おしかけサーヴァント   作:袈裟山

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久々に更新します
文章の書き方忘れてらァ





8 話

「伊西くん、この後時間あるかしら」

 

デスクに座ろうとした俺に声を掛けてきたのは俺が尊敬する上司の一人である柚木先輩だった

 

「よかったら仕事終わりに飲みに付き合ってくれない?」

 

柚木 遥(ゆずき はるか)

 

容姿端麗、仕事もできるキャリアウーマン

社内でも密かに人気がある彼女からのこの魅力的なお誘いを断れる男性社員が果たしてどれほどいるのだろう

アンケとってグラフにしたとして1割にも満たないと思う

 

「すいません、今日はなるべく早く帰りたいのでまた次の機会に…」

 

「昨日のロビーに来てた女の子が気がかり?」

 

見透かすような言い方だ

まぁ当たりなのでなにも反論できないけど

 

「ええ…まぁ…そうですね」

 

実に歯切れの悪い返答だった

 

「そのことでも話したいことがあるの、あまり時間は取らせないから安心して」

 

「…わかりました。じゃあなるべく早めに業務を終わらせます」

 

 

こうして柚木先輩と二人だけの飲み会が密やかに開かれる運びとなったわけだが、俺としてはあまり穏やかな情緒ではなかった

 

理由は先程柚木さんに指摘されたように家で待つアストルフォが気がかりなのだ

 

今朝も俺が家を出る際についていきたそうな顔で見送ってくれた

決してついていきたいと言葉には出さないけど表情でバレバレである

 

帰りが少し遅くなる事を伝えてあげたいけど連絡の手段がないのでアストルフォにはひたすら待ってもらうしかない

携帯はなるべく早めに買ってあげよう

その方がこちらとしても色々都合がいいと思う

 

 

 

 

 

 

「かんぱーい」

 

「いただきます」

 

店は柚木先輩のチョイスだけど意外や意外

店の佇まいは古くからある居酒屋といった感じだった

席は個室であるものの小さなしきりが一枚置いてあるだけの簡易な作りで他のお客さんの話し声も丸聞こえな状態だ

俺と先輩は一杯目のビールを飲んで一息つく

 

「あまり固くなりすぎないでよ、なに食べる?この店の焼き鳥が絶品なの」

 

「じゃあ焼き鳥とチャーハンで、あとビールもう一杯」

 

「私も一杯おかわりと焼き鳥と揚げだし豆腐」

 

スーツ姿とはいえこうやってプライベートな柚木先輩と話すのは俺が入社した年に開かれた歓迎会以来かもしれない

あの時は俺も成人して間もなかったので酒の飲み方もろくに知らない時だったから気分を悪くして早々に帰宅したのをよく覚えている

 

「意外だった?」

 

焼き鳥を手に取りながら俺の顔をじっと見つめてきた

 

「私がこんな中年受けしそうな店を予約すると思わなかったでしょ?」

 

「ええ…正直予想外ではありましたね、柚木さんはもっと女性受けするオシャレな店が好みかと思ってました」

 

「ああ…まぁあの手のお店も苦手って訳じゃないんだけど長時間はしんどくなっちゃうかな、私ってお酒好きだからおつまみの味に重きを置きやすいの」

 

届いた焼き鳥をうまそうに食べ進める姿は日頃から目にする先輩とは真逆の印象を受ける

お酒好きというのも意外だった

強そうではあるけど

 

「あの子すごく可愛かったわね」

 

あの子とはもちろんアストルフォのことだろう

先輩はあのロビーでのやり取りを全て見ていたのだ

隠しようもないし、シラをきるのも難しい

 

「そうですね、俺も久々に会った時は驚きました」

 

「久々なんだ」

 

「…なにか?」

 

「いやいや、なんだか二人を見たときに久々に会った親戚というよりも仲のいい恋人に見えちゃったからさ」

 

「やめてください、俺を犯罪者にするつもりですか」

 

「大袈裟に言うつもりはないけどね…けどああいう大胆な行動は会社ではやめておいた方がよかったかも」

 

まったくもって同意する

 

「すいません、気を付けます」

 

「別に私に謝らなくてもいいわよ、ただ今後はないようにしないと会社での伊西くんの立場が失くなっちゃうと思ってお節介がてらアドバイスしたかったの」

 

「痛み入ります」

 

ぐいっとビールを飲み干して焼き鳥を頂いた

確かに酒に合う

今後はプライベートでもこの店を利用してみようかな

 

「あと気になったからっていうのもあるかな」

 

「なにがですか」

 

「伊西くんとあの子の関係って本当に親戚なのかな?」

 

こちらの心境を見透かされているかのような視線と問いに色んな意味でドキリとする

 

「もしかして疑ってます?」

 

「少しだけね、私の目にはどうにもただならぬ間柄に見えちゃったのよ、しつこいかもしれないけど本当に恋人とかじゃないんだよね?」

 

「ええ、間違いなく俺とアイツはただの親戚ですから安心してください」

 

「……そっか…じゃあ安心だね、よかったよかったじゃあ誤解も解けたことだし飲みなおそうか」

 

「まだ飲むんですか」

 

「なにいってるのまだ2杯目じゃない、あと5杯はいかないと元取れないわよ」

 

「いつの間に飲み放題プランにしたんですか」

 

「さぁさぁ伊西くんも飲んで、今日は早く帰るんでしょ?」

 

「わかりましたよ」

 

先輩の顔が既に赤くなっている

お酒は好きだけどあまり強い方ではないのかもしれない

俺もそこまで強い方ではないが顔にはあまりでないので強いと勘違いされやすいらしい

だが先輩の気持ちいい飲みっぷりにつられて俺も自然と飲むスピードが上がっていく

 

「俺も先輩に1つ質問いいですか?」

 

「どうぞ、セクハラ系の質問は答えないから」

 

「先輩は彼氏いるんですか」

 

「…その質問セクハラの判定としては怪しいかも」

 

「厳しいですね」

 

職場では柚木先輩が誰かと密な関係だとかそんな噂は聞かないけどプライベートの先輩まではさすがに把握しきれていない

これぐらいの確認はしていいと思ったんだが少し踏み込みすぎたかもしれないな

 

「いないよ…今はね」

 

人差し指で口に当ててナイショだよと付け加えた

酒のせいなのか紅く染まった頬と唇の艶やかさに加えて女性特有の甘い香りがしてその色香に戸惑う

 

「今は…ですか」

 

ということはそのうちにできる予定があるんですか?と聞きたいところだけどこれ以上踏み込んだ質問をするのはアウト判定を貰いそうなのでやめておいた

 

 

 

 

「今日はありがとね、私のわがままに付き合ってもらっちゃって」

 

アストルフォのことはあれ以上は深く聞いてくることはなかった、代わりに仕事の愚痴を沢山聞かされたし俺も多少だが仕事関係の愚痴をこぼしていた

頼んだ食べ物をひとしきり平らげたところで今日はお開きにしようと早々に切り上げてくれた

 

「こちらこそです、ご馳走さまでした」

 

「なんか私の愚痴を聞いているだけだったね、ごめんね」

 

罰が悪そうに謝る彼女に対して嫌悪感なんて微塵も沸いてこない

 

「いえ、俺なんかで良ければまた仕事の話聞かせてください、次は俺が奢りますので」

 

「じゃあお言葉に甘えて次は伊西くんからのお誘い期待しちゃおうかな」

 

本当はもっと俺の話を...主にアストルフォとの事を聞きたかったのだろうけど俺の顔色を伺って深く追求することはしないでくれた

変わりに仕事の話ばかりになったけど俺としてはその方がたすかる

 

「あっそうだ伊西くん」

 

帰路につく俺の背を呼び止める

 

「未成年にお酒飲ませたらダメだからね」

 

「...飲ませませんよ」

 

そもそもアイツと酒のマッチアップは想像もしたくない

シラフであのハイテンションなのだからアルコールなんて入れた日には近所迷惑な大宴会が開かれることだろう

 

「一応注意しといただけ」

 

先輩はクスリと冗談っぽく笑うと「また会社でね」と言って帰っていった

 

俺も帰ろう

なんだかんだで遅い時間になってしまったのでお土産でも買って帰るかな

 

 

 

 

 

 

 

 

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