「おじゃましまーす♪」
「おい、あまり大きい声を出すなお隣さんに聞こえたらどうするんだ」
「いいじゃないか、ボクは不都合なことなんて一つもないよ」
「俺が困るんだよ!社会人が未成年を部屋に招き入れる図だぞ、下手すりゃ逮捕もんだ」
「ボクは未成年じゃないよ!こんな可愛い見た目でも何十年という歴史を生きてきた英雄なんだぞ!」
「はいはい、わかったから英雄ごっこなら後日付き合ってやるから今は大人しくしてろ」
「またそうやってボクをバカにしてー!」
結局…この美少女アストルフォを放置できないと判断した俺は大人しく彼女の希望に沿う形で自宅のアパートまで連れてきた。
今のところ自分の行動が正しいのか間違っているのか分からないけどあのままこの子を放っておくのだけは俺の良心が許さなかった。
だからと言って一から十まで俺が面倒をみてやる義理など毛頭ないのだがここまで連れてきてしまったものは仕方がない、今日一晩だけはここに泊めてやってまた明日にでも事の経緯を話した上でしかるべき施設に預けてやろう。そこから先の事はもう俺の関与するべきところではないし彼女も一晩寝れば冷静さを取り戻すだろうさ。
「ねぇねぇマスターお風呂借りていい?」
「ん?あぁいいよ。男性用だけどシャンプーとボディーソープすきに使いな」
「ありがとー♪」
自宅に泊まる事を許可した瞬間に満面の笑みをうかべてそれからずっとご機嫌だ。相当嬉しかったのか帰路の最中もスキップをしそうな勢いだった
なにがそんなに嬉しいのだろうか出会ってからアストルフォの考えている事は一つも理解できない
フンフン♪なんて鼻唄を歌いながらあろうことかその場で上着を脱ぎ出しやがった
「ちょっ待て待て!お前はバカか!」
すかさずその行為を止めると意地悪な笑顔を向けてきた
「なーにさぁ♪もしかしてマスターは恥ずかしがっているのかい?」
「むしろお前は恥ずかしくないのかよ。いいからここで脱ぐのはやめろ!脱衣場に行け」
「どうせ男同士なんだから裸を見られたってなにも思わないよ」
「違うお前はどう見ても女の子だ。」
「男だよぉ!なんで信じてくれないのさ!」
「黙れ、これに関して俺の意見は変わらない。俺が女と言ったらお前は女なんだ、お前の胸がどんなにまっ平らだろうとそんなもの証拠にはならない。貧乳はステータスなんだよ、つまりお前は女なんだよ。」
断固認めないというダイヤモンドよりも強く硬い意志を持って言わなければいけない。
アストルフォお前は女だ。
「はぁ、マスターって毒舌な上に頑固者なんだねぇ、わかったよ別にボクはどうしてもマスターに男扱いされたい訳じゃないから女の子でも構わないよ」
ミニスカート姿に黒タイツ上着はうさみみの付いたパーカー姿の男がいるか?いたとしたらそれは変態だろうよ。
大体こんな美少女が男なわけない、こんなにも華奢な体つきで声まで美少女の男がいてたまるか、お前が男なら世間の女性達の立場はどうなってしまうんだ
自信喪失どころの騒ぎではない最悪自殺者まで出かねん相当なショックを受けるだろう。
「せっかくだからマスターも一緒に入る?」
「入らん」
「ボクは気にしないよ」
「俺が気にするんだよ」
「そんなこと言わずにさぁ一緒に洗いっこしようよ♪」
そっぽを向いた俺の顔を覗き込む仕草がまたなんとも可愛らしいことこの上なし、ひらりと短いスカートが舞っているのも相まってどこか卑猥さも見受けられる、あといい匂いもするあたりやはりこいつは絶対に女だ。
「ねぇマスター無視しないでよ!」
返答がないのが気にくわなかったのだろうか今度は俺の背中におぶさるように飛び乗ってきた
「ええーいひっつくな!」
落とさないようになるべく静かに背中から引き剥がして床に置いてやった
まるで子犬でも飼っているような気分だ
「いいか、お前はもう少し貞操観念をしっかり持て!これ以上過度なスキンシップを続けたいなら今すぐここから出ていってもらうぞ」
「えーまたマスターが意地悪なこと言い出したー」
「ダルそうに愚痴を垂れてるところ悪いけどな俺の方が疲れてるんだからな」
「はいはいわかりましたよぉマスターが頑固者だからボクは一人で寂しくお風呂に入ってくるよーだ」
いじけながら脱衣場へと消えていった
なんで俺の方がわがままを言っているようなニュアンスなんだよ
俺もスーツから部屋着に着替えて一息ついた
このまま晩飯を食べずに床につこうとも思ったけれどさすがにお腹が減っていたし、なによりアイツにもなにか食べさせてやらないといけない。アストルフォがいつから食事を取っていないのかはわからなかいけど昼飯を食べたとしても今は夜中の11時前だ、かなり腹を空かしているはずだと思う。
普段からほとんど自炊をしないもんだから冷蔵庫にはろくな物が入っていない、レンジで解答タイプの白飯とソーセージと野菜が少し…まぁチャーハン位なら作れるだろう。
キッチン棚からフライパンを出して油をしく
適当に切った材料を白飯と一緒に炒めていった
調味料も適当に投入していく
明日にはスーパーに行って二人分の食事を確保しないといけないなぁ…アイツはなにが好きなんだろうか、やはり年頃の女の子だからカレーとかハンバーグとか分かりやすい料理がいいのかなぁ
…いやいやなんで俺は今後の二人での生活を考慮して買い物の計画を立てているんだよ。
アイツとの関係は明日で終わりなんだ
明日は行きつけのラーメン屋に一人で行ってやるんだ
「マスターお風呂上がったよー♪」
とてとてと軽やかな足音が聞こえてきた
どうやら入浴を済ませたアストルフォが風呂場から出てきたみたいだ
「ずいぶんと早いな」
「うん、シャワーだけだからね♪」
どうやら入浴を済ませたアストルフォは先程よりも割り増しでご機嫌らしい
背中越しでもそのテンションの上がりようが伝わってくる
「チャーハン作ったからそこに座って…」
「え!マスターが料理作ってくれたのかい?やったーお腹空いてたんだよね♪」
飛びはねそうなほどに喜びを露にしているアストルフォは全裸であった
いや性格には下を隠すようにバスタオルを腰に巻いていたけれど上半身は一糸まとわぬ状態だ
白くて綺麗な肌が惜しげもなく晒されている。
「服を着なさい!」
まるで実家のお母さんのような怒鳴り声が部屋中に響いた
多分今日一番の近隣への迷惑行為だったんじゃないだろうかと後になってから気づいた。