか使えないなら、コレ一つで勝利できるくらいには強い、秋道一族の秘伝忍術だ。
だけど、
【スサノオ】
相手もうちは一族。
なんの術かは知らないけど、巨大な骨で出来た一本の腕が、僕の回転する肉体を押し留めていた。
「フン」
「っ!」
回転の止まった僕の体が、投げられて宙を舞う。術を解除し、なんとか着地した。
「次は、どうする?」
「まだまだァ!」
ポーチから、多数のクナイを糸に通して束ねたものを体中に巻きつける。
【倍化の術】
【肉弾針戦車】
クナイがスパイクの役割を果たして威力と加速度が上がる。
「ウォぉぉぉ!」
サスケは同じように受け止めるが……いい感じだ。巨大な手の平を押してる。スパイクのお陰で回転力が増して、止まらない。このままなら……
「じゃあ、二本目だ」
「ぐっ!」
真上から二本目の腕が現れ、僕を押さえつけた。
回転が……止まる。
ポフン!
「おぉ」
倍化の術を解くことで、拘束を抜け、僕は少し距離を取った。
「はぁ、はぁ」
やっぱり、勝てっこないよ。
チラッとアスマ先生達を見ると、
「チョウジー、頑張りなさーい!」
イノが声援を送っていた。
「もう終わりか?」
ギブアップしたい。
でも、それじゃあ焼き肉食べ放題はなしだって、アスマ先生が言う。
…………本当は、こういうときに使うためのものじゃあ、ないんだけどなぁ。
カチ。
「はぁ」
「ん?」
僕は懐から三種の丸薬を取り出す。
中忍試験は、死ぬ可能性もある試験だ。死ぬよりマシだからって、お父さんが持たせてくれた秋道一族秘伝の丸薬。カロリーを莫大に消費して、あらゆる能力を強化するコレはある程度の副作用がある。
青、黄、赤の順で副作用が大きくなり、赤は飲めば必ず死ぬ。当然、焼き肉行くために死ぬほど僕も馬鹿じゃあない。
でも、青を飲んでも、部分倍化が精々で、肉弾針戦車以上の火力は期待できない。
だから――
カリ。
「――いくぞォォォ!」
「来い!」
【超倍化の術】
【完成体・スサノオ】
僕たちの術は、天井を完全に貫通した。
「やりすぎだってばよぉぉぉ!」
ナルトの声が聞こえるが、時間もないし止まれない。
青空の下、巨大な天狗に組み付く。
「ウォォォォ!」
力比べをすると、少しずつこちらが押しているように見える。相手の術、こういう力比べをするような術じゃないのかもしれない。
「楽しいな、オイ」
そういうと、天狗が羽ばたいた。
「なぁぁぁ!」
僕の体が、宙に浮く?
この巨体が宙に浮くって、そんな馬鹿な!
「表蓮華、ってな」
雲が掛かるほどの高さに持ち上げられ、そのまま逆さになる。
「やめ、やめろぉぉぉ!」
グルグル回転しながら地上に落ちていくサスケの正気を疑いつつ、僕は術を解いた。
ぽふん。
「うん?」
サスケが僕を見失う。
「ふぅ…………うぐっ!」
痛い!
丸薬の副作用が…………あれ?
これ、僕死ぬんじゃ。
雲がかかるほどの超高空からの自由落下。
動けない体。
「ぎ、ギブアアアアアッッップゥゥゥゥ!」
「お疲れさん」
うぉ!
「あ、アスマ先生!」
空中で優しくキャッチされた僕は、そのままアスマ先生に着地を任せた。
「助けるって言ったろ?」
「ほ、本当に死ぬかと……うぐっ!」
「焼き肉の前に病院だな」
そんなぁ~。
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「俺が壊さなかったのに、サスケが壊すのかってばよー!」
「チョウジのせいだ」
「最初の肉弾戦車の時点で倒してればよかったでしょうに。
かっこつけなんだから」
昔のサクラならキャーキャー言ってくれるくらいカッコよく戦ったつもりなんだが。
「あれが、うちは一族か」
「ねー、カッコいいでしょ!?」
「会場が…………僕の出番が……」
「うちは、サスケ……」
「ふふふ。
な、サスケすごいだろ!?」
「ヤバ過ぎじゃん」
「アレを正面からヤルたぁ、無茶苦茶やりやがる」
「チョウジー、アンタはよく頑張った!
サスケくんのカッコいい所、十分に引き出せてたわー!」
「ひでぇ」
「これで、第三試験の予選を終了します」
この後、第三試験本戦が一ヶ月後に行われること。
本戦は予選と同じルールで行われること。
トーナメント方式であることなどが説明された。
なお、優勝者は1人だけだが、中忍になれるのは1人とは限らない。一回戦敗北でも、絶対評価によって中忍にふさわしいと認められさえすれば中忍試験合格となる。
最後にくじ引きで本戦の組み合わせが決定した。