家のメイドが人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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9000字越えねぇ……始めた当初は3000文字づつゆったりと更新しようとか考えていたのに……一体どこで間違えたんでしょう?

後、1.2話書いたらいい加減原作にワープしましょうか。

最近、思うんですけど……普通に書いてるのに10ヵ月以上経っても原作に入ってない小説って私のぐらいですよね(白目)。

ゾディアークちゃんとアルテマちゃんのヒロイン加入イベントは過去編としてそのうちアップしましょうか。

ぶっちゃけた話。私だってそろそろ原作を書きたい!

その思いが暴走して没ネタの一部だった"呼んでますよ、嫉妬さん"と"紅蓮の王のまったりライフ"の2つを投稿しちゃってますし(露骨なステマ)。まあ、没ネタなので完成度は微妙ですが読んでいただけると作者歓喜してウマウマダンス踊って腰を痛める自信があります(キリッ)。

それはそうと今回はやったね!リアスちゃん! 眷属が増えるよ! 回です。




巨大な火(プチ)

 

現在から数年前のとある執務室。

 

そこに一人の悪魔…サーゼクス・ルシファーが神妙な顔付きで椅子に腰掛けていた。

 

普段は妻のグレイフィアを常に同伴しているが、今は珍しく居ないようだ。

 

彼の視線は単にディスクの上にある1つの白いチェスの駒に注がれていた。

 

それは悪魔の駒と呼ばれているモノに他ならなかった。そして、その中でもレアな変異の駒である。

 

さらに変異の駒の中でも極めて珍しい、女王の駒だった。

 

無論、サーゼクスはグレイフィアに女王の駒を使っているため、サーゼクスのモノではない。

 

これはサーゼクスの妹であるリアス・グレモリーの悪魔の駒だった。

 

最高の価値のある女王の駒。それの変異の駒。本来なら喜ぶべき事だろう。

 

だが、サーゼクスは喜ぶ様子はどこにもなかった。

 

それは単純な理由だ。

 

変異の駒は単純に考えれば、価値以上の者を眷属に出来る駒だ。本来の悪魔の駒の価値より上の価値があると考えていい。

 

とすると女王の変異の駒はおよそ9×n程の価値があると考えていい。悪魔の駒としては破格の価値である。それ故に滅多に御目にかかれないレア物だ。

 

それを愛する妹が造り出してしまったのである。

 

「最悪だ……」

 

サーゼクスは呟きながら頭を抱えた。

 

何故ならば悪魔の家に取り入るのは幾つかの方法があるからだ。

 

1つは結婚。これはある程度相手も絞れるため、危険は少ないだろう。

 

そして、もう1つは悪魔の駒によって眷属となる事だ。

 

こちらが最悪である。

 

何故ならば悪魔の社会では結婚より、遥かに早く家に取り入れる手段だからだ。

 

その上、簡単に可能で死ぬまで切れないという酷い話だ。

 

そして、女王の変異の駒は下手すれば今のリアスでも、最上級悪魔の下の方すら眷属に出来てしまう程の可能性を持っているのだ。

 

つまり、この駒1つで大半の悪魔と繋がりが持ててしまうのである。

 

流石に最上級悪魔の中位~上位から魔王クラスは無理だが……寧ろ魔王クラスまで届けばどんなに良かったか…。

リアスは悪魔として、かなり危うく、そして悪魔社会では最高クラスの立ち位置にいる。

 

そこに取り入りたい者など掃いて捨てるほどいるだろう。

 

こんな1発で色々と全て、決定しかねないモノなどあってはならないのだ。

 

まあ、それが8割で残り2割は……。

 

リアスを僕の認めた男以外に渡す気はない!

 

という、実に妹の将来の為を考えた上での行動である。

 

しかも、この女王が出来る光景を大多数の悪魔が見ている。広まるのも時間の問題だろう。

 

だが、この解決策が無いこともない。

 

サーゼクスは視線をディスクに飾ってある1枚の写真へ向けた。

 

そこに写っているのは朗らかな笑みを浮かべるグレイフィアに良く似た青年だった。

 

いや、グレイフィアがその青年に良く似ているのが正しいのだろう。

 

本来の歳より幾らか大人に見えるその青年こそが、サーゼクスとグレイフィアの愛の結晶であり、ルキフグス家とあの方の悲願、そして神が産まれるより遥か昔の最強の暗黒魔導士だ。

 

エクスデスにより、魔力も"無"も封印されているのにも関わらず、最上級悪魔クラスの身体能力を持っている。

 

最もグレイフィアとサーゼクスにとってはそんなことは関係無く、自分達の愛する息子だが。

 

ちなみに、その息子はフル変異の駒という、アジュカ・ベルゼブブですら状況を飲み込むのに30秒ほど時間が必要だった凄まじい光景を起こしていたりするが、あれは論外なのでほっておこう。

 

息子は悪魔としてはエヌオー・ルキフグスという名になる。

 

そして、母親のグレイフィア・ルキフグスはサーゼクスがまだ、グレモリーだった頃に離反し、仕えていた。

 

ならばエヌオーが母親と同じようにルキフグスとして、グレモリーに仕えるのなら悪魔の社会でも党争に巻き込まれる心配もあまり無くなるだろう。

 

リアスも将来的に間違えなく最強……いや無敵の女王を手に出来る。最も御せるかはまた別の問題だが…。

 

しかし、絶好の機会とは言え、エヌオーを利用するような形になる。

 

悪魔の貴族としてはごく普通のなんでも無いことだろう。だが、親として、それはどうなのか?

 

サーゼクスはその事を悩み、今までここで悶々としていたのだった。

 

「いつまでそうしているんですか」

 

「グレイフィア…」

 

そこに現れたのは自身の最愛の人の一人であるグレイフィアだった。

 

「大丈夫です。エヌオーは優しい子ですから……」

 

「グレイフィア…」

 

グレイフィアがサーゼクスに後ろから抱きつきながらもたれ掛かった。

 

「よしっ…」

 

サーゼクスは何かを決心したような声を上げると、グレイフィアをそっと退かしてから立ち上がり、とある戸棚の前まで歩き、そこで止まった。

 

「サーゼクス様…?」

 

グレイフィアがサーゼクスの行動に困惑したが、サーゼクスが戸棚の術式を解き、中のモノを1つ取り出した事で表情が驚愕に染まった。

 

「まさか……サーゼクス!?」

 

「グレイフィア…僕はそれだけの事をするんだ。こっちもそれ相応のリスクが無いとフェアじゃない」

 

そう言うとサーゼクスは……。

 

 

 

 

 

"透明の僧侶の悪魔の駒"を自分の胸に押し入れた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

『なるほど、そう言うことでしたか』

 

「ああ…」

 

椅子に座っているジェノバは顎に手を当て、目を細めてそう言った。

 

机を挟み、ジェノバの対面にはサーゼクスとグレイフィアが座っている。

 

『安心してください。リアスさんとシンラさんの関係を私からどうにかする事はありませんよ。サーゼクスさんの覚悟も大したものです』

 

その言葉にサーゼクスとグレイフィアは胸を撫で下ろした。

 

『……父親が僧侶…面白くなりそうですね…』

 

「今なんと…?」

 

『いえいえ、お気になさらず。それより…』

 

ジェノバはチラリと近くの席を見た。

 

そこではシンラの左隣に奉先、右隣に目をキラキラさせながらシンラの方を向くミリキャスと、ミリキャスの隣にあまり顔色の優れない姫島 朱乃が座っている。

 

そして、その向かいに顔面蒼白で下を向いているリアス・グレモリーだが…。

 

リアスの背後を囲むようにオメガ、黒のワルツ3号、ヴェグナガンが凄まじいプレッシャーを放ちながら立っていた。

 

序でに頭に?マークを浮かべながら片手に持つ大皿にある食べ物をもきゅもきゅと食べているオーフィスも野次馬に来ている。

 

「…………」

 

「貴様のような脆弱な小娘が我らの王の王か……カカカ…まるでブラネのようではないか」

 

「まあまあ、リアス様は悪くありません、全能な者の上に無能が立つなんて歴史的に見てもそう珍しい事でも無いではありませんかぁ。全てはそう…この不完全で完全な世界が悪いのです。ああ…なんと嘆かわしいことなのでしょう…手始めに目の前の羽虫を叩き潰したい衝動に駆られますねぇ…」

 

「……? 皆、ごはん食べないの?」

 

「や、止め……」

 

ちなみにシンラはこの光景をまるでペンギンコラのようだったと後に語る。

 

手がつけられないとはこういう光景の事を言うのだろう。後、視線で殺せるという事も。

 

「と、止めていただけるのでは?」

 

『止めたってまた彼女らはやりますよ。まあ、彼女らはシンラさんがGOサインを出さなければ手を出すことは無いでしょう』

 

「そうですか…」

 

グレイフィアはホッとしたようだが、未だ心配なのかチラチラとそちらを見ていた。

 

『そもそも止めたいならナイツ使えば良いじゃないですか』

 

「ナイツ…これですか?」

 

グレイフィアはさっき魔王らに向けていたマテリアを取り出した。

 

「それはなんなんだい? 普通じゃない魔力を感じるが…」

 

『それはマテリアと言って魔晄或いはライフストリームが凝縮され結晶化したモノです。要するに星の力の結晶と言ったところです。まあ、詳しくはあなたの奥さんに渡した初心者マテリア講座本を読めばわかります』

 

そう言いながらジェノバはナイツオブラウンドを指差した。

 

『言ってませんでしたが、それを1度使えば理論上はオーフィスを2度殺すぐらいは可能ですよ』

 

「え…?」

 

グレイフィアは赤いマテリアをありえないと言った表情で見つめた。

 

「さっき私……サーゼクス様らに使おうと…」

 

『超overkillですね。笑いそうになりましたよ』

 

それを聞いたグレイフィアはピシリと固まり、真っ白になっていた。

 

「グレイフィア? 大丈夫かい、グレイフィア?」

 

「サーゼクス様……私…私…」

 

『短い付き合いですがグレイフィアさんはとっても繊細で可愛らしい人ですね。少し意地悪したくなりますよ』

 

「うぅ……う"ぅ…!!」

 

グレイフィアは涙目でサーゼクスに抱き着いた。

 

その光景をニヤニヤと眺めてからジェノバは目線を自分の主である彼へと移した。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

現在、右側から凄い視線を感じる。

「…………」

 

見られている。それもただの視線ではない。きらきらと効果音が付きそうなほど純粋無垢な眼差しである。

 

…………居心地悪い…。

 

「シンラ子供苦手だもんね」

 

ほっとけ、お前は俺の左半身にもたれ掛かるな。

 

「またまた、照れちゃって。でもその内困るわよ? シンラだってお父さんになるもの。最低3人は欲しいわ」

 

まずは1人で我慢しろ。

 

「ケチ。ぶーぶー」

 

うるさい黙れ。胸当てるな。

 

「当ててんのよ」

 

…………はぁ。

 

仕方なく私は視線を送る少年を見た。少年の隣に黒のワルツ3号に非常に良く似ている少女がいるが今は関係無い。むう…目が合う。

 

父さんと母さんを足して2で割ったような見た目してるな…髪は赤いが。

 

……君、名前は?

 

「ミリキャス・グレモリーです! お兄様!」

 

その瞬間私は雷に撃たれたような衝撃と、何か満ち足りたような感覚を感じた。

 

おにゅーい様だと……弟がいるとは初耳だぞ…。

 

「ずっと話だけで聞いてました! お母様からはとっても優しくて、とてつもなく強いと…」

 

俺はそんなことは構わず、ミリキャスくんの両肩に手を置いて真剣な眼差しで言った。

 

もう一度……。

 

 

 

"お兄様"と言ってくれ。

 

 

 

「…え? お兄様?」

 

それを聞いた私はミリキャス君の肩から手を離し、椅子の背もたれに身体を預け、天井を暫く見つめてから呟いた。

 

何だろうこの胸のときめき………これはまさしく。

 

「不整脈よ」

 

殴るぞクソ緑。

 

そんな私を見た奉先がニヤニヤしながらさらに口を開いた。

 

「シンラの適応力はアメリカザリガニ並ね」

 

失礼な、ブラックバス並と言って欲しいな。

 

そんな会話をしていると、ミリキャスくんが身を乗り出しながら奉先と私を交互に見つめた。

 

「わー、お母様の言う通り、本当に…夫婦(お父様とお母様)みたいですね!」

 

………………。

 

奉先と夫婦に見えるだと…?

 

私はチラリと奉先を見た。

 

奉先は目に星を浮かべながらミリキャスくんを見つめていて私が見たことには気づかなかったようだ。

 

…………夫婦か……最低でも後、7年は早いな。

 

「シンラ……」

 

なんだよ?

 

「この子可愛いわ! しかもとっても良い子じゃない!」

 

…………お前もオオカナダモ並だな。

 

とまあ、そろそろ本題に入るか…。

 

私は横目で向かい側を見た。

 

赤髪の少女が私の3人の眷属とオーフィスちゃんに囲まれている。

 

だが、3人の後ろにドス黒い何が渦巻いており、オーフィスちゃんの頭上にはハテナが浮いている気がした。

 

私は溜め息をつくと3人+2人に身体を向けた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

私……死ぬのね。

 

リアス・グレモリーは後ろを絶対に見ないように下を向きながらそんなことを考えていた。

 

耳を済まさずとも後ろから様々な音が聞こえてくる。

 

「……………」

 

忍装束の女から刀を鞘から10cmほど抜いては納刀し、抜いては納刀しを繰り返している金属音が響いている。

 

「足の一本ぐらい問題無いな」

 

顔の上半分を覆う黒い仮面を付けた魔女服の女からは鋭そうな三日月の長杖き素振りする音が聞こえる。

 

「うふふ…右翼…左翼…やっぱりバランスが悪くなるので両方ですねぇ」

 

そして巨大なシスターからは絶えず指と首を鳴らし続ける音が聞こえていた。

 

生きてたとしても女として死ぬのは確実そうだ。

 

「(もっくもっく)……?」

 

生きていたらこの娘を目一杯なでるわ…など思っていた。

 

 

「それぐらいにしておけ」

 

 

 

透き通るような声が響くと、後ろの音が全て止み、変わりに姿勢を整えた音が一瞬響くとそれ以降なにも聞こえなくなった。

 

「私の眷属がすまない。本気ではないさ……多分」

 

おずおずとリアスが顔を上げるとそこには肩肘を付けながらこちらを興味があるような無いような朧気な視線で見つめる青年がいた。

 

グレイフィアと同じ銀髪で、シルバーアッシュの瞳。

 

中性的で優しげな顔立ちと、彼から漂う幻想的な雰囲気はさらながら妖精王といった風格だ。

 

さらに彼に寄り掛かる緑髪の少女も並みではない。

 

まだまだ成長期の途中だというのにその歳からは逸脱した妖艶さと、それに応じた確かな意志と彼と共にある覚悟が見てとれた。

 

ただ、イチャイチャしているだけのリアスの婚約者の女王とは鯨と鰯だ。

 

「って言っても後ろの連中は表面上しか納得しないだろうな」

 

彼は片腕を前に突き出した。

 

それをただみていると彼の肘から先が紅く光る魔力へと変貌した。

 

「それは…お兄様と同じ…」

 

「ああ、さっきトイレに行った時に試したら出来た。とは言っても滅びの力の潜在能力的には父さんにも君にも遥かに劣るようだがな」

 

「………………」

 

滅びの力がこんなに簡単に扱われていることにリアスは顔を引き釣らせた。

 

しかも周囲を一切破壊していないところから操作はサーゼクスより遥か上らしい。

 

ちなみにサーゼクスが跳び跳ねんばかりに喜び、それを他の魔王がハイタッチで祝福するという光景が別のテーブルで繰り広げられたりしているがそれは置いておこう。

 

「"無"に比べればぬるま湯より温い。それに魔力の扱いに関して私より上の者はほぼ存在しないだけだ。君ならば私の滅びの力を簡単に越える事だろう」

 

「そ、そう…」

 

そう言いながら両手を魔力に変えたり、戻したりを自由にしている彼をリアスは見ていることしか出来なかった。

 

「シンラそれ触っていい?」

 

「かぶれるぞ?」

 

「あら大変ねー」

 

滅びの力そのものに手を突っ込んでかぶれるだけで済むとはいったい…。

 

「それで…だ」

 

彼は手を元に戻すと目線をリアスの後ろの3人に向けた。

 

「私が"無"の暗黒魔導士エヌオーではなく、ただの悪魔の神城 羅市…もしくはエヌオー・ルキフグスとして仕えるなら何も問題は無いだろう?」

 

それを聞いた彼の眷属3人は顔を見合わせた。

 

「…………」

 

忍装束の女は目を瞑るとその場から煙のように消えていった。

 

「それならば…」

 

仮面の魔女服の女は身を引き、頭を下げてからその場から立ち去った。

 

リアスは今になって彼女が朱乃と声が良く似ていたような気がすると気がついたが、他人のそら似だろうと結論付けた。

 

「そうですね…それならば私達が言うことは何もありませんよぉ」

 

最後に残った朗らかな笑みを浮かべている巨大なシスターは空間に溶けるように消えていった。

 

リアスは3人の気配が完全に消えた事で漸く、目を瞑り胸を撫で下ろした。

 

そして、彼との対話を今度こそ進めるために目を開いた。

 

 

 

瞬間、さっきのシスターが身を乗り出し、上半身を横にしてリアスを正面から笑顔で見つめている光景か目に飛び込んだ。

 

「ひっ…!?」

 

軽いホラーである。声を上げて小さく身体を退いた彼女を誰が責められようか。

 

シスターはリアスへ片手を伸ばし、額に触れるか触れないかというところで手を止めるとまた言葉を吐いた。

 

「ですが私達はエヌオー様の下僕だと言う事をくれぐれもお忘れなくお願い致しますぅ…もしそれが解らないのならぁ」

 

シスターの掌が淡い緑色の光を帯び、相変わらずの笑顔で呟いた。

 

「精神ごと、ハカイしますわぁ」

 

リアスがブンブンと首を縦に振ると満足したのか、今度こそ本当に溶けるように消えていった。

 

「……まあ、なんだ。アイツらに悪気は無いんだよ。多分」

 

「そ、そう…」

 

「とりあえず…」

 

彼はリアスに握手を求めるために手を出した。

 

「これから宜しく頼む」

 

「…ええ!」

 

リアスは明るい表情になると彼の手を確りと握った。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「ヒッ!?」

 

ふと、オーフィスちゃんからか細い悲鳴が上がった。

 

何かと思ってそちらを見ると、いつのまにかリアスちゃんの斜め後ろに良い笑顔をしたジェノバさんが立っていた。

 

『こんにちわリアスさん。私、シンラさんのメイドのジェノバと申します』

 

ジェノバさんはそう言って深々とお辞儀をした。

 

『ところでリアスさんは未だ使い魔をお持ちでは無いようですね』

 

「え? ええ…」

 

リアスちゃんが何か言う前にジェノバさんは迫っている。

 

『ならばお近づきの印に飛びっきりのモノをプレゼントいたしましょう』

 

そう言うとジェノバさんのメイド服のスカートの中がごそごそと蠢き、そこから出てきた触手が何かを取り出した。

 

それはバスケットボール程のサイズで所々が赤く、黒緑色の固く

鋭い外殻を纏ったダイオウグソクムシのような物体だった。

 

それは全く動かなく、されるがままじっといていた。

 

ジェノバさんはそれをリアスちゃんの目の前に下ろした。

それは口を開け、中にある単眼の眼(?)でリアスちゃんをじーっと見つめている。

 

「な、何かしら?」

 

これは……いや…どこからどう見ても…。

 

ジェノバさんはどこか誇らしげな顔で言葉を吐いた。

 

 

 

『"プチラヴォス"です』

 

 

 

流石ジェノバさん、プレゼントに星の寄生虫の幼体とは誰も想像できないぜ…。

 

「ギャオー」

 

プチラヴォスは可愛いとはあまり言えない鳴き声を上げた。

 

「ギャオー、ギャオー」

 

プチラヴォスはリアスちゃんに対して一頻り鳴いているようである。

 

だが、リアスちゃんは唖然としているのかそれを自分への声と捉えていないようだ。

 

「………………」

 

プチラヴォスは黙ると、少しして再び口を開いた。

 

「ウボァー、ウボァー」

 

なんかかなり情けない断末魔みたいな鳴き方に変わった。

 

『甘えてるんですよ』

 

「こ、これで?」

 

「ウボァー」

 

『撫でてみてください』

 

リアスちゃんは恐る恐るプチラヴォスの外殻に手を置くと撫でてみた。

 

「………………」

 

ラヴォスは黙ってそれを受け、時々身を震わせたりしているようだ。

 

思いの外可愛かったのかリアスちゃんはなで続けている。

 

それを見ながら私はジェノバさんに小声で疑問を投げ掛けた。

 

互いに一般的な悪魔を遥かに超えた聴力をしているわけで、ジェノバさんの隣にリアスちゃんがいるにも関わらずナイショ話が出来るのである。

 

「ジェノバさん?」

 

『はい?』

 

「一体どこからこんなものを?」

 

『エクスデスさんがプチラヴォスの化石を持っていたので貰えないか交渉しようとしたところ、先にお茶と羊羮のお礼としてタダで貰えました』

 

律儀だなあの人……いや、あの人にとっては単にゴミだったのかもしれないが。

 

『それを列車の中で復元して今に至ります』

 

「ラヴォスは嫌いだったのでは?」

 

『同列にされるのが嫌なだけですよ。例えば豚と同じなどと言われたら多少なりムスッとするでしょう? ペットとしてかなり優秀ですし、育てて楽しいですよ』

 

「ペットですか…」

 

『普通に育てると成長はそれなりに早いですし、何でも覚えますし、何でも食べますし、育て方よって形態が変わったりしますから』

 

「たまごっちみたいですね」

 

『はい、それに飼い主に似ますから、中々可愛らしいですよ?』

 

「ふーん」

 

そう考えると悪くない気もする。王蟲っぽい生き物をペットに出来るなら中々……いや、王蟲より遥かに凶悪だが…。

 

『欠点としては寿命がちょっとばかり長命過ぎることと、最大まで成長させると一撃で氷河期を終わらせたり、世界を最期の日にしたり出来るようになることぐらいですか』

 

くしゃみで世界崩壊とか洒落にならないもんな……それが出来そうな知り合いを3~4人知ってるんですが…。

 

『まあ、最速で最終まで育てても1000~2000年ほど時間を掛ける必要がありますから問題ないでしょう。理性を持たせればそれも解決しますし』

 

「コズミック源氏物語か…」

 

『どちらかと言えばコズミックフランケンシュタインかと』

 

「全滅ENDじゃないですか…」

 

『まあ、どうなるかは全てリアスさんに掛かっています。私なりの最大の嫌がらせですよ』

 

「知らぬが仏か…」

 

そう呟くとジェノバさんは一瞬、口角を上げ、ニヤリと笑みを作った。

 

遠い未来に濃厚な死亡フラグの可能性を立てるとか、やることが陰湿過ぎる…。

 

まあ、ちょっと面白そうと感じる私も私か。

 

そんな感じでジェノバさんとの密談は終わった。

 

「本当に貰って良いのかしら?」

 

本当に気に入ったらしくプチラヴォスは現在、リアスちゃんの膝の上にいた。

 

『どうぞご自由に。ちなみに今ならまだ悪魔の歩兵の駒1つで転生可能ですよ? 近い将来、最上級悪魔並みに強くなりますから寧ろそっちの方が良いかもしれませんね』

 

「凄い…」

 

最上級悪魔並みに強くなる(遠い未来、星を壊滅させるほど強くなるとは言っていない)。

 

リアスちゃんはどこからともなく歩兵の悪魔の駒を1つ取り出した。

 

プチラヴォスをそれをじーっと見ている 。

 

「いや…でも…もう少し考えてからにするわ」

 

『そうですか、まあ、それもあなたの自由です』

 

リアスちゃんは出した歩兵の駒をしまおうとした次の瞬間、手元から駒が消えた。

 

「え…?」

 

落としたのかと下を見下ろすリアスちゃん。その目線が捉えたのは口から出た1本の細長い舌(触手?)の先に巻かれた悪魔の駒だった。

 

「ちょっと…!?」

 

リアスちゃんが取り上げようとするがもう遅い。駒は電気コードのコンセントのように凄まじい勢いで口に吸われていくとパクリと食べられてしまった。

 

「あ……」

 

「あらあら」

 

「あーあー」

 

『……フッ…』

 

そしてプチラヴォスの背中には1対の小さい悪魔の翼が付いていた。

 

なんか可愛い。

 

『まあ、これも何かの縁でしょう。気を落とさずに』

 

「そ、そうね…」

 

『それではそろそろ固いことは抜きの交流会と行きましょうか』

 

ジェノバさんが腕を振るうと手にマイクが握られている。

 

それとほぼ同時に部屋の中央に立っていたオメガちゃんが地面に何かを投げつけると白煙が上がり、それが晴れるとカラオケBOXのより性能が高そうで巨大なカラオケマシーンが鎮座していた。

 

それを見た奉先は目を輝かせ、立ち上がるとジェノバさんからマイクを受け取り、ひとっ跳びでカラオケマシーンまで向かうとマイクを口元に当て、大きく息を吸い込んだ。

 

「じゃあ、まずは私から歌うわね!」

 

そう高らかに宣言し、カラオケマシーンで選曲をしている。

 

それを見た会場の人々は何人か奉先の周辺に集まってきた。

 

「じゃあ、次は僕がバレンタイン・キッス歌うから入れといてくれると嬉しいな。魔法使いサリーでもいいよ」

 

「はいはーい」

 

「サーゼクス様…」

 

と、父さんモノスゴい選曲だな…。

 

「聞いてください」

 

選曲が終わったようでイントロが流れ、奉先が真剣な表情でマイクを構え直す。

 

ん? この優しく、どこか懐かしいような曲は…まさか…。

 

「行きます! 私の本気! "ムーミンのうた"!」

 

誰かそいつをCICから叩き出せ!

 

 

 

こうして歓迎会という名の何かは進んで行った。

 

 

 




サーゼクス様の歌が聞きたい人は。

諏訪部順一 バレンタイン・キッス

諏訪部順一 魔法使いサリー

魔女っ子諏訪部

と検索すれば幸せになれるよ?

サーゼクスさんが眷属になる小説ってハーメルン初じゃないかな(白目)?

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