Fate/elona_accident 作:セイント14.5
※誤字修正しました。報告ありがとうございました。
※(9/5追記)誤字というか誤認識報告により、少し書き換えました。報告ありがとうございました。
現在、あなたは正座をしている。
あなたの目の前には、顔を真っ赤にして座り込み、両手を頬にあてがっている『先輩』と、その悲鳴を聞いて息を切らして駆けつけてきたらしいマッドサイエンティストがいた。
「先輩、カルデアにも英霊用の営倉があるはずです。そこに入れてしまいましょう」
「え、えっと…」
あなたは、先程『先輩』を押し倒したのは護身のためで他意はなかったとして、間違って体当たりをしてしまったお詫びと合わせて自己紹介をした。
「あ、丁寧にありがとう。確かに自己紹介がまだだったね。私は『藤丸立香』。で、こっちは『マシュ』。よろしくね。うん…やっぱり悪気はないみたいだし…」
「嘘をついているかもしれませんよ?それに、これから先同じようなことをしないとは限りません!」
「う〜ん…」
何やら相談しているが、あなたは突然ここへ来てしまった身なので、ここはどこなのかを聞いてみることにした。
「あれ、ダヴィンチちゃんから聞いてなかった?ここはカルデア。簡潔に言えば、悪い人にぐちゃぐちゃにされた人理…えっと、歴史みたいなものを修正するための組織と、その拠点だよ」
「あなたは恐らく英霊としてカルデアの戦力になるために先輩に呼び出された存在であると思われます…色々と不可解な点はありますが」
「の、はずなんだけど…」
あなたは英霊というものになった覚えはないので話についていけず、ぽかんとした顔をしていた。ついでにお腹が空いてきたのも集中できない原因だった。
「先輩、どうですか?」
「うん。やっぱりこの人の名前も聞いたことないし、外見…はけっこう変わるんだっけ…とにかく心当たりはないなあ。魔力のパスは繋がってるから、令呪は効きそうだけど」
「…そうですか…やはり怪しいです。とりあえず隔離しておくべきでは?」
何やら話しているが、やはり空腹が気になるのであなたは懐から『大葉焼き』を取り出して食べることにした。料理はあなたが冒険者を始めてからこつこつと練習してきた技術なので、このくらいの料理なら『材料』さえあれば中々の成功率で再現できる。よって惜しむ理由もない。
「何もない所からいきなりおいしそうな料理が出てきました!?」
「と、とりあえず…ダヴィンチちゃん!ダヴィンチちゃーん!!」
あなたは混乱する二人を尻目に、大葉焼きをかじる。ウマイ!…なお、特に関係ないが、あなたはヨウィンに行くのが好きだった。
信じられないほど満腹だ!お腹が膨れて気分がいいので、あなたは信仰する神に感謝して、神を真似て笑うことにした。フハハハ!
「なんか黄金で王様な感じに笑い出した!怖い!怖いよ〜!!」
…そういえば、ここに来てから神の声が聞こえない。あなたの信仰する大地の神は、それはもう朝から晩までいちいちうるさいと信者からもそれ以外からも評判だったのだが…
「急に真顔になっておし黙った!ダヴィンチちゃん早く来て!早く!」
「そんなに急かさないでも天才は逃げないよ…いや前言撤回。割と逃げるかも」
「ダヴィンチちゃん、この人セクハラが自己紹介して正座したらいきなり懐からおいしそうな肉料理出して食べてフハハハ〜!って笑って黙って真顔で!!」
「うんうん。だいたい理解したよ。いや〜君はかなりのトラブルメーカーみたいだねえ。医務室から出てまだ少ししか経ってないっていうのに」
ダヴィンチちゃんが混乱する立香とあなたを見て含み笑いしている。
と、その時、天井に取り付けられたスピーカーからけたたましくサイレンが流れた。あなたはガードが来るかと思い身構えた。
「緊急招集みたいだね。私がマスターだから早く行かなきゃ!」
「私も先輩について行きます。ダヴィンチさん、すみませんがこの人をよろしくお願いし…」
「よし、決めた!君、マスター君について行きたまえ」
「ええ〜っ!?」
「そんな、危険です!素性も分かっていないのに!」
「素性?さっき彼は君達に自己紹介をしたんだろう?」
「そういうことではなくて!」
「まあまあ、聞きたまえ。私は彼のことを知りたいなら、マスター君に預けるのが一番の方法だと思うのさ。今までだってそうだったろう?」
「た、確かに先輩と接していく内に心を開いてより深く知ることができた英霊は数多いですが!というか私もその一人ですが!」
「何を隠そう私もその一人だしね。何、彼の戦力を確認するいい機会でもあるだろう。連れて行ってあげたまえ」
「…分かった!」
「先輩!?」
「確かに、お互い何もわからない内からいきなり怪しいって決めつけても良くないよね!ついてきて!」
置いてけぼりになっていたあなたは、とりあえず冒険のにおいがするので立香に従うことにした。
「今日は何が起こったのかなあ」
「…先輩に妙なことをしたら、容赦しませんからそのつもりでお願いします」
マシュが凄んでくる。どうやらあなたに対して「うざい」ぐらいの評価のようだ。立香の方は「好意的」なのに、どこが違うのだろうか…とりあえず、あなたは適当に頷いた。
………………………
「おかあさん、その人だれ?」
「う〜ん…変な人!」
「ふーん…?」
廊下をしばらく走ると、大きな部屋に出た。そこには忙しそうにしているマッドサイエンティスト達と、妙な装備を着込んだり着込まなかったりするのが数人いた。
「ふむ…新顔ということか。ところで、君は圧政者かね?」
大地の神に大層気に入られそうな肉体を惜しげもなく見せつけてくる男に話しかけられた。
圧政者。あなたの知る『政治家』というのは、今は亡きパルミア王や白子の王子などだろうか。ともかく、あなたは政治家になった覚えはない。
「フハハハ!何、政治家だけが圧政者というワケではない…」
まだ話が続きそうだ。政治の話には興味がないので、あなたは話半分に、適当に相槌をうつことにした。
「…なるほどね。今回はあんまり大きな特異点じゃないみたいだね。よかった…ところで、『彼』を連れて行っても問題ない?」
「う〜ん…計算上は問題ないけど、やってみないことには…」
立香がマッドサイエンティストと何やら相談している。
「大丈夫さ」
「ダヴィンチちゃん!?いつの間に!」
「レイシフトするんだ。私がいて当然だろう?」
「あ、そっか…」
「それで、何故大丈夫だと?」
「勘、かな。なあに天才の勘はよく当たる。信用してもいいよ」
「…前例と実績があるだけに何も言えない…」
「ふふん。そうだろう?」
「…仕方ない。だが、まずいと思ったらすぐにレイシフトを中止するぞ」
「分かった。じゃあ、準備してくるね」
「よろしく。ふむ、計算は片手間にできるし、頭が暇だね。ところで…」
ダヴィンチちゃんがキーボードを目に見えない速度で叩きながらこちらを見る。奥まで覗き込まれるような感じがする。
「君は、何ができるんだい?」
何が、と言われると、あなたは少しだけ言葉に詰まった。ノースティリスで出来ることはまさしく『なんでも』可能だ。まあ、『うみみゃあ!』などの今は勝てない相手こそいるが…
スキルという点で言えば、基本的な冒険に必要なスキルは揃えてある。戦術や見切り、重装備、鈍器などの武器スキルに加え、重量挙げや料理、採掘などの補助スキルもそこそこに鍛えてある。
「ふうん…じゃあ、得意なことと言えば何かな?」
得意なことはやはり戦闘だろうか。数々のネフィアをこの《★大地の槌》とともに攻略してきたあなたは、鈍器の扱いにかけては一流と言って差し支えないだろう。
「なるほどね。魔術のたぐいは使えるかい?」
信仰する神や戦闘スタイルのこともあり、魔法はあまり得意ではない。覚えたものと言えば四次元ポケットをはじめとした補助的な魔法が主で、戦闘に関係しそうなのは加速や英雄の魔法ぐらいだろうか。
「…けっこうやるじゃないか。でも、君の認識では魔術と魔法が一緒くたになってしまっているみたいだね。後で魔法についても少し話してあげよう」
「準備終わりました!レイシフトいつでも行けます!」
「うん、時間みたいだね。君も彼女が現地入りしたら呼び出されるだろう。もう少しここで待っているといい」
言葉に従い、あなたはそこで横になった。
「…そこまでリラックスしろとは言ってないんだけどね…まあいいや」
マッドサイエンティスト達が俄に慌ただしくなる。どうやら『レイシフト』とやらが始まるらしい。
あなたは再度、横になった。
フハハハ!
タイトル考えるのが一番辛いぞ!