家のメイドが人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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感想は作者の燃料です。


駒を揃えよう

 

夏休みに入り、シンラとオーフィスが奉先と遊び呆ける中、ジェノバは現在、神城 頼羅…グレイフィア・ルキフグスの部屋の中にいた。

 

文豪の書斎に置いてあるような巨大な机が窓から日に当たるように置かれ、それに学校の校長室の椅子が粗末に見えるほど豪華な椅子が組み合わされていた。

 

巨大で端に金の装飾が施された赤いカーテンに、床には赤いカーペットが入り口から机に伸びるように敷かれ、さらに1つしかない巨大な窓は素晴らしい職人芸が見てとれるステンドグラスが嵌め込まれていた。

 

部屋の中には他に壁に備え付けられているクローゼットとエアコンぐらいしか物が無く、どことなく悪の親玉がふんぞり返りながら部下に指示を出す執務室のように見えなくもない。いや、見える。明らかに見える。と、言うよりも狙って造ったとしか思えないほど見える。

 

ちなみにクローゼットを開けると一面に同じメイド服がところ狭しと並んでいる謎空間が出現したりする。

 

ちなみにこの部屋はグレイフィア・ルキフグスの趣味で造られた訳ではなく夫が勝手にオーダーしたらしい。無論、その後盛大な突っ込みが浴びせられたであろう。

 

ジェノバは机に向かうとその中の引き出しを引き出した。

 

さらにそこから二段下の引き出しも引き出すと、その2つを同時に押し戻してから真ん中の引き出しを引き出した。

 

するとゴゴゴゴと机が音を立て始め、ジェノバが机から離れると机が中央から真っ二つに割れ、机が移動した。

 

2mほどの机の半分と半分が移動すると停止し、さらに下から何かが上がってきた。

 

どうやら大きめの本棚のようだ。

 

部屋の雰囲気といい、凝ったギミックといいほぼバイオハザードの世界である。

 

もう一度言うが、夫の趣味だ。

 

本棚の中にはビッチリと黒いノートが詰まっていた。

 

大方、あの真面目な母親の日記か何かだろうと思いながら適当なノートを手に取り、題名を見た。

 

 

 

 

 

 

"らぶりー愛妻日記part256"

 

 

 

 

 

 

「………………………」

 

流石のジェノバもこれには絶句した。

 

とりあえずページを開くとそこには日頃の話(夫が格好いいとか、夫が凛々しいとか、夫がこれ以上ないほど素敵だとか)、息子たちの成長記録(一例抜粋:ミリキャスマジ天使! 格好いい系のエヌオーとは違い可愛い系なのがまた…ハァハァ…ぺろぺろしたいです…でも仕事中は我慢、家庭でも我慢。なので日記の中で思う存分ぺろぺろ[ここから先は何かの血で赤くなっていて読めない])、夫との夜の性活(一例抜粋:[描写が過激過ぎるため終始規制されました])に至るまで彼女視点で赤裸々に書き込まれていた。

 

さらにその日、思いついたポエムなども大量に書き込まれている。

 

それが数百冊である。

 

ジェノバはノートを元のところに戻すと本棚に1つだけあるノートのような黒い板を引っ張り出した。

 

それはグレイフィア・ルキフグスが幾重もの強力な封印を施した何かだった。

 

しかし、ジェノバの前で最強の女王の封印などというものは毛ほども意味はない。

 

「オーロラフェンス」

 

指先から出た七色に輝く幾重ものリングが通過すると封印は既に解かれていた。

 

ジェノバの手にあった黒い板は黒い布のようなものに戻り、中に何かが入っていた。

 

中を見ると"半組しか数のないチェスの駒が入っていた"

 

ジェノバはそれのひとつを手に取るとじっくりと眺めた。

 

空気のように透き通り、最高純度のクリスタルで出来たような美しい駒だ。

 

「………悪魔の駒?」

 

ジェノバが首を傾げるのも当然だろう。

 

本来の悪魔の駒の色と随分違うのだから。

 

だが、その駒から感じる魔力は紛れもなく、ジェノバでさえ解けない封印越しに感じたシンラの純粋かつ強力な魔力だった。

 

ちなみにジェノバはこの星の裏の世界の事はよく知っている。

 

1つは星の胎内で毎日、ライフストリームの源泉掛け流しの風呂に入っているからである。

 

最もこんなことを普通の生物がすれば、指先で触れた瞬間に脳が情報のオーバーフローを起こし、廃人になってしまうことは確実である。

 

もう1つはこの星の様々な場所にジェノバの分身であるジェノバクローンが様々な場所で最も適した姿で組織に入り込む、あるいは組織の者に成り代わる形で潜伏し、常に最新の情報を取り込んでいるのである。

 

それは誰も気がつかない内に同僚がジェノバクローンになっているという、可哀想過ぎる目にあっている人が少なからずいるということだ。

 

無知とは偉大な存在だ…。

 

「なぜ…?」

 

ジェノバは多少考えた。

 

ここに彼の悪魔の駒があるのはおかしい。

 

彼は悪魔の学校を出ていないし、何より彼は力を封印されている。

 

なら………そうか。

 

結論は簡単に出た。

 

元々、悪魔の駒は現魔王のアジュカ・ベルゼブブによってベースである悪魔の駒を造り、それに王になる悪魔が魔力を流すことで駒を悪魔の駒とするのだ。

 

だとするのなら遥か幼少時代にアジュカ・ベルゼブブの友人であり、魔王であり、彼の実父であるサーゼクス・ルシファーが莫大な魔力を持つ息子で試しに造っていてもなんら不思議ではない。

「それならこれは………」

 

色から推察するに間違えなく"全ての駒が変異の駒"ということだろう。

 

いや、莫大な魔力とあの力が注がれて出来た悪魔の駒ならむしろそうならない方がおかしい。

 

ジェノバは流石はシンラさんですと思いながら、机の上に彼の悪魔の駒を並べた。

 

兵士(ポーン)が8つ。

 

戦車(ルーク)が2つ。

 

騎士(ナイト)が2つ。

 

女王(クイーン)が1つ。

 

………………僧侶(ビショップ)が1つ?

 

「足りませんね」

 

僧侶が足りない、あのマメな母親のことだ。無くすことはまずあり得ないだろう。

 

そもそも息子の一世一代のモノだ。そんなことあってはならない。ならば…。

 

「既に使われている…のでしょうね」

 

だが、彼はその事を知らないだろう。

 

そもそも自身が悪魔だと知ったのも最近なのだからレーティング・ゲームすら知るわけもない。

 

ジェノバは彼の悪魔の駒を見つめた。

 

ジェノバにとってこんな大事なモノを厳重とは言え破られる可能性のある場所に保管するなどあり得ない。

 

だからこの星で最も安全な場所に隠そう。

 

ジェノバは自らの右腕に悪魔の駒を埋め込んだ。

 

悪魔になろうとしているのではない。

 

そもそも、星を喰らい過ぎたジェノバは既にこの星で神と呼ばれる存在の数万倍~数億倍以上の力を持っているため、自身を完全に悪魔にすることなど不可能な話である。

 

文字通り肉体に収納しているのだ。

 

ジェノバの体内はこの星どころか銀河でも有数の安全な隠し場所だろう。

 

さらに指を振るうと、机の上にさっきの悪魔の駒と見た目も放つ魔力も全く同じチェスの駒が出現した。

 

これでバレることはまず無いだろう。

 

ジェノバは棚に置いておいた黒い布を取ると後ろから声が聞こえた。

 

「ほう、良くできた偽物であるな。これならば本物を量産してしまえば良いのではないか?」

 

そちらに向き直ると先日から居候することになり、今は女性の形をとっている森羅万象を超越する神竜…ヤズマットが机に座りながらジェノバが造った駒を弄っていた。

 

彼の悪魔の駒と全く同じ駒の量産。

 

ジェノバなら無論、指を振るうだけでやってのけるだろう。

 

「ぜーんぜん、わかっていませんねぇ」

 

だが、ジェノバはやれやれといった様子で手上げ、首を振った。

 

「レーティング・ゲームはゲーム。つまりお遊びです。ルールに乗っ取ってやらないと何一つ意味が無いでしょう?」

 

「むう…? そういうものか?」

 

「これだから中途半端に強いものは困りますねぇ。感性に品が無いといいますか、ゲーム精神を理解していないといいますか」

 

ジェノバは考える。

 

ゲーム。素晴らしい響きだ。

 

子供のお遊びから命を賭けたモノまでその範囲も種類も様々。

 

そしてレーティング・ゲームは悪魔の世界で社交スキルに直結していると言っても過言ではないほど貴族に浸透しているゲームだ。

 

それに次々と彼が勝利し、最高の栄誉を手にする。

 

なんと素晴らしいことか。

 

「まあ…」

 

そういうとジェノバは口元を三日月のように歪めた。

 

「逆に言えばルールさえ守っていればどんな事をしても良いんですよ。クククッ…シンラさん、待っててくださいね。最高の駒をあなたにお届けしますから…」

 

既に3つ駒を揃えた。

 

直ぐに私による彼のための彼だけの駒が揃うだろう。

 

「む、ならば"次元の墓場"にでも行くか?」

 

「次元の墓場?」

 

ちなみに次元の狭間はジェノバすら把握していないモノがほとんどである。

 

まず、次元の狭間は星の一部ではないのでライフストリームでは情報が確認できない。

 

その上、数多の異世界が連なっていることで、とんでもない化け物がゴロゴロと生息する人外魔境と化しているのだ。

 

正直、ジェノバ的にもとてつもなく探索が面倒くさい。

 

特に探索する理由も無いのでジェノバは今まで放置していたのだ。

 

「うむ、次元の狭間で壊れた機械系の魔物やら魔導具の人形やらが集まるところだ。悪魔の駒を使うのなら無機物の魔物でも問題ないのだろう?」

 

「それはいいですね。最も最終的にはシンラさんが決める事ですが、リストアップぐらいはしておかなければなりませんからね」

 

「む、ならばもう行くか?」

 

ヤズマットは既に空間に穴を空けていた。

 

ジェノバは偽物の駒を布で覆いグレイフィアに化けると全く同様の封印を施した。

 

「いえ、それは今日の深夜にしますよ」

 

「なぜだ?」

 

「私の可愛い弟子の修行になりそうですから」

 

ジェノバは胸の谷間に手を突っ込むとスマホを取り出し、メールを誰かに送信するとスマホをしまった。

 

「まあ、とりあえず…」

 

ジェノバは擬態を解くと棚に手と大量の触手を掛けた。

 

「弱みでも握りましょう」

 

5分ほどで数百冊の日記を読み終えたジェノバの顔は、それはそれはイイ笑顔だったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深夜1時、既に彼とオーフィスが寝静まった頃。

 

ジェノバとヤズマットは一階にあり、ビアガーデンかと思うほどの広さのウッドデッキで丸テーブルを挟み、向かい合うように座って何かをしていた。

 

ちなみにこの家は本当に広い。

 

伊達に最強の女王の別荘であり、ルキフグスとグレモリーの血を引く彼の本宅ではなく、基本的な大学が敷地ごと丸々入ってしまうほどの異様な広さをしている。

 

正直、ジェノバが来る前の彼は使用人も無しにどうやって彼が生活していたのか謎なレベルだ。

 

そこで二人は…。

 

「あ、カムランそっち行きました」

 

「ぬう…余はクアドリカと格闘中であるのだが」

 

GE2やってた。

 

神が神を狩る異様な光景である。

 

ちなみに彼がやっているので自分たちもやってみようという試みらしい。変なところでミーハーだ。

 

「ん? 来ましたか」

 

丁度、ミッションが終了した頃。

 

ジェノバは敷地の結界に侵入者の反応を感じた。

 

微細な生体オーラで識別し、それは紛れもなく自分の弟子であるとジェノバは結論付けた。

 

直ぐにそれはジェノバの前までやって来ると元気のいい挨拶をした。

 

「ジェノバさんお待たせ!」

 

それは紛れもなく彼の親友であり、ほとんど恋人のような関係にある人間。

 

 

 

"呂布 奉先"だった。

 

 

 

 

 




私はヒロインを空気にしないように頑張る!

そしてグレイフィアさんのキャラを破壊する! 100%完璧な超人何てどこの世界にも存在しません!

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