あとおかしいところがあったら、雰囲気で流してください。
カラカラと卓の中で牌が回る音を聞きながら、考える。
目の前の男の麻雀について。
義兄さんは自分の麻雀を教えてくれた師匠であり、尚且つ最大のライバルでもある。
勝敗はどちらかが圧勝することもなく、勝ったり負けたり。
通常の麻雀であれば、それはむしろ当たり前だ。
しかし自分が、いや自分達が身に付けた麻雀はそんなものではないと自負がある。
それは最後には相手を飲み込み、全てを奪う麻雀。
流れなどというオカルトを崇拝の域まで持ち込み、さらに現代的な効率という武器もある。相手の思考を読み切り、望む方向へ意識を変えさせる。未来視にすら届くかもしれない思考と予感を持ち、相手をねじ伏せる。
言わばどんな相手にも対応し、対応させる麻雀である。
しかしお互いが同じ系統であれば。お互いが最強の矛と、最強の盾を持っているのであれば。
どんなに短い麻雀でも、長い麻雀でも、流れをつかみ損ねたほうが負ける。
通常のスタイルとして、流れの確認、そして相手の確認で一局、もしくは半荘捨てるが、この男に対してだけは、様子見なんてしている場合ではない。
卓についている、始まりのボタンを押すと牌がせり上がってくる。
サイコロを回し、親は義兄さんで始まった。
お互いが無言で、先程までのふざけた雰囲気は、いつの間にか霧散していた。
東一局 ドラ{九}
傀の配牌 東家
{一二三九九3578⑤⑧⑨白 4}
昨夜、といっても先程までやったおかげで、流れとしてはまだ続いてるようだ。
目の前の男の配牌は、恐らく悪いだろう。
しかし甘く見てはいけない。何度も、何度も戦ってきたが、この程度ではすぐにやられる。
普通であれば手なりでいいが、恐らく{白}をきると鳴かれる。そして結果的に向こうの上がりだ。
それに普段は様子見で半荘、もしくは二、三局読みに使うが、今回は一回限りで、相手は義兄さんだ。
ならば。
傀捨て牌{⑨}
「……なるほど、俺に鳴かせたくないか傀よ」
左手の親指と人差し指でにタバコをつまみ、まるでこちらの見通しているかのような目つき。
冴えないおっさんだったはずが、やはり勝負師としての義兄さんは、恐ろしくもあり、憧れでもある。
しかし次の義兄さんの行動には、笑うしかなかった。
「だが甘い」
カン、と一声。手の内から三枚の{⑨}を倒し、右端にスライドさせた。
新ドラ{9}
「……無理やり鳴いたんじゃないの?」
甘かった。思わず顔をしかめる。
「どうだろうな?」
手出しの牌は{中}
チャンタやトイトイ、もしくは後付け。まだまだ役はあるが、そのあたりに注意しよう
役を絞りながら引いてきたのは、{九}
ドラだが、役がリーチに絞られそうだ。
しかし。
「……いきなりひどいね」
初手から予想外だ。結局{白}はほぼ鳴かれるだろうから、無理矢理使うしかない。
手遅れの可能性が高いが。
傀→打{⑧}
そこに確証を得たのは、義兄さんが積もった牌を見て、ニヤリとしたときだ。
確実に喰い取られた。この局はもう間に合わないだろう。
義兄さんの手出しの{發}をみて、ほぼ聴牌であろう。
引いてきた{南}をみて、ため息をつきながら切る。
次の義兄さんの発生は予想通りのものだった。
とんっと心地よい音を鳴らして、つもってきた牌が表側向きで置かれた。
「ツモ。700、1300。合計で2700だ」
長介手牌
{12345678白白 9 明カン⑨⑨⑨⑨}
「相変わらずむちゃくちゃな喰いをするね」
皮肉をこれでもかと言うくらい混ぜて言う。
恐らく義兄さんの喰いとった牌は{9}だけでなく、{6か2}。
自分の必要牌である。
何も鳴かれずにそのままであれば、自分の上がりは確実であっただろう。
「……配牌はどんなだった?」
「{134578⑨⑨⑨白白中發}」
「やっぱり義兄さんの麻雀はおかしいよね」
「お前も同じだろうが」
否定出来ないが悔しいが、まだ一局目。またこれからだ。
長介点数:27700
傀点数: 22300