人鬼のむこうがわ   作:ぐらんぶるねくすと

4 / 4
牌画像変換ツールが上手く表示出来ません。申し訳ない。
あとおかしいところがあったら、雰囲気で流してください。



第4話

カラカラと卓の中で牌が回る音を聞きながら、考える。

 

 目の前の男の麻雀について。

 

 義兄さんは自分の麻雀を教えてくれた師匠であり、尚且つ最大のライバルでもある。

 

 勝敗はどちらかが圧勝することもなく、勝ったり負けたり。

 

 通常の麻雀であれば、それはむしろ当たり前だ。

 

 しかし自分が、いや自分達が身に付けた麻雀はそんなものではないと自負がある。

 

 それは最後には相手を飲み込み、全てを奪う麻雀。

 流れなどというオカルトを崇拝の域まで持ち込み、さらに現代的な効率という武器もある。相手の思考を読み切り、望む方向へ意識を変えさせる。未来視にすら届くかもしれない思考と予感を持ち、相手をねじ伏せる。

 

 言わばどんな相手にも対応し、対応させる麻雀である。

 

 しかしお互いが同じ系統であれば。お互いが最強の矛と、最強の盾を持っているのであれば。

 

 

 どんなに短い麻雀でも、長い麻雀でも、流れをつかみ損ねたほうが負ける。

 

 通常のスタイルとして、流れの確認、そして相手の確認で一局、もしくは半荘捨てるが、この男に対してだけは、様子見なんてしている場合ではない。

 

 卓についている、始まりのボタンを押すと牌がせり上がってくる。

 

 サイコロを回し、親は義兄さんで始まった。

 

 

 お互いが無言で、先程までのふざけた雰囲気は、いつの間にか霧散していた。

 

 

 東一局 ドラ{九}

 

 

 傀の配牌 東家

 

 {一二三九九3578⑤⑧⑨白 4}

 

 昨夜、といっても先程までやったおかげで、流れとしてはまだ続いてるようだ。

 

 目の前の男の配牌は、恐らく悪いだろう。

 

 しかし甘く見てはいけない。何度も、何度も戦ってきたが、この程度ではすぐにやられる。

 

 普通であれば手なりでいいが、恐らく{白}をきると鳴かれる。そして結果的に向こうの上がりだ。

 

 それに普段は様子見で半荘、もしくは二、三局読みに使うが、今回は一回限りで、相手は義兄さんだ。

 

 ならば。

 

 傀捨て牌{⑨}

 

 「……なるほど、俺に鳴かせたくないか傀よ」

 

 

 左手の親指と人差し指でにタバコをつまみ、まるでこちらの見通しているかのような目つき。

 冴えないおっさんだったはずが、やはり勝負師としての義兄さんは、恐ろしくもあり、憧れでもある。

 

 しかし次の義兄さんの行動には、笑うしかなかった。

 

 「だが甘い」

 

 カン、と一声。手の内から三枚の{⑨}を倒し、右端にスライドさせた。

 

 新ドラ{9}

 

 「……無理やり鳴いたんじゃないの?」

 

 

 甘かった。思わず顔をしかめる。

 

 「どうだろうな?」

 

 手出しの牌は{中}

 

 チャンタやトイトイ、もしくは後付け。まだまだ役はあるが、そのあたりに注意しよう

 役を絞りながら引いてきたのは、{九}

 

 ドラだが、役がリーチに絞られそうだ。

 しかし。

 

  「……いきなりひどいね」

 

初手から予想外だ。結局{白}はほぼ鳴かれるだろうから、無理矢理使うしかない。

 

 手遅れの可能性が高いが。

 

 傀→打{⑧}

 

 そこに確証を得たのは、義兄さんが積もった牌を見て、ニヤリとしたときだ。

 

 確実に喰い取られた。この局はもう間に合わないだろう。

 

 義兄さんの手出しの{發}をみて、ほぼ聴牌であろう。

 

 

 引いてきた{南}をみて、ため息をつきながら切る。

 

 次の義兄さんの発生は予想通りのものだった。

 

 とんっと心地よい音を鳴らして、つもってきた牌が表側向きで置かれた。

 

 

 「ツモ。700、1300。合計で2700だ」

 

 長介手牌

{12345678白白 9 明カン⑨⑨⑨⑨}

 

 

 

 「相変わらずむちゃくちゃな喰いをするね」

 

 皮肉をこれでもかと言うくらい混ぜて言う。

 

 恐らく義兄さんの喰いとった牌は{9}だけでなく、{6か2}。

 自分の必要牌である。

 

 何も鳴かれずにそのままであれば、自分の上がりは確実であっただろう。

 

 

 「……配牌はどんなだった?」

 

 「{134578⑨⑨⑨白白中發}」

 

 「やっぱり義兄さんの麻雀はおかしいよね」

 

 「お前も同じだろうが」

 

 

 否定出来ないが悔しいが、まだ一局目。またこれからだ。

 

 長介点数:27700

 傀点数: 22300

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。