グリューエン大火山から静因石を持って帰還したティオは、早速天の助の元へ向かう。
「マテリアルドラゴン*1を召喚! 魔法カード発動、ファイヤボール*2を三枚発動!! 更に火炎地獄*3! そして命削りの宝札(アニメ版)発動、五枚ドロー! 雷鳴*4を三枚発動!! カードを二枚伏せてターンエンド!!」
そしてたどり着いた先で見たものは、マテリアルドラゴンをフィールドに召喚した状態で、必死にバーンデッキを回す天の助の姿だった。
ティオは慌てて静因石を天の助に渡そうとする。
「天の助、静因石じゃ!!」
「デッキの補充か! ありがてえ!!」
「違うのじゃ!!」
天の助の妙な勘違いを一蹴したティオは、早速静因石を患者達に配り始めた。
「静因石を粉にして、患者の鼻にぶち込む! これで行くのじゃ!!」
「それであってんのかよ?」
「知らぬ!!」
ティオの無責任な断言を天の助は気にすることなく、静因石を次々と患者の鼻にぶち込んでいく。
そして数時間後、全ての患者の治療は完了した。
この結果にビィズは大喜びだ。
「天の助殿にティオ殿、それにここにはいないハジメ殿達のおかげだ。本当に……ありがとう」
「そういやハジメ達はどこにいるんだ?」
「うむ、実はじゃな――」
ティオは天の助にハジメが自分に静因石を託して先に脱出させたことを伝える。それを聞いた天の助は、まあ多分大丈夫だろ、と思って特に心配はしなかった。
そこにアンガジの住人が数人通りかかる。ビィズは元気になった住人を見て喜びを隠せない。
「ビィズ様。そして旅の方のおかげですっかり元気になりました」
「本当に元気になったのか!?」
「もう元気バリバリ、六分の四倍じゃ!」
「読めん!!」
「HAHAHA! I AM FINE.THANK YOU!!」
「アン〇ーン!?」
「さーくるぷりんと様制作のフォントを使用させていただきました。まことにありがとうございます」
天の助が謝意を述べている一方、ティオはここにいないハジメに思いを馳せていた。さっきもいった通り別に心配しているわけではないが、気にはしている。
ハジメ達は一体どこで何をしているのだろうか。ではここで視点を彼らに移そう。
「これ一々言う必要あるか?」
「どうじゃろうな」
ここはエリセン。海人族が大陸に海産物を採って送り出していることと、海の沖合に存在していることが特徴の町である。
先日、ここの子供が人間に攫われるという事件が起きたが、しばらくするとその子供が人間達に送られて帰ってきた。
子供がいない間は殺気立っていた住人達だったが、これで平穏が戻り町は少しずつだが本来の姿を取り戻していきつつある。
だがしかし、そんな町に平穏を破る新たなものがやってきた。
「「「「あああああああああああああああああ!!」」」」
具体的に言うと、空からハジメ、首領パッチ、ユエ、シアの四人が降ってきた。
「「「「ぶぼっ!!」」」」
四人はエリセン付近の海に落下し、辺りに爆音を響かせる。
ハジメとシアは海に落ちたと同時にすぐに海面まで泳ぎ、近くの足場に這い上がって愚痴った。
「ここの海水……魚にエサでもあげてるのか添加物があるね……」
「海水の批評してどうするんですか……」
息を切らせながら会話する二人に対し、いきなり目の前に槍が付きつけられる。
二人が槍の持ち主に目を向けると、そこには海人族の男が警戒心を露わにして立っていた。
男はハジメに強い口調で問う。
「お、お前達は何だ!? どこから何をしにここへ来た!?」
「空より。お前達とメスガキを分からせる為に」
「いや意味が分からない!!」
ツッコミを海人族の男に押し付けたシアは、このいきなり槍を突き付けられている状況をどうにかして欲しくてユエと首領パッチの様子を見る。
しかし――
「だからよ、止まるんじゃねえぞ……」
「オレんだ! そのエサはオレのもんだ!!」
シアの目線の先にいるのは希望の花を咲かせているユエと、魚と餌を取り合っている首領パッチだった。
(あ、これ二人ともアテにならないですぅ……)
シアはバカ二人に頼る選択肢を消した。
その横では男のハジメに対する尋問は続く。
「大体何で空から降ってくる!?」
「ちょっと首領パッチのメインローターがいかれたからですが? 何か?」
「何でお前が半ギレ気味なんだ!? おかしいだろ!!」
ハジメの
「お兄ちゃん!」
「ん?」
どこからハジメに向かって呼びかける声がした。ハジメ、シア、海人族の男が声の主を探すとすぐに見つかった。
声の主の元には海人族の母娘。そして娘にハジメは見覚えがあった。
「あ、ミュウじゃん。おひさー」
「軽くないですか!?」
声の主は、奥義36でハジメ、首領パッチ、天の助が助けた海人族の子供、ミュウだった。
ミュウは自分の恩人に会えて嬉しいのか無邪気に近づいていくが、海人族の男としては気が気じゃない。彼視点ではハジメは怪しい人間でしかないのだから。
だから男は必死にミュウを止めた。
「駄目だよミュウ。空から降ってきたこの怪しい男は俺が今取り調べている最中だから」
「怪しくないよ! お兄ちゃんはミュウを助けてくれたんだから」
ミュウの言葉に男はあることを思い出す。
誘拐されたミュウを人間族が送り届けた際に、金ランクの冒険者がミュウを救いそのまま誘拐犯を叩き潰したと言っていた。
そしてこのミュウの懐きよう。ここから導き出される答えは――
「あ、あなたがミュウを……!」
「大したことはしてませんよ」
男の言葉に対し謙遜するハジメ。しかし彼は『僕がミュウを助けました』と書かれた看板を手に持ち、『アイアムセイヴァー』と書かれた襷を肩に掛けていた。
「凄く自己主張してるですぅ!!」
「ハジメのアメリカンスピリッツが出ている。これからは主張が大事だというハジメのメッセージ」
シアがツッコミを入れていると、ユエが何に感心しているのか頷きつつ、魚にボコられている首領パッチを引っ張ってシアと同じ足場に登った。
「首領パッチさん負けてる!!」
「あらあら、あなた達がミュウを助けてくださった冒険者様ですか?」
「あなたは……ミュウの母親で未亡人のレミアさん!!」
「何で唐突に説明口調なんですか?」
海人族の男の説明口調のおかげで、名前とミュウとの関係性が一発で分かったレミアがハジメ達に話しかける。
その姿にシアはミュウちゃんが成長したらこんな感じの美人になるのかな、と呑気に思うだけだったが、ユエとハジメはレミアを見てたじろいでいた。
「何、この雰囲気……!? これが子持ち未亡人のエロスとでも言うの……!?」
「此方も抜かねば……無作法というもの……」
子持ち未亡人というワード、そしてミュウを大人にしたような美人であるレミアにエロい気持ちが隠し切れないユエとハジメ。
そんな二人を首領パッチは海に突き落とし、そのまま二人に乾麺を投げつけた。
「エサじゃオラァ!!」
「すぐおいちい!」
「すごくおいちい!!」
「最終的にエサあげる側!?」
いつも通りの首領パッチだが、そんな状況を無視してミュウは話しかける。
「首領パッチ、あのところてんさんは?」
「あん? あぁ、今ちょっと別行動中だ。でもそろそろ合流できそうだし呼ぶか」
そう言うと首領パッチは自分のトゲの一本をスマホに変形させ、天の助に電話をかけた。
「あ、しもしも~? アタシ今エリセンに居るんだけど~、そっちどう? こっち来れる~?」
『うむ、拙者達もアンガジ公国の人々の治療を終えたところで候。今すぐ向かう故、許せ、姫』
「姫!?」
あっさり電話を終える首領パッチと天の助。そして一分後。
「オレら、到着!!」
「早いですぅ!?」
「妾が『テ~レ~ポ~ト~!!』したからの。まあイベントシーンでしか使えぬのが玉に瑕じゃが」
「そんな便利な技が!?」
シアの驚愕の後ろでハジメとユエが必死に足場へと這い上がる。
それを見たレミアがユエに話しかけた。
「ところで、ええっと……ユエちゃんだったかしら? よかったらミュウのお友達になってくれないかしら? ここ、あんまりミュウと歳の近い子がいないの」
「近くないんですけど。二十歳超えてるんですけど! ふくしの……大学? に通ってるんですけど!!」
「最後は違いますよね!?」
(嘘をつきました。でも学ぶ気持ちは今も失われてないからセーフで)
「アウトだと思います!!」
「あらあら」
ユエの発言を聞いて少し困惑するレミア。信じているのかいないのかは傍からだと分からない。
だがそれはそれとして、ハジメ達がミュウの恩人である以上レミアはお礼がしたいので彼らを自分の家に招待した。
一も二もなく誘いを受ける男性陣だったが、ミュウと初対面であり、救出に関しては特に何もしていない女性陣はちょっと躊躇した。
だがそこは大人の女性レミア。ユエとティオにはミュウの面倒を見ること、シアには人数分の料理を作る手伝いを頼み、罪悪感を減らすことで誘いを受けるよう誘導した。
そして時は流れ夜、食事の準備を終えたレミアとシアは早速ハジメ達の元へ持っていく。そこで見たものは――
「ゲッヘッヘ。このエリセンはオレ、首領パッチの手でソースまみれとなるのだ~!」
「皆大変じゃ! このままではこの町は岐阜県と同じくソースまみれになってしまう! じゃから皆で叫ぶのじゃ。せーの!!」
「「「ハジメ――――――!!」」」
「とうっ! 首領パッチ、これ以上の暴虐は許さないぞ!!」
ティオが司会、首領パッチが悪役、ハジメがヒーローの劇を天の助、ユエ、ミュウが観客として見ている状況だった。
(ヒーローショーが始まってる――――――――――――!?)
「あらあら、とても楽しそうね」
驚くシアと穏やかに受け流すレミア。二人は対称的だった。
そのままショーを見ながら食事を始め、歓談するシア達。そうこうしているうちにショーは中盤へと差し掛かる。
「が……ま……」
「カイ・ジンゾクさんが死んでしまうなんて……」
「この謎は僕が必ず解く! ジッチャンの名と花京院の魂に懸けて、真実はいつも一つ!!」
(ミステリーになった!?)
昼に出会った海人族の男を死体役に加えて、ショーはあらぬ方向へと進んでいく。
それをガン無視して、レミアはシアへと話しかけた。
「皆さん、とても楽しそうね」
「そ、そうですね……」
「この町の皆は私達にとてもよくしてくれるけど、ミュウと同じくらいの子がいなくて時折寂しそうだったの。だから誘拐されてしまったのかもしれないわ……」
「いや、誘拐は関係ないと思いますけど」
レミアの切なげな言葉を切り捨てるシア。
シアからすれば亜人族を誘拐しようとする人間なんていて当たり前なのだ。それに警戒してなかったレミアが甘いとしか思えなかった。
同じ亜人族とはいえ、人間から保護されている海人族と他の亜人族にすら見捨てられたハウリアの認識の溝は深い。
だが二人ともそこには突っ込まなかった。亜人族は皆同族に情が厚い。海人族は再び子供が誘拐されることが無いようにしてくれる、と二人とも信じていた。
その一方、ショーはついにラストを迎える。
「ハジメ、お前は人間達の中で生き続けろ。オレ達は二度と会うことも触れ合うこともない。それでいいんだ」
「首領パッチ――――――――!!」
(何だか切なげなラストになってるですぅ!?)
「仮面ラ〇ダー
途中経過がよく分からないショーが終わり、ミュウは疲れたのか眠ったのを見てハジメ達も床に就く。
そうして夜は更けていった。
「あれ、そういえば僕ら晩御飯食べてない!?」
「ちくわの踊り食いでよければまだあるけど」
「怖っ!? どういう食べ物ですか!?」