帝征のヒーローアカデミア   作:ハンバーグ男爵

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リハビリ兼ねて投稿

作者はヒロアカにわか、ハッキリ分かんだね。







プロローグのような何か
1 私が高校に上がるまで:前


「はぁ〜…」

 

 

薄暗い倉庫、錆び付いた鉄の匂いが鼻につく。窓から見える空はもう暗くて、雲に隠れた星がちらほら見え隠れしてる。腕時計を見ればもう夜の19時を回っていた。

今日はバイトも無い、此処からチャリンコ飛ばして帰って40分…風呂に入る時間も考えると落ち着けるのは20時前後…ヒーロー特番に間に合うかギリギリ…

 

「もうまぢムリ、帰る…」

 

「まちやが…れ…ッ!!」

 

視界の隅でピクリと影が動く。なんだよ、全員殴り倒して気絶させた筈なのにまだ生き残りが居たのか。

辛うじて立ち上がったそいつの腕が触手の様にギュルンと伸びて、私の腕に絡みつく。なんだこいつは、アレだけボコボコにされたのにまだ懲りないの?馬鹿なの?死ぬの?そのガッツを勉強なりスポーツなり別の所に使えないの?

 

「許可なく〝個性〟使うとかいーけないんだ。中学生相手に恥ずかしくないの?」

 

「五月蝿ェッ!!テメェはぶっ殺す!

今までやられた奴らの分までなァ!」

 

ぶっ殺す…?そんな安い言葉をいちいち言うもんじゃない、プ〇シュート兄貴に怒られろ。

私の足下にはぶちのめされて山のように積み上がった不良共の山。全員が同じ高校の服装で、かなり人数居たけど20から先は数えるの辞めたからわかんないや。街で私に因縁付けてきたコイツらが悪いんだよ。

 

「私の放課後を邪魔したアンタ達が悪いんでしょうが。今日は31で新作のアイス食べるつもりだったのに、もう閉まってるよ。乙女の放課後どうしてくれんの。」

 

「はっ!『女帝』が一丁前に乙女とか語るんじゃねェよッ!!」

 

 

…むかっ

 

 

絡みつかれた右腕を思いっ切り引くと間抜けな声を上げながらそいつが反動でこっちへ飛んで来た。合わせるように私も山から飛び出して、空中でラリアットをぶちかます。そのまま地面に叩き付けたら変な声を上げて大人しくなった。

 

「気にしてんだよそのあだ名…」

 

…へんじがない、ただのしかばねのようだ。

まあクレーターできる程強めに叩き付けたし、気を失ってるんだろう。生きてるんだからセーフセーフ。

 

「…ぶっ殺すと心の中で思ったなら、その時既に行動は終わってるんだよ。なんてね。」

 

軽く肩を回しながら、隅の方に避難させていた私の学生カバンを拾い倉庫の扉を蹴り開ける。個性によって固定されてたのか、ガッチガチに鎖で固められた鍵は蹴ったら開いた。

良かった、カバンの中身は無事だった。また教科書買い直すとかやってられん、まして明日提出する進路希望のプリントあるんだから尚更。

 

狭い道を通り、人通りの多い大通りへ抜けると、奇抜な格好をしたプロヒーロー達とパトカーが大騒ぎしながら私の居た古倉庫の方へ向かって行くのとすれ違った。

遅いわ!何もかも!もう終わったよ!被害者一名、私!外傷なしで正当防衛!以上!閉廷!解散!

…ヒーローが遅れてやって来るのは漫画の中だけでいい。事件は現場で起きているのだよ。

それにそこの赤い帽子のヒーロー、私が絡まれてる現場見てたろ。見て見ぬふりしてたの知ってるからな?後で追及されて「事件性があるとは思えなかった。」とか言っても通用しないからね?柄の悪い男子高校生10人に囲まれる女子中学生を見て「事件性がない」とか言ってる奴は眼科か脳外科に行った方がいい。と脳内で散々ダメ出ししておいて、落ち着いたのでヒーロー達を視界から外して自転車置いてたコンビニまで歩いく。

 

特番、13号の特集するって知ったのは今日の昼だから録画とか全くしてないのだ。時間が経てばネットで見れるが私はリアルタイムで見たい。ああそれと、あいつらの餌も買って帰らないと…

と、足速に通りを闊歩している私を唐突な着信音が襲う。

 

ピリリリリッピリリリリッ

 

げっ、この番号は…

 

「…へい。」

 

『ごきげんよう、帝。夕方ごろ貴女が辺須瓶(べすびん)高校の不良達に絡まれてるとウチの生徒から報告があったのだけど…』

 

「この電話は現在使われておりません、ピーッという発信音の後にメッセージ残して下さいさようなら。」

 

ピッ…

 

ふう、一件落着。さて、自転車置いたコンビニまで戻らないと…

 

 

 

ピリリリリッピリリリリッピリリリリッピリリリリッピリリリリッピリリリリッピリリリリッピリリリリッ

 

 

 

 

「………ハァイジョージィ。」

 

『一度叔父様の所へ来なさい。何があったか詳しく話して貰いますからね。』

 

「ハァイパイセン。」

 

才子先輩は怒らせると怖い(報復に容赦無く家の権限で圧力掛けてくる)ので、大人しくバイト先へ向かう事にしよう。足取りは死ぬ程重いけど…

 

これ、特番見れないなあ…とほほ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめは中国、光る子供が産まれた。

それから世界各地で「普通じゃない」人達が現れ始め、気付けば地球は〝個性〟と呼ばれる異能力を持った超人達で溢れかえっていた。それから世界中が大混乱になって、色々あって、ヒーローという『抑止力』得た世界は一時の平和を取り戻す。

ざっくり教科書に載ってる歴史を説明するとこんな感じ、外を歩けば異形型の個性を持った全身タングステンの巨人みたいなおじさんが笑顔で大根を売り捌いているし、千手観音みたいに手がいっぱい着いたおばちゃんが銀行で十人分の手続きをスラスラ処理してる。

 

 

超常が日常になった、そんな世の中。

 

 

 

 

 

私の名前は龍征帝(りゅうせいみかど)、15歳。腰まで伸びる輝くような金髪と、ルビーのように深く真っ赤な瞳がチャームポイント。そして中学3年生にして身長175センチという女子にあるまじき高身長とグンバツのスタイルを持ったモデル顔負けの美女である、自画自賛?五月蝿い。

特技は料理と裁縫、理由は乙女の嗜みだからと言われ色々こなす様にしてる。ヒーロー13号がお気に入り。危険な個性を人命救助に役立てているのがポイント高い。私がヒーローに憧れるキッカケになった人でもある。

 

…え?私に個性はあるのかって?

 

あるよ、個性。

 

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「…と、ここまで話しましたが、ちゃんと聞いてまして?帝。」

 

「お嬢が聖愛入学1年目にして全校生徒を纏めあげ、フリー〇並の恐怖政治敷いて教師と生徒を手玉に取ってる話っすよね分かります。」

 

「聞いていないのなら素直に言いなさい。」

 

私は今、パイセンに呼び出されてバイト先の喫茶店に居る。

私のいっこ上の先輩、名前は印照才子(いんてりさいこ)。IQ150、聖愛学園高等部に所属する天才お嬢様。個性は『IQ』、紅茶飲むとむっちゃ賢くなる。あと金持ち、印照財閥っていう大会社の一人娘。3歳の時発現したその個性で財閥を支えてきたんだとか。

私がバイト先にしてるこの喫茶店も、叔父が経営しているという先輩の勧めで斡旋された。

 

「てか全寮制の高校なのにわざわざこっちまで戻ってくるとか、お嬢も暇ですね。」

 

「あら、信じて我が家から送り出してはや3年間、毎日喧嘩ばかりする私の付き人を気にかけて何か問題があるのかしら?」

 

「向こうが勝手に絡んで来るんで私悪く無い。正当防衛正当防衛。」

 

「貴女のは過剰なのよ、ただでさえ貴女は個性で身体が強いのに。まあ、不良(クズ)達に同情はしませんけど。うふふふ…」

 

そう言う先輩はサドっぽい笑みを浮かべ、目は妖しく光ってる。これ、よからぬ事を考えている時の顔ね、テスト出るよ。

私と彼女の出会いの切っ掛けは6歳の時、印照財閥の経営する孤児院に私が流れ着いた。そんでたまたま視察に来ていた先輩が私に目を付け、印照家に引き取られたのが始まりだ。

引き取られた私は一般教養や勉強を教えて貰い、持つ個性が便利だったので先輩の護衛兼世話係に抜擢される事になり、私は義務教育そっちのけで6年間を先輩の護衛として過ごした。

 

「貴女も聖愛に進学すれば良かったのに。そうすれば高校卒業まで一緒に…んんッ、苦労は無かったはずだけど?」

 

「…何時までも印照家におんぶに抱っこじゃ嫌なんで。」

 

「それにしても都内最底辺の餓鬼道中学は流石にどうかと思うわ。悪評ばかりの中学校では貴女の高校進学にも影響が出るのではなくて?」

 

「餓鬼道勧めたのはお嬢のお父様っす。『才子のそばを離れるというのならせめて母校の治安維持に一役買ってくれ。』って言われて行きました。」

 

「あの男…私の付き人に勝手な事を吹き込んで…」

 

先輩から黒いオーラが出てる、怖い(迫真)。

後から聞いた話だが、先輩のお父様は餓鬼道の出身で、年々治安の悪化する母校を憂いて私を送り込んだそうだ。完っ全に保護者の私情で私の中学3年間を棒に振った訳だが、私も色々と学ぶ事も多かった為、後悔は無いですハイ。

問題なのはこの事実を娘に黙っていたご当主様だが、まあ大丈夫だろう。遠回しに骨を何本かやられるだけだ。人間には215本も骨がある、1本くらいなによ。

 

「才子ャン、帝チャン、お待たせ。

話のお供に大サービス、飲むかい?」

 

その時、私達の座ってるカウンター席の奥にある扉が開いて、バーテンダーの格好をした髭爺さんが静かに現れた。片手に持ったステンレスのお盆の上には、縁にレモンの輪切りがかかった綺麗な色の飲み物が2つ乗ってる。

 

「ありがとうございます、守屋叔父様。

お店は定休日なのに突然来てしまって申し訳ございません。」

 

「いーのいーの!可愛い従姉妹の頼みだからネー。ゆっくりしていきたまえ。」

 

そう言って店長はカウンターの奥へと戻って行った。

 

守屋ジェームズ、銀髪のオールバックで若作りした初老の爺さん。此処、喫茶店「オールドスパイダー」のマスターで、私の義父にあたる人物だ。イギリス3、日本1のクォーターで、エセ紳士。だいたいふざけてる。たまに黒い笑いを浮かべる事はあるものの、概ね良い人。私が印照家を離れるにあたり、中学1年の時から今まで3年間、此処の2階に住み込みでアルバイトをさせてもらってる。

 

なんとなくお察しの方もいると思うが、私に両親は居ない。孤児院育ちだ。いや、本当はいるらしいが、所謂『ヴィラン二世』というやつで、捨て子。

ヒーローに保護された時は人里離れた山奥で、無意識のうちに個性を発動させて山の木の実やらを集めさせ、生きながらえていたらしい。

 

「あ、そうそう帝チャン。店の扉の前でキミの個性達がお腹を空かせて待ってるみたいだヨ。」

 

扉から頭だけ出してちょろっとそう言った店長はまた部屋の奥へと消えていく。

…そう言えば忘れてました。

言われた通り店の扉を静かに開けると、4匹の()()が捨てられた子犬みたいな瞳で私を見て「おすわり」していた。

取り敢えず外は目立つから入ってきなさい。

 

 

 

私の個性の一部、命令通りに動く小型の翼竜を4匹侍らせる事ができる。

 

 

『帝征龍』

 

 

それが私の個性の名前だ。翼竜を操り、自身も巨龍に変身できる。尋常じゃない熱さの火も吐ける。更に更に、人間の状態でも身体は龍と同じ怪力で、皮膚も甲殻と同じ強度。

どれくらい頑丈か?経験則から言わせてもらうと、ライフルの弾丸を頭に受けて首が若干傾く程度。素手でRPGの弾頭を掴んで爆発させても火傷ひとつ負わない火炎耐性。

…どんな人間兵器だ。

この世に存在しない「龍」の力を宿す、私の目指すものとは正反対の強個性。

因みに個性に「帝征龍」と名付けたのは才子先輩だ、巨龍になった私を見た彼女が目を輝かせながら名付けた。

 

「ほれ、今日は鯖缶だぞー食え食えー。」

 

此処に来る前買った鯖缶を4つ翼竜達に放り投げると、器用に牙を使ってそれをこじ開けガツガツと食べ始めた。余程腹が減っていたらしい。

 

「…帝、志望校は雄英に決まり?」

 

「私一言も進路の話してない。」

 

「簡単に予想できるわ。

貴女の望みを叶える為には、雄英に入学するのが一番手っ取り早い手段だもの。それに此処から近い。貴女の事だから、『今までセーラー服ばかりだったから、ブレザーも着てみたいなー』なんて考えているでしょう?」

 

天才に心の内がモロバレである。

 

「何年一緒に居たと思ってるの。

…出会った頃、お人形の様だった貴女が初めて自分から言い出した『我儘』、先輩として応援しているわ。」

 

「…どうも。」

 

「それに、入学した貴女が個性使用の仮免許を取ってくれれば、いちいち面倒な書類を仕事の度に書かなくて済むし。」

 

 

 

「帝、出会った時からずっと、貴女は私だけのヒーローよ。」

 

 

 

頑張りなさい。と締めくくり、先輩はカクテルを口に含む。

一見オシャレなカクテルだが中身はただのオレンジ風味のカルピスだ。私達未成年だし、グラスで出すなよ紛らわしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

進路希望の紙には、第1候補に「雄英高校」と書いて提出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、化け物()がヒーローになるまでのお話。

 

たぶんきっと、そう。







他作品様と展開が被るが許せトキ、どうせにわか作者の気まぐれだ!

アニメオリキャラ
印照才子:個性『IQ』
紅茶を飲んで目を閉じてる間、思考が加速する。彼女の素のIQは150、未来予知にも似た行動予測で相手を追い詰める知能派個性。紅茶のブランドによって能力に差が出るらしい。

当作品オリキャラ
守屋ジェームズ:個性無し?
印照家経営指南役、才子の叔父に当たる。戸籍上は帝の父親、苗字がバラバラ?気にするな!
謎の多いあらうんどふぃふてぃーん。某裏社会の帝王とはなんの関係もない。





もう1本投稿して原作開始まで行くよ

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