それはそれとして、ありふれは知ってるけどボーボボはよく知らないって人はこのSS読んでいないのでしょうか?
私、気になります!
フェアベルゲンに到着したハジメ一行は、そのまま残りの長老達と大迷宮や解放者について話し合うことになった。
結果、信頼されているサービスマンの助けもあり以下のように決まった。
・ハウリアはフェベルゲンから追放。十日後以降は一切かかわりは持たないこと。
・十日後に霧が晴れ、大樹の下まで行けるようになるので、それまではハウリア含めて滞在の許可を出すこと。
正直、シアどころか一族全員が処刑されることすら覚悟していたハウリアからすれば望外の幸福だ。これが成されたのはハジメ達の強さと、サービスマンの信頼があってこそだ。ハウリア達は彼らに深く深く感謝した。すごいぞサービスマン。あっぱれサービスマン。ところてんくらいすごい。
「ところてん!?」
「さあ今すぐサービスマン&ところてんを奉る準備をするんだ」
※ 先ほどの地の文が一部天の助に乗っ取られていました。お詫びいたします。
「乗っ取られていたんですか!?」
それはそれとしてハジメは一つのことが気にかかり、アルフレリックに質問をする。
「あの、十日後に大樹に行けるってどういうことですか?」
「……? 大樹の周囲は特に霧が濃いからな。亜人族でも一定周期に訪れる霧が弱まる時期でなければ、行くことが出来ん。それで次に行けるようになるのは十日後だ。亜人族なら誰でも知っているはずだぞ」
「あ」
アルフレリックの疑問の言葉に、カムが冷や汗を流しながら呟く。それだけでハジメは、カムが霧のことを忘れていたと察した。
「い、いや待って下さいハジメ殿! 私は確かに忘れていましたが、シアや他の誰かが言ってくれれば済んだ話! これは言わなかったハウリアの皆のせいでもあります!!」
「なっ!? 父様逆ギレですか!? 私は父様が自信たっぷりに請け負うから、何かおかしいなと思いましたけど、時期だったのかと……。つまり父様が悪いですぅ!!」
「そうですよ族長! 張り切っていて堂々としてたから僕らの勘違いかなって……」
その場で醜く責任を押し付け合うハウリア達。そんな彼らに向かって、ハジメは目を見開いて叫んだ。
「あなた達を詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!」
「いや器物損壊はしてませんよね!?」
「理由は勿論お分かりですね? あなた達が僕らを騙し、セーブデータを破壊したからです」
「セーブデータ!?」
「覚悟の準備をしておいてください。とろろプールに入ってもらいます」
「とろろプールって何ですか!?」
「とろろプールの、おなーりー」
シアのツッコミと同時に、ひな人形の右大臣のような格好をしたユエが鼓を叩くと、奥からとろろがたっぷり入った数メートル四方のプールを、首領パッチと天の助が押してやってきた。
「ぶち込まれる楽しみにしておいて下さい! いいですね!!」
「え、ちょ、待っ!?」
シアが戸惑いの声をあげるが、ハウリア達が具体的な逃走を開始するより速く、ハジメは彼らの背後に回り、
「豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!」
「
「ビーバー!?」
「豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆豆、豆ェッ!!」
「ぐわああああああああああああああああああああああああ!!」
ハウリア全員をとろろプールに叩きこみ、彼らが痒みに苦しんでいるさまを見ながら、ハジメはポツりと一言。
「フッ、まるで将棋だな……」
「意味が分かりません―――――――――――!!」
「さあ、とろろ和えの私を食べなさ~い」
「断固辞退する」
そして首領パッチとユエはいつも通りだった。
「と、いう訳でハウリア達には戦闘訓練を受けてもらいます」
フェアベルゲンの滞在を許されたとはいえ、ハウリア族は基本的に白い眼で見られるので、なるだけ都市の外れの方にやってきた。そして周りに他の人がいない位都市の外れに着いた所で、ハジメは唐突に戦闘訓練を宣言した。その言葉にハウリア族は、ざわざわと困惑する。
「戦闘訓練? 我々がですか? なぜです?」
困惑する一族を代表し、カムがハジメに尋ねる。その問いにハジメはため息交じりに答えた。
「だって、十日後になって大樹に着いたら、僕らハウリアを護る理由が無くなるよ。というか、こんな人数を引き連れて旅なんかしたくない。けど、ハウリアを死なせたくはない。だったらもう、ハウリア自身に戦う力を与えるしかない? ドゥーユーアンダースタンド?」
「そ、それは分かります。ですが、我々にハジメ殿の様に戦う力は……」
「戦えない奴なんていない! 戦うか、戦わないか。その違いがあるだけだ!!」
「天の助殿……」
竦むカムに向かって、天の助が激励を飛ばす。その後ろで
「なんか聞いたことのある台詞ですね……」
「GGO編のキリトさん」
シアとユエが、元ネタを解説しながら白い眼で見ていた。
それはともかく、ハウリア族の戦闘訓練が始まる。
まずハジメは、人数分のナイフをフェアベルゲンで貰って来てハウリア族に渡す。ハジメの考えでは、ハウリア族は運動能力が高いので不意打ちに特化した戦い方、所謂暗殺者が向いていると思い、その方向で伸ばそうと考えていた。
だがハジメの考えは甘かった。その理由はハウリア族の性格にある。彼らは虫も殺せない、それどころか虫や花を踏まないように避けて歩くような優しい集団である。
どれくらい優しいのかというと
「ああ、どうか罪深い私を許してくれぇ~」
「ごめんさないっ! ごめんなさいっ! それでも私はやるしかないのぉ!!」
「ふっ、これが刃を向けた私への罰というものか……」
上記の台詞が魔物を一匹殺す度に出てくる位優しい集団である。
ハジメとしても人の優しさを否定したくはない。ないのだが。
「マジでウザい……!」
流石に魔物殺す度に三文芝居やられてイライラしない程、ハジメは気の長い男では無い。否、ハジメはまだ押さえている方である。首領パッチに至っては苛立ちのあまり
「お前ら揃いも揃って、タピオカ頼んでんじゃねえ!!」
「タピオカ!?」
手榴弾をハウリアに投げつける始末。
「「「「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」」」」
「お花さんは僕が守る!」
爆発と同時に、なぜかハジメは咄嗟に手榴弾に巻き込まれそうになった花を守る。しかし、爆発が収まったと同時に花から目と口が生えてきた。そう、この花は魔物だったのだ。
「ゲッヘッヘ、俺はキラーフラワー。人間族など花だと思って油断した所を頂く魔物なのさ」
「じゃあ食べよ。バクッ」
「ガハァ!!」
「うわあああああああああ! 魔物は人間にとって毒だったの忘れてたああああああ!!」
花型の魔物を食べ、もだえ苦しむハジメ。もしこの場に神水と呼ばれる回復薬があれば、髪の色が白くなり、身長が十センチ以上伸びた上で助かっただろう。だがこの場にそんな物は無い。よって運命は決まっている。
「ちくしょおおおおお! ちくしょおおおおおお!! ちくしょおおおおおおおお!!!」
「シノォォオオオオオオオオ!!」
こうしてハジメはまた死んだ。ちなみにシノと叫んだのはカムである。
「父様なんですか!?」
「任務完了いたしました。ユエ閣下」
「うむ、大儀である」
「大儀!?」
ハジメが死んでいる一方で、手榴弾を投げた首領パッチはユエに傅く。
それらを尻目に、天の助はハウリアの戦えない精神を何とかする方法を思いついた。
「そうだ、あの奥義だ首領パッチ! あれを使えば!!」
「おお、その手があったか!!」
「え、何? あの奥義に何かあったっけ?」
天の助の言葉に賛同する首領パッチ。一方、起き上がったハジメは心当たりがないのか首を捻る。
「いいからやれって。やりゃ分かる」
「そう? じゃあ、やろうか」
最終的に首領パッチの言葉に納得し、ハジメは適当に構える。それに合わせて残りの二人も適当に構え、詠唱を始めた。
「
「滲み出す混濁の紋章――」
「
「詠唱バラバラですぅ!!」
三人とも作品から違う詠唱を好き勝手に唱えている。だがそれら三つは過程を経てやがて一つとなり、ここに奥義の発動を成した。
「「「奥義、時よ止まれ。旧スク水は何よりも素晴らしいから!!」」」
「変な方向に一つになった―――――――!?」
奥義が発動すると同時に、空からステンドグラスが割れたかのような音が響く。皆が見上げると、空から何かがこっちに向かって来るのが見える。
「……ざ……ゆ……な……」
空から来る者が、何かを言っているがよく聞こえない。しかし、首領パッチと天の助はこの声の主が分かる。
「お…ざけ…ゆ……な……!」
徐々に近づいてくる声に、不安を隠せずざわざわし始めるハウリア達。そしてついに声の主はこの場に降り立つ。
「おふざけは許さない!」
「「「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」」」
空からやって来た者はバカ三人を跳ね飛ばし、そのまま土煙を巻き上げ皆の視界を奪う。やがて煙が晴れた時、そこに居るのは
「なぜなら私は、魚雷だから!!」
大きな魚雷にギャル風な女性の顔と、手足が生えているという、凄まじく形容しがたい何かだった。
「「「誰!?」」」
ハジメとユエ、それにシアが疑問を抱く中、魚雷は首領パッチ達に詰め寄っていた。
「ちょっとあなた達! またふざけてたでしょ!? おふざけは許さないわよ!!」
「ヒイイィィ……! 違うんです魚雷ガール先生……!!」
「あいつらです! あのハウリア族のせいでふざけるハメになったんです!!」
「え!?」
魚雷ガールに詰め寄られている二人は、ハウリア族を理由になんとか自分達に非が来ないようにしている。
実の所、ハジメは知らないが天の助と首領パッチは魚雷ガールを呼び出し、ハウリア族の訓練を頼むためにあの奥義を使ったのだ。そしてその奥義はおふざけにカウントされた。よって二人は嘘を言っている訳では無い。
とはいえ、ハウリア族としては知らないので、カムは必死に言葉を尽くすしかない。
「ち、違います! その二人が、二人が勝手にふざけたんです! 本当です!!」
「しゃらくせえ!」
「がはぁ!!」
「父様―――――――!!」
魚雷ガールの正拳付きで沈められるカム。彼にシアは思わず叫びながら駆け寄っていく。
「祟りじゃ! 竜神様の祟りじゃ!! 生贄を捧げるから静まりたまえ―――――!!」
「生贄です」
神主の服を着て、お祓い棒を振り回しながら錯乱するハジメと、巫女服を着て生贄になっているユエ。そんな二人を見た魚雷ガールの行動は決まっている。
「何とち狂ってんのよこの田吾作が―――――――!!!」
「「ぐわああああああああああああああ!!」」
魚雷ガールは二人に容赦なく突撃し、地に沈める。
そして立っているのは魚雷ガールとシアだけになった時、魚雷ガールは話しかけた。
「ねえそこのあなた。私がどうして呼ばれたのか知ってるかしら?」
「ええと、何となく想像はつきますが……」
「なら説明して頂戴」
「はい……」
魚雷ガールに求められ、事の経緯を説明するシア。
その後ろで、ハジメは天の助に魚雷ガールが何者かを聞いていた。
「で、誰なのあの魚雷?」
「あの人は魚雷ガール。元マルハーゲ四天王の一人で、オレ達の先生で、ボケ殺しだ」
「ボケ殺し?」
「ボケ殺しってのはな――」
「ボケ殺しとは、遥か昔に絶滅したと言われる伝説の男達。彼らの前ではどんなおふざけも封殺されてしまうと言うわ」
「雫ちゃんどうしたの?」
「――ということだ」
「成程、八重樫さんの説明でよく分かったよ」
「オレは!?」
ハジメと天の助の話が終わったと同時に、シアと魚雷ガールの話も終わり魚雷がハジメ達の方を見て、こう言った。
「話は大体シアから聞いたわ。あなた達が私にハウリア族の訓練教官を頼みたいと言うのなら、いいわ。やってあげる」
「マジですか!?」
「やった!」
「オレら暇じゃね? 何する?」
「スマブラ? 桃鉄?」
急きょ空いた十日間をどうやって潰すか考えるバカ四人。だが魚雷ガールにそんな甘えは通用しない。
「何言ってるの? あなた達も訓練を受けるのよ」
「「「「なぜっ!?」」」」
「だって、あなた達は私の可愛い生徒だもの……」
魚雷ガールの返答で絶望の淵に沈む首領パッチと天の助。しかしハジメとユエは納得しない。
「いや、僕とユエは初対面ですよね!?」
「関係ないわ。私の生徒の友達と言うことはもう生徒と同義よ」
「えぇ……」
何とかして、とハジメは首領パッチ達に目線で訴えかけるも返答は『やめとけ』の一択。しかしユエは、抜け道を見つけたとばかりに言い訳を繰り広げた。
「待って。私は同じ魔力操作持ちとしてシアに特別な訓練を付ける必要がある」
「そう言えばそんなことも言ってたわね。特別よ」
「やった。シア行こう。すぐ行こう。優しくするから」
「いやハジメさん達は!?」
「大丈夫大丈夫多分きっと大丈夫」
「凄く不安が残る返事!!」
こうしてユエは、シアを連れて逃げるように去って行った。
「貴様アアア! 逃げるなアア! 責任から逃げるなアア!!」
背後から聞こえるハジメの怨嗟の声は、聞こえないことにして。