ヒュアデスの銀狼   作:蜜柑ブタ

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高速終了。

書ける内に終わらせました。



オリ主(カズ)×カンナです。

キスもあります。


あと、グロ注意。


最終話  オオカミは、愛する人と…

 

 

「ひゅ、ヒュアデスのフェンリール!?」

「どっかの神話の神の王様を食い殺したって伝説のある神殺しのオオカミ!?」

『三人とも! なんとしてでも、アレを倒すんだ! そうしないと、宇宙が終わる!』

 驚愕しているかずみ達に、キュゥべえが焦ったように声をかける。

 インキュベーターという異星人であるキュゥべえがこれほど焦っているのだ。事態はとんでもないことになっていると、三人は思った。

 そうこうしていると、カズの体がまた大きくなった。

 あまりの巨体に、あすなろ市が潰れ始める。

 張り巡らされたコネクトの糸が天に網目状に張り巡らされ、オオカミの魔獣としての結界にある花畑と草木の葉っぱがチラチラと降り、舞う。

「海香、カオル! もう一度合体魔法を!」

「行けるのか!?」

「やるしかない!」

 かずみがカズへ続く道を魔法で作り、その上を三人が走って行く。

 ハラリッハラリッと花吹雪と葉っぱが舞う幻想的な美しい光景の中に入ったときだった。

「っ!? そ、ソウルジェムが…。」

 突然、ソウルジェムがひとりでに濁り始めた。まだ余力は残っているにも関わらずだ。

『カンナ以外の何人たりとも…、オレの結界の中に入れば、グリーフシードになる…。』

 カズが言った。

『お前達に勝ち目はないぞ、かずみ!』

「くぅう! 近寄れば近寄るほど力が強まるんだ! 近寄れない!」

 海香がそう分析した。

「こんな、ところで…オワリかよ…。」

「ダメ! 諦めたら! うぅ…!」

 

 かずみ達が膝を折り、ブスブスと濁っていくソウルジェムを押さえる。

 キュゥべえも、もはや諦めたのか、静観していた。

 

 その時だった。

 

『ぐっ!?』

「カズ…?」

 突然、カズが呻いた。

『ぐ…ぎ…、ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』

「カズ!?」

『ガハァ!?』

 突如、頭をかきむしるように両手で頭を押さえたカズが、大量のドス黒い血を吐いた。

『か、ンン…ナ…。』

 グラリッとカズの巨体が崩れ落ちるようにゆっくりと倒れていく。

 全身の毛皮から血を噴出し、目から、口から、血を撒き散らしながら、あすなろ市にカズの体がグズグズに崩れて落ちた。

『………………聖カンナ。君がコネクトで縫い合わせたぬいぐるみ(オオカミの魔獣)は、どうやら糸がほつれていたらしいね。』

 キュゥべえが淡々とそう言った。

「いやああああああああああああああああああ!! カズゥゥゥウウウウウウウ!!」

 カンナがカズの血で全身を汚しながら、原型を辛うじて残している頭部に縋り付いた。

 ドロドロと流れ出てくるドス黒い血に混じって、吸収しきれなかったグリーフシードが大量に転がり出てきた。

「カンナ…。カズお兄ちゃん…。」

 強制的にグリーフシードを生成する力が消えたことで、力を取り戻したかずみ達がカンナに駆け寄ろうとした。

 カンナの胸にあるソウルジェムが、プスプスと煙を出し始めていた。

『宇宙を喰らい尽くすことは、できなかったようだけど。一時的にとはいえ、エントロピーが進んでしまった。聖カンナ、君は魔女となって、そのエネルギーを捧げるべきだ。それが君達の償いになる。』

「ふ、ざけるな…!」

 カンナがキュゥべえを憤怒の顔で睨んだ。

『まあ、とはいえ、君程度のエネルギーでは、まったく足りないけどね。』

「キュゥべえ!」

 かずみが、残酷なことを言うキュゥべえに叫んだ。

「まだ…終わりじゃない! コネクト!!」

 カンナが立ち上がり、コネクトを使った。

 コネクトの糸が、カンナの回りに落ちていたカズの体から出てきたグリーフシードに絡みつく。

「カンナ! それ以上は…!」

「黙れ! 私は、お前達を許さない! 私のオオカミを! カズを失った、私の絶望を受け取れぇええええええええ!!」

 一斉に孵化したグリーフシードが、天に向かって黒い竜巻となって舞い上がった。

 

 そして……。

 

 巨大な魔女のような人型に近い黒いソレが現れた。

 

『最後の力で、魔女同士を繋ぎ合わせ、変異させたのか。無駄なあがきとはいえ、敬意を表して、名を付けるのだとしたら…、『ヒュアデスの暁』か…。』

 

「ヒュアデスの暁!?」

 かずみ達が空に現れたその巨大な魔女を見て驚愕する。

 力や迫力などは、ヒュアデスのフェンリールに比べればたいしたことは無いだろう。だがその大きさは、伝説の魔女・ワルプルギスの夜に匹敵するモノだった。

「砕いてやる! この星もろとも!」

「やめて、カンナ! そんなことをしても、カズお兄ちゃんは…。」

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」

「ダメだ! 話が通じない!」

「やるしかないのか! かずみ、やれるか!?」

「……カンナ…。」

 かずみは泣いていた。

 しかし、涙を流しながら決意を固め、空にいるヒュアデスの暁に向け、道となるモノを再び魔法で創り出し、三人で走った。

 ヒュアデスの暁から、魔法少女のような黒い使い魔が飛び出してきて襲いかかってくる。

 それを撃破しながら、ソウルジェムがある胸を押さえて息も絶え絶えなカンナに接近した。

「カンナ! もうやめよう!」

「死ね!!」

 カンナの手の動きに合せて、ヒュアデスの暁が腕を振るった。

 巨大な破壊のエネルギーが迫る。

 

「メテオーラ・フィナーレ!!」

 

 再度放たれた合体魔法が、ヒュアデスの暁の破壊のエネルギーにぶつかった。

 カンナは、力を振り絞って耐える。だが……、次の瞬間、自身の横を、光となったかずみ達が通り過ぎていった。

 そして、ヒュアデスの暁が、白い光に包まれるように消滅した。

 

「ぁああ……、うぅ! カズ…カズぅ…。」

 近場のビルの屋上に落ちたカンナが、泣きながらカズの名を呼んだ。

『カズは…、君のオオカミは死んだ。もういない。』

 キュゥべえがカンナの近くでそう言った。

「カンナ…。」

 かずみ達が駆け寄る。

 カンナは、泣きながら、自身のソウルジェムを取りだし、握りつぶそうとした。

 その時だった。

 

『ダ、メだ…。』

 

 キュゥべえが黒い何かに潰された。

「…カズ?」

 弱々しいが、確かにその声だった。カンナが横を見ると、そこには、ドス黒いの肉の塊がいた。

 かずみ達が思わず引くほど凄まじい姿であったが、それは、カズだった。

『カンナ…、い、き、ろ…。』

 ボロボロの腐りかけの肉が付いたような骨の手が、カンナのソウルジェムに触れた。

 すると、カンナのソウルジェムから濁りが消えた。

「だめぇ!! それをしたら、カズが!」

『うぐ…ぅう…。』

 ソウルジェムの濁りを受け止め、カズが苦痛の呻きをあげた。

『カンナ…。言いたいこと…あ、る…。』

「なに!? 何でも言って!」

『…きだ…。』

「えっ?」

『好きだ…、カンナ…。』

「カズ…、あんた…。」

『短い間…だったけど…、名前をくれ、て…、オレに居場所を…く、れ、た…。でも、オレ、オオカミ、だか、ら…。』

「……馬鹿だね。」

 カンナは、呆れたように笑い、涙を零し続けながら、肉塊となっているカズを抱きしめ、口らしき場所に自身の唇を押し当てた。

「これが…、私の気持ちだよ。分かった?」

『…カンナ……。あ、りがと、う…。』

 カズの体がやがて、オオカミの魔獣に近いモノへと変わり始めた。だが、毛皮はずる剥けており、痛々しい姿で、身体のあちこちが泡立つようにブクブクとしている。

 すると、空間が歪んだ。

「カズお兄ちゃん? カンナ!」

『さよ、な、ラ…だ。』

『待ってくれ。君達は、償うべきだ。宇宙の寿命を僅かでも削ったことに対して。』

『インキュベーター…。もし、オレ達…に手を出すなら…、この宇宙と引き換えだ。』

『!?』

『オレ達は、オレの世界(結界)の中に完全に閉じる。お前にも干渉できない、絶対的空間だ。もしこじ開ければ…、オレが、宇宙の因果律に浸食するがん細胞のごとく宇宙を喰らい尽くすだろう。オレのコネクトで、宇宙の因果律にそう書き換えた。』

『馬鹿な…。神ですらない、魔獣がそこまでのことを…。』

「フェンリール…、神殺しのオオカミ…。」

 海香がハッとして、そう呟いた。

 進化の果てにカズは、神(宇宙)を殺す、オオカミとなったのだ。

「…チャオ。かずみ。永遠に、さようなら。」

「カンナ! カズお兄ちゃん!!」

 歪みによって出来た穴に、カズとカンナが入って行き、最後に二人が振り返って、笑った。

 そして穴が閉じた。

 まるで、最初からそこに穴がなかったかのように…、そこには何もなくなっていた。

『わけがわからないよ。』

 キュゥべえの淡々とした呟きがその場に響いた。

 

 

 

 

 その後………………、オオカミの魔獣の噂は、一切無くなった。

 

 




他の魔女が持っていた因果律の糸を取り込む内に、まどか並みかそれ以上に力を身につけていったカズ君。
文字通りの、神殺しのオオカミに。

でも、体が急激な進化に耐えきれず崩壊。

けど、崩壊前に宇宙の因果律を書き換えて、自分とカンナだけの世界が無理矢理こじ開けあれば、宇宙のエントロピーが加速するよう設定。
こうなっては、まどか並の可能性を持った者が因果律を書き換える願いをしない限り解けない。


短い期間でしたが、お気に入り、評価ありがとうございました。

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