帝征のヒーローアカデミア   作:ハンバーグ男爵

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最近ワザップジョルノ見てゲラゲラ笑ってる(今更)






19 決勝戦、その前に

体育祭本戦準決勝、帝と轟の大激突にスタジアムは騒然となり、その余波で破壊された会場が今、セメントス先生の手によって修復されている。

 

2人はあの後直接リカバリーガールの所へ向かったらしい。轟は気絶、帝は個性の反動で右手がズタズタになったからだ。

 

 

「炎と氷、相反する2つのチカラが衝突し合い生まれた光景…か。ここまで2人の実力を見せつけられるとはな。」

 

重苦しい雰囲気でそう言う常闇の言葉に皆も黙って頷く。

帝の落とした火球で所々ドロドロに溶けたリングや焼け焦げて真っ黒になった芝生、まるで戦争でも起きた後かのような破壊痕が2人の戦闘の激しさを物語っている。

先生達が急ピッチで修復しているから、私達はそれが終わるまで小休憩と相澤先生からお達しがあった。なのでウチ達は帝が持ってきてくれた屋台ご飯をつまみながらこうしてさっきの激闘の感想を皆で述べ合っていた。

 

「炎と熱の操作…個性の幅を広げるってああいう事なんだな。

俺の電気もどーにか応用利かせらんねえかなあ。」

 

ウェイ状態だった上鳴は漸く立ち直り、柄にも無く真面目に喋ってる。それにヤオモモも頷きながら今回の戦闘について語り始めた。

…片手にイカ焼きの入ったパックを持ちながら。

 

「まさに圧巻の一言でしたわ。帝さんの熟練された炎と熱の操作、それに匹敵する轟さんの氷炎…正直、同じ推薦組なのに彼とここまで差を付けられてしまうとは思いませんでした。」

 

「2人は確実に俺達の中でも頭一つ抜きん出ていると今回の戦闘で確信した。悔しいが…こればかりは認めざるを得ない。」

 

「うん…二人とも凄かった。『勝ちたい』って気持ちがこれでもかって伝わってきたよ。」

 

「…チィッ!!」

 

「あ、おいっ!」

 

派手な舌打ちが聞こえて、切島が止めるのもお構い無しにドスドスと爆豪は去っていく。

 

「帝ちゃん手ぇ大丈夫かなぁ…戻ってく時チラッと見えたけど、酷い事になってたし…」

 

「うん…ちょっと様子見に行かない?」

 

「良いね耳郎ちゃん!行こ行こ!」

 

「全員で行くと迷惑だろう、二人ともあの激戦を終えた後だ。」

 

障子の言うことはご尤もなので、選抜してウチと透、ヤオモモ、三奈の4人で帝の所へ向かう事にした。他の連中はもうすぐ始まるB組の子VS爆豪の戦いを見るらしい。

取り敢えずヤオモモ、手に持ってるイカ焼き早く食べちゃいな。

 

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

「えーっと、確かリカバリーガールの出張保健室はこっちで合ってたハズ…」

 

「あ、あれじゃない?」

 

「ご丁寧に看板まで作ってありますのね…」

 

三奈の指さした先にはやたらコミカルな文字ででかでかと書かれた看板が。どうやら此処で合ってるらしい。

扉をノックしようとしたその時…

 

 

『ぎゃあああああああああッ!!』

 

 

「なっ!?悲鳴!?」

 

「しかも今の声は…」

 

「帝さんですわ!」

 

たしかに今帝の悲鳴が聞こえた!

いつも飄々として大声なんて滅多に出さないアイツがこんな悲鳴上げるなんて…手の傷は思ったより酷い事になっているのかも知れない!

 

ノックするのも忘れて慌てて扉を開ける。

 

「どうしたの帝ッ!!…って、何コレ。」

 

 

 

 

 

「ひいいいい痛い痛い痛い〜…」

 

「我慢しな!こんなに深い傷、個性で治しても跡が残っちまうよ!」

 

「だからってそんな強く消毒液押し付け無くてててててててててッ!?しみるしみほぉぉぉぉぉぉ…ッ!!」

 

なんか凄い表情で悶える帝と、手の傷にグリグリと消毒液の染み込んだガーゼを押し付けるリカバリーガール。そして変な声を上げる帝を不思議そうに見つめる轟…

 

カオスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く!派手にやっちまったね、アンタは女の手をなんだと思っているんだい!

掌の水分か殆ど無くなって、あのまま個性を使い続ければ手がミイラみたいになる所だよ?」

 

「ええ…怖っ。」

 

「「「「なんで他人事!?」」」」

 

出張保健室に入って数分、落ち着いた私達は帝と轟の容態をリカバリーガールから伝えられて一安心。

重症に見えた帝の手も、本人の体力が幸いしてリカバリーガールの個性で十分治癒が可能らしい。

轟もここに運ばれた後直ぐ起きて、今は意識もハッキリしてる。

 

「いやあ危なかったね、ちょっと調子に乗り過ぎちゃった☆」

 

「あのねぇ…」

 

さっきまでの大激闘が嘘のようにヘラヘラ笑う帝。殴りたいこの笑顔…じゃなくて!

ホント無事で良かったよ…

 

「いつも通りの帝さんで安心しましたわ…

改めて決勝進出、おめでとうございます。」

 

「ありがと百。

あー、それなんだけどさ。私失格になるかも。」

 

「「「「…はあ?」」」」

 

し、失格って…なんで!?

 

「ホラ最後の爆発でさあ、翼竜で轟を守らせたじゃん。アレ一応ルール違反だし…」

 

ああそうだった。あの戦いの最後、帝の放った火球から轟を守ったのはガナッシュ達だ。相澤先生から使用禁止を伝えられていたのにあの時咄嗟に使ったから、ルールに抵触してしまうってことか。

 

「すまねえ龍征、俺を庇ったから…」

 

「さっきから謝ってばっかかよ轟、私がやりたくてやったんだから気にすんなって。

火傷跡がこれ以上増えなくて良かったじゃんか。」

 

「……そう、なのか?」

 

「そーそー、そういう事にしとけモンスターボールくん。」

 

「モンスターボール…」

 

轟はなんでちょっと嬉しそうなの?確実に馬鹿にされてるよね?

 

てゆーか轟ってこんな奴だったっけ?もっとこう…優等生オーラバリバリで近寄り難い雰囲気だった気がするんだけど。態度がかなり柔らかくなったっていうかなんというか…

そのまま仲良くお喋りしていると、「そんなに元気が有るなら早く観戦席に戻りな!」とリカバリーガールから追い出されてしまった。轟はもう少し安静にしてなきゃ行けないらしい。

 

「じゃねー轟、しっかり休みな。」

 

「ああ。

…さっきの話、考えといてくれ。」

 

「はいはーい。」

 

去り際、帝と轟がそんなやり取りをしていた。

ちょっ、何あの天然王子様スマイル。轟ってあんな奴だったっけ…2人の間に一体何が!?

 

 

 

 

 

 

「あ…ウチちょっとお手洗い行くから先に言ってて。」

 

「じゃー先に行ってるねー。」

 

「漏らすなよー。」

 

「漏らすかッ!」

 

さっきの試合、帝の撒き散らす炎でスタジアムが暑すぎて思わずいっぱいスポドリ飲んじゃった弊害が…

突然の尿意に私は足早にお手洗いの方へ方向転換した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

耳郎達がやってくる少し前

 

 

 

「………」

 

「………」

 

き、気まずい…

リカバリーガールことリカ婆は包帯の替えが無いと言って保健室まで取りに行ったばかり、私と轟は隣合うベッドに寝かされていた。

先に気絶した轟の方から処置が行われ、なんとか意識も戻り一安心。と思ったら目が覚めた途端私の方をじっと見ててなんか怖いんですけど!?

 

「……………」

 

「…なんだよ轟、焼き饅頭にされかけたの根に持ってる?」

 

「…違う。」

 

短い返事。ちょっとだけ考え込むように下を向いたり顔を戻したり、今までとは明らかに態度が違う。前まではもっとこう…雰囲気がピリピリしてた。でも今はそんな気配も無くて、オロオロしてると言うか…言葉に困ってるというか…

 

「その…悪かった。

戦闘訓練の時からずっと、龍征の炎を見るとクソ親父を思い出してイライラして、自分でも気付かない内にきつく当たってたかも知れない。」

 

「なんだ急に素直になったな。

変な因縁付けられるのには慣れてるからへーきへーき。」

 

「……そう…か。」

 

そんな事さして気にもならないよ。難癖付けられて睨まれるなんて、中学時代じゃ割と日常茶飯事だったし?寧ろ雄英は平和過ぎて退屈…おっと違う違う、これがフツーの学校生活なのよね。

 

やだ…私の学校生活の基準、ブレ過ぎ…?

 

「それでさ、轟はどうなの?」

 

「…どんなヒーローになりたいのかは分からねえ。

でも俺は、お前と戦って、()()()()()()()()()()()()()()()()。今はそれだけで充分だ。

姉さんや緑谷が背中を押してくれたんだ。

……望まれなくたって救い出す。」

 

「そか、良かったね。

きっとお母さんも笑ってくれるよ。」

 

「……!」

 

「わり、昼休みに緑谷と話してたの聞いちゃった。」

 

「そうか…親父にばかり囚われて気付かねえ内に俺は…皆に…助けられてたんだな…」

 

「お節介もヒーローの仕事でしょ?」

 

「ッ…ありがとう。」

 

自分の左手を握り締め、涙声でそう呟く轟は憑き物が取れたみたいに轟は静かに笑ってる。よかったよかった。

 

 

「なあ、龍征。頼みがある。」

 

「ん〜?」

 

「体育祭が終わって落ち着いたら、炎の制御を教えてくれねえか。」

 

「別にいいけど、私とあんたじゃ勝手が違うから、あんまりアテにしないでよ?」

 

「それでいい、アイツに教わるよりよっぽどな。」

 

「素直じゃないなあ…まあいいか。」

 

 

 

 

もう轟は苦しそうな顔してないし、これでいい。

 

轟を殺し掛けたとき、殺してしまうかもしれないって()()()()

咄嗟に駄目って判断出来た。大丈夫。

 

…私はまだ大丈夫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、貴女は…」

 

「ど…どうも…」

 

お手洗いを済ませトイレから出てきた時、丁度目が合ってしまったのは昼休みに百と話していた帝の家族の人だった。

あいつは確か「先輩」って言ってたから、私より年上なんだっけ?

 

「八百万のお嬢様と一緒にいた帝のお友達よね?お名前は…」

 

「耳郎…耳郎響香です。」

 

「印照才子よ、宜しくね。」

 

モノクルを掛けた綺麗なお姉さん、印照才子さんは私の1つ上でお嬢様学校で有名な聖愛学園に通っているらしい。

 

「少しお時間宜しくて?」

 

「あ、はい。大丈夫です。」

 

「ふふ…そんな畏まらなくていいのよ。

お嬢様学校でもオフの時くらい普通に喋りたいわ。

向こうに休憩スペースがあるから其方で、どう?」

 

誘われるまま、ウチと印照先輩は休憩スペースへと向かう。

 

 

そう広くないスペースに自販機2台と長椅子があるだけの簡素なエリアで、ウチと印照先輩は隣り合わせに腰掛けた。

 

「折角だし飲み物でも買いましょう。カフェオレで良いかしら?」

 

「ありがとうございます。」

 

印照先輩からペットボトルのカフェオレを受け取り口に含む。先輩も後から買ったお茶をごくごくとお上品に飲み始めた。

…気まずい沈黙、こういう時何話せば良いんだろう。というか向こうから話がしたいって言ってた割には殆ど喋ってない。どうしてウチを誘ったのか、これが分からない。

 

「帝とはいつお友達に?」

 

「えっと…最初に会ったのは入試の時です。

彼女とは入学初日に仲良くなって、戦闘訓練でも同じペアを組んで戦いました。」

 

「そう…帝が何か失礼な事していない?

あの子ったらズボラで、特に羞恥心とかその辺りが一般とは少しズレているから…」

 

「あ〜…初対面は裸でしたね。」

 

「やっぱり。あれ程下着は伸縮性に優れた物を使いなさいと言っておいたのに…」

 

それあんまり意味無いんじゃないかなあ…

その後も聞かれたのは取り留めのない質問ばかりだった。

最近の様子とか、迷惑掛けてないかとか、帝の日常に関する事はなんでも。2人で密かにやってる動画配信の事は流石に恥ずかしくて話せなかったけど…

一通り話し終えると、印照先輩は楽しそうに微笑んで、またぐいっとお茶を喉に流し込む。

 

「良かった、楽しそうにやってるみたいね。

……あの子は本当によく笑う様になったわ。

昔は表情筋が死んでるんじゃないかってくらいピクリとも笑わなかったし、感情を表に出さなくて…まるでお人形みたいだったのよ。」

 

あの帝が?嘘でしょ?

面倒臭がりでいつもヘラヘラしてる癖にやらなきゃいけない事はちゃっかり終わらせてて、たまによく分からない専門用語喋りながら遊ぶ事に全力を出すアイツが?

 

「信じてない?

まあ、外からの刺激が1番効果的だったという事かしら。私達が少し過保護になり過ぎていたわ。」

 

「過保護…ですか?」

 

「…帝はね、孤児なの。

幼い頃私の家が経営する孤児院に送られて、それを見つけた私が引き取った。」

 

「え…」

 

帝が…孤児…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BOMB!!

 

BOMB!!

 

BOMB!!

 

 

『爆破!爆破!大爆破祭り!

だがしかぁし!それを以て余りある程荒れ狂う蔦の乱舞!

始まって早々猛攻を掛ける塩崎に爆豪タジタジかァー!?』

 

観客席に戻ったと思ったらプレゼントマイク先生の喧しい実況が耳に突き刺さった。

準決勝2回戦はもう始まっちゃってたか、どうやら茨ちゃんが優勢らしい。

 

リング全体に張り巡らせ、地面から縦に伸びる蔓と横から爆豪に向けて伸びる蔓。それぞれが絡み合い、まるであやとりみたいに全方位からどんどん爆豪を追い詰めていく。

 

「クソがァ!」

 

BOMB!!

 

腕に巻きついた三本の蔓を纏めて爆破で焼き払い、茨ちゃんへの接近を試みる爆豪だけど、三奈戦同様に既に蔓の包囲網は完成している様子。狭いリングの中、ジリジリと場外へ相手を押し出す消耗戦。場外有りの一対一デスマッチだからこそ活きる戦法ね。

 

「無駄です…!」

 

焼き切れた蔓の横からまた別の蔓が這い出て来て、爆豪を捕らえようと襲いかかる。

対する爆豪ができる抵抗は常に死角が出来ないように立ち回って、持ち前の反射神経をフル稼働させて逃げ続ける、現状それくらいだ。エリアの優位は完全に茨ちゃんにある。

 

「爆破で速度を維持しながら方向転換…うわ、あんな速度で直角に曲がるのか。よく気ぃ失わないな爆豪。」

 

「戦法は私がやったのと同じっぽいけど、速さがダンチだよ。う〜…狡いな爆破ターボ!」

 

「地の利は完全に塩崎さんにある、けど…」

 

「緑谷、爆豪の最大火力ってどれくらい?」

 

「ぅえッ!?龍征さん!?ええと…確証は無いけど、麗日さん戦で見せたのが今まで見た中で1番大きかったよ。」

 

お茶子の隕石群を吹き飛ばしたアレか…あの時は真上に向けて撃ったから分かんないけど、リングを纏めて吹き飛ばす位の威力あるんだろうなぁ。要注意ね。

 

「緑谷ってさあ、確かヒーローの特徴纏めたノート書いてたよね。観戦しながらちょくちょく書いてるの見たし。」

 

「うん、そうだけど…」

 

「爆豪のある?あったら見せて、参考にするから。」

 

「ででででも所詮僕なんかが書いた情報を人様に見せるのはちょっと気が引けるっていうかなんて言うかその…」

 

ああもう面倒臭い、早く貸してよ。

キョドる緑谷の胸ぐらをぐいっと引き寄せて殆どゼロ距離で詰め寄った。鼻先が触れ合う寸前まで近寄って優しく緑谷にお願いするのだ。

 

「もっと自信持ちなよ緑谷。あんたがその危ない個性を使いこなす為に人一倍努力してるのは知ってるし、分析力があるのも前にお茶子から聞いたよ。

だから頼りにしてる、使える物は全部使いたいから。貸して?」

 

「……はひゃい。」

 

やっと観念したのか、なんか赤くなって目がぐるぐるしてる緑谷は足下の鞄から古ぼけたノートを取り出して渡してきた。随分使い古されてる、中も相当書き込んであるし、やっぱり緑谷の分析力凄いじゃん。もっと胸張って堂々とすればいいのに。

 

「……スゲー迫力だったぞ今の。」

 

「やっぱ胸ぐら掴むの堂に入ってるわ。」

 

「つーかぶっちゃけ傍から見たら只のカツアg「それ以上は駄目よ上鳴ちゃん」もがっ!?梅雨ちゃん!舌がッ!ぐるじいッ!!」

 

おうなんだその目はキサマら、ちょっとお願いしたじゃんかあ…どうして私が緑谷からノートカツアゲしたみたいな雰囲気になってんの。もう知らない!

 

気を取り直して爆豪のページを探す…あった。

 

爆豪の個性は手のひらから出る汗が起爆剤になって爆発を起こす。発汗量によって汗の量も変わるから、運動して代謝が良くなればなるほど汗も増えて威力も上がるスロースターターか。

今はコスチュームとか着てないからサポートギミックとかはどうでも良いとして、汗を掻いて強くなるなら私の熱と炎じゃアイツの勢いに拍車を掛けちゃうな。対策考えないと…

パラパラとページを捲ると、なんと私の分析も記載されてる。ちょっと気になる、読んじゃお(好奇心)。

 

 

 

ペラ…

 

ペラ…

 

ペラ…

 

 

 

「……ん、ありがと緑谷。かなーり参考になった。」

 

「そ、それはよか「でもぉ…」ほわっ!?

龍征さんまた!近い近い近い!」

 

「もっと自信持ちな。個性もだけど、緑谷には良いところいっぱいあるんだから。お茶子や私が証人だし。しゃんと胸張って堂々とする!ホラ!」

 

「オヴッ!?背中痛ぁ!!」

 

「デク君の背中がぁ!?」

 

ちょっと強く叩きすぎたかな?背中を抑えながらゲッホゲホむせる緑谷にノートを返して百の隣へ戻った。

 

自信持ちな緑谷、少なくとも私のページに書いてあった予想と考察は大体正しいからさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔なんだよクソ蔓がァ!」

 

BOMB!! BOMB!! BOMB!!

 

障害物となる蔓を爆破で焼き尽くし、リング内を駆け回る爆豪。そんな彼を冷めた目で見ながら、茨の蔓を操作し塩崎は確実に追い詰めていく。

 

「本当に乱暴な方…何故そこまで敵を作りたがるのか、私には理解が及びません。」

 

「ああ?何か言ったかよB組のクソモブ。

聞こえねえ…なッ!!」

 

BOMB!!

 

鬱陶しそうにまとわりついてくる蔓を爆破で再びなぎ払い、今度は反対側へ飛ぶ爆豪。だがしかし、そこにも既に張り巡らされた蔓が待ち構えている。

 

「うおっ!?」

 

「…掛かりましたね。」

 

爆豪が爆破で加速する一瞬前、足が地面と接触した途端に伸びた蔓があっという間に両手首両足首を絡め取り、磔された爆豪。会場からどよめきが上がり、実況が叫ぶ。

 

『ついに捕まったァ〜ッ!爆豪万事休す!』

 

「これで詰み、降参なさい。」

 

リングの中心で手足を拘束され、為す術なく宙吊りにされる爆豪は絶体絶命。だというのに、不敵にも彼の口元はつり上がっていた。

 

「何が可笑しいのです。」

 

「ンでもねェ、もう蔓の速度は分かった。」

 

「は…?何を言って『BOMB!!』きゃっ!?」

 

塩崎が言葉を紡ぐ暇もなく爆豪の両手が光ったその刹那、捕らえていた両手の蔓が爆散した。爆豪は落下中に残る左脚に絡み付く蔓爆破で引き千切る。そしてあろう事か、そのまま両手を真横に向けて爆発を起こし加速した。

 

『何ぃ!?』

 

たまらず実況が叫ぶ。

右脚に地面から伸びた蔓が絡み付いたままの爆豪は真横に加速した勢いでリングの外周をまるで弧を描く様に回転しながら塩崎の背後まで回り込み、反対側に爆破を掛ける事で減速、その過程で残る右脚の蔓を切除した。

予想外の動きに慌てて振り向いた塩崎が蔓を向かわせるも、それより早く近付いた爆豪が塩崎の目前まで迫り右手に溜めた黄色い炎を解き放つ。

 

閃光手榴弾(スタングレネード)…ッ!!」

 

威力ではなく演出に特化した爆破。

眩い光が塩崎の目の前で炸裂し、視界がゼロになった塩崎を即座に後ろ手に組み伏せて、完全にマウントを取った。

 

「テメーの個性は速いし強い、だが速度出す為には集中して俺の方を見てなきゃいけねえんだろ?バレてんだよクソが。

だから予想外の動きには対応が遅れンだ、こんなふうにな。

そら、詰みだ。降参しな。」

 

「くっ…」

 

塩崎の個性は捕縛する対象を視界に捉えていなければいけない事、さもなくば茨の蔓は満足な速度を出せないらしい。

 

塩崎がもがこうと試みるが、うつ伏せに後ろ手に拘束され、自力で抜けるのは不可能。更に残る爆豪の左手には赤い炎が灯っている、威嚇のつもりなのだろう。

 

だが

 

「……まだ…です…」

 

「あ?」

 

「まだっ…!!」

 

突如として、組み伏せられたはずの塩崎の身体が後ろに引き摺られた。

勢いに流され手を解かれた爆豪は慌てて引き摺られて行った先を睨む。

 

「地面に伸ばした蔓で自分の脚を引っ張りやがった!往生際の悪ィ事を…」

 

「負けない…私は勝って……御姉様と…っ!」

 

リング内に張り巡らせた蔓を1箇所に収束させる。塩崎の目の前の地面がモコリと盛り上がり、大量に組み合わされた蔓の束が塊となって猛スピードで爆豪に迫る。

それを爆豪は…

 

「うっっっっおらぁアアアアア''ッ!!」

 

BOMB!!

 

右手に溜めていた特大の爆発、麗日戦で見せたものと同規模の大爆発によって木っ端微塵に打ち砕いた。

 

「そ、そん…な…」

 

「相性がよォ、悪ィわ。

テメーの蔓はよく燃えるぜ、何本束になろうが俺にゃ届かねえよ()()()()。」

 

「ああ…ごめんなさい……御姉様…」

 

恐らく今のが塩崎の最後の攻撃だったのだろう、気力体力共に限界に達した彼女はそのままへたりこみ気絶してしまった。

ミッドナイトが駆け寄り、高らかに告げる。

 

『塩崎さん気絶!爆豪君の勝利!』

 

スタジアムが怒号の様な歓声に包まれる中、リングの爆豪は先程の大爆破で左手が痛むのも気にせず観客席のただ一点を睨み付けていた。

 

(さァ決勝だ、全力でテメーを叩き潰す…!そんでもって俺が一位だッ!!)

 

 

爆豪と塩崎の戦闘後程なくして、解説の相澤から補足が入る。

 

『教員及びヒーロー公安委員会で協議した結果、龍征帝の決勝進出を認める。

もともと翼竜禁止は俺とアイツとの口約束だったしな。

よって決勝は龍征、爆豪の一騎打ちとなる。以上。』

 

『つぅーワケで、良かったなァメディア連中!最後の撮れ高が残ってるぜェ!

決戦はセメントスがリングを修復する15分後にスタートだァ!それまで小休憩宜しくゥ!』

 

『やれやれ、今年は忙しいですね…』

 

 

 

 

決勝戦のカードが、決定した。









おわじ

爆豪戦は2話編成で制作中よー
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