家のメイドが人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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今回は癒し回です。誰がなんと言おうと癒し回です。

気が付いたら8000字近くなってました。




チョコボ平原

ジェノバ、ヤズマット、奉先の1体と1匹と1人はヤズマットが空けた空間から次元の狭間に入り、日の光が燦々と輝く広い草原に出た。

 

「うわっ、眩し」

 

奉先は深夜の月の光から、突然の日の光を手で遮った。

 

「次元の狭間では日常茶飯事であるぞ?」

 

「異世界を法則ごと丸々次元の狭間に持って来られていますからね。異世界が保たれるように日光などは常に同じ法則を続けているだけなんですよ」

 

「えーと…つまりどういうこと?」

 

「ここはいつでも昼間だということです」

 

ジェノバは話ながら亜空間から三日月状の刃が穂先の横に付いている槍を取り出した。

 

長さは2m半程で奉先の身長よりもかなり大きな槍だ。

 

「はい、"方天画戟"。演義での呂布 奉先が振るった武器を私なりに再現したモノです。マテリア穴は6つありますけど連結穴は無いので悪しからず」

 

方天画戟。呂布 奉先が振るい無双を誇った武器として余りにも有名だろう。

 

だが、それは演義の話で実史では全くの嘘っぱちである。

 

そもそも方天戟という武器自体が10世紀ほどに生まれた武器であるため呂布 奉先が方天画戟を振るうことはまずあり得ない。

 

この誤認を今の世に生み出したのは間違いなく主に三國無双のせいであろう。

 

「…………今とっても複雑な気分だわ…」

 

奉先は方天画戟を見ながらそれはそれは微妙な表情を浮かべた。

 

彼女は最も色濃い血が流れている呂布 奉先の子孫なだけではなく、呂布 奉先の魂も継いでいる。

 

つまり最高の肉体を持ちながら、過去の記憶と呂布 奉先の意思により既に世界最高ランクの武を持っているのだ。

 

彼女の名誉のために言っておくが、この世界の初代の呂布 奉先は彼女と全く同じ容姿の女性である。決して触角の兄さんではない。

 

流石に"当時の神器"までは持っていないが、それなりに強力な神器も保有している。

 

「でも、ありがと♪」

 

奉先は受け取るとズッシリとした重さを感じた。

 

「随分、重いのね?」

 

奉先は精々、10~15kgほどかと思っていたが、恐らく90kgはあるだろう。

 

到底普通の人間が振えるモノではない。

 

最も普通の人間ならばだが。

 

「そりゃ、オリハルコン製ですから。強過ぎず弱過ぎない金属を探すのに苦労したんですよ? ちなみに材料費はタダなので製作費は525ギ…円です」

 

前の惑星での時間が長かったため、ギルと言い間違えていることは決して突っ込んではいけない。

 

「そ、そうなの…」

 

ワンコイン(税別)のオリハルコン。伝説の金属の武器も随分安くなったものである。

 

どうでもいいがジェノバの文字通りの手作りの為、方天画戟に対しての製作費用は掛かっていない。

 

525円はジェノバがその時に食べていた105円のお菓子×5の値段である。

 

真の無限の体現者であるジェノバとはいえ極稀に嗜好としてモノも食べることもあるのだ。

 

「ま、重い方が威力出るから良いけどね」

 

奉先は片手でバトンでも回すようにくるくると回転させると凪ぎ払いからの演武を繰り出した。

 

その動きは清流のような柔を体現しながらも、画戟を振るう度に巻き起こる大気の震えから仇なす全ての者を穿ち壊さんとする剛が見てとれた。

 

それはジェノバから見ても文句のつけようのない、究極レベルに完成された武だった。

 

それを見届けるとジェノバはビー玉のような大きさで淡い緑色のマテリアを5つ取り出し、淡い黄色のマテリアを1つ取り出した。

 

「ひかり、りだつ、じかん、ちりょう、かいふく、ぬすむのマテリアです。ぬすむを除き、最初は1つしか魔法がありませんが使い込めばマテリアが成長し、新しい魔法を使えるようになりますよ」

 

「…私まだ悪魔じゃないから悪魔の魔力は無いし、前世も今も魔術はかじってないわよ?」

 

「問題ありません。マテリアが潜在的な魔力を引き出して魔法が発動します。人間だって魔術師はいますよね? 魔力を持たない人間なんてこの世に存在しないですもの。試しにひかりのマテリアでも使ってみるといいですよ。細かな使い方はこれに書いておきましたので暇があったら読んでおいて下さい」

 

「へー。そうなの」

 

奉先はマテリアと、"下等生物でもわかる!"とデフォルメのジェノバと共に表紙に書かれた本を受け取り、方天画戟のマテリア穴にセットすると1つの緑色のマテリアを使った。

 

画戟を持っていない手に緑色の光の剣が握られていた。

 

「あとこれを渡しておきます」

 

それは金、銀、銅のリングを2本の金色のバンドで1つに束ねた腕輪だった。

 

「きれい……え? でもコレって…」

 

奉先は最近、彼が右腕に着けている腕輪を思い出した。

 

「それはザイドリッツと言って、つけているだけで属性によるありとあらゆるダメージ全てを半減してくれる上、防御力と他諸々の上がる素敵な腕輪です」

 

「な、なんか見た目からは想像できないぐらい凄いわね…」

 

「ちなみにシンラさんにあげた奴とお揃いですよ」

 

「大切にするわ!」

 

奉先は嬉々として早くも腕に着けた。

 

「ところでジェノバさん?」

 

「はい?」

 

「あの人誰なの?」

 

「む? 余か?」

 

奉先の目の先には黒のミニスカートに白いシャツを着て、トレードマークのポンチョを着たヤズマットがいた。

 

重量に反してふわふわと浮き、身体を取り巻く灰色のポニーテールを見れば、一目で人間ではないことは明白である。

 

「異次元番付実力編で5位以内には確実に入っているすっげー竜ですよ。多分、竜ならトップなんじゃないですか?」

 

ジェノバにはもの凄く簡単に纏められた。

 

「名はヤズマットだ。よしなに頼む」

 

「あ、どうも」

 

こんな感じでパーティーの編成と準備が完了した。

 

パーティーはこんな感じである。

 

 

前列:呂布 奉先(攻撃要員)

後列:ジェノバ(回復要員)

後列:ヤズマット(ヘイト要員)

 

 

酷いヌルゲーだ。前回のパーティーよりも酷い。

 

「で? ここはどこなんですか?」

 

彼女たちは特に魔物とエンカウントすることも無く、ほのぼのとした草原を歩いていた。

 

「うむ、ここはチョ…いや、まず見た方が早いな」

 

ヤズマットの眼下に亜空間が出現すると、そこに腕が突っ込まれ、黄色を帯びた大根のような野菜が握られていた。

 

さらにそれを掲げ、ふりふりと見せびらかすように振った。

 

「ほうほう、"ギザールの野菜"ですか」

 

「む? "ギサールの野菜"であろう?」

 

「え? ギザールですよ」

 

「何を言う。ギサールであろう」

 

「ギザールです」

 

「ギサールであろう」

 

「ぐぬぬ…」

 

「うむむ…」

2人による不毛な文明摩擦を他所に奉先は遠くの草原に黄色を中心に、所々に水色、黄緑、白、黒、赤、といった色とりどりの点のようなモノに気が付いた。

 

それが何かと首を傾げていると、一番近い黄色い物体がこちらに気付いたのか、1度大きく跳び跳ねると土煙を巻き上げながらこっちへ向かってきていた。

「なにあの黄色い毛玉?」

 

近付いてくるに連れてその輪郭がはっきりと認識できるようになり、さらに奉先でもソレがどんな生物か認識できるようになった。

 

それは………。

 

「クェェェ!」

 

ダチョウより多少大きいほどの地球に存在しない鳥。

 

"チョコボ"だった。

 

「可愛いー! なにこの子!」

 

奉先はそう言って手をわたわたさせて女の子らしい反応をしながら触れようと動いた。

 

「クェ!?」

 

チョコボは鈍く光る方天画戟を持った奉先が、人間を軽くやめているスピードでスキップしながら来るのが怖かったらしく逃走した。

 

その速度は一瞬でバイクほどの平均速度に達した。

 

だが、伊達に遥か過去の時代で飛将として生きていた英雄ではない。

 

それを見た奉先は血が騒いだのか、全力で駆け出すと画戟を棒高跳びの要領で地面に叩き付け、画戟と共に大ジャンプし、チョコボの背に乗った。

 

「んー♪ ふかふか」

 

奉先はデレッとした顔でチョコボの毛並みを堪能しながら乗っているが、無論、チョコボは全力で振り落とそうと暴れている。

 

「クェ! クェェェ!!」

 

「無賃乗車ダメ。ゼッタイ。」

 

「む? 言葉がわかるのか?」

 

「尚、表現には多少の齟齬があります」

 

いつの間にか不毛なプチ争いを終えた2人は下らない話をしていた。

 

「クェ……ェェ…」

 

やがてチョコボは観念したのか、頭を項垂れて静かになった。

 

「あー、鳥臭いわー♪」

 

「チョコボ臭ですよ」

 

「チョコボ臭だな」

 

どこの星でもチョコボ臭は共通らしい。

 

「この子、チョコボって言うの?」

 

奉先はぺしぺしとチョコボの背中を軽く叩きながら言った。

 

「チョコボっていう魔物ですよ」

 

「これで魔物!?」

 

「クェ?」

 

奉先とチョコボは顔を見合わせた。

 

「ちなみにここはチョコボ平原と呼ばれる場所だ。ここを通り、正規のルートで行かねば次元の墓場で面倒なことになるのでな。目的地はそこのゲートだ」

 

ヤズマットが10kmほど離れたところの山を指した。

 

「ここに来た理由は他にもあるのだが、それは追々わかるであろう」

 

「クェェェ」

 

チョコボは野菜を物欲しげな眼差しで見ている。

 

「野菜食べるの?」

 

「クェッ!」

 

チョコボは元気よく答えた。

 

「やってみるか?」

 

「やる!」

 

ヤズマットは奉先に野菜を投げ渡すと、奉先はキャッチしてチョコボから降り、目をキラキラさせているチョコボへ野菜を向けた。

 

「クェェェッ! クェッ! クェッ!」

 

「可愛い…」

 

大根のようなものをバリバリ食べるダチョウ風の巨鳥。

 

と、それをうっとりと眺める画戟を持つ美少女。

 

なんとも妙な絵面だ。

 

そうこうしているとチョコボが突然、何かに脅えたように震えだし、一目散に逃げ出した。

 

「え?」

 

奇妙に思った奉先がチョコボが見ていた方向を見ると、頭と胴体が一体化し、そこから巨大な2本の鉤爪のような腕と短い2本の足が生えたよくわからない魔物が他のチョコボを追い掛け回していた。

 

さらにその魔物は上顎が1つにも関わらず下顎が二股に別れ、それぞれの下顎に舌と歯が揃っておりかなりおぞましい外見をしている。

 

「何あれ…?」

 

しかも腕も使って走るせいか、その短足からは想像できないほどの早さでチョコボを追い掛け回していた。

 

「チョコボイーターという魔物だ」

 

「チョコボイーター!?」

 

「名前通りの魔物であるぞ」

 

「許せないわ…」

 

奉先から大海の荒波のように荒れ狂う緑色のオーラが溢れだした。

 

奉先は世界最高クラスの仙術使いでもあるのだ。

 

「まあ、待て。あ奴が真面目に仕事をしているのなら何も問題ないぞ」

 

「放して! アイツを殺せない!」

 

「どうどう」

 

だとしてもジェノバの触手に簀巻きにされるのが落ちだが。

 

「うむ、来たか」

 

その言葉と共に空から黄色い物体が滑空してきた。

 

「まさか…チョコボ!?」

 

艶のある黄色い体躯。

 

身体に対して小さい翼。

 

長く掴みやすそうな首。

 

この草原の絶対王者と言わんばかりの鋭い眼光と静かなオーラ。

 

そう………それは…。

 

 

 

 

 

"2ヘッドドラゴン"だった。

 

 

 

 

 

彼がいたのなら"おい、火のダーククリスタルはどうした"などと言いそうな光景である。

 

『ファファファ! 悪く思うな! 貴様が死なねば我がヤズマット様にお仕置き(サイクロン)を受けてしまうのだ!』

 

ダブった声が聞こえるのと同時に2ヘッドドラゴンがチョコボイーターの目の前に着地した。

 

『消えてしまえー!』

 

奉先は確かに見ていた。

 

間違いなく全人類最高レベルの動体視力を持つ奉先は、2ヘッドドラゴンの攻撃動作の一部始終を確かに見ていたのだ。

 

それでも2つの首が一瞬、完全に消えたようにしか見えなかった。

 

2ヘッドドラゴンの首が再び奉先見えた時、既にチョコボイーターの身体は消し飛んでおり、赤い霧のようになった肉片と血が辺りに舞っていた。

 

そして次の瞬間、遅れて数十回空中を叩き割ったような音が聞こえ、その衝撃と風圧により赤い霧は完全に霧散した。

 

それを見てハッとした奉先は2ヘッドドラゴンが何をしたのかようやく理解した。

 

2ヘッドドラゴンがしたことは簡単で本当に単純だ。

 

だが、単純だからこそ最も恐ろしい。

 

それはただ………。

 

 

"速く連続で攻撃しただけである"

 

 

 

ネテロかお前は。

 

ちなみに正確には0.01秒で32回の連撃を放ったのだ。

 

まさに百式観音であった。

 

「ふむ、どうやら役目は怠ってはいないようだな」

 

「………知り合いなの?」

 

「まあ、そんなところであるな…む? あれは」

 

そんな会話の最中、突如何かを全力で蹴り抜いたような鈍い音が聞こえた。

 

「クェェェ!」

 

『ガホゴッ!?』

 

見ると横から2ヘッドドラゴンの頭に全力で蹴りが入れられた。

 

蹴りを入れたのは赤い身体を持ち、普通より二回りは巨大なチョコボだった。

 

『キサマァァァ! 恩も感じずまた奇襲をォォォ!』

 

「クェェェ!! クェェェェ!!!クェェェェェ!!!!」

 

それに大人気なくぶちギレる2ヘッドドラゴン。

 

と、それに挑発をする赤チョコボ。

 

「お前の助けなんているかー、獲物を横取りするなー、この草原は私のものだー、だそうです」

 

「ジェノバさん本当に言葉わかるのね…」

 

その時、先程の2ヘッドドラゴンの攻撃が脳裏を過った。

 

「チョコボがあぶな………い?」

 

な、辺りで気が付いたのだろう。

 

赤チョコボはなんと2ヘッドドラゴンの音速を遥かに超える連撃を回避していた。

 

「ほうほう、言うだけのことはあるじゃないですかあのチョコボ」

 

ほぼ、瞬間移動のような速度で、同じく刹那の連撃をギリギリでかわす赤チョコボ。

 

それに対して2ヘッドドラゴンはその場から動かずに片方の首で攻撃をし続け、片方の首は何かを狙うか待つように待機していた。

 

「クェェェ!」

 

赤チョコボが連撃の隙を見てひと鳴きすると突如、2ヘッドドラゴンの頭上からデフォルメの星のような物体が降ってきた。

 

「甘いわ!」

 

それを待ってきたと言わんばかりに2ヘッドドラゴンの待機していた首が動くと、星を連撃で粉々に破壊し、そのままカウンターの要領で技を繰り出したことで隙の出来た赤チョコボに連撃を繰り出した。

 

さながら弾幕(物理)である。

 

「クェ!?」

 

赤チョコボは直ぐに回避動作に入ったようだが、一発貰ってしまったようで後方に大きく吹き飛んだ。

 

「す、凄いわあのチョコボ……。私、一撃で死ねる自信あるもの」

 

赤チョコボはくるくると回転しながら着地すると、連撃の射程(首の間合い)圏内では勝ち目はないと踏んだのか、デフォルメの星を落とすチョコメットと、2~3mほどの隕石を落とすチョコメテオを放ちまくてった。

 

対する2ヘッドドラゴンは赤チョコボがいる場所を空間ごと大火炎で包み込んだり、流氷のように巨大な氷の塊を凄まじい速度で衝突させたり、極太の雷を落としたりしていた。

 

要するにガ系三大魔法のフルコースである。

 

奉先はわかってはいたが、余りに次元の違い過ぎる戦いに絶句していた。

 

だが、戦いは唐突に終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

「いい加減にしろ…」

 

 

 

 

 

それはヤズマットから発された途方もない重圧が込められた声だった。

 

「汝らいつまで余の御前で醜態を晒すつもりだ? どうやらよほどに死にたいと見えるな…」

 

2体へ向けられたヤズマットの指が緑色の光を放ち始めた。

 

『ヤズマット様!? 待っ』

 

「クェェェ!!? ク」

 

「問答無用」

 

一瞬、平原全ての風が止み、時が止まったようにすら感じた。

 

 

 

 

 

「サイクロン」

 

 

 

 

 

その言葉を放った瞬間、億を超える数の風の刃で構成された竜巻が両者を襲った。

 

両者を飲み込んだ竜巻は意思でもあるかのように2体を浮かせ、中心に引きずり込んだ。

 

そこで2ヘッドドラゴンと赤チョコボは風の刃による凄まじいお仕置きを受け、約1分後に派手な音を立てて地面に激突した。

 

両方共ピクピク動いているので生きてはいるようだ。

 

これだけの大規模攻撃に関わらず地面の草一本すら被害が無い事から、今の現象は全てヤズマットの魔力で作られたモノであり、それが極限レベルに洗練されていたという事が見てとれた。

 

ちなみにヤズマットがやろうと思えば1人デイ・アフター・トゥモローなども朝飯前である。

 

「さて、仕置きも終わった事だ。本題に移るとするか」

 

「そうですねー」

 

「奉先よ」

 

「………………え? あ、はい!」

 

「あれがお前の師だ」

 

そう言って依然、ピクピクしている2ヘッドドラゴンを指差した。

 

「え? マジ…?」

 

奉先は思った。

 

私、シンラの子供産んで孫の顔見るまでは死ねないんだけど?

 

安定の斜め上を行くだった。

 

「ジェノバが近接攻撃が得意な人いないかと聞いてきてな。ならばそ奴が打って付けだと思ったわけだ」

 

「ヤズマットちゃんの話によると次元の墓場はとっても危ないそうなのでその間、ここで修行してて下さいよ。2ヘッドドラゴンのあの攻撃が出来ればきっととっても強くなれますよ」

 

「と、言うわけだ。汝も聞いていたであろう?」

 

『ぎ、御意…我が王よ…』

 

2ヘッドドラゴンも気合いで身体を起こすとこちらまで歩いてきた。

 

時々、緑の光が身体を包んでいるところから、自身にケアルガを掛けながら歩いて来ているようだ。

 

近接最強クラスの攻撃に、大魔法、回復魔法と実に芸達者な竜だ。

 

「まあ、こ奴の戦闘力は全盛期の二天龍を足した程度だ。実力は申し分なかろう」

 

奉先は逆に強すぎて申し分ありますと心の中で叫んだ。

 

なんだ結果的に戦争を止めた二天龍以上って。

 

奉先は再び思う。

 

だから私、シンラの(以下略)

 

「と、言うわけで私たちは行ってきますからね」

 

「ではな」

 

「じゃあのです」

 

その刹那、2人は消えていた。

 

「………………」

 

『………………』

 

そこには1人と1匹と1羽だけが残された。

 

『まあ、あれだな…』

 

意外にも2ヘッドドラゴンから話し掛けてきた。

 

『貴様も苦労しているのだな』

 

「彼、程じゃないけどね」

 

『そうか…』

 

2ヘッドドラゴンはそれ以上聞こうとはして来なかった。

 

奉先は思ったより好い人(?)かもと2ヘッドドラゴンの評価を一段階上げた。

 

「あ、この子どうしよう」

 

奉先は未だに倒れている赤チョコボに駆け寄った。

 

「クェ………」

 

「どうしよう…あっ! マテリア!」

 

奉先はとりあえずマテリアの回復を試してみた。

 

「ケアルっ」

 

「クェ……」

 

回復はしたようだが足しにならない程度なようだ。

 

『チッ…貴様などのたれ死ねばいいものを…。我は先にあの辺に行っているぞ。稽古を付けて欲しいなら来るがいい』

 

そう言いながらノシノシと歩き出すとふと何か思い出したように大声で言った。

 

『ん? おかしいなエリクサーが1本足りん。まあ、いい。我には必要ないものだ。あんなもの駄鳥のエサがお似合いだ』

 

そう言ってからまたノシノシと歩き出した。

 

奉先は最初に2ヘッドドラゴンがいたところを見ると綺麗な赤い小瓶が落ちていた。

 

「………ツンデレね」

 

ポツリと奉先は呟いてから赤チョコボのところに戻った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「むう、この光景をオーフィスに見せてやりたいな」

 

「多分、泣きますよあの娘」

 

ヤズマットとジェノバは次元の墓場に来ていた。

 

そこには無数の機械系の魔物や、魔導人形などがスペースデブリのように残骸が漂い。

 

地面は人が造ったと思われる空母、戦車、戦闘機、潜水艦から飛空挺に至るまで様々な機械が隙間なく重なり合う事で地面となっていた。

 

「ところでヤズマットちゃん?」

 

「む? なんだ?」

 

「正規ルートなら襲われないって言ってましたよね?」

 

「まあ、あれだ。予想外というものは誰にでもあるものであろう?」

 

「その意見には激しく同感ですけどこの状況はもの凄く面倒なことになってません?」

 

「彼女を置いてきて正解であったな」

 

「違いませんね」

 

ジェノバとヤズマットの目の前にはとある古代兵器がいた。

 

それは"オメガ"と呼ばれる兵器だった。

 

寸胴の胴体に四脚が生えたような黒鉄色のボディに、赤く光り横に長細い目が特徴のシンプルな機械であるが、実力は神竜であるオーフィスと同等…いや、それ以上だ。

 

それが主武装である波動砲をチャージしながらジェノバとヤズマットを狙っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

"約100体ほどで同時に"

 

 

 

 

 

 

 

「というかこんな光景どっかで見たことありません?」

 

「ふむ、有名なアニメ映画で見たことがあるような…」

 

「それラピュ」

 

ジェノバの言葉は全てのオメガから同時に放たれた波動砲に飲み込まれていった。

 

 

 

 

 

 




次回の投稿でアンケートは締め切ります。


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