帝征のヒーローアカデミア   作:ハンバーグ男爵

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初投稿ですね





27 少し周りを見渡せば

不思議な奴

 

 

俺が周りをちゃんと見れるようになってからアイツに覚えた印象だ。

体育祭終わるまではクラスどころか自分の事すら見えてなかった不甲斐ない俺だが、こうして視野を広げてみると今まで気付かなかった景色が良く見えるようになってきた。

 

 

体育祭明けの連休中に、姉と共にお母さんの所へ行った。

病室の扉の前で一瞬、あの日の事を思い出して立ち止まってしまった俺に、姉は優しく背中を押してくれた。2人で病室に入り、10年振りに再開したお母さんは、笑って俺達を迎え入れてくれた。

 

沢山、話した。

 

いままで言えなかった事、これから言いたかった事、10年溜め込んだもん全部吐き出して、みっともなく泣いて、そんな俺を見てお母さんは優しく笑ってて…

 

正直、クソ親父はまだ憎い。でも父を拒絶するあまり俺の視野は極端に狭くなっていた。それを自覚した俺は、先ずは今まで避け続けていた自分の左側(個性)と向き合う為、同じ炎の個性を持つアイツに教えを乞う事にしたんだ。

 

龍征帝。

いつも眠そうに瞼を擦りながら授業を受けて、休み時間は大体机に伏せってる。一見やる気のないように見えるがちゃんと人の話は聞いていて、困っていたら手を差し伸べる緑谷に似たお節介焼き。そんなA組女子グループの中心人物と、今は職員室へやって来ていた。

理由は自主練の為に訓練スペースを確保する為だ。雄英の敷地面積は広い、だけど俺達のように自主練する為に運動場を借りる生徒もそれに余りある程多い。だから訓練スペースの予約はいつも満員で、競争率が高いらしい。

龍征は相澤先生の所へ行った、手持ち無沙汰な俺は職員室の外で待機中だ。

 

 

…両手を握り、開く。

姉兄達とは違う、両親から半分ずつ与えられた半冷半熱の個性。

 

先ずは轟焦凍(オレ)を…()()も含めて肯定しなきゃ先に進めない。

 

 

「相澤先生から許可貰ったよー、小型運動エリアε(イプシロン)だってさ。」

 

「そうか、悪いな。」

 

少しして、片手に印鑑の入った申請用紙を持った龍征が職員室から出てきた。

 

「ちょっとだけサポート科に寄り道してもいい?」

 

「ああ、構わねえ。」

 

のらりくらりと廊下を歩く龍征の後を追うのは俺と、4匹の翼竜達だ。

龍征の個性によって操られているらしい、感情もちゃんとあるようで前に八百万から缶詰貰って嬉しそうに食べてたな。

普段は教室に置いていくコイツらを連れてきているということは、サポート科に用があるのは翼竜の事に関してなのか?

 

 

………

 

 

「じゃ、そういう事でヨロシク。

印照重工の方には話を通しておくからね。」

 

「勿論です!御依頼通り最っ高のベイビーを仕上げておきますから!

ではこの子達少しお預かりしますね!

職場体験の件、忘れないでくださいね!!」

 

「おっけーおっけー、宜しく〜。」

 

すげえオーバーリアクションで別れを告げるサポート科の生徒と別れ、今度こそ俺達は小型運動エリアへと向かう。

…さっきのは確か体育祭本戦にも出てたサポート科の…発目だったか?

 

「サポート科にも職場体験ってあるんだな。」

 

「そうそう、サポート科もこの時期するのよ。

んで、私の保護者…印照家のお父様はサポートアイテムの会社も経営してるから、雄英の子を何人かスカウトして来いって言われたの。」

 

どうやら龍征はサポート科の生徒に用があったらしい。

印照家、といえば世界的に有名な印照財閥の元締めだ。たしか…クソ親父のコスチュームも印照重工の特殊防火繊維で作られていたんだったか。

実は龍征って八百万みたいなお嬢様だったのか?でも苗字違うしな…関係者って所か。

 

「要するにヘッドハンティング?って奴よ。サポート会社は競争率が高いもんね、発目みたいに目立つ子にはツバ付けとかないとスグ大手に取られちゃうんだってさ。」

 

「他に有名な所となると…CMでよくやってる『デトラネット』とかか?」

 

「だね。ぶっちゃけヒーローよりサポート会社の方がお金が絡むし、開発者が自社の技術進歩に直結するからどの会社も新しい人材を探すのに必死らしいよ?

大人の世界は怖いねぇ〜。」

 

ヘラヘラ笑いながら廊下を進む龍征に着いていくうちに、運動場εに辿り着く。

 

大きさはテニスコート4面分くらいか、戦闘訓練や他の授業で使ってる運動場と比べるとかなり小さく『岩場』をイメージしたのか所々に大小様々な大きさの岩が転がっている、天井も高いし燃え移る心配も無さそうだ。

 

「よっし、じゃあ始めようか轟クン。」

 

「分かった……なんで眼鏡掛けてんだ?」

 

「んっふっふ〜、気分よ気分。」

 

体操服に着替えた俺達は岩場の真ん中へ並ぶように立つ。同じく体操服姿で何故か黒縁メガネを掛けた龍征は気取った口調で喋り始めた。

 

「んじゃ、炎の制御について説明すんね。

といっても、前に言ったように私と轟じゃ勝手が違うだろうからその辺りはそっちで噛み砕いて解釈して。

あくまで参考にする程度でヨロシク。」

 

「ああ、頼む。」

 

「ん、炎の個性で轟がまず覚えないといけないのは火力よりも精密な操作だ。なんでか分かるよね?」

 

「…ヴィランと対峙した時、殺しになっちゃいけないからか。」

 

Exactly(その通りでございます)

炎の個性は強いし派手。けどその反面、簡単に人を殺せる危ない力なの。

不用意にヴィランに使って、焼き殺しちゃいましたーなんて事になったらポリスメン案件まっしぐらだかんね。

炎熱、氷結、電撃しかり、状況次第で威力が変わる個性でこれだけは絶対肝に銘じといて。」

 

そうだ、初歩的だが忘れ易い事。

俺達はヒーロー。ヴィランと交戦しても基本的には『無傷』で捕えないといけない、暴力はあくまで正当防衛の時のみだ。車の運転と同じ様にヒーローにも免許があり、持たずに使えば法的な罰を受ける。

そして俺達の使う炎は攻撃力が高過ぎる。直に触れれば当然火傷するし、最悪の場合焼殺もありうる危険な個性だという自覚が必要だ。

 

「その点だと、エンデヴァーは流石だね。

私が知ってる中じゃ炎の扱いはダントツ上手いと思う。

いつもやってる暑苦しい炎のヒゲ、実は結構高等技術なんだぜ?」

 

「…そうなのか。」

 

お手本として龍征の吐いた炎が中を舞い、空中で輪の形になったと思ったら今度は翼を広げた鳥のような形になって、そのままターゲットにした岩を焼く。龍征曰く、炎は無形だから使い手の技量とイメージ次第で形を自由に変えられるらしい。エンデヴァーのヒゲもその応用だそうだ。

あのヒゲ、実は凄いことしていたらしい。

バトルヒーローは威圧感が大事…とか昔言ってたな、そういえば。

 

「轟は今まで父親としてエンデヴァーを見てきたけど、視点を変えてヒーローとしてのエンデヴァーも観察するといいんじゃないかな。プロのNo.2が身近に居るなら、見て盗める事も多い筈だよ。」

 

「そうだな、その為に職場体験をエンデヴァー事務所に決めた。」

 

そうだ、視野を広げるんだ。父親としてのアイツじゃなくプロヒーローとしての姿を見ろ。私怨は抜きにして、No.2になるにはそれだけの理由がある筈…それを学ぶのが職場体験の目標だ。

 

「よしよし。それじゃあ前置きはこの位にして、実際に炎使ってみようか。轟がどれくらい炎扱えてるか確認もしないといけないからね。」

 

「分かった。」

 

龍征の指示に従って、岩場に向けて左の力を解放する。

何度か地面を焼いた後、説明をざっくり教わった俺は更に鍛錬に熱中していった。

 

 

 

 

~~~その頃、教室〜~~

 

 

「あ、そうでした。私ったらうっかり…」

 

「どったのヤオモモ?」

 

「明日の選択授業、帝さんとペアを組んで調理実習をするんです。作るものは決まっているのですけど材料を買わなくてはいけなくて…恥ずかしながら私スーパーでお買い物なんてした事が一度もないので帝さんに一緒に行って頂けないか相談しようと思っていましたの。」

 

「か、買い物経験ゼロとか…流石ヤオモモちゃんやね…」

 

「因みに何作んの?」

 

「以前打ち上げの準備で響香さんと3人で作ったのが楽しかったので『ハンバーグ』と『コーンスープ』を作る予定ですわ。」

 

「そっかあ、美味しかったよねーアレ!」

 

「八百万も龍征と轟を探してんのか?」

 

「切島さん、貴方も?」

 

「ああ。あの二人、今日は放課後個性の特訓するらしくてよ。参考までにどんなことやってんのか知りてえから見学させて欲しいんだ。ってのをさっき龍征にメールで送ったんだけど返事がなくてさ。

既読も付いてねえし特訓に夢中になってんだろうけどよ。」

 

「個性の特訓!?うちも気になるかも…」

 

「『炎』という共通の個性を持つ者同士、互いを高め合っているのか。興味深い。

何時出発する?俺も同行しよう。」

 

「お、常闇も興味あるか!行こうぜ行こうぜ!」

 

「じゃー探しに行こっか。

多分何処かの運動場借りてやってるんだろうし、職員室で相澤先生に聞けば分かるでしょ。」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

「勢いにムラが出てる、集中して!」

 

「くっ…」

 

「感覚は書道と一緒だよ。

止め、はね、払い、集中して何度も同じ字を練習して、一角一角の動作を丁寧に、正確にしていくの。

軽くやった感じ轟は火力はあるけど持続と制御がイマイチだから、職場体験までにその辺り重点的にいこうか。」

 

「ああ…宜しく頼む…ッ!」

 

 

 

特訓を始めてから小一時間、炎の鍛錬は続く。

龍征の説明はイメージしやすくて、正直1人でするよりかなり捗った。それだけあいつは炎の個性を理解しているって事なのか。

 

指摘された通り、火力より制御を意識して肩の力を抜いてみるとバラけて揺らいでいた炎が大人しくなって、ゆらゆら一定の感覚で放たれているのが分かる。

 

「お、いいねえ。良い感じに絞れてるよ。

轟は氷があるから火力調節もやり易そうだし、羨ましいねー。」

 

「龍征も炎の制御、苦労したのか?」

 

「そりゃもうね、個性の扱いは特にシゴかれたから。

ガキの頃は扱いきれなくて辺り一面焼け野原にしてたもん。」

 

「シゴかれた…って事は龍征に教えた人がいるのか。」

 

「そうだよ。

実は私ってば印照家に引き取られて色々と仕込まれてきたマルチエージェントだから。」

 

訓練も一段落し、部屋の隅に設置された休憩スペースで一息入れる俺たち。

ふふん、と自慢げに鼻を鳴らす龍征の眼鏡がキラリと輝いた。

 

何故だろう、どこからともなく相澤先生そっくりの声で『眼鏡キラーンッ!!』と聞こえた気がする。幻聴か……?

 

「どした轟、ポカンとしちゃって。」

 

「…?いや、なんでもねえ。」

 

引き取られた…って事は龍征は養子だったのか?炎を出し続けながらそんな事を考える。クソ親父の事が一瞬頭をよぎって嫌な気分になった。

 

「私に稽古付けてくれた人がね、凄い人なんだよ。

昔どっかの国の特殊部隊にいたらしいんだけど、今は印照家の使用人やってるの。

個性の扱いも上手くてさ。私じゃ絶対勝てないくらい強くて、憧れてた。他にも格闘技や銃器の扱いとかも色々教えてくれて、目付きがキツいから今でもちょっと怖いんだけど責任感が強くて、誰よりも職務に忠実で…それで…」

 

初めは自慢するように話す龍征だったが、話すにつれて言葉がどんどん尻すぼみになっていく。一体どうしたんだ?

 

「まあ、そんな感じで凄い人なのだよ。私の師匠は。」

 

「…?そうか、龍征はその人に憧れてるんだな。」

 

「……んー、多分そう。

でも師匠は私がヒーローになるの反対してるだろうから、あんまり良くは思われて無いっぽいけどね。」

 

「何でだ?」

 

「だって元々印照家の使用人にするために私を育ててたんだよ?それなのにある日突然『ヒーローになります!』なんて言ったら師匠はどう思うのよ。」

 

「確かに…ある意味裏切られたと思うかもしれないな。」

 

「ふぐっ!……その通りなんだけど…

轟って偶に梅雨ちゃん並のストレートくるよね。」

 

胸を抑えて悶える様な仕草をとる龍征。

というか龍征は元々使用人になる為に印照家で育てられたのか、ならあの料理の腕も納得だ。

 

「料理もその師匠から教わったのか?」

 

「いやあれは自前、あの人料理だけは壊滅的にヘタクソだったから。

…徐に生卵をレンジに入れるのよね。」

 

「それは…酷いな。」

 

それは料理の腕以前の問題なのでは?

 

 

 

 

 

 

余談だが連休初日、俺はお母さんとの再開が終わった後少し遅れてA組の打ち上げに参加した。

小綺麗な店内には飯田以外全員が集まっていて、ボードゲームやテレビゲームなんかをやって各々が楽しい時間を過ごしてた。意外だったのは爆豪がいた事だ。後で話を聞いたら切島が上手いこと言いくるめて連れてきたらしい。

…暴言吐きながら緑谷達とスマ〇ラやってた。

 

カウンター席に座らされ、差し出されたミニハンバーグやピラフが乗ったランチプレートは少し冷めていたがとても美味かった。聞けば八百万や耳郎達と一緒に全員分の昼食を作っていたらしい。龍征は料理上手だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お?」

 

龍征と雑談を交えながら暫く特訓していると、不意にふらりと身体が傾く。炎を出すのを止めて思わず膝を突いた。

気付けば身体が暑い……少し使い過ぎたか、オーバーヒート気味だ。氷で冷やさねえと…

 

「あーあ、初日だからってちょっと気合い入れ過ぎたね。炎出し過ぎだ。

氷と飲み物買ってきてやるからちょっと待ってな。」

 

「大丈夫だ、左で冷やせば…」

 

「あー駄目駄目、今日はもうかなり個性使って疲れてるでしょ。その上また個性で身体冷やそうとすると疲労で倒れちゃうよ。」

 

「大丈夫だろ少しくらい。」

 

「あっダメだってば…」

 

そう言って氷を作ろうと右の力を発動させる、直ぐにひんやりとした感覚が全身を駆け巡って…

 

 

俺は気を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ぅ」

 

軽い頭痛で目を覚ます。

身体がだるい、指が上手く動かせないくらい疲れきっていた。

俺は何をしていたんだったか…ああ、そういえば…

 

「何か申し開きはあるかね、轟少年。」

 

「……すいませんでした。」

 

メガネ越しにジト目でこっちを見つめる龍征の咎めるような声。

個性を使って身体を冷やそうとしたんだったな、俺は。止められたのに氷を使って、このザマだ。自分を過信し過ぎた…

次からは龍征の言うことはちゃんと聞こう。

 

「身体が動かん…」

 

「身体温まった上に急に冷やして疲労でぶっ倒れたからねえ、体温調節滅茶苦茶になったんでしょ。暫くそのまま反省してなよ。」

 

脇の下に氷でも当てられているのかひんやりする、そして仰向けに寝てる俺の口元へ徐にストローが差し込まれた。

飲んでみるとそれはスポーツドリンクで、気を失ってる間に龍征が用意してくれたらしい。

 

「頭痛や吐き気はする?関節が痛むとか、身体が普段と違う事はない?」

 

「少し頭は痛むし身体は動かねえけどそれ以外は大丈夫だ。」

 

「ふぅん、それならいいや。

…完全に熱中症患者な件。」

 

「くっ…」

 

情けねえ…

というか妙に視界が暗い、目は開けている筈なのに影が視界を遮ってる。頭上には大きな丸が2つ、そして頭の後ろに感じる柔らかいもの…なんか暖かいし、こんな枕あったっけか?

何度か動こうともがくも、思っていたより疲労が溜まっていたらしく、寝返りをうつことも叶わない。

 

「んっ…コラ動くな、くすぐったいだろ。」

 

龍征は団扇でこっちに風を起こしてくれているらしい、というか…これは…

 

「なんで膝枕なんだ。」

 

「氷枕が無かったからね、動ける様になるまで大人しくしてろ。」

 

というかさっきから頭上に浮いてるのはアレか、龍征のむ…胸か…

 

「…すまん、手間取らせちまった。」

 

「反省してるならよし。

こういう応急処置は慣れてるから。

熱中症の対応なんて理科実験室が瘴気で丸々汚染されるとか、校舎半分凍結した時の後始末に比べれば随分マシよ。」

 

「ひ、比較対象がおかしくねえか…?」

 

「そう?

餓鬼道じゃわりと日常茶飯事だったけど…」

 

「すげえ所だったんだな、餓鬼道。」

 

他にチラホラ聞いただけでも咆哮をビームの様に伸ばして3キロ先の沖に停泊したボートを吹き飛ばす奴や重油が主食で口から高熱のレーザーを吐ける奴、果ては背中に生えた翼からジェット噴射で空を飛び回る奴なんかも居るらしい。

個性って言えばそれまでだけど、どんな魔境だ、餓鬼道中学校。

 

「…餓鬼道には寮があってさ。

そこに行く生徒は、個性が危ないからって理由だけで親に突き放されて入学した子が殆どなんだ。他には金銭的な問題を抱えてる子や、家庭環境が悪くて親と無理矢理にでも離れて生活しないといけないくらい気が滅入っちゃってる子。

そういう子達が寮に入って生活してる。

世間じゃ不良と喧嘩沙汰ばかり取り上げられてるけど、超常世界でも普通に生きられなかった子供達が唯一通える学校が餓鬼道中学校なんだよ。」

 

「普通に生きられなかった子…」

 

「そ。

中学生って多感な時期だからね。

誰かに否定され続けて、誰にも認めて貰えなくて、拗れた結果相手を傷付ける事でしか自分を主張できないように育ってしまった子供達。

私からはそう見えたよ。」

 

「…龍征はどうだったんだ?

そんな学校で3年間過ごして、しかも生徒会長で…辛くなかったのか?」

 

「んー…特に辛いとかは感じなかったな。

元々直上的で喧嘩っ早い連中ばかりだったから上下関係をハッキリさせれば素直に言うこと聞く子ばかりだし。

むしろ高校入って峰田や上鳴みたいなタイプとは初めて会ったからびっくりしたよ。爆豪みたいな性格の奴は腐るほどいたけどね。」

 

「そうか…」

 

それで爆豪の扱い上手いんだな(謎の納得)

 

餓鬼道中学校、という名前だけは教師をやっている姉さんや親父からも何度か聞かされた事があった。

「個性を持て余した不良ばかりが集まる吹き溜まり」

その程度の認識だったが、当事者の龍征から話を聞くとまた見方が変わってくる。

 

()()()()()()()()()()…『あたりまえ』に順応できなかった子供達が集まる学校、か…

龍征はそんな生徒達が集まる学校で生徒会長をやっていたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

一通り餓鬼道の破天荒ぶりについて聞かされた後、龍征は鼻歌を歌いながらスマホをつついているようだ。横向きにしてるからゲームでもやってるんだろう。

相変わらず俺の頭は龍征の膝の上で動けずにいる。

 

…目を閉じたらそのまま眠ってしまいそうだ。

 

暖かくて…柔らかくて…安心する…小さい頃お母さんにして貰った膝枕を思い出すな。子供だったからか、母親のぬくもりに飢えてたのかもしれない。よくねだってた。

そんな昔の話を思い出すうちに、どっと疲れが押し寄せてきて、俺はまた眠るように気を失った。

 

 

 

「Zzz…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「轟…?あれー?

寝ちゃってる、まあいいか。」

 

 

疲れきっていたのか、いつの間にか膝に頭を乗っけたままの轟は寝てしまったらしい。そんなに私の膝は居心地が良かったのか?

 

あー、でも壊理ちゃん寝かしつけるときにもよくやってたから膝枕は得意だな。

私の膝ですやすや眠る壊理ちゃんを見ているとさあ…もう何も怖くないなって…思うんですよね……

 

壊理ちゃん曰く「人をダメにする膝枕」の称号を頂いた私なのだ、居住性はバッチグーですよ。ふはは。

 

それはそうと轟、初日にしてかなりの進歩だ。まさかここまで上手いと思わなかった。

苦手にしていた炎の持続もあの調子なら直ぐモノにするだろう、制御も後は基礎を反復練習すれば手足のように動かせるようになる。No.2の血を引いているからか、それとも今までの努力の成果なのか…物覚えの良い子は凄いなあ。

やっぱ自力で温度下げられるのはいいね、威力上げるだけなら風呂に浸かりながら熱と冷気を交互に出して、水温を一定に保つ訓練とかやれば効率的なんだろうけど、そこまで大掛かりに訓練できる施設も無いし。

 

ていうかどうしようかなあ、轟はぐっすり寝ちゃってる、起こすのも可哀想だ。訓練場の貸し出し時間もまだ少し残ってるし何に使うか…取り敢えずスマホ。

 

炎を使い過ぎた轟は軽い疲労と熱中症に近い状態になってしまってるっぽいので、処置はこれでいいだろう。備え付けの冷蔵庫にアイシング用の氷入ってて助かった、自販機で買ったスポドリ代は後でツケといてやる。今月は職場体験の遠征費や課金で飛んでくお金が多いのだ。

団扇でパタパタ轟を扇ぎながらスマホをつけると、切島から連絡が来ていた。どうやら私達の特訓に興味があるらしく、見学したいらしい。切島の個性じゃ畑違いだし見てもあんまり為にはならないと思うけどなー。

アレ?このメッセージ結構前に来てる、もしかしたら今頃私達の事探してるんじゃ…

 

 

 

ガラッ

 

 

 

「帝さん、こちらにいらっしゃいますか?

教室で聞くのを失念してましたが明日の調理実習の事で相談……が…」

 

「轟、龍征いるかー?

2人が個性の特訓してるって聞いて気になってよ、良かったら見学させてもらえねぇかなっ…て…」

 

両開きの引き戸が開いて、そこから百と切島が現れた。

2人とも目をぱちくりさせながら轟を見て…ゆっくり視線がこっちを向く。

 

轟を膝枕している私と目が合った。

 

百はどんどん顔色が赤くなって、切島は『あちゃー』って顔しながら天を仰いでる。

 

 

???

首を傾げる私。

 

「ヤオモモー、帝居た?つかなんで扉の前で立ち止まっ…てぇ!?

アンタ等何やってんの!!!」

 

その後から響香が遅れてやって来て、私を見るなりすげえ勢いでツッコミを決める。耳のイヤホンがグワングワン揺れて、動揺してるのが丸わかりだ。

ヤってるも何も、治療行為だ。疲労と熱中症でぶっ倒れた轟をこうして介抱してやってる女神の如く優しい私の図。やましい事などなーんもない。

 

「あー…悪ぃ龍征、なんか邪魔しちまったか?」

 

「?何の話よ切島。」

 

「切島ダメ、帝はこういう奴だから。

自覚無しにこういう事を平然とやってのけるから!」

 

「マジかよ無自覚か…そういや鉄哲の奴がそんな話してたな。」

 

「みみみみみ帝さんがとととと轟さんを膝枕…もももしかしてお二人はそういう仲でいらっしゃいましたの………?」

 

「燃ゆる青春の香り…」

 

「常闇、変な例え方止めて!」

 

「変ッ!?…ぬぅ。」

 

 

気まずくなる切島、顔を真っ赤にしたままうわ言みたいに呟いてる百、未だにイヤホンがグワングワンしてる響香、そしてなぜ居る常闇。

誤解が誤解を呼んで運動場εは騒がしくなっていく。

 

うーん、カオス

 

「Zzzz…」

 

この紅白モンスターボール君は呑気に私の膝で寝ていらっしゃるし…

 

この後百たちの誤解を解く為に滅茶苦茶説明した。案の定クラス中に言いふらされてまた一悶着起きるのをこの時の私はまだ知らない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「放課後だというのに今日は客が多いな…」

 

「……」

 

ヒーロー科1年A組担任、相澤消太。

「合理的」がモットーで無駄を何よりも嫌う男。つい先日まで包帯ぐるぐる巻きのミイラ男だったが、それが外れたのはつい今朝の話。そんな彼の元に、1人の少年が訪れていた。

 

 

「お前が来た理由は大体把握してる。

…ヒーロー科への転入希望だな?」

 

「はい、その通りです。相澤先生。」

 

相澤はつくづく雄英の入試制度は非合理的だと内心嘆息していた。

単純な戦闘力しか評価できないと彼のような個性は埋もれていく、人間であるヴィランを相手にする上で『対人に特化した個性』はどれほど強力か、校内のヒーロー教師や根津校長が知らないわけも無いだろうに。

 

「(…大体は公安の怠慢だろうがな。)」

 

今年の実技試験、ロボットによる模擬演習に限らず、例年入試の問題を提案するのはヒーロー公安委員会だ。勿論講師達の意見も届ける機会はあるが、金を出すのは公安(パトロン)である。どちらの発言が強いか言うまでもない。

ここ数年の入試は単純な戦闘力を測るためのものばかり。それだけお上の求める人材(ヒーロー)が何なのか透けて見えた。

 

不意に、入試試験の採点が行われていたあの時を思い出す。

雄英の実技入試は隠れた得点である『救助ポイント』を採点する為、控え室に集まった審査員達が各々の試験会場を映し出すモニターでその様子を採点していた。

次々と仮想ヴィランを爆破していく爆豪、0ポイントロボを己の腕を砕きながらも破壊した緑谷など、未来のヒーローに相応しい素質を備えた者を現役ヒーローでもある彼等の目で直に判断するのだ。

たまたま審査係から外れた相澤もその様子を遠巻きに眺めていた訳だが、審査に同席していたヒーロー公安委員会の役員達がモニターの1つを見つめザワつき、何やら話し込んでいたのが気になった。

その画面には原形を留めないほど高熱でグズグズに溶かされ、吹き飛んだ0ポイントヴィランの残骸が横たわり、代わりに4本足で仁王立ちする黒と金の巨竜が映し出されていたのだ。

正直な所、相澤も驚きこの巨竜が『個性』だということに5秒ほど考える間を要したが、そこは彼もアングラ系とて現役のヒーロー。直ぐに気を持ち直す。

 

役員から漏れ聞こえる単語の端々からは「危険な個性」だの「首輪を付けるべき」だの、おおよそヒーローとは掛け離れた台詞ばかり漏らしていたが、良かれ悪かれあの時からヒーロー公安委員会はモニターに映る巨竜、龍征帝に目を付けた。という事になる。

 

 

(龍征に目を付け何を企んでるかは知らんが、そうそう連中の思い通りになる奴じゃないか。)

 

 

そこで一旦思考を止め、目の前の生徒に向き直る。本来ならヒーロー科とは無縁の普通科からの来訪者、普段友人達と話す時とは違う、決意の篭った表情で彼は真っ直ぐ相澤の目を見ていた。

 

「1年C組、心操人使。

個性は『洗脳』、体育祭では普通科で唯一の本戦出場者か。決勝トーナメントでは惜しかったな。」

 

「いえ、あれは自分の力で出場出来た訳じゃないんで。

他のヒーロー科の生徒達と協力して出し抜いて…決勝トーナメントまで()()()()()()()()

たまたま運が良かっただけです。」

 

それは謙遜ではなく本心からくる言葉だと相澤は悟った。

確かに心操は騎馬戦で帝の策略の最後のひと押しに起用され、競技終了直前に轟の1000万を奪い勝利した。だがそれは他の3人による防衛力と攻撃力あっての結果であり、心操の個性はサポートが主だった役割だ。

その結果は緑谷との1回戦で顕著に現れている、初見殺しの洗脳は対策されてしまえばどうということは無い。場外に放り出され呆気なく心操は敗北した。

 

あの時の自分に足りない物は何か、よく理解した上で相澤のもとへやってきたらしい。

 

「……俺は無駄が嫌いだ。

だからヒーロー科の問題児共が職場体験に行っている1週間の間だけお前の面倒を見てやる。1週間後にテストを行い、見込みが有ると判断すればその後も指導は続行、逆ならこの話は白紙に戻すし今後一切お前からの打診は受け付けん。さあ、どうする?」

 

「やります。」

 

心操の決断は早かった。

もとよりその覚悟を持って職員室の扉を叩いたのだ。

「ヒーローになれない」なんて甘ったれていた自分を、決勝トーナメントに「連れてきて貰った」自分を律して次のステップへ進める為に。

 

「俺はヒーローになりたい。

信じてくれた奴に背中を押してもらって、踏み出せないのは嫌なんです。

だから…」

 

 

宜しく…御願いしますッ…!

 

 

深々と頭を下げる。

 

相澤は自然とマフラーに隠れた口元が緩んでいくのを自覚した。雄英の、それも普通科からヒーロー科に転入しようとする者は彼が赴任してから片手で数える程しか存在しない、普通科からヒーロー科への転入には入試よりも更に厳しい審査基準が要求される。

雄英の花型『ヒーロー科』は伊達ではないのだ。

 

それに挑もうとする者が目の前に現れた。

 

Plus ultra(更に向こうへ)

 

暑苦しい謳い文句は嫌いだが、こういうアツさは悪くない。

 

「決まりだ。

明日、授業が終わり次第また此処へ来い。特別カリキュラムを用意しておいてやる。」

 

「……!!はいッ!」

 

再び深いお辞儀を終えた心操は職員室を去っていく。

隣の机で此方をニヤニヤ見ながら口笛を鳴らすプレゼントマイクこと山田を無視し、相澤は自分の作業へと戻った。「これは暫くネタにされるな」と内心嘆息しながら。

 

案の定、爆豪の居残りを終え帰ってきたミッドナイトに全てをリークされ、青春大好きな彼女の話に付き合わされる事になった。

 

 

 

 

原作(ほんらい)よりも少し足早に、心操人使のヒーローへの第1歩は此処から始まるのだ。




☆おまけコーナー 八斎衆偏☆

『八斎衆』とは極道組織死穢八斎會が若頭、治崎廻の下で動く鉄砲玉部隊である。
元ネタは仏教における戒律の1つで、出家した者が守らねばならない8つの教え

殺さない
盗みをしない
性交を行わない
嘘をつかない
酒を飲まない
正午以降は食事をしない
装飾品、化粧・香水など身を飾るものを使用しない
贅沢な寝具や座具でくつろがない

から来ている(wikiガン見のガバ知識並感)

八斎衆は全員がこの教えに関する個性を有しており、治崎の手となり足となり日夜組の為あくせく働いている。

「ちー君もしかして狙ってこの人達揃えたの?」

「……ノーコメントだ。」

8人は治崎から直々にスカウトされ組に所属している。皆はぐれ者ではあるもののチームワークは確かな実力派集団であり、新参にも関わらず組内では確かな地位を確立している模様。オーバーワーク治崎、努力の賜物である。
治崎の指示によりヴィジランテとして活動する事もしばしば。

窃野トウヤ(せつの とうや)
個性《窃盗》
治崎に救われたはぐれ者の一人。恋人に裏切られ借金を背負わされ自殺を図るもヒーローに助けられ世界に絶望したなんかもう可哀想な人。
過去のトラウマから女性恐怖症の気があるらしく、帝を避けがち。でも幼い壊理を喜ばせる為に個性を応用させマジックとか考えて披露しちゃう頑張り屋さん。基本的に後述する多部、宝生との3人トリオで行動する。
ヴィジランテネームは『マスク・ザ・スティール』


宝生結(ほうじょう ゆう)
個性《結晶》
窃野と同じく過去に傷持つ八斎衆の1人。彫りの深い坊主頭の男性。個性の性質上フィジカル面は人一倍強く、高硬度の結晶を生やした一撃はかなり強烈。ヴィジランテネームは『マスク・ザ・ジュエル』
身体から生える結晶に金銭的価値は無いが、気まぐれに帝が「なら加工してアクセサリーにしちゃえば売れるんじゃない?結晶自体は綺麗なんだし。」とか言っちゃったのを真に受けて一念発起。若者向けアクセサリーブランド『HOUZYO』は主に十代女性から絶大な人気を誇り、爆発的な売り上げを記録し今も死穢八斎會の隠れた財源として重宝されている。近々男性向けに新規開拓を狙う予定。
結晶の生成もやっているうちに強化され、硬度の強弱や7色の色付き結晶を生成出来るようになった……ゲーミング宝生かな?
「街角ですれ違った女の耳には俺の身体から作られたイヤリングが……変な趣味に目覚めそうだからこれ以上考えるのは止めよう」


多部空満(たべ そらみつ)
個性《食》
ヴィジランテネーム『マスク・ザ・イーター』。
個性の影響で食べることしか頭にない、その為社会に馴染めず路頭に迷っていた所を治崎に拾われた。
強靭な顎と胃袋は捕食可能な物ならなんでも食べて消化してしまう。一度その壮絶な捕食現場を死穢八斎會に来て間も無い頃の壊理に目撃され泣かれてしまい、それ以降怖がられるようになったのを気にしている。結構ナイーブな人。
食べることしか頭にない、とは言っても食べていいか悪いかの区別はちゃんとつくようだ。時たまやってくる帝が作る手料理により舌が肥え始めた。


乱波肩動(らっぱ けんどう)
個性《強肩》
喧嘩大好き、ヴィジランテネームは『マスク・ザ・ブロー』。
八斎衆きっての戦闘狂にして最大戦力。素手での殴り合いに拘りを持ち、ケンカ=殺し合いの方程式が成立している頭おかしい人(帝談)。これでも帝や壊理と接するうちに少しはマシになったほうらしい。
帝とは組内の道場で定期的にスパーリングを共にする仲……なのだが、彼の強肩から繰り出される殺人パンチで行うマシンガンジャブ(直喩)は相手が手慣れている且つ防御力カンストしてる帝でないと速攻でミットごとミンチにされてしまうだろう。そんな難易度Lunaticな限界スパーリングに付き合っているせいか、八斎衆の中では組に所属して一番日が浅いにも関わらず結構帝と仲がいい。
相棒、もといストッパー役の天蓋と共に治崎の命令でヴィジランテとして活動する事が多い。


天蓋壁慈(てんがい へきじ)
個性《バリア》
ヴィジランテネームは『マスク・ザ・シールド』。
稼ぎ頭である宝生の資売上管理が主な仕事。事務作業ばかりかと思いきや、個性が防御全振りなので乱波とタッグを組まされることが多く、よく荒事に駆り出される。
八斎衆の中ではコミュ力が高く、帝や壊理ともすぐ仲良くなれた。最初は帝の事は壊理のお守り役程度に思っていたのだが、興味本位で初めて乱波と帝の限界スパーリングを近くで観戦し、衝撃波で死に掛けて以降「乱波とタメを張れるヤバい女」として密かに恐れている(バリアの個性が無かったら即死だった)。


酒木泥泥(さかき でいどろ)
個性《泥酔》
ヴィジランテネームは「マスク・ザ・ドランク」
自分の『酔い』を伝播させる個性、酒を飲んでいる間周囲の生き物の平衡感覚を狂わせたり、頑張れば泥酔状態に似た症状にも追い込める。足止めや拘束に最適。
治崎に拾われるまではホームレスの呑んだくれで毎日やけ酒に溺れていた日々だったが組に入って以降は人並みの生活を取り戻す。後進の育成や壊理とのコミュニケーションを通して粗暴だった性格も安定し今では八斎衆きっての紳士と呼ばれるようになった。組の活動で懐に余裕ができたのか部分整形なんかも始めちゃって、オシャレも覚えた。ヴィジランテとして活動する事が多い為いつものマスクを被っているがその素顔は帝曰く「舘〇ろし似の渋いイケおじ様」らしい。誕生日プレゼントとして壊理と帝から貰った組の紋入りスキットルを長年愛用している。行きつけのバーはオールドスパイダー。

活瓶力也(かつかめ りきや)
個性《活力吸収》
乱波に続く巨漢の持ち主で触れた相手の生命力を吸い取る個性を持つ鉄砲玉。
ヴィジランテネームは『マスク・ザ・バイタリティ』
いつも気だるげ、個性で活力を吸うとハイになる。玄野や入中と同様古参の組員で、「鉄砲玉の方が自分に合っている」と自ら八斎衆へ加わった。
気さくで結構な女好き、小遣いは殆どを行きつけのキャバクラへつぎ込んでおり身体を鍛えた理由も「嬢にたくさん触ってもらえるから」と自ら話していた。
その反面、面倒見が良く女心は誰よりも理解していると自負し帝も何度か相談に乗ってもらった事がある。壊理と帝には「将来が楽しみ」と特に目をかけており、友好を深める為に他の八斎衆を巻き込んでツイスターゲームとか始めちゃう死穢八斎會のムードーメーカー。

最近はこっそり治崎からも色々と相談を受けているのだとか…


音本真(ねもと しん)
個性《真実吐き》
治崎の懐刀、ヴィジランテネームは『マスク・ザ・トゥルース』
八斎衆最古参のメンバーで治崎と最も付き合いが長い、その分忠誠心も高く治崎不在の際は八斎衆を取り纏める副リーダー的存在。
強制的に真実を吐かせる自分の個性に辟易していたが、嘘偽りなく自分を必要としてくれた治崎や暖かく迎え入れてくれた組長に恩義を感じており、その庇護下にいる壊理と帝にも好意的。
組、ひいては若頭の今後を誰よりも憂いている。主に婚期とか。
組の繁栄を心から願う音本であるが同時に治崎には1人の人間として満ち足りた幸福を、具体的には奥さん見つけて子供こしらえて心身共に『幸せ』と呼べる人生を歩んでほしい。そう願い続けて来た。
しかし治崎は毎日組の運営業務に追われ、色恋沙汰とは無縁の生活を送る日々が続いている。そんな折、組長が引き取ってきた壊理と遠縁の子として組に出入りするようになった帝に目を付け、「この期を逃してはならない」と同じく若頭の婚期を憂う組長や玄野と結託し治崎に2人の面倒を任せる事で異性との縁を作ろうと画策した。
計画通り今日までの3人の仲は良好、組長とその他の働き掛けにより外堀を埋め『治崎の許嫁』として死穢八斎會側は帝を迎え入れる準備を整えたのだが、帝専用SECOM(某印照家令嬢)は酷く難色を示しており帝を巡って今も水面下で泥沼の抗争を繰り広げている。

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