帝征のヒーローアカデミア   作:ハンバーグ男爵

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ストーリー改変、オリジナル解釈あるから注意






20 龍帝凱旋

気に入らねえ

 

1番最初は入試の直後だった。

実技試験が終わり、各々が帰り支度をしていた時の事。

 

『おい聞いたか、Hブロックの試験会場。』

 

『餓鬼道の生徒が受験してたんだろ?コエーよな、同じ会場じゃなくて良かったよ。』

 

『なんでも開始早々空飛ぶドラゴンで他の受験者巻き込みながら仮想ヴィランを吹っ飛ばしてたらしいぞ。』

 

『喧嘩は負け無し、3つ年上の学年ですら舎弟に押さえ付けているらしい…』

 

『前にヤクザらしき連中とつるんでる所を見た奴もいるってよ。』

 

『ヤクザ…?なんだっけそれ。』

 

『ヴィランの生まれる前からあった悪人の組織だよ、殆どオールマイトやヒーロー達に徹底的に潰されて、今じゃ天然記念物だ。』

 

『数多の不良達の頂点、餓鬼道の女帝だっけか。そんなおっかない異名が隣町まで広がってんだ、なんで雄英なんて受けてんだよ…こえーこえー。』

 

耳障りなモブ共の話し声が聞こえる中、気になったのは『餓鬼道の女帝』っつーワードだ。

 

餓鬼道中学校の事は昔から知ってる。全国でも有数の不良の溜まり場、この近辺に勤めるセンコーはよく『悪い事する奴は餓鬼道へ転入させるぞ』なんて冗談半分で叱り付けたりするほど有名な中学校。

毎年毎年、不良達の暴行騒ぎが後を絶たなかったが、俺が中学校に上がったタイミングで急に暴行事件は鳴りを潜めた。

過去に1度だけ、気になった俺はセンコーに興味本位で聞いてみた事がある。俺が職員室に来るなんて滅多な事は無ェから、目をパチクリさせながらソイツはこう答えたんだ。

 

『餓鬼道の不良達を纏める生徒会長が現れたんだ。その子のおかげで暴行騒ぎもなくなって、一安心だよ。』

 

と。

 

不良っつっても個性持て余した連中だ。中には危険な個性持ちだって居るかもしれねえ、そいつらを纏め上げ、力で押さえ付ける生徒会長…

俺だってそんな木っ端モブ共なんぞ余裕で全員ぶっ殺せる確信があるが、聞けばそいつは女だとよ。

 

不良達を力で押さえ付け、餓鬼道の頂点に君臨するソイツはいつしか『女帝』と呼ばれるようになったらしい。

 

 

 

気に入らねえ

 

 

 

それから時は過ぎ、雄英に入学して数日、クラスの女共が話しているのが聞こえたんだ。

 

龍征帝が餓鬼道出身で、しかも生徒会長だったと。

 

点が線で結ばれた。この女が、龍征帝が、不良達を締め上げた餓鬼道の女帝なんだ。

普段はダラッダラしてて毛ほどにも見せねえが、戦闘訓練の時やUSJの時、アイツの隠してる実力が見て取れる。場慣れした態度や無駄の無ェ動き、少なくとも真っ当に生きてきたんじゃ得られねえ『経験』をアイツは積んでやがる。

そいつを使ってUSJじゃ俺をたすっ…助けられてなんか無ェよクソがッ!!(BOMB!!)

 

 

極めつけは開会式前の控え室だ!

アイツの出す異様な雰囲気に呑まれた。

あの女の言葉に僅かながらもビビっちまったんだ!この俺が!たかが女1人如きに!

 

気に入らねえ…気に入らねえんだよ…ッ!!

 

俺が1番強ェ、俺が最強だ。雄英に入学して、こっから成り上がるって誓ったんだ!

勝ってやるさ、本気の龍征帝を叩きのめして俺の方が上だって証明する…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『レディース・エェンド・ジェントルメェン!

決勝の舞台は整った!

皆ちゃんと水分補給したかァ?購買か露店でアクエリ買い込んどかないと、ここから先は熱くて熱くて燃えちゃうぜェーッ!!』

 

『テンション上がりすぎだろ…』

 

『先ずはコイツだ!

底は一体何処にある!?紅蓮の女番長!A組、龍征帝ォ!』

 

「また妙ちくりんな渾名が…」

 

『そんでもってェ…

対するは!凄まじいヒールっぷり!

我が道を征くボンバー野郎!A組、爆豪勝己ィ!』

 

「……」

 

 

リングに向かい合う私と爆豪。

獰猛な目付き…私的にはちょっと懐かしい感じがする。

自分が一番だと信じて疑わない、唯我独尊を征く奴がする表情。餓鬼道に居たのは周りから認められず拗れた連中が大半を占めてたけど、爆豪は少し違うな。

 

認められ過ぎて、自分を否定する人間が周りに誰も居なかったんだろう。本人の実力も相まって、周りに担ぎ上げられながら生きてきた人種だ。嗜める人が居ない故に膨れ上がった自尊心が高過ぎる上昇志向の原因…かな。

それがあの緑谷と幼馴染とか…もしかして緑谷があそこまで卑屈な原因って爆豪のせいなんじゃね?なんて考えたけど、試合と関係ないから今は置いておこう。

 

「目ぇえらい事になってるよ爆豪、血管切れるぞ?」

 

「……っせぇ!

おいクソ金髪。テメー、翼竜使え。」

 

「はい?」

 

「本気のテメーに勝たなきゃ意味無ェんだ。良いからさっさと呼べよ…!」

 

「なんて言ってるけど、どうなんですかミッドナイト先生。」

 

「青い…!青春ねッ!!」

 

答えになっとらんよ?

悶え終わった主審が相澤先生に問い合せたところ、無事に許可は降りたらしい。決勝だし、最後くらい翼竜達を使ってもいいんじゃない?

 

『龍征、翼竜使えるようになったからってサボるんじゃねえぞ。』

 

「はいはーい。」

 

実況席に向かってひらひらと手を振っておいて、翼竜達を呼び寄せる。

 

飛び出した4つの影が私の隣に舞い降りて翼を羽ばたかせながら浮いている。ガナッシュ、ガトー、ブラウニー、ザッハトルテの4匹は今まで燻ってたぶんやる気満々らしい。

相澤先生に餌付けされやがって…

 

翼竜達の突然の登場に、会場からはどよめきが上がってた。

 

「すげえ、何だアレ?」

 

「見た事ない生き物だわ。」

 

『龍征帝の個性で従える翼竜達だ。

決勝トーナメントは一対一というルール、本来なら今まで通り1人で戦ってもらう筈だったんだが、対戦相手きっての希望で4匹の参加を認める。』

 

『…つーわけよォ!エンターテインメントしてんな運営!』

 

 

「爆豪、これで満足した?」

 

「ハナっから使えクソ金髪。」

 

「お前ほんと可愛げないよね…」

 

既に両手からボンボン火花を散らして威嚇を繰り返す爆豪、こうなったらもう止まらない。

 

 

『それでは決勝戦!

レディー…スタァートッ!!』

 

 

 

今最後のゴングが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝の口の端から焔が漏れた。

翼竜達は大きく翼を翻し、四方から一斉に爆豪を襲う。

決勝トーナメントは一対一のガチバトル。リングがあり、ルールがあるならそれに則った勝ち方があるというもの。帝の目論見としては、『四方八方から絶えず翼竜に襲わせて、外に放り出せばいい』程度に考えていた。

 

「先ずは小手調べ…」

 

地面を這わせるように火炎放射、同時に翼竜達が一斉に爆豪を強襲する。

爆豪は波打つ炎を右手の爆破で打ち払い、更に爆風で上に飛んだ。

 

「ッ!!空飛ぶ翼竜相手に空中戦とか、どんだけ自信過剰よ!」

 

「っせェ!ぶっ殺ォスッ!!」

 

両手で角度と威力を調節しながら追撃をかける翼竜を器用に躱し、帝の前まで接近。そのまま着地し襟を掴もうと手を伸ばすが…

 

「チィッ!…がぁっ!?」

 

それより先に帝の右手が迫り、逆に引き寄せられた爆豪はヘッドバットを食らって吹っ飛んだ。

 

『爆豪吹っ飛ばされたァ〜ッ!

つかなんだ今の高速戦闘!?開始早々ぶっ飛んだ爆豪がカウンター食らったのか!?』

 

『速攻を読まれたか、爆豪。』

 

「ぐっ…ソがッ!!」

 

頭に激痛を受けてふらつきながらも顔を上げた爆豪に波打つ炎が迫り、咄嗟に爆風で横に飛ぶ。

 

「行け。」

 

横に逃れた爆豪に追い討ちを掛けるように低空を飛行する翼竜の1匹、ガトーが爪で爆豪の肩を掴んだ。

 

「だぁ!?離せクソ!」

 

「翼竜を解禁させたんだからこうなる事くらい予想できるっしょ。ばいばーい。」

 

ひらひら手を振る帝。

ガトーがいっそう大きく羽ばたき、爆豪を持ち上げる。そのまま場外へ放り出すつもりだ。

 

『爆豪、翼竜に掴まれたァ!このまま終わっちまうぞ!?

つーか今まで禁止されてた理由分かった!空飛ぶファンネル4つも持ってるとか反則級だコレ!』

 

「なんなんだあの個性は…」

 

「意思疎通が可能なドラゴン、上手く調教すれば遭難者の発見とかに役立てるか…?」

 

「本人の実力に加えあの翼竜、凄い強個性じゃないか。将来が楽しみだ。」

 

などとギャラリーがざわめく中、ぽーんと場外へ放り出された爆豪、しかし空中で起こした爆破の反動でリングへと舞い戻る。

 

「ンなもんで終わるかよクソが…!!」

 

「残念、終わってくれれば怪我せずに済んだのに。」

 

「ぬかせ!」

 

再び帝の懐へ飛び込んだ爆豪は近接戦闘の構えだ。

爆発直前なのか、黄色く光る左手が防御した帝の左腕に叩き付けられ、小爆発が巻き起こる。それを皮切りに爆豪の猛ラッシュが始まった。

勢いに任せた爆発の連撃、鋼の身体すらよろけさせる威力は鉄哲戦で実証済みだ。帝が先読みで避けても次々繰り出される爆発に対処が遅れていく。

 

「うおらァッ!!」

 

「……ちっ!」

 

両手から放たれた大きな爆発が帝の腹部を襲い、衝撃と共に後ろに弾き出された。

帝はすかさず翼竜をけしかけるが、爆豪の巻き起こす爆風の薙ぎ払いにより一蹴される。

 

「お茶子ん時もだけど、とんでもない反応速度してるな。今の絶対死角から入ってたのに。」

 

「ッセェ!テメーのクソ翼竜共は風を切る音と羽ばたきの風圧で見えなくても大体のタイミングは分かんだよ!もう何度来ようが返り討ちだ!」

 

「簡単に言うよねぇ…なら、これならどうだ!」

 

指を鳴らして帝が合図を送る、すると爆豪を中心に4つ角を囲うよう展開した翼竜達は周りに炎を吐き散らした。

 

その瞬間

 

「舐ァめんなァッ!!」

 

BOMB!!

 

一際大きい爆発音と共に、爆豪が炎の中から飛び出してくる。技の出がかりを潰されて流石の帝もびっくりだ。

 

「ちょーっ!?まだ演出の途中でしょうが!」

 

「テメーの小細工に付き合ってる暇は無ェんだよッ!!」

 

ぎょっとする帝に爆豪の苛烈なツッコミ(脚)が入る。この男、女にも容赦ない。

強度に優れるミリタリーブーツによる蹴りを帝は左腕で受け止め弾く、更に今度は爆豪の顔面を鷲掴みにして、口から焔が迸った。

漏れた炎が這うように素早く腕を伝い右手に集中していき、それと同時に爆豪の右手も帝の目の前で輝き始め…

 

「んもー!なら…」

 

「さっさとォ…」

 

 

「「ぶっ飛べェッッ!!」」

 

 

BOBOMB!!

 

音色の違う爆発音が同時に響き、磁石が反発し合うかの如くにお互いの身体が大きく反対方向へ弾かれる。

 

『だああああお互い同時に至近距離爆撃!

龍征は腹!爆豪は顔面を爆破されて両者吹っ飛ばされたアアアッ!!』

 

『いつもより3割増で煩いなお前…』

 

『だぁってよォ!こんな派手な戦闘見せられて興奮しねえワケねーだろ!』

 

「ごっほ…げほっ!

至近距離で爆破の振動はキツいんだってば…」

 

「ごっ…ぐぞ……がッ!!」

 

むせる帝と頭を揺すられふらつく爆豪、お互い態勢を整える。その間も翼竜達は特攻をしかけ、それに気付いた爆豪は反射で打ち払った。が、4匹の翼竜に襲われ、徐々に疲弊していくのは避けられない。

 

『翼竜達による怒涛の追い討ち、追い討ち、追い討ちイイィ!

龍征スゲーな!遠近両方を完璧にカバーしてやがる、無敵かよォ!!?』

 

『遠距離から翼竜の襲撃、接近戦は持ち前の体術と火力にモノを言わせる喧嘩殺法。

遠近両方でアドバンテージを取れる、か。

爆豪の戦闘センスだからこそここまで戦っていられるが、他の対戦相手ならこうはいかねえだろう。』

 

「すっげぇ!すっげぇよ龍征!

あの爆豪をボコボコだ!」

 

「鉄哲、ハシャぎ過ぎだ。ステイステイ」

 

「俺ァ犬か!?」

 

「……」

 

「?どうしたの茨、決勝始まってから表情固いけど。何かあった?」

 

「い、いえ…何でもありません。

ただ…御姉様、お顔の様子が優れないみたいで…」

 

「龍征が?戦ってる感じそうは見えないけど…」

 

「体調が悪い。という訳では無いのですが、その…なんというか…」

 

 

かなり無理して脱力している様な気がするんです

 

 

「脱力ぅ?手ぇ抜いてるってコト?」

 

「分かりません。でも準決勝の時はもっと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝ちゃんも爆豪君も凄い、こんなハイレベルな戦いになるなんて…」

 

「爆豪の反応速度もだが、真に恐るべきは龍征の翼竜操作だな。」

 

「然り。

ファンネルというのもあながち間違っていない。翼竜を従える龍征は今回のルールならほぼ無敵に近いな、勝てるビジョンが浮かばん。」

 

「それよりもよォ!

爆豪もっと頑張れ!ヘタレてんじゃねぇよ!」

 

「お、峰田が真面目に応援してる。」

 

「もっとバンバカ爆発させて削るんだよ!主に龍征の服を!」

 

「いつもの峰田だった!逆に安心した!」

 

「くそぉ…あの胸と尻で無自覚に俺を誘惑しやがってよォ…!

体育祭の間ずっと上着の前おっぴろげでインナーの下に隠したはち切れんばかりのミカドッぱいを揺らしやがって!だらしねえもっとやれ!

無自覚で恥じらいを知らねえアイツにはどうやら『分からせ』必要なよ(ブスッ!!)ッッ!?ーーーーッ!?オンギャアアアアアアアッッ!!?!!?」

 

「「み、峰田ァーッ!!」」

 

「じじじ耳郎さんのイヤホンジャック!?」

 

「女の敵は成敗…」

 

「けろっ、おかえりなさい耳郎ちゃん。手を下す手間が省けたわ。」

 

「ん、ただいま。ゴメン遅れちゃって。

もう始まっちゃってるし…今どんな感じ?」

 

「帝ちゃんがガトー達使って爆豪を押しまくってるトコ!」

 

「どちらも1歩も引かぬ攻防戦…目が離せませんわ。はむはむ…」

 

「ヤオモモはさっきから焼きそばが手から離れないねー。」

 

「……本当だ、頑張ってる。」

 

「…けろ?どうしたの耳郎ちゃん、浮かない顔をしているわ。」

 

「え!?いやいやなんでも!」

 

(色々聞いちゃって気持ちの整理つかないや…帝…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだろう。少しだけ、胸がざわざわする。

 

轟と戦った時、いつも以上に張り切ってしまったからなのか。やたら食いついてくる爆豪にウンザリしたからか。理由は分からない。

 

 

紅い 紅い 紅い 紅い

 

 

血に飢えた本性が

 

 

理性の底に沈めていた筈の本能が

 

 

獲物(おまえ)と戦ってるとふつふつと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キラー…クイーンッ!!」

 

BOMB!!BOMB!!BOMB!!

 

リング内の所々で大小様々な爆発が巻き起こり爆豪を襲う。その中を掻い潜りながら接近する爆豪、すかさず飛び込んでくる翼竜を躱し前へと突き進み、爆発を見舞ってはまた下がる。これの繰り返しだ。

 

「パクんじゃ無ェつってんだろォ!!」

 

「パクリじゃないですー!リスペクトですー!アンタも男の子ならロマンくらい分かれ!」

 

「っせぇ!俺ァ『ホワイト・アルバム』一筋だクソが!」

 

「まじかよ意外、アンタみたいのは『世界(ザ・ワールド)』か『キング・クリムゾン』みたいな定番攻めてくるかと思ってた。」

 

「シンプルなモンほど強力だからなァ!

つかテメーのはどっちかってーと『魔術師の赤(マジシャンズ・レッド)』だろが!」

 

「それは…同感ッ!!」

 

 

 

BOMB!!

 

 

私が両手から放った火球を、爆豪が両手で大爆発を起こし相殺する。

リングの中心で炎と爆発が爆ぜて振動がスタジアムを震わせた。

個性フル稼働のまま戦闘を続けてお互い変なテンションになってるのか、爆豪もかなり饒舌になってるな!

 

 

「…チィ!気に入らねぇ…気に入らねぇンだよ。

何で半分野郎の時みたく炎を黒くしねえ…手ぇ抜いてんのか!?他の攻撃にしてもだ!

肝心なトコで()()()()()()()!舐めんなクソッ!!」

 

「何言ってんだか。

これは命の奪い合いじゃない、範囲もルールも決められた決闘なんだよ?そん中で出せる全力を私は出してるつもりなんだけど。」

 

当たり前でしょう?殺し合いでもないのなら焼き殺す炎は要らない。首をへし折る必要も、内蔵握り潰す事もない。

轟の時は…マジすまんかった。

 

「容易に人を殺せる個性でも制御して正しい使い方をする。USJで13号センセイが教えてくれたでしょ?

大体、私はレスキューヒーローになりたいんだよ。あんたみたいに何もかも蹴り捨ててトップに立とうなんて気はサラサラ無いの。」

 

「甘ぇ…甘ェんだよ!

ヒーローは勝たなきゃ意味無ェだろが!手加減してヴィラン相手に無様な負け姿なんぞ晒してみろ、目も当てられねぇ!そんなもんヒーローじゃねえ!

強え個性持ってる癖に飄々としやがって…ムカつくんだよォ!!」

 

「そりゃ完全にアンタの押し付けでしょうが。」

 

吐き散らす勝利への執着、両手をボンボンいわしながら飛び掛ってくる爆豪の手を掴み反対側へ投げ飛ばす。

普段の言動はアレだが爆豪の実力は大したもんだ。タフネスも個性の火力調節も一年生の中じゃトップで、実際学年首席だし。性格がアレだけど。

 

爆豪は全力を出せと言っている。でも私はちゃんと轟戦で反省して、ルールで決められた範囲内で全力を出してるつもりだ。爆豪の言う全力と私の思う全力にはズレがあるみたい。

 

「全力で来いやァ!!

俺が望むのは完膚無きまでの勝利なんだ!

舐めプのクソカスに勝っても意味無ェんだよ!」

 

アイツは嫌な奴だけど、その場のノリや悪ふざけでこういう事は言わない…と思う。

ハッキリとは分からないけど、爆豪からは勝利に執着する強い信念と覚悟を感じた。戦闘訓練の時のようにイキり散らしてた彼はもう居ない。準決勝の轟の様な、純粋に『勝ちたい』と強く願う覚悟だ。

 

なら、私は…

 

「……分かった。

爆豪、アンタ『覚悟』してるんだね。」

 

「アァ!?ッたりめえだクソが!」

 

「望み通り私の全力、出してやるよ。

でもさ、これだけは覚えときな。」

 

「……ンだよ。」

 

「アンタはヒーローの『勝つ姿』に憧れて、私はヒーローが『救う姿』に憧れた。

オールマイトがNo.1になれたのは何故だと思う?誰よりヴィランに勝って、誰より人を救ったからだよ。

両方やらなくっちゃあならないのがヒーローの辛い所だよね。他の奴を全部蹴落として、勝ち続けた先で、周りに誰も居ない空っぽの玉座でふんぞり返っても虚しいだけよ。」

 

「……ッ!!」

 

「5分…頑張って10分位は持つかな。

後悔すんなよ、爆豪(クソガキ)ッ!!」

 

「ッッ上等だ龍征(クソアマ)ァ!!」

 

 

入試の時みたくブレス1発撃ってすぐ戻るだけなら負担も何も無いけど、今回のはワケが違う。4年前の様に、ただひたすら動かず瓦礫の下敷きになるでもない。

動き回って、戦うとなると

 

 

私がいつまで正気でいられるか分からない

 

 

 

けど…

 

ふと、爆豪の奥、観客席に見慣れたお嬢様の顔と目が合った。

相変わらず優雅に笑って何考えてるのかわかんねー。でも、()()()()()()()()あの人はこう言ってる気がするんだ。

 

「貴女なら大丈夫」って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん早く早く!みー姉ちゃんの試合始まってる!」

 

「風呂上がりに騒ぐな壊理…あとリモコンは後でちゃんと消毒しとけ。」

 

「若旦那、タオルっす。」

 

「おう。」

 

「みー姉ちゃんが目つきの悪いヴィランと戦ってるよ。」

 

「いやお嬢、ヴィランじゃありやせんから。雄英の生徒さん。」

 

「……」

 

「どうした(カイ)、浮かねえ顔して。」

 

「…別に。

まだヒーローなんて()()()()()()目指してるのか、アイツは。

やっぱり蜘蛛ジジイ脅して帝はウチに入れよう、組長(オヤジ)

 

「あの守屋が簡単に娘を手放すかよ。

アイツにゃ昔から組の立て直しに手ェ貸して貰ってんだ、文句言うな。それに脅したら確実に嬢ちゃんに嫌われるぞお前。」

 

「壊理も待ってんだよ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「若旦那も拗れてやすねえ…素直に帝嬢ちゃんに嫁に来て欲しいって言えb「おっと手が滑った」ぎゃあッ!?戯れ半分に腕ぶっ飛ばすの止めて下せえ!痛い!!」

 

「オイ止めろ馬鹿、せめて壊理の見てねえトコでやれ。」

 

組長(オヤジ)も見てねえで止めてくれやせんかねえ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝、お前の()()は俺が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪は間近で目撃した。

 

 

炎が舞う。翼竜達が帝の周囲を覆うように火炎を吐き散らす。踊るように燃え盛る炎の中で、彼女が人の姿を失っていく。

 

四つん這いになった四肢は丸太のように太く、リングのコンクリートを軽々穿つほど強く踏みしめた。

身体は大きく膨れ上がり、背中からそれよりも大きく、偉大な翼が伸びる。鋭い剣棘のびっしりと生えた尻尾の先まである翼膜からは紅蓮を思わせる赤と白の模様が浮かび上がった。

 

鮮やかな金髪は三本の鋭角に変わり、その周りには複数の小さな角が左右対称に生えていた。金色に眩く輝くその角は、正対すると金の王冠を模しているようにも見える。身体を覆う黒の龍鱗が、いっそう輝きを際立たせていた。

 

その佇まいは正に「王」、翼竜達を支配するに相応しい堂々たる風格を否が応でも感じさせるその姿は龍の王と呼ぶに相応しい。

 

 

 

■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!

 

 

 

自身を覆っていた邪魔な炎を羽ばたきで振り払い、現れた巨竜は首をもたげ、高らかに吼える。

 

 

 

 

天を衝く特大の咆哮を以て、龍帝は凱旋を告げた。








※作者はアニメしか見ていません


キャラの性格が違うとか、ニワカがアニメ未登場のキャラ使うなとか、色々言いたいことはあるだろうけどユルシテオニーサン…
物語の未来に鬱エピソードがあるなら…その過程を消し飛ばすっ!そしてこの世界線には少女が笑顔になる結果だけが残る!これが我がSSの能力なのだ…ッ!

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