ミュウの家でヒーローショーを披露した翌日、ハジメ達は次の大迷宮であるメルジーネ海底遺跡を目指すため船の用意をしていた。
「よし、準備完了! 早速出発ぅ!!」
「全速前進だ!」
いつも通りのハイテンションで駆け出していくハジメと首領パッチの先にあるものは、銀色の円盤としか言えない何かだった。
二人が乗り込むと、円盤は宙に浮かびあっという間に出発してしまう。
「UFO!?」
そして数秒後、円盤は推進力を失い海へと落下した。
「あっさり墜落してるですぅ――――――――――!!」
「仕方ないのう。妾とユエが違う船を用意するのじゃ」
そう言ってティオとユエはシアを船の元に案内する。
そこにある船は広さ三十坪の土地に建てられた平屋の一戸建てで、新築なのか立地は海沿いにも関わらず壁は一面の白、そして屋根にはソーラーパネルが備え付けられていた。
「いやこれどうみても船の描写じゃないんですけど!?」
「最高の憩いをあなたに」
「売り文句が家みたいになってるですぅ!!」
「全く、わがままなお嬢さんだ」
シアが二人の用意した船にツッコミを入れていると、今度は天の助が割り込んできた。
彼の背後には普通のクルーザーが一台止まっているが、そのクルーザーにはびっしりと『ぬ』の文字が書かれていた。
「ロクな船ありませんね!?」
天の助の船を見て大体ネタが出尽くしたと判断したシアは、特に迷うこともなく平屋の一戸建てへと足を進めた。
天の助はシアが平屋を選ぶとは思わなかったのかショックを受けるも、すぐに抗議を始めた。
「平屋なんてよくないぞ! 虫とかいっぱい出るぞ!! マンションにしとけって!!」
「マンションは地震とかでエレベーターが止まったら上るのに一苦労。地面の方が安全」
「二人とも何の話してるんですか!?」
明らかに船と関係ない口論にシアがツッコミつつも、やがてぬのクルーザーを諦めた天の助は大人しく平屋に乗り込み、シア達も後に続く。
こうして四人は出発したが、彼女たちはこの時知らなかった。
「この手を放すもんか!!」
「真赤な誓いいいいいいいいい!!」
目的地に向かって進んでいく平屋を、先に出発して墜落したバカ二人が必死の形相で掴み、くっ付いていたという事実に。
そして数時間後、ハジメ達は目的地に到着した。
皆は辺りを見渡すが、見える限りの視界全てが水平線で、目立つものは何もない。
「ここであってんのか?」
「その筈だけど」
訝しがる天の助に対し、奥義23でミレディから貰った地図を睨みながら返答するハジメ。
一応正しい場所にいる筈だが、目印もないのでハジメは若干不安になり始めていた。
その漠然とした感情を吹き飛ばすかのように、ティオが唐突に宣言する。
「ふむ、ならば妾が潜って確かめてやろうぞ」
そう言ってティオは走り出し、軽くジャンプしたかと思うとそのままトリプルアクセルを決め、さらに着地と同時に今度はバク転に移行――
「うぜえ!!」
「ごふぁ!?」
したところで首領パッチに蹴り飛ばされ、ティオは背中から海に叩き落された。
「最近、なぜか皆さん水に落とされてますよね」
「この小説、受験生には見せられないかもしれない」
こんな光景を見ていたシアとユエがボソりとコメントする。
その一方、バカ三人はこの空き時間をどう使うかで話し合っていた。
「時間は有効活用しないとね」
「でもそんな大したことできねーだろ」
「いいや、できる」
ハジメの言葉に否定的な意見を投げかける天の助。しかしハジメは不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「僕の、ラッシュデュエルなら!!」
「「
「急に
「別にラッシュデュエルはハジメのものでもない」
ハジメと首領パッチは、いつの間にか構えていたデュエルディスクでいきなりラッシュデュエルを始めてしまった。
そして数分後。
「宝箱取ってきたのじゃ!!」
ゼ〇ダでいうならハートのかけらが入ってそうな程の大きさの宝箱を抱え、ティオが海上に戻ってくる。
彼女がそこで目撃したものは――
「サイレントマジシャンで、プレイヤーにダイレクトアタック!!」
「首領パッチは最後に僕の切り札を読んでいた……。僕を、超えたんだ……」
「戦いの儀ごっこしてるですぅ――――――――!! ラッシュデュエルは!?」
完全に遊んでいるバカの集まりだった。
それを見たら普通はキレるだろう。しかしティオは違う。
「放置プレイとは……たまらんのじゃ……!」
「おーい、変態が宝箱抱えて帰ってきたぞー」
興奮したティオを見つけた天の助は皆に報告し、早速宝箱を開ける。
ハジメがいそいそと宝箱を漁り、その中身を天に掲げた。
「トライフォースのかけらを手に入れた!」
「何か凄いの出てきた――――――――!?」
「ウワサ通りいいメッセージだ! ついて行こう!」
なぜかとんでもないものが出てきて驚くシア。しかし衝撃の展開は終わらない。そこにユエが何かを手に持って、話に割り込んでくる。
「そしてこれが完成品のトライフォース」
「料理番組!?」
「そしてこのトライフォース。なんと――」
ユエに続いて今度は首領パッチが話に入ってくる。
首領パッチはトライフォースを半分に割り、中身を見せた。
「メロンパン入りとなっておりまーす」
「トリ〇アの種――――――――――!! すごく懐かしいですぅ!!」
シアがツッコミの連続で疲れ息切れをしている中、バカ五人はふと思った。
(あれ? これ、神代魔法と関係ないな……?)
「気づいてなかったんですか!?」
まさかの事実に震えが止まらなくなるバカ五人。
とりあえずハジメ達の目的と一切関係ないので、トライフォースの完成品と欠片を宝箱に入れ、ついでにメロンパンとなめたけも入れて海に再び放逐した。
「何でなめたけ!?」
「東京行ってもしっかりやるんやで! なめたけどん!!」
「トライフォース東京送り!?」
凄い物がさらりと東京へ送りつけられることが確定した一方、肝心のメルジーナ海底遺跡へ行く方法はさっぱり分からないままだった。
頭をひねる一行。
そして一秒後。
「全然分かんない!」
首領パッチが匙を投げた。
「×点喰らい尽くせや」
「考えてマグガイバー」
諦めの早すぎる首領パッチを非難する天の助とユエ。
その喧騒を無視して、ハジメはぼんやりとグリューエン大火山の攻略の証を見つめる。
「ご主人様、どうしたのじゃ?」
「いや、ミレディがメルジーネ海底遺跡にはこれが必要って言ってたような」
「ふむ、とりあえず色々試してみたらどうじゃ?」
「そうしてみるか」
ティオのアドバイスを聞いたハジメは、早速グリューエン大火山攻略の証に対し色々やってみることにした。
まずは振る。次に地面へ叩きつける。
当然の如く反応はない。なので攻略の証にウニを奉納してみた。
「天に召しますグリューエン大火山攻略の証よ、どうか我らに力を……」
「唐突に祈りだしたですぅ……」
「具体的には月に一千万円、非課税で僕の口座に振り込んでください……」
「力って財力!?」
「ついでに顔とスタイルが一線級の美少女で、なおかつ性格がよくて僕のことが大好きな女の子と付き合える権利をください……」
「願望、都合良すぎです!!」
「なろう主人公なんだぞ、僕は……」
ハジメの真摯な祈り、というか欲望。しかしそんなものが攻略の証に届くはずもなく、彼はただ気持ち悪い欲望を吐き出しただけで終わってしまった。
その後ろに他のバカ達も続く。
「ところてんをトータスの主食に……」
「私こそがメインヒロイン……」
「オレの下半身をケンタウロスに変えてくれ……」
「まともな願いがないですぅ!!」
バカ三人の願いに呼応するかのように、なぜかウニが光り始める。そして――
「オール却下!!」
「「「「ぎゃあああああああああああああああ!!」」」」
祈りを込めていたバカ四人は怒り狂ったウニに轢かれて吹き飛ばされ、ウニはそのまま空へと旅立ってしまった。
「あれ? 妾は!?」
「別に祈ってないから除外されただけでは?」
ハブられたティオが悲し気な顔をシアに向けるが、冷たくあしらわれる。
「コエン〇イムq10……コエ〇ザイムq10……」
思わず祈るティオ。しかしウニは戻らない。その事実が彼女を打ちのめす。
「妾も、ウニプレイしてみたかったのう……」
「知りませんよ」
ティオのいつも通りな願望を聞き流し、ふと外を見ると気づけば夜だった。
空には雲一つなく、美しい星空と満月だけがそこにはあった。
シアは思わず、空を見上げる。陸地だと木々や建物が視界を阻むことがあるが、海上だとそれがない。そんな非現実的な美しさに、シアはただ心を満たすのだった。
しかし次の瞬間、月の光に照らされたグリューエン大火山攻略の証がいきなり光を貯め始める。
思わずシアは叫んだ。
「ハジメさん!」
「そうか、月の光で体力回復を」
「ポケ〇ンじゃないんですよ!!」
ハジメがふざけている間にも証は光を貯める。やがてそれが終わると同時に、今度は証から一直線に光を発し、海面のある場所を示していた。
「成程、この光に沿って進めば良いのじゃな」
「素敵ですぅ」
「月の光が道案内なんて……」
「ロマンチッ……キュ!!」
「ツキアカリのミチシルベ 雲を越えボクに届け」
月の光に導かれるという、なんとも粋な演出に感動を隠せないハジメ達。
そのまま光に沿って海に潜航していくと、海底に暗い道のようなものが見えた。
あれが迷宮だと判断したハジメ達は、特に迷いもなく平屋を道に沿って進めていく。
「迷宮攻略開始だね」
「今ファイナルソードみたいな演出入りませんでした!?」
「じゃあこっちにする?」
「フォント変えろとは言ってないんですよ!!」
「どうどう、落ち着くのじゃシアよ」
「これがキレやすい若者って奴か……」
「あらまあ、物騒ねえ……」
バカ達の好き放題な物言いに怒りがこみあげてくるシア。
それはそれとして、いよいよ迷宮攻略開始。はたしてどうなるのやら。
「というか町からダンジョンの移動で一話かけるとか頭おかしくない?」
「それは言っちゃだめです」