前回までのあらすじ
なんか首領パッチが黄色くなった。
ハジメ「まさか首領パッチもアルベドじゃないだろな……?」
シア「アルベドは黄色くないですぅ!?」
「で、本当に何なの? 何で首領パッチ変身してるの?」
「手首の布は何なのじゃ?」
「てかLINEやってる?」
「そいつはオレが答えるぜ!!」
首領パッチの突然の変身に戸惑うハジメ、ティオ、鈴の三人。するとどこからか声がした。
一同が声のした方を見ると、そこには大量のコパッチの姿が。
「いつの間にかコパッチがいっぱい来てるですぅ!?」
「いつ来たのか知らないけど、あの首領パッチの姿は何?」
シアのツッコミを無視してハジメが尋ねると、コパッチのうち一人が得意気に答える。
「あのおやびんは怒んパッチモード。おやびんが自分に向けて激しい怒りを感じるとあの姿に変身するんだ!」
「激しい怒り……? まさかあのアリの死が……?」
「違うと思うわよ!?」
ハジメの見当違いであろう推測にツッコミを入れる雫。ちなみに彼の言うアリは四話前に叩き潰されたあのアリである。
果たして怒んパッチの怒りの理由とは何なのか。ここで彼の脳内を覗いてみよう。
「さらっと凄いこと言ってません?」
シアのツッコミもなんのその。怒んパッチの脳内が、なぜか皆に見える形で虚空に映し出される。
そこに映ったものは――
『”天翔閃・震„!!』
『そこのお前、俺を見たな? これでお前とも縁が――』
『これで全てが変わる。この惑星ベジータの運命……この俺の運命。カカロットの運命……そして、貴様の運命も!! これで最後だああああああああああ!!』
仲間達の壮絶な死の瞬間だった。
「アリさん入ってるですぅ――――――――!? 最後誰ですか!?」
「それ以前に光輝生きてるわよ!!」
ツッコミの二人の叫びに構わず、怒んパッチはバブウに向けて構えながら一人言葉を零す。
「怒りを貯めるぜ」
ここで怒んパッチの発言に疑問を覚えるのはハジメだ。
「貯める?」
「ああ。あの状態のおやびんは過去の自分に激怒することで、どんどんパワーアップするのさ!」
「首領パッチさんの過去ですか!? 正直すごく気になります!!」
コパッチの返答に反応するのはシア。
彼女の言葉が終わったと同時に、怒んパッチの回想が始まる。
あれは首領パッチが合コンに参加した時。
盛り上がりが最高潮になった頃、店員が追加で鍋を持ってきた。
しかし彼はそれを――
「ナガシマスパーランドと勘違いして、思わず一人で遊んじまった……!!」
「どういうことよ!?」
過去話が終わったと同時に、怒んパッチは鎖を腕に巻き付けている姿に変化し、バブウに攻撃を仕掛ける。
「ライトニング・タケノコブレイク!!」
「ぎゃあああああああああああああ!!」
怒んパッチは懐から一本のタケノコを取り出し、自らが発生させた電気を纏わせてバブウを斬り裂く。
「おのれぇ!!」
即座にバブウは怒んパッチに向けて拳を放つが、気づけば対象はリーチの外へ逃げている。
そして怒んパッチは再び回想に入った。
十年前。首領パッチはオリンピックで金メダルを期待されるほどの水泳選手だった。
そんな彼はある日、浜辺に流れ着いていた果物を見つける。それを彼は思わず食べてしまった。
その結果――
「オレが……泳げなくなってる……!?」
首領パッチは金槌に変身していた。
そう。彼が食べたのは悪魔の実だったのだ。
こうして、彼の水泳選手時代は幕を下ろした。
「あの時はコーチに迷惑を掛けちまった。そんなオレが許せねえよ」
「絶対嘘ですよねその話!? 前に泳いでましたし!!」
明らかに嘘な話にツッコミを入れるシア。しかし怒んパッチは更なるパワーアップを見せる。
手に持つドンパッチソードは長ネギの先にタマネギが追加され、剣はハンマーへと姿を変えた。
「ドンパッチハンマー乱舞!!」
「ぐわあああああああああ!!」
そして手に持つハンマーを振り回し、幾度もバブウを打ち付ける怒んパッチ。
攻撃を喰らい宙に浮かぶバブウ。そのまま追撃するべく跳び上がる怒んパッチ。もし何もなければこのままトドメを刺せるだろう。
だが世の中予想外は起こるものである。
「僕の出番を減らすな!!」
「がはぁ!?」
なんと、今回リアクションしか出来ていないハジメが、出番を求めてここで飛び込んできた。
彼はそのままの勢いで叫ぶ。
「ついでに僕の過去も聞け――――――――――!!」
この言葉と共に、ハジメの回想が始まった。
「あなたのことが好きです」
「……えっ?」
ハジメが生まれて初めて告白された相手は、イリオモテヤマネコのオスでした。
「どうだ参ったか!!」
「何が!?」
ハジメの全く意味のない回想にツッコミを超えて戸惑う雫。
しかし怒んパッチは何か感じ入るものがあったのか、しみじみとこう呟いた。
「成程な。手負いの獅子ほど危険だから、トドメを刺すなら全力を出せってことか」
「ハジメさんの行動をどう解釈すればそうなるんですか?」
怒んパッチの前向きすぎる受け止め方に思わず真顔になるシア。
それはそれとして、怒んパッチは最後の回想を始めた。
「コンドル~コンドル~」
「よしあき!? よしあきお兄ちゃんなの!?」
「全く、過去のオレにイライラしてくる」
「いや何ですか今の!?」
「最後の最後で一番訳が分からないものが来たわね……」
最早回想の体すら成していないが、とにもかくにも怒りを隠せない怒んパッチ。
それは彼のみならず、同じものを見ていたハジケリスト達も同様だった。
「首領パッチにこんな壮絶な過去が……!?」
「こんなの……オレでも自分を許せるか分からねえ……!!」
「そうなの!?」
共感するハジメと天の助。理解が及ばない雫。
一方彼らの横では、怒んパッチの怒りが頂点に達し、最後の変身を見せた。
「怒んパッチの背中に翼が……!!」
「怒りの翼が生えた! あの翼が生えたおやびんはどんな些細な怒りも吸収するんだ!!」
翼に驚くハジメに対し、コパッチ達はどこからともなく増えていき、バブウと怒んパッチの間に列になる。
これは『コパッチロード』。列を作り皆で怒んパッチの悪口を言うことで、彼をパワーアップさせることができるのだ。
「おやびんのアホー」「おやびんのマヌケー」「首領パッチの出しゃばり!! 主人公殺し!!」「おやびんのオタンコナスー」
「今ハジメさん混じってませんでした!?」
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
コパッチロードの上を全力で疾走する怒んパッチ。この間にもコパッチ達の悪口で彼の力は上昇を続ける。
そしてバブウの元にたどり着き、怒んパッチは最後の攻撃を繰り出す。
「おやびんラッシュ!!」
怒んパッチから繰り出されるのは無数の拳。
一つ一つが並の相手なら一撃で意識を刈り取るほどの重い拳が、数多のラッシュとなってバブウの体を打ち付ける。
「Xボタン連打! Xボタン連打!!」
「久々にジャンプアルティメットスターズがやりたくなってきたのう」
その横で、天の助はニンテ〇ドーDSのXボタンをひたすら連打し、それを見ているティオはどうでもいい感想を口にした。
一方、ずっと拳を喰らい続けていたバブウに限界が訪れる。
「バカな……このボクが……!? ボーボボならいざ知らず、こんな訳の分からない奴にやられるなんて……!!」
自らの敗北を認められないバブウが思わず言葉を零すが、これが現実。
元ネオマルハーゲ三大王が一人、バブウは怒んパッチに敗れる。
それでも彼は最後の最後まで強者の意地を捨てられなかった。
「このボクが こんなやつらに 負けるなど」
これを最後にバブウは爆発し、彼の痕跡は完全にこの世から消え去った。
「ポエット!!」
「や、やったの……?」
バブウのハイクを評価する鈴とは対照的に、元三大王という強大な肩書の持ち主が死んだ現実に認識が追いつかない雫。
しかし次の瞬間、現実に追いついた雫が喜びを露わにする。
「やった!! 光輝達の勝ちよ!!」
「ウジですわ」
「!?」
一方、この3狩リアでは今一つ目立っていないと思っているハジメは、滅茶苦茶不貞腐れるのだった。
「ん……? 俺は確か……」
「起きた?」
3狩リアが終わりしばらくしてから、光輝は目を覚ます。
傍には香織の姿が。どうやら看病してくれていたらしい。布団に寝かせた状態で。
「膝枕だと思った? 残念、布団でした!!」
「俺そんなこと考えてなかったけどな」
香織の素頓狂な言動にツッコミを入れる光輝。
次の瞬間、彼は気絶する直前のことを思い出し、慌てて起き上がる。
「そうだ! 3狩リアは!?」
「大丈夫大丈夫。ほらアレ見て」
慌てる光輝とは真逆に、落ち着いている香織はゆったりとある方向を指差す。
光輝が指さす方向を見ると、そこには――
「かめはめ波!!」
「ギャリック砲!!」
「おふざけは許さない――――――っ!!」
『ぐわああああああああ!!』
ハジメ、首領パッチ、魚雷ガールの三人が、神の使徒ノイントの群れを掃討している光景だった。
「後あなた達も!!」
「「ぎゃああああああ油断したああああああ!!」」
ついでにハジメ達も魚雷ガールに掃討されていた。
「よかった……あの様子なら俺達が勝ったんだな」
「そうだよ」
「天之河君!!」
「光輝さん!!」
光輝がホッと息をついた直後、泣きそうな顔で檻に囚われている光景を見せられたものの、その後特に言及がなかった愛子とリリアーナが現れた。
後ろにはピッキング用具を得意気な顔で天に掲げる天の助がいるので、彼が檻の鍵を開けたことは明白だった。
「俺の体は問題ないです先生。だけど、ステータスが……」
「ステータスがどうかしたんですか?」
「南雲君みたいに文字で表記されるとか?」
光輝の言葉に疑問を覚えるリリアーナと、ただ意味もなく茶々を入れる香織。
心配する二人は香織をスルーし、光輝もあまり気にすることなくステータスプレートを三人に見せる。
天職;勇者
「見ての通りだ。技能やステータスはそのままだけど、俺はもう勇者じゃない。アルヴを倒すので精一杯だった」
「そんなこと……」
どこか自嘲気味に話す光輝に対し、何かを堪えるように言葉を滲ませるリリアーナ。
「うおおおおおおおおおおお!!」
すると、彼らから離れた場所で何やら怒号が響いた。
三人が思わず声の方をむくと、そこでは大勢の魔人族がハジメを囲み、憎悪と怒りを向けていた。
ハジメ達にとっては敵でも、魔人族にとってアルヴは神。
その神を滅ぼした相手を憎まない道理はない。だが――
「なんてことをしてくれたんだお前は! これでは我々魔人族の未来が!! エヒト様が我々だけ生かしてくれると言ったのに!!」
魔人族のうちある一人の言葉は、怒りの理由が現人神を滅ぼしたことではなく、生存欲求がすべてだった。
しかし、ハジメはそんなことは一切考慮せず、むしろ魔人族の望みを断ちにかかる。
「僕らを敵視することで現状から目を逸らしたいのなら……その望みを……断つ……!」
静かに、いっそ冷たさすら覚えるほど冷静にハジメは話し始めた。
「魔人族ゥ!!」
だがすぐにテンションが跳ね上がる。
「何故君達が神を滅ぼされなければならなかったのか! 何故僕らがアルヴと敵対していたのか! 何故君達だけ未来が保証されているのくわァ!!」
「それ以上言うな!!」
ここでカトレアが現れ、ハジメを止めようとする。
「その答えはただ一つ……」
「ニャメロー!!」
「アハァ……♡」
続いて、今度はなぜかエヒトと共に去った筈のフリードが現れ、カトレア同じくハジメに向かっていく。
しかし足りない。彼は容赦なく叫んだ。
「魔人族ゥ! 君達全員は……エヒトとアルヴに騙されているからだぁぁぁぁ!! アーハハハハハハハハハアーハハハハハハハハハ!!!」
ハジメの言葉を止められず、絶望の表情を見せるフリードとカトレア。
一方、一般魔人族の反応は大きく二つに分かれた。
「僕が……ゲーム病……?」
「ゲーム病!?」
絶望する者と
「嘘だ……我々を騙そうとしている……!」
信じない者に。
「というかこれ、どう収拾をつけるつもりなんですか……?」
「知らぬ」
この光景をただ見ていたシアは不安を覚えるが、ティオはどうでも良さげに切り捨てるのだった。