Fate/elona_accident   作:セイント14.5

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タイトルに意味はありません。ありませんったら。




バックアップはちゃんと取ろう!

 

 

「だ、大丈夫…?」

 

さて、意気揚々と冒険の始まりに息巻いたところだが、結論から述べるとあなたはこの冒険に大きく失望することになった。

まず、敵のレベルが非常に低い。向かってきたものといえばハウンドやコボルトに似た生物や強盗、状態異常を撒き散らさない安全なウィスプくらい。あなたはそれらを一瞥すると、興味をなくしたように一息にミンチにしてしまった。

 

「すさまじい戦闘力…私の出る幕がまるでありませんでした…うう」

 

そしてあなたが最も失望したのは、いくら敵をミンチにしてもアイテムどころか死体すら残らないことだった。

敵を倒せば、大抵は装備やお金、死体や敵の破片が残る。それがあなたにとって世界の常識であり、あなたを含むノースティリスの冒険者の多くは、こういったものを収集することで生計を立て、また自らの強化に充てていたのだ。

ネフィアがあれば潜り、敵を倒し、貴重なアイテムや素材を持ち帰り、利用し、また次のネフィアを目指す。それがあなたにとって不変のルーチンワークなのだった。

それが無いとなると、モチベーションが大きく損なわれる。こんなに弱い敵を倒したってスキルの足しにもならない。こんな時にも神の言葉は聞こえない。端的に言ってつまらない。あなたは絶望のどん底にいた。

 

「動かなくなっちゃった…」

 

「何か、嫌なことがあったのでしょうか?」

 

立香が心配そうにあなたの顔を覗き込んでくる。ここまで長く歩いてきたためか頬には雫が伝っており、揺れる髪を伝ってくるほのかな汗の香りの入り混じった女性特有の香りが鼻腔をくすぐるが、あなたは特に反応する気にはならなかった。

 

「…これは…」

 

「何か分かりましたか?」

 

「うん…もしかしたら…」

 

「多分だけど、彼、おもちゃを取り上げられた子供とおんなじ顔してるんだよね」

 

「ええ…?」

 

困惑する後輩をしり目に、立香は人差し指を口元に当て、眉をひそめて記憶を手繰り思考する。

彼は感情を読みやすいタイプではないが、表情が全く変わらないわけではない。そもそも簡単なコミュニケーションは取れる。疲労や空腹は特に見て分かるし、出血を伴うようなダメージを受ければしっかり痛がる。少し休めば何も無かったかのように治っているのには驚いたが、そういう能力を持ったサーヴァントだと考えればいい。

突然高らかに笑いだすことさえある。よって、彼に感情が無いということは無いだろう。

今の彼の様子をおもちゃを取り上げられた子供、と形容したが、我が事ながら言い得て妙だと思った。非常に微妙な表情ではあるが、失望と諦念、そして小さな怒りの入り混じったような表情は、ジャックやナーサリー・ライムほか子供サーヴァントが見せるものとよく似ている。

 

「でも、どうして…?」

 

ジャックは獲物の解体を止められた時。ナーサリーは読書会やお茶会が中止になった時…期待していたものが奪われた時に、そんな表情を見せる。なら彼は?彼は何を期待し、何を奪われたと感じたのか?

 

「………」

 

「…どうしました?」

 

一番重要なそこが、いくら考えても分からない。立香の思考は全く景色の変わらない袋小路に陥っていた。

当たりのないクジを延々引いているような、ゴールのない迷路を解いているような虚無感が彼女の思考能力を奪っていく。

そして何より、立香はいいかげん考えるのが面倒になっていた。

 

「…うん、そうだよね…やっぱり…」

 

立香が顔を上げ、にんまりと笑みを浮かべながらあなたに振り向いた。

 

「ねえ、あなたはどうして動かなくなったの?」

 

「直接聞いた!?」

 

分からなければ聞けばいい。それが彼女の出した答えだった。今までだって、考えているだけで解決する問題などひとつも無かった。いつだって行き当たりばったりで、細い糸を手繰り寄せるようにして何とか歴史を紡ぎ直してきた。今更サーヴァントひとり動かないのがなんだというのだ。ぶつかってみてからが本番なのだ。そう考えた。

 

さて、これに困ったのはあなたの方だった。彼女の問に答えることは簡単だ。簡潔に、この世界はつまらないと伝えればいい。しかし、彼女はそれでは納得しないだろう。

彼女が欲しているのはあなたが戦力として働くことだ。そのために、あなたが求めるものを対価として探ろうとしている。しかし問題は、あなたが求める冒険や報酬がこの世界には無いことだった。

ここで立ち上がって、また彼女に従って敵を倒すのは簡単だ。だが、タダ働きは性にあわない。少しの街の移動でも依頼をこなしてプラチナコインを稼ぐのが賢い冒険者だ。

 

面倒なことは抜きにして、要はあなたは働くに足る理由がほしいのだった。

 

「働く理由…?今まではあったの?」

 

あなたは、この世界には強い敵や興味を誘うアーティファクト、ドロップアイテムがなくてつまらないと感じることを説明した。

 

「…あなたのいた世界は、ホントにゲームみたいなところなんだね…うん、ごめんね。あなたの求めるものはこの世界には無いみたいだ」

 

「でも、だからってあなたを元の世界に帰してあげることはできないの。本当にごめん」

 

立香は心底申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「…この世界は、あなたがつまらないと断じた世界は、それでもたくさんの人が生きてきたの。人だけじゃない。たくさんの命が生まれて、死んで…そうやって、時代を作り、歴史を紡いできた」

 

「今、それが全部失われようとしてる。みんなが、気の遠くなるような長い時間をかけて、必死に頑張って生きてきた道標が、突然水の泡になっちゃう。私はそれをなんとか防ぎたいの…この命に代えても」

 

「こんなのは私の勝手な言い分だって分かってる。でも…」

 

そこまで聞いて、あなたは手で立香を制した。

彼女の言葉に感銘を受けたからではない。震える声で話す彼女の目元が潤んでいたからではない。

歴史が失われる。努力が水の泡になる…どうしてだか分からないが、あなたがそのワードに強い憤りを覚えたからだ。

 

顔を上げ、ゆっくりと立ち上がる。あなたの瞳は、絶対に、勝手に歴史(セーブデータ)を消滅させはしまいという強い決意に満ちていた。

 

「…戦ってくれるんだね…」

 

あなたより少し背の低い立香が、目元を袖で拭ってあなたの顔を見上げる。

 

「望まないことをさせて本当にごめん…これが終わったら絶対元の世界に帰してあげるから…それと」

 

立香はあなたの手を取り、微笑んだ。

 

「ありがとう」

 

 





elonaをゴミ箱に放り投げるタイミングは3つあるといいます。
ひとつは初めてプレイした時。
ふたつ目がゴミ箱から拾ってもう一度始めた時。
最後に、wikiを見ながら丹精込めて育て上げたキャラクターのデータが、突然失われた時です。

バックアップ、とろう!
…とろう!!
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