3 高校生活、始まります(普通とは言ってない)
あ さ
龍征帝の朝は早い。
昨夜2時までフレとネトゲをしていた私はそのまま眠りにつき、気付けば朝の6時。4時間しか寝てないが入学初日から遅刻は流石に不味いため渋々起きて、準備して家を出た。
早めに家を出たこともあり、通勤ラッシュとは無縁の電車に乗って雄英高校校門前へ。日本有数のマンモス校だから案内板が鏡の大迷宮みたいになってる。わけわかめ。
パンフレット見ながらさ迷い歩くこと5分、やっとの思いで1年A組にたどり着いた。ていうか教室の前に人1人入る大きさの死体袋みたいなのが転がってて焦ったが、中の人は息があるのを確認したので放っておこう。
そんでどうやら早く来すぎたらしい、まだ誰も居ない。
私の机は1番後ろで、しかも窓際。横に誰もいない特等席、ご丁寧に名前が書いてある。机にカバンを放り投げ、翼竜達をリュックから出した。学校内なら個性OKだから出しても大丈夫だよね。
まだ朝のHR開始まで1時間以上ある、目を閉じるとだんだん眠くなってきた…ちょっと寝よう。ガイダンスが始まったら心優しい誰かが起こしてくれるだろうし。おやすみ…
◇とあるデクside◇
「机から足を下ろしたまえ!」
「うるせーぞ端役、テメー何処中だコラ!」
「あわわ…入学早々喧嘩しとるよ…」
僕と麗日さんが教室に入った時、かっちゃんと、入試の時に出会った眼鏡の真面目そうな人が互いに言い争いをしていた。他にも早く来た人達は各々話に花を咲かせていて、僕完全に出遅れた!?
「あ、新しい女の子!あたしは芦戸三奈、宜しくね!」
「う、ウチは麗日お茶子。宜しくね芦戸ちゃん!」
そっちに気を取られているうちに、麗日さんは早速女子どうし仲良くなっているようだ。
「いやー数少ない女子と出会えてよかったー。」
「机は全員分埋まってるね。うちら最後かあ…」
「多分そうだよ。それでねそれでね!
A組女子が全員揃ったところで…あの子に声を掛けようと思うの!」
「人を指さすのは失礼ですわよ芦戸さん。」
芦戸さんがビシィッと指さす先に居たのは、1番後ろの席で顔を伏せている金髪の女の子。多分寝ているんだろうか、時々寝息が聞こえてくる。
それよりも気になったのは…
「空飛ぶトカゲ…?」
「翼竜…みたいだね…」
寝ている彼女の周りで甲斐甲斐しく世話を焼く4匹の小さな翼竜達だ。彼女の個性なんだろうか?
「あの翼竜達がいて、なかなか近寄りづらいんだよね…
さっきあの眼鏡…飯田君が寝てるあの子を注意しようとして、頭を噛まれてたの。」
「噛まれたの!?」
「怪我はしてないみたいだけどね、そっからみんな近寄るのが億劫になっちゃったみたいで…だから私達の出番だよ!A組女子の総力を結集してあの子とお友達になるのだ!
あ、私は葉隠透だよ!個性は見たらわかると思う!」
ばーん!とテンションあげあげの葉隠さんがまくし立ててる。彼女の個性は…透明化かな、見てすぐ理解した。
そうだ、予め配られたプリントの中に出席名簿があったはずだ。それで確認しよう。
A組全員で21人、あぶれる席の一番後ろだから…名前は…
「名前は…龍征帝さん、みたいだね。」
「出席名簿!その手があった!」
「かっこいい名前やねー。」
「あの子、そんな名前なんだ…」
「おっ!知ってるのか耳郎ちゃん!」
「入試で一緒だったんだよ。あの翼竜、火を吹いて仮想ヴィランをバリバリ噛み砕いてた。」
「ロボットをバリバリ!?凄い個性だね…」
「それから他にも秘密があるみたいだけど…その…会った時の印象が強過ぎて…」
急に顔を赤くして目を逸らす耳郎さん、一体何があったんだろう…?
「それ以上は追及しないでやってくれ、彼女の名誉の為にも。」
「わっ!?君は…」
「障子だ。此方にも話が聞こえてきてな。
俺も耳郎と龍征とは同じ試験会場だった。まあ…色々あったんだ…」
そう言う障子君も彼女の話をする時は少しだけ顔が赤い、それに「見ていない…俺は何も見ていない…」となにやらぶつぶつと呟いているみたい。
「う、うん…わかったよ。」
「仲良しごっこがしたいなら他所でやれ。」
急に響いた男の人の声で、冷水をぶっかけられたように教室が静まり返った。教壇を見ると、マフラーを巻いた髭ぼうぼうでだらしない人が立っている。
「はい。全員静かになるまで8秒掛かりました、君達は合理性に欠けるね。」
彼は相澤消太と名乗る、僕達の先生らしい。
「これ着てグラウンド出ろ。」
「ちょっと待ってください相澤先生!
入学式は?ガイダンスは!?」
「雄英高の校風は『自由』、それは教師にも言える事だ。ヒーロー科はひと味違う、さっさと着替えて来いよ。
それから…そこで寝てる龍征を誰か起こしとけ。」
言うことは言った。とばかりにつかつかと相澤先生は教室を出ていき、教室が静まり返った。
「と…兎に角皆着替えよう。隣に更衣室があるから男子は其方で!」
「おう、そうだな…」
「それから、彼女を起こさなければ…」
飯田君が気まずそうに寝ている龍征さんを見つめる。さっき思いっきり噛みつかれたんだもんね、近寄りづらいよ…
「おいクソモブ!いい加減起きやがれ!」
((((なんの躊躇も無く行ったアアアアッッ!!))))
かっちゃんがなんの脈絡もなく龍征さんの机を蹴った!翼竜が凄い目付きでかっちゃん見てるよ!怖い!
「んん…あと5時間…」
「長ぇわ!もっと遠慮しろ!つか今スグ起きろつってんだよ燃やすぞ!」
「う〜ん…」
眠気眼で顔を上げ、頭を搔く龍征さんは…一言で言えばすごく綺麗な人だった。
長い金髪にルビーみたいな赤い瞳、僕より背の高くすらっとした身体に整った顔立ちで、雑誌のモデルやアイドルと言われても不思議じゃない。
「…何この空気。」
「お前が起きねえからだよモブ女!」
「じー…」
「アア?んだコラ。」
「なんで寝癖のまま学校来てんの?」
「地・毛・だ・よ!!ぶっ殺すぞ!?」
「龍征君!詳しい説明は後だ、今は早く体操服に着替えたまえ!」
今にも爆発しそう(してる)なかっちゃんを諌めるように飯田君が間に入って、龍征さんに着替えを促した。それを理解したみたいで、うつらうつらしながらも頷いた彼女はそのまま…
「着替えりゃいいのね、はいはい。」
徐に着ていたブレザーを脱ぎシャツのボタンを外しだした…ふぁっ!?
「ななな何をしてるんだ君はァ!?」
「あんたが着替えろっつったんでしょ…」
「それは男子が教室から出てからにしてくれ!もっと慎みを持ち給え!」
「ええー…」
顔を真っ赤にした飯田君に促され、僕たち男子は駆け足で教室を移動した。1人だけすごい表情で食い入るように龍征さんを見ていたけど…
ブラジャー…黒だったな…
◇
悲報、教室で寝坊した。
気が付いたら皆私を見てる、起きて5秒で注目の的だった。着替えろと言われたから着替えようとしたら止めろと言われ、男どもはそそくさと教室を出ていった。なんか数名変に前かがみになってたんだけどどうした?
「目え覚めた?」
あ、この子は覚えてる。試験の時一緒だったイヤホンちゃんだ。雄英受かったんだね、おめでとう。
「おめめパッチリ。
確か試験で一緒だった子よね?」
「耳郎だよ、耳郎響香。
入学初日から教室で寝坊とか、龍征さんもなかなかロックだね。」
「帝でいい、そっちの方が呼びやすいでしょ。」
「そっか、じゃあ宜しく帝。」
「ん、響香。」
「お!耳郎ちゃんもう龍征さんと仲良くなってんの?私も私も〜!」
透明人間な女の子を皮切りに、クラスの女子と話が弾み仲良くなれた。中学校じゃ挨拶より拳が先に出る連中ばかりだったからなあ…これが普通の学校か、しみじみ。
「気になったのだけど、連れてるあの子達は個性なの?」
そう不思議そうな顔をして聞いてきたのは蛙吹梅雨ちゃんだ。カエルっぽいキュートな子。個性もそのまま〝蛙〟らしい。
「そうだよ、個性の一部だね。」
「一部…?という事は他にもあるのね。」
「私の個性はややこしくて話すのがめんどい…取り敢えずコイツらの操作と多少身体が頑丈な位かな。」
「私もカエルっぽい事なら大体できるけど、帝ちゃんもそんな感じなのね。分かったわ。」
「まあ詳しい事はおいおい分かってくるでしょ。」
梅雨ちゃんは納得してくれたようだ。
「自己紹介はまたの機会に!
今は先生に言われた通り急いで着替えてグラウンドへ向かいましょう!」
手を叩くポニテの子、八百万だっけ?に急かされながら皆と一緒に着替え終わり、グラウンドへと辿り着く。
…あ、不審者だ。
ぅえ?先生?この人が?
目の前で口に出しちゃったよ。目ェつけられたかな…
どうやらこれから個性を把握する為の体力テストを行うらしい。ビリは除籍処分と言われ皆ブルってる。緑髪の冴えない男の子はプレッシャーのあまりぶつぶつうわ言を呟いてた。コワイ。
まずは50メートル走、楽したいので飛んでる翼竜の脚に掴まって4秒96。脚にエンジン着いてるらしいメガネが速かった。
次、握力。
入試が一緒だった異形個性の男子(障子目蔵って名前らしい)が腕を複数生やして高記録を叩き出す。対して私は昔握力計を壊して結構な額を弁償したトラウマがあるのでちょっと手を抜いたら「真面目にやれ」って相澤先生から怒られた。なので本気で握ったら測定針が弾け飛んで測定不能になった。…弁償しないぞ私は。
持久走、バイクは反則だと思います。
え?「翼竜で飛んでる帝に言われたくない」?HAHAHA!響香ったら皮肉がお好きなのね。
立ち幅跳び、ここは相澤先生から翼竜禁止のお言葉を受けた為、普通に飛んだ。ざっと30メートルくらいか。
反復横跳び、人並み。峰田とかいうちっこい男子が残像見える速度で1位を勝ち取ってた。
上体起こし、特筆すべき事なし。長座体前屈も同様。
最後はボール投げ、翼竜にボールを運ばせて記録∞。触れたものを無重力にできる個性の女の子も同じく∞で同率一位。
結果、ビリではないので万事おっけー。先生から告げられた合理的虚偽にクラスの殆どが叫ぶ中、第1回個性把握テストは終了した。
1人指がバッキバキになってたけど大丈夫かな。
おひる
余は腹ぺこじゃ、初日なので興味半分に響香を誘って食堂に赴いた。もう1人の知り合い、障子君も誘おうとしたけど、ほかの男子と喋っていたので引き留めるのは悪いと思い、2人で向かうことに。
流石はマンモス校、広い食堂に人がいっぱいだ。私はざる蕎麦山盛り、響香は親子丼を頼み席を探していると、空いてる席に知った顔があったのでそこへ行く。
「お、心操。そこ空いてるなら隣いい?」
「龍征か…ああ、空いてるよ。好きに座るといい。」
「じゃあお言葉に甘えまして。」
「お邪魔しまーす。」
席に居たのはこれまた入試の時助けた生徒、名前は心操人使っていう。救護室に運んだ時聞いた。
心操の横に座り、響香と向かい合う形で座った私はざる蕎麦をつるつる食べる。
…!美味い!麺のコシ、ほのかに香る蕎麦の風味、味はしっかりとして尚且つくどくないツユ、中々の逸品である。
「うーまーいーぞー!」
「凄い勢いで食べるね帝…」
「美味いものは美味い、これなら毎日食べられそう。」
「食堂にはランチラッシュが居るからな。」
「ランチラッシュ?」
「帝知らないの!?
クックヒーローランチラッシュ、料理界では知らない者はいない有名なヒーローだよ。よく料理番組に出てる。」
「ヒーローなのか料理人なのか…」
「ヒーローで料理人なんだろ。」
「蕎麦が美味いならなんでもいいわ。」
なんて話しながら蕎麦をつるつる啜る。
「そういえば、心操は何組だっけ?」
「C組、普通科だよ。
ロボが相手じゃ俺の個性活かせないし、仕方ない。合格できただけでもラッキーだ。」
「友達出来た?失礼な事してない?」
「お前はお母さんか!?
…お節介な奴に何人か話し掛けられたよ。」
「ウチと障子の時みたいに突き放したり…」
「してない。…あの時のは反省してる。
そういえば、A組は入学式に居なかったが、何かあったのか?」
「個性把握テストって言われてグラウンドで体力テストやってた。おかげで入学式もガイダンスもしてないよ。
最下位は除籍処分なんて言われた時はドキッとしたけどね。」
「合理的とはいったい…うごご…」
「えぇ…」
心操は何か言いたそうな顔をしていたが、まあいいや。今は蕎麦を味わおう。
「じゃあなー心操、友達と仲良くするんだぞー。」
「だからお前はお母さんかっ!!」
満腹になったので食堂の出口で心操と別れ、私と響香は教室へ戻る。昼休憩はもう少しあるから食後の昼寝でもするか…
「あ、翼竜達にエサやらないと。」
「そういえばあの翼竜、名前とか無いの?」
「無いね、今まで付けようとも思わなかった。」
私の個性で操る4匹の翼竜。
あいつらは物心ついた時から一緒にいるが、いままで名前つけようとかは全く考えつかなかった。それどころか「使い潰して当然でしょ」くらいの気持ちまである。翼竜は私の手足と同じだもの。
昔、才子先輩に「食べ物くらいあげなさいよ」と言われたので、それから毎日忘れないように3食分の食事を与えてはいるが。
「4匹もいるのに名前無いとか可哀想じゃん、名付けてあげなよ。」
「ええっと…『ああああ』、『いいいい』、『うううう』…」
「ドラクエのセーブデータかッ!!
呼びにくいからもっとマシなの考えようよ…」
「じゃあ響香が考えてよ。」
この通り、私にネーミングセンスは皆無である。ぶっちゃけ番号くらいで良くね?駄目?そっかあ…(納得)
「うーん…クィーン、エアロスミス、キッス、チープ・トリックなんてどう?」
「それロックバンドの四天王か、趣味丸出しだな。」
どれも有名なバンドグループ、もうそれでいい気がする。
「クラスの子達にも考えて貰おうよ、いい案が出るかもしんないでしょ。」
「私の昼寝時間は…」
「昼休憩の間くらい起きてな。」
おおおおぉぉ……睡眠時間んんん…
この後めちゃくちゃ名前考えた
実は体育祭半ばまで書き終わってるおじさん(投稿できるレベルとは言っていない)