家のメイドが人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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どうもちゅーに菌or病魔です。

作者はボーレタリア、ロードラン、ドラングレイグ在住で、レイブン、リンクス、AC乗りという多忙な日々を過ごしているので投稿が遅れてしまいます。

投稿について言われても。


興<遅かったじゃないか…

私<仕方ないね♂

干<手こずっているようだな…尻を貸そう

私<手を貸してください

≧<言葉は不要か…

私<小説ですからね

( T)<貴公…

私<ダーイスンスーン!


と、返すしかないので悪しからず。



メイドと宇宙人

 

事の発端は数日前に遡る。

 

場所は冥界にて主にサーゼクス・ルシファーが仕事場とする場である。

 

そこでグレイフィア・ルキフグスはいつも通り、職務をこなすサーゼクスの傍らでその手伝いに徹していた。

 

仕事中、グレイフィアは全くと言っていいほど口を挟まず、逆に他愛もないことや、下らないことをグレイフィアに話すサーゼクスに相づちを打ったり、呆れたりするぐらいであるがグレイフィアはこの二人っきりの時間が堪らなく好きであった。

 

そんないつも通りの中、ふと、目線を窓に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

建物の外壁に重量を無視して垂直に立ち、目を見開きつつ、口を三日月に歪めながら、小さくこちらに手を振るジェノバと目があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

グレイフィアはブボァッ!?などと吹き出しそうになったが、そこは完全で瀟洒な従者たるグレイフィア。

 

全力で堪え、2度ほど深呼吸をすることでなんとか落ち着いた。

すると窓の外のジェノバは小さく振っていた手を握り、拳に変えると、親指を立てて後ろを2.3回ほど指差した。

 

ちなみにそのポーズは俗に顔を貸せ、面へ出ろ、ちょっとコンビニ行ってくる、そのリモコンとってくれなどのポーズである。

 

グレイフィアは露骨に嫌だといいたげな顔になりそうな自分を全力で押さえ込むと、サーゼクスに適当な理由をつけ、ジェノバの元へ鉛のように重くなった足を動かした。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

『にゃーす! グレイフィアさん!』

 

指差した方向にあり、唯一と言っていいほどこの施設で死角になる場所の一角に着いたグレイフィアを待っていたのは異様なテンションの高さを見せる異様な生物…もといジェノバだった。

 

なにせこれでも真なる赤龍神帝ですら傷1つ付けられなかった相手を目の前で、一歩も動かずに圧倒し、葬り去ったほどの実力者だ。

 

最も最後の方は理解が追い付かな過ぎて気絶してしまったが…。

 

まるで"あの方"の再来だとグレイフィアは思っていた。

 

あの方とは無論、エクスデスのことだ。

 

グレイフィアの知るエクスデスは当初、書物の中の存在だった。

 

数千年前、エクスデスと名乗る人間界の空の色のような鎧を纏った者が突如として天界に現れたのが始まりである。

 

エクスデスは全世界への宣戦布告と共に単身で天界を攻め行った。

 

それだけなら大したことは無かろう。だが、あろうことにエクスデスはたったの半日で天界を完全制圧してしまったのだ。

 

たったの一人で……だ。

 

そして、その動揺も晴れぬうちにエクスデスの宣戦布告から1日後にハーデス率いる冥界の軍勢が冥界を襲った。

 

冥府はこれまで三つ巴の戦いに全くの干渉、あるいは中立を保っていたため、残りの陣営は大混乱に陥ったのだった。

 

それもそのはず、ハーデスはその当時の世界第3位の実力者。

 

ハーデスは冥府の統治者としてだけではなく、当時、世界最強の古代魔法使いとして名をはせていた。

 

が、それよりも遥かに有名なのは伝説級の素材と超多額の価格設定を呑むことで利用できる究極の合成屋としてだった。

 

無論、腕も世界最高で聖王剣コールブランド、天叢雲剣、魔帝剣グラムなどの数々の伝説を遥かに超える伝説の剣や、星の数ほどの防具、魔道具、霊薬などを生み出してきた。

 

三陣営にとっては戦力増強の要とも言えないでもない存在だっただけにその驚愕は計り知れないだろう。

 

さらにハーデスの妻であるペルセボネ。腹心である最上級死神のプルート、ミクトランテクートリ、ミクトランシワトルらを軍列に加えていることからもハーデスが全力を持って潰しに掛かっている事が理解できた。

 

だが、簡単に落とされるほど悪魔も堕天使も甘くはない。

 

伊達に万年戦争をしているわけではなく、直ぐに形勢は建て直され、冥府の軍勢の対処に当たった。

 

だが、ここで予測が完全に不可能な事態が起きた。

 

いや、予測出来たからといって何が出来たわけでもないが。

 

突如として、両陣営の本部にエクスデスが現れ、巨大な次元の裂け目が空に出現した。

 

そしてそこから……。

 

 

 

 

 

 

悪魔陣営には"真なる赤龍神帝"と"赤龍帝"が……堕天使陣営には"無限の龍神"と"白龍皇"がほぼ同時刻に襲い掛かったのだ。

 

 

 

 

 

 

そこから抵抗する気力のある者などいるはずも無かった。

 

両陣営の本部は1分と経たず壊滅し、陥落。

 

結果的に三陣営の戦争はエクスデスとそれに味方した冥府の勝利で幕を閉じた。

 

それから数日エクスデスは世界の頂点にいたが、ある日龍らと共に忽然と姿を消したのだ。

 

それを見届けたハーデスは自らはエクスデスの配下であり、エクスデスは次元の狭間の王であると明言し、全軍を引かせ、冥府への帰路へ着いた。

 

それが数千年前に起きた次元事変と言われるものであった。

 

次元事変が起きてから休戦という仮初めの平和がもたらされ、何度か冥府に攻め入ることや、次元の狭間に攻め入る事が案に上がったが、いずれも直ぐに却下された。

 

前者は冥府に攻め行ったとして龍に出てこられたらどうすることも出来ない上、そもそもハーデスが強過ぎること。

 

後者は唯一生き残りとしてエクスデスの実力を目にした聖書の神自身が完全にエクスデスを恐怖しきっており、断固拒否の姿勢を崩そうとしなかったからだ。

 

 

 

だが、平和はそう長くは続かなかった。

 

 

 

次元事変から数百年後、突如聖書の神率いる天界陣営が休戦協定を破棄し、冥界での無差別虐殺を始めたのだ。

 

それを皮切りに再び世界は戦争の渦に飲み込まれて行くのだった。

 

だが、不可解な事がある。

 

それは無差別虐殺を行い始めた日を境に、聖書の神である彼女は"人が代わったように何かに陶酔し、独り言と過激な言動"が多かったことだ。

 

もっとも……彼女が死した今となっては知るよしもないが…。

 

『今日来たのはですね…』

 

目の前のそんなエクスデスの再来とも言える存在のスカートの中がごそごそと蠢くと、何かが書かれたA4のレポート用紙で出来た大学レポートのようなもの持った触手がグレイフィアの眼前に突き出された。

 

『この通りの会場をセッティングしてほしいんですよ』

 

「これは…」

 

それはエヌオーの封印が解かれた日に冥界で行うつもりのささやかなパーティーに対する要望書のようなものだった。

 

だが、その内容が問題だった。

 

まず始めにエヌオーの食物に対する好き嫌いが記されている。

 

それだけなら何も問題は無かろう。

 

だが、そこには両方合わせれば500を越える品々が事細かに書かれていたのだった。

 

最早、ここまで来るとエヌオーの味覚に対する生態レポートのように思えてくるほどの詳細ぶりである。

 

というか内容の95%以上が味覚データである。

 

そもそもグレイフィアはエヌオーは出されたものは何でも食べるため、食べ物に対し、好きなものは兎も角、嫌なものが無いものだと考えていたためにこのレポートに驚愕の色を隠せなかった。

 

『目と細かな動作を見ていればこれぐらいわかりますよ』

 

グレイフィアはわかりませんよという言葉をぐっと飲み込んだ。

 

多少なら兎も角、これは明らかに変態…否、研究者の域である。

 

ジェノバは恐らく、食べ物を出した時の目の動き、食べる順序、箸の進み具合など多数の観点から結果を出しているのだと思われる。

 

ちなみにエヌオーは嫌いなものから最初に食べるタイプである。

 

さらにヤズマットは好きなもの(というか肉)から食べるタイプ。オーフィスはひたすら右端から左端に食べていくタイプ。オメガは腹持ちの良いものから食べるタイプ。黒のワルツ3号は野菜から食べるタイプ。奉先は意外にも三角食べで綺麗に食べるタイプだ。

 

味覚レポート以外を見ると不可解な事が書かれていた。

 

「…………広さ100ha以上の庭か私有地?」

 

100ha。つまりは100m×100mの空間の100倍である。

 

分かりやすく言えば某ネズミの国が51haで、某ネズミの国(シー)が49haということからも凄まじい面積だということがわかるであろう。

 

『あなたとサーゼクスさんにシンラさんの眷属紹介をしようと思いましてね。ちょっと広い空間がないと呼べない娘がいますから』

 

「そうですか……」

 

ジェノバがエヌオーの眷属を無断で集めている事をグレイフィアは知っている。

 

というかエヌオーの僧侶の駒片手にグレイフィアの秘密ノートを持ちながら。

 

"血をくださいな~♪"

 

とか満面の笑みで言われたのでわからない方がおかしい。

 

まあ、グレイフィア以外は知らないというのが唯一の救いか…。

 

『後、コレ渡しときますね』

 

ジェノバは再びスカートから触手が伸び、"赤い拳程のマテリア"と"一本の注射器"を取り出し、グレイフィアに持たせた。

 

「これは…」

 

『片方は護身用で、もう片方は自分に使うと幸せになれます。シンラさんと私について知っておいた方がいい人物がいるなら呼ぶといいです。では』

 

それだけ言うとジェノバは小さく手を振りながら空間に溶けるように消えていった。

 

グレイフィアは溜め息を付くと赤いマテリアを眺めた。

 

これまで見てきた如何なる宝石より遥かに美しい色をしているような気さえするのと同時に、持っているだけで凄まじい力が胎動しているのを感じる。

 

しかし、それよりも遥かに危険だと直感的に感じるのはこの注射器であろう。

 

その何かの金属で出来た注射器は誤射しないように針が内部に収納されており、ペンのようにノックすると針が出る機構をしていた。

 

そして、何よりも不可解なのは構造上中の物が見えない上、ラベルに……。

 

 

 

 

"JENOVA"と書かれている事だ。

 

 

 

 

「………………」

 

少なくともグレイフィア射せば幸せになれそうには思えなかった。

 

いや…別の意味で幸せになれそうな気はするが……。

 

 

 

 

『やっばり、まだ帰りません』

 

「ひわぁっ!!?」

 

真横に突然、ジェノバがエンカウントした。

 

グレイフィアは心臓が止まるかと本気で思うと同時に変な声を上げた事を恥じた。

 

『毎回、頼むだけと言うのは些かフェアじゃありませんからね』

 

ジェノバは人差し指を唇に付けてうーんと声を上げた。

 

グレイフィアは"アレ"で揺すっておいて何を言いますか……そもそもフェアとはいったい……という言葉をグッと呑み込んだ。

 

『それに働きにはそれ相応の報酬を用意しなければなりませんものね』

 

ジェノバは人差し指を口から放すと気味の悪い笑みを浮かべた。

 

『じゃあ、頑張れるように少しだけ朗報を伝えましょう』

 

そして、その口から言葉が紡がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

内戦時、ルキフグス家は最後の最期まで旧魔王派の元で戦った結果。グレイフィアを残し、ルキフグス家は命を散らした。

 

それは必然とも言えるだろう。なぜなら彼女は当時、最強のルキフグスであり、"無"の継承者であったからだ。

 

グレイフィアはルキフグスの誰よりも強かったにも関わらず、次の世代へ繋げるまでは死ぬことが許されなかったのだった。

 

グレイフィアは自分の感情も、本性も殺し、どのルキフグスよりも忠実に家のために戦った女性であろう。

 

その結果が現在のグレイフィアだ。

 

後悔はしていない。自分の人生に後悔することは死んでいった家族を冒涜することになる。

だが、それでも…それでも考える。

 

もし、自分が家に背いて家族のために戦っていたら結果は変わっていたのではないか?

 

もし、もっと早くサーゼクスと出会っていれば結果は違ったのではないか?

 

もし……自身が"無"の継承者でさえなければ家族のために戦えたのではないか?

 

全て他愛もなく、現実味もないIFの話だ。

 

だが、小さく鈍い痛みを放つその棘はいつまでもいつまでもグレイフィアの心に刺さり続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『あなたの弟さん、生きていますよ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

今、この瞬間までは。

 

 

 

 

 






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