Fate/elona_accident 作:セイント14.5
なんか…三ヶ月ぐらい時空が飛んだ気がする…気のせいだな!
失踪はしてないからセーフ!
はい。ごめんなさい。
※誤字修正しました。ご報告ありがとうございます。
ーー拝啓、田舎の母上様。
おだやかな小春日和が続いております。若草が風に揺られ、まばらに雲の流れゆく風景は、いつ見ても心安らぐものですが、母上様におきましては、いかがお過ごしでしょうか。我々を導いてくださった聖女様は、今はもういませんが…いやいるんですが、なんか違う感じになりましたが。
私は………私は今…………あー………襲い来る骸骨兵やワイバーンの群れと、それに向けて黒い下着と革のムチを振り回す狂人に板挟みにされております助けて下さい………
ーーフランス、とある砦の兵士より
『兵士の皆も、骸骨兵の足止めぐらいは、っていう意気込みは良かったんだけどね〜』
ダヴィンチのホログラムが苦笑いを浮かべる。立香達は特異点の解消のため百年戦争後期、聖女ジャンヌ・ダルクの処刑から数日が経過したフランスにレイシフトし、一悶着ありつつも近くの砦に身を寄せたのだった。
「変態…変態っ…!」
ベルトの代わりに胸を腕で抑え赤面する立香。その目はすぐそばでさっき盗んだ黒い細身のベルトを振り回して近寄るワイバーンを快調に叩きのめしている男に向けられている。
『あはは、まさか胸のベルトまで武器になるとは…いきなり服を剥がされた立香くんには悪いけど、やっぱり彼は面白いね』
ワイバーン。その大きな翼で空を飛び回り、火を吐き、強靭な爪で兵士を鎧ごと切り裂く…本来存在しないような空想の生物。しかしそれが今フランス中に現れ、骸骨兵まで率いている。その根源にあるのは先日処刑されたハズのジャンヌ・ダルクらしいとかいう摩訶不思議な状況に、彼らは放り込まれたのであった。
「笑えませんよ!しかもなんで私ばっかり!?もうフォウくんはついてくるし空に意味不明な光の輪があるわ斥候の兵士には敵認定されるわでめちゃくちゃなんですけどぉ!?」
「お気持ちお察しします…」
マシュが盾を構えながら横目にマスターを見る。その目は憐れみを多分に含んでいた。
『人理修復は大変だね!あ、ワイバーンが逃げ始めたよ』
通るだけで村を滅ぼし、一晩で砦を落とすとも言われる恐るべきワイバーンの群れは、たった一人の男と盗品のおっぱいベルトによって圧倒され統制を失い、今まさに蜘蛛の子を散らすように逃走を図っていた。
「お、持ち替えたぜ…あー、タイツに…」
立香を守るために控えていたクーフーリンは、あなたが立香のおっぱいベルトを大切そうに懐にしまい、別のところから心底楽しそうに立香の黒タイツを取り出したのを見た。
『飛んで逃げる敵なら遠距離武器ってことだね』
「ああ、そういや投げて使うんだったな…」
『誰よりも成果が上がっている分文句も言えないねえ』
逃げるワイバーンに向けてタイツが高速で空を飛ぶ。ワイバーンは「もっとぶってにゃあ!」などと混乱しながら悲鳴を上げ、地に堕ち、あるいは空中でバラバラになって死んでいく。
『汚ねえ花火だってヤツだね』
「ちょっと違うかも…」
『悪いけどぼーっとしてる暇はないよ!早速だけどあのサーヴァントと接触しよう』
通信機器にロマンの声が入る。実はあなたが自由に戦闘を行っていた傍ら、砦の兵士を鼓舞していたサーヴァントの反応があったのだ。
「あ、そうだった。えっと、どこに行ったかな…」
『あっちだね。なんだか騒がしいけど…』
ーーー逃げろ!魔女が出たぞ!
「え、魔女…?」
【魔女】。その言葉とともに、先程まで兵士とともにあったそのサーヴァントの周囲から兵士は逃げ出し、また恐る恐る武器を彼女に向ける者もあった。
「…とりあえず行こう!」
立香は声の中心、魔女と呼ばれたサーヴァントのもとへ走り出した。ワイバーンの肉を集めていたあなたも、彼女のペットとしてついて行くことにした。
………………………
ルーラーのジャンヌ・ダルクを名乗る彼女の提案で砦から離れると、彼女は簡潔に自らの状況を述べた。
曰く、彼女も現界してから数時間だということ。また、聖杯戦争の存在を認識してはいるが、本来より大幅に情報が欠如しており、また能力も大きく落ちていること…
また、立香達も彼女をジャンヌ・ダルクだと信じ、カルデアやそのミッションについて話した。ついでにあなたのことについても話した。
情報をすり合わせた結果、どうやらこのフランスにはここにいるジャンヌ・ダルクと、【竜の魔女】としてワイバーンを召喚し各地を攻撃するジャンヌ・ダルクの二人が存在し、恐らく聖杯もその竜の魔女のもとにあるだろう、という推測が立てられた。
「…なるほど、状況に不明な点が多々ありますが…特に、その…下着を振り回して戦うという…彼とか、多々!ありますが!…ある程度の把握はできました」
「マドモアゼル・ジャンヌ。貴方はこれからどうするのですか?」
「……目的は決まっています。オルレアンに向かい、都市を奪還する。そのための障害であるジャンヌ・ダルクを排除する」
「主からの啓示はなく、その手段も見えませんが、ここで目を背けることはできませんか…ら……」
そう言うジャンヌ・ダルクの背後に忍び寄る影が一人…そう、何を隠そうあなたである。
「…何か御用ですか?」
ジャンヌが振り返り首を傾げる。あなたは、何のことはない。ただのチェックだと伝え、例によって窃盗スキルを発動した。
「そうですか…?何か問題があるならば、教えて下さい。直せるところは直してみせましょう」
「まさか、彼はまた服を盗もうとしているのではないですか…?」
「…多分…いざとなったらすぐに止められるようにしよう」
「ええ、もちろんです。彼は女性の敵です」
意気込むジャンヌほか数名を後目に、あなたは彼女の装備を精査する。……ビンゴだ!あなたは彼女の持つ旗にその特異性を見つけると、思わず笑みがこぼれた。しかも今回は装備の詳細まで判明した!どうやら彼女の旗は武器として扱うことができるうえ、時々鼓舞の効果を発動するようだ。彼女の旗は最高でおじゃる!そう叫び出したい気分だった。
「…この旗が何か…っ!ど、どうしました!?」
あなたが早速窃盗スキルを利用して旗を盗もうとした、その時だった。あなたは、絶望的な数値を見つけてしまう。なんと…
ーーーこの旗、重いッ!
…なんだ、それだけか。そうお思いならば甘い。甘いことこの上ない。あなたの故郷ノースティリスにとって重さは世の中で最も重要な数値のひとつだ。武器は重いほど威力が出るし、冒険者にとって重量マネジメントは必須級スキルである。疲れながら重すぎる荷物を抱えて階段で転んで死ぬのは冒険者のあるあるのひとつだ。また料理は材料が重ければ重いほど価値が高いとされる。だが今特に言いたいのは…
あなたの筋力では、彼女の重たすぎる旗は到底盗めないことだ。
原則、全身で出せる力の半分以上の重さのものは盗めないとされている。それは伝説の盗賊でも、昨日窃盗を覚えたニュービーでも同じ真理だ。ただ持ち上げるのとは訳が違う…なにしろ盗むのだ。当然、誰にもバレてはいけない。スムーズに、音を立てずに…熟練し、いかに素早い手さばきを覚えても、そもそもそれが活かせないほど相手が重ければ無意味なのだ。
あなたはその場に崩れ落ちた。そして、筋力が明日には十倍になっていることを夢見て、懐からベッドと今日盗んだおっぱいベルトを取り出して眠りこんだ。ふて寝だ。
「半泣きですごい幸せに眠れそうなベッドの上で私の装備抱えて寝始めたんだけど!!私達これから野営なんだけど!?」
「…お、面白い人ですね!」
聖女は深く考えるのをやめた。
もし言い訳をさせてもらえるのなら、死ぬほど忙しかったのとFTLとタイタンフォール2が面白いのが悪いのです。
次回はいつになるかな。今回ほど間が空くことはないようにしたいです。