早く、原作に入りたいです…。
でもまだシンラくんの一大イベントがあるのでそれからです。
突然だが、我が家の朝食はジェノバさんが作る。
いや、朝食だけに留まらず食事は全てジェノバさんが作っているのだが、今は朝食中なので朝食の話で良いであろう。
しかし、作られるだけでは忍びないので私も手伝うことにしているのである。
まあ、手伝うと言っても炊飯器からご飯をよそったりする程度なのだが、今日も例に漏れずそうしている。
まずジェノバさん。と、言いたいところだが相変わらず食事は取らないようなのでジェノバさんは無し。
次にオーフィスちゃん。言うまでもなく特盛。
「ありがとう」
うむ、いい返事だ。食事の時は一段の輝いて見えるよ君。
その次にヤズさん。特盛…と。
「うむ」
ちなみにヤズさんはジェノバさんと同じく食べなくても問題ないらしい。
だが、食事は好きらしくいつも取っている。
好きなもの肉や魚等の料理で、良く食べる。
逆に野菜中心のは苦手なようだ。
今日はニンジン食べて下さいね?
「むう…善処する…」
と言いつつ恨みがましい目で目玉焼きの横のニンジンを睨み付けるヤズさん。
なんだこの絵面…。
え? 昔のオーフィスちゃんも食べなくても生きていける?
嘘だ。この前、オーフィスちゃんが最後にとって置いたショートケーキのイチゴを私の皿だと勘違いした奉先に食われた時、部屋の隅で膝抱えて拗ねてたんだぞ?
私の皿のイチゴをオーフィスちゃんにあげることで事なきを得たがな。
ちなみにオーフィスちゃん曰くショートケーキのイチゴは…。
『まさにオアシス』
とイチゴを掲げながら言っていた。
意味がわからん。
後は黒装束の女忍者。この人は大きいのでとりあえず大盛りにしておこう。
忍者は音に敏感かも知れないのでそっとご飯茶碗を置いた。
「………………」
コクりと頭を傾けられた。
ありがとうという意思表示と受け取っておこう。
ただし、マスクは取ってから食べるべし。
最後に黒のワルツ3号風の魔女っ娘。
なんだからわからんが残さ無いようにとりあえず普通に盛っておこう。
「あ、ありがとうございます…。だ、旦那様…」
うむ、そんなに頬を染めてどうした? 風邪か?
これが俺の数少ない家の役目なのだから畏まる必要は無いぞ。
あ、私のも盛らなければな。普通、普通っと…。
………………………………。
………………………。
………………。
………。
さて………そろそろ突っ込むか。
お・ま・え・ら・は・だ・れ・だ
私はビシッと忍者と魔女っ娘を指差しながら宣言した。
「今更ですか…」
ジェノバさんは目を見開いて驚いていた。
ふっふっふ、人…いや悪魔は成長するものだよジェノバさん。
朝起きたら、両サイドに忍者と魔女っ娘が寝ているという展開にあったとしてもだ!
似たような展開は既に3度目なのだよ!
1度目、ジェノバさん。
2度目、ヤズさん。
3度目、忍者+魔女っ娘。
「シンラさん…どんどんスルースキルが高くなって来ましたね…」
誰のせいですか誰の…。
ちなみにオーフィスちゃんは私の下半身に覆い被さってた。
というか胸が完全に朝の私のシンボルを押し潰していた。
ある意味こっちの方がビビったのはナイショである。
「何食わぬ顔で4人一緒に寝室から降りて来た時はビックリしましたよ」
突っ込んだら負けですからね。
「くッ!? ならば今度は…ふふふ…」
ジェノバさんが黒い笑みを浮かべていた。
………素直に驚いときゃ良かった…。
「ちょっと話しは長くなりますけど説明しますね。あ、その前に一服させてください」
ジェノバはスカートからおもむろに箱を取り出すとそこから一本とりだし、口に加えた。
その箱にはこう書かれていた。
"ブルーベリーシガレット"
………………………これは突っ込めば良いのだろうか?
いや、ネタなのだろうか?
そもそもネタだとしたらなぜこんな今時の人間が知らないようなネタを放り込んで来たのだろうか?
ジェノバさんとは一体………うごごごご。
それを見かねてかヤズさんが目を瞑り、唸り声を上げてから重い口を開いた。
「どれも捨てがたいが…余はオレンジシガレット派だ」
全くどうでも良かった…。
「我、コーラ」
お前もかオーフィスちゃん…。
………………………。
シガレットならココアシガレットだろ。
「それはない(な)(ですね)」
なんで!?
◇◆◇◆◇◆
そんなこんな食事がてらジェノバさんから2人のことを聞いた。
要約するとこんな感じだ。
オメガと黒のワルツ3号拾ったよ!
改造したよ!
以上説明終了。
ふふ、この忍者が殺戮兵器で、黒のワルツ3号コスが魔導人形だと?
そんな馬鹿な…いや、しかしジェノバさんならやりかねない……ん? あれ?
オメガ…ちゃんはどこに?
気がつくとオメガちゃんはどこにも見当たらなかった。
「忍んでるんですよ」
え? 忍ぶ?
ジェノバさんは深い溜め息をついてから口を開いた。
「"忍ばない忍なんて………忍びじゃないでしょう?"」
………………………………………確かに。
「食事にはやって来るので大丈夫ですよ」
そ、そうなんだ…。
「シンラー、カラオケ行くわよー」
リビングの窓から靴を持って奉先が侵入して来た。
お前はカツオの友達か…。
するとそれまで静観していたか黒のワルツ3号が、オレンジレッドの瞳を吊り上げ奉先を睨み付けた。
「………………」
「なによ…?」
「フンッ…」
黒のワルツ3号は鼻息を上げ、嘲笑うと口を開いた。
「なにかと思えばただの小娘か」
うわぁ…この見下し切った態度。
「はあ…?」
「主の女がどんな女かと思えば………貴様などこの黒のワルツの敵ではないわ!」
本当に3号さんじゃないですか…。
「なんですって…?」
あ、奉先がキレた。
奉先…物理的な勝負事の沸点は無茶苦茶低いからな。
「魔術師とかいうチキンに言われるとは心外ね」
「ほう…貴様のような脳筋に魔術師のなにがわかる?」
「あら? 前衛に隠れて後衛で細々としている臆病者でしょう?」
「フンッ、前衛で武器をブンブン振るうだけの簡単なお仕事をしている者は脳まで簡略化されていると見えるな」
「あはははは!」
「カカカカカ!」
2人はイイ笑顔で笑い合った。
「殺す!」
「始末してやる!」
2人は庭に出て行った。
俺が呆けるならジェノバさんが口を開き、それに残りの竜が続いた。
「いやー、早くも仲良くなって良かったですね」
「うむ」
「ん…」
どこが!?
「好きの反対は無関心です。嫌うという感情でも持ってれば対抗心や、ライバル心を引き立てるモノですよ。それは能力の向上に非常に有効です」
「親睦を深めるには拳を交えるのが一番であろう?」
「我とグレートレッド、最初いがみ合ってた。でも今、親友」
アッハイ。
◇◆◇◆◇◆
人の庭のど真ん中で2つの影が50mほどの距離を開けて対峙していた。
片方は現代に再臨した人間最強の将兵、呂布 奉先。
もう片方は肉体の限界まで改造が施された究極の魔導兵器、黒のワルツ3号。
両者は常人が見れば泡を吹いて気絶するほどの殺気の籠った視線をぶつけ合っていた。
「私の何が気に入らないのよ?」
「全てだ! ブレイズ!」
呪文と共に奉先は横へ飛ぶと奉先がいた場所が凍りついていた。
「いきなり不意討ちとは流石魔術師ね!」
奉先は足の裏に気を纏わせると車輪が回転するように気を渦巻かせた。
縮地と呼ばれる高等仙術の歩行法だ。
これにより足が動いていないのにも関わらず滑るような超高速移動が可能なのである。
さらに気を体得していない者には一切、次の動きが読めない。
ただ、欠点もある。
それは極めて高度で精密な気の操作が必要なため、普通は直進するのがやっとなのだ。
だが、奉先は普通ではない。
奉先は縮地により、両足を揃えて寄り掛かるような体勢のまま黒のワルツ3号の周囲を高速回転し始めた。
黒のワルツ3号の目からすると周囲に数人の奉先が絶えず瞬間移動を続けているように見えるだろう。
ちなみにこの動きが影分身というモノの正体だったりする。
「小癪な!」
黒のワルツ3号は杖を持っていない掌を上に向けると小さな雷光の球体が出現し、それが弾けた。
「サンダガ!」
瞬間、半径100m程の空間全てに隙間なく極太の雷光が埋め尽くした。
そして雷光の嵐が止むと…。
黒のワルツ3号の目の前に蹴り上げの体勢に入っている奉先がいた。
「なに!?」
「ざんねーん。ディロイさんのサンダガと違って隙間があるわよ?」
ディロイとはドライグやアルビオン同様に2ヘッドドラゴンの名前である。
赤龍帝や白龍皇のように2ヘッドドラゴンは
実は二天龍以上の実力を持つ現存する唯一のドラゴンなどと世界では吟われていたりするかなり凄い竜なのだ。
ちなみに奉先の言う通り、2ヘッドドラゴンのサンダガなら半径数kmの空間全てを完全に隙間なく埋める範囲殲滅攻撃も可能である。
………次元の狭間では下から数えた方が早い実力なのは内緒だ。
「くッ!?」
黒のワルツ3号は杖を振るって奉先を殴り付けようとした。
「遅い!」
「ぐぁ!?」
だが、流れるような動作で奉先それを避け、放たれたカウンターキックにより綺麗に顎を蹴り抜かれた黒のワルツ3号は十数mほど打ち上げられると空中で回転してから停止し、奉先を睨み付けた。
「貴様…」
「あら? 思ったより随分頑丈なのね?」
「ナメるな! サンダガ!」
黒のワルツ3号は空中で雷光を発生させた。
それも10のサンダガを同時にだ。
「バカの1つ覚えね…え!?」
それの全てを黒のワルツ3号は自らにぶつけた。
「ッ!?」
爆音を響かせながら黒のワルツ3号の身体が雷光に焼かれながら輝いた。
黒のワルツ3号は身体に直接雷光を帯電さているのだ。
正気の沙汰ではない。
一定なら魔力で造られた雷を纏ったりすることは可能だ。
だが、黒のワルツ3号の身体に対してこの量では普通の悪魔どころか最上級悪魔すらただでは済まないだろう。
さらに雷だけでも異常だというのに雷光は悪魔に特効ダメージを与えるモノだ。
だが、黒のワルツ3号もまた普通では無かった。
常軌を逸した激痛を耐えきり、黒のワルツ3号の身体は凄まじい量の雷光を溜め込み終わり、バチバチと一撃一撃が竜すらも焼き殺せるほどの電気を放っていた。
「………死ぬわよ私?」
「ならば死ねい!」
黒のワルツ3号は奉先に滑空しながら突っ込んだ。
「……はぁ…そっちがその気なら…」
奉先は亜空間から方天画戟を取り出し、切っ先を黒のワルツ3号に向けた。
更に奉先から緑の半透明の気が溢れだし、一帯を緑に染めた。
それは仙人と呼ばれる人間数百人に相当するあまりにも莫大な気だった。
気は生命そのものであり、この世で最も純粋なエネルギーだ。
それは最強の盾であり、剣でもある。
今の奉先はまさに究極の牙城だった。
「来なさい!」
「望むところだ!」
黒のワルツ3号と奉先が衝突するその刹那。
"ブチッ"という何かがキレる音が聞こえた。
一瞬、2人の注意がそちらに向いた。
すると………。
"目の前に無表情で両腕を振り上げている彼がいた"
「これ以上家の庭を…」
既に庭のど真ん中が土が剥き出しの更地になっていた。
彼女たちの速度が億劫に見えるほど凄まじい速度で彼女らの後頭部にそれぞれ回る手をスローモーションのように彼女たちは見ていた。
「母さんが植えた花を…」
よくみると彼女たちの近くにはギリギリ破壊を免れた小さな花壇があった。
だか、恐らく彼女ら次の戦闘の余波で潰れていたであろう。
彼は彼女らの頭を掴んだ。
方や雷光を帯電、方や気の牙城と化してた。
が、それをものともせずにだ。
「ぶっ壊すなぁぁぁぁぁ!!!!!!」
彼に捕まれた2人の頭が凄まじい速度で衝突し、その衝撃波により地面に大きく亀裂が入り、空の雲が割れた。
捕まれた2人は出鱈目すぎる衝撃により、即昏倒した。
呂布 奉先 VS 黒のワルツ3号
勝者 神城 羅市
忘れてはならない。
魔力は封印されていてもシンラくんは