絆レベル10のカルデア   作:ヒラガナ

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第三話:藤丸立香と人類悪とデンジャラス・ビースト⑦

人理修復を達成した暁には、好きなだけイチャイチャしよう。

たとえ、カルデアを破壊することになっても。

 

マシュとの約束を不本意ながらも交わした――その翌朝。

 

虫の知らせと言うべきか、立香は通常より早く目を覚ました。

 

なんだか胸騒ぎがする。なにか悪いことが起こりつつあるような……

どうせサーヴァント絡みに違いない。今の時間だとサーヴァントたちは、聖拝戦争の真っ最中だろうか。

 

ベッドから跳ね起き、立香は部屋に備え付けられたモニターのスイッチを押した。

毎朝恒例の聖拝戦争。その様子はモニター越しに観ることが出来る。

 

はたして画面に映し出されたのは――

 

「……なん……だとっ」

 

おそらく、元は草木が茂るオルレアンの大地。それが今や、草木は徹底的に破壊され環境団体憤死の光景と化している。

 

誰がやったのかは明白だ。

 

『GOです! キャメロット! 人の恋路を阻む者は城に轢かれて逝ってしまえ、です!』

 

ゴシゴシと立香は目を擦ってみた。見間違いでないのは分かっていても、見間違いと信じたい上での無駄な足掻きである。

 

俺の後輩が、俺のシールダーがクラッシャーになっとるぅぅぅ!

 

マシュが新宝具の『いまはとにかく(ロード・)疾走する理想の城(キャメロット)』を発動し、縦横無尽に暴れまわっていた。

格納庫で出したキャメロットはカルデア施設を破壊しないように縮小させていたようで、今は本来の大きさでの顕現だ。

 

20メートル以上の城壁で囲まれ、天を刺すかの如き塔が幾つもそびえる巨城が、右へ左へF1カー並の速度で突進し、時には華麗なドリフトやターンを決める。

圧倒的でビッグな『死』が爆走する戦場。そこに立つサーヴァントは生きた心地がしないだろう。

操者のマシュを狙おうにも、彼女は城壁の内側に陣取っているためアーチャークラスでも射貫くのは至難だ。

 

 

『おのれ、私の城で当たり屋風情な真似を……喰らえ、『不撓燃えたつ勝利の剣(セクエンス・モルガン)!』』

 

マシュの蛮行に業を煮やしたのは、メイドでオルタなアーサー王である。怒りの謎ビームがキャメロットの外壁にぶつかる……が。

 

『しまったっ!?』

 

セクエンス・モルガンは城壁に当たるや否や、威力を維持したまま反射されたのである。宝具を撃ったばかりで硬直していたオルタは、己が作り出したビームの中に消えていった。

 

「ただでさえ動く防壁なのにビーム反射機能付きとかチートですやん! 反則やん!」

視聴する立香が渾身のクレームを入れるが、FGO年末特番アニメにおいてマシュの宝具は『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)』を反射していたから多少はね。

 

 

 

戦場は荒廃の一途を辿り、残るサーヴァントはまばらになっている。

爆走キャメロットを攻略せねば勝ちはない。だが、どうすれば……厳しい戦況を覆すべく一体のサーヴァントが飛翔した。

 

『ふん! 空を飛んでしまえば城だってピグレットと同じく地を這う存在さ。どうだい、分厚い壁も私には届かないだろ』

 

キュケえもんである。特徴をキュケオーンに全振りしているので、忘れがちだが彼女は鷹の魔女。飛ぶことだってお茶の子さいさいなのだ。

今回の聖拝戦争では天敵・オルタアーサー王が早々に脱落したおかげで、何とかここまで生き延びている。

 

「なるほど、空からなら城壁は意味をなさない。良い手だ」

そうコメントする立香だったが、声には諦めの感情がこもっていた。

だってキュケえもんなんだぜ……あの出オチ感が半端ないキュケえもんなんだぜ……

 

『久しぶりに優勝して、寝起きの立香君と朝キュケだ!』 

立香の心情とは裏腹に、キュケえもんは気合が入っていた。

杖をキャメロットの中心部に向け、強力な魔術を放とうと――

 

『魔力解放! 喰らえぇぇ……ぎゃああああ!!??』

 

が、ダメッ!

先にキャメロットから光線が発射され、速やかにキュケえもんを射止めたのである。

鷹も鳴かずば撃たれまい。

哀れ、キュケえもんは悲鳴を上げながら墜落していった。

 

 

「何の光!?」

 

立香は光の出所と思わしき城壁塔の一角にモニターを合わせた。

すると、そこには赤髪で糸目の弓兵が配置されているではないか。

 

見た事のない顔だが、たぶん円卓の騎士の一人なのだろう。立香は予想した。

だってそうだろう。並の弓兵が光線みたいな矢を扱えるものか。それに彼の獲物は弓ではなく竪琴で、弦をつま弾く度に真空の刃が飛んでいく。かなりテクニカルで強いサーヴァントだ。

 

「イスカンダル王のように当時の人間も召喚出来るのか、マシュの宝具は……」

しかし考えてみれば、英霊を呼ぶ召喚サークルはマシュの大盾を媒介にしている。その大盾を使った宝具なら、自身と縁のある騎士を付随品として召喚出来てもおかしくはない……のかぁ?

 

カルデアの召喚システムは結構ガバガバで、本来聖杯戦争では呼べない英霊から幻霊、直死の魔眼持ちや疑似サーヴァント、果ては魔法少女まで何でもござれだ。

城のついでとして出てくる英霊がいても穏便な部類のイレギュラーじゃないか――立香はそう思うことにした。

 

『私の宝具はお城だけを召喚するって、いつから錯覚していたんですか? 兵士に守られない城がありますか! さあ、弓兵さん! 一気に勝負を決めましょう!』

 

『私は悲しい。普通の英霊としてではなく、添え物として召喚されるとは……ポロロン』

 

気勢を上げるマシュと、やや不満そうな弓兵。

凸凹した二人だが、近距離の敵はマシュの操作するキャメロットが轢き、遠距離や上空の敵は弓兵が狙い、意外と息の合ったコンビネーションで戦果を上げていく。

 

『どうですか、みなさん! これぞ、私が先輩を想ってリフォームしたお城です。円卓の騎士たちがギスギスしていた城ではなく、私と先輩がラブラブするための愛の巣なのです!』

 

『私は悲しい。仕えるべき相手が色欲塗れの少女で……ポロロン』

 

『この強固さ! この盤石さ! この堅牢さ! ああ先輩! あなたへの想いはこの通り揺るぎません! あなたへの想いを邪魔する人はこの通り倒しまくります!』

 

「これは素直にヒエッですね(白目)」

あまりに大きく重い愛に耐えきれず、立香はモニターを消した。

 

甘かった。人理修復までマシュは大人しくしている、などとお花畑脳で予測した自分が愚かだった。

 

聖拝戦争で負けた場合、しばらく実体化できないペナルティを負う。

その間に勝者だけが立香の部屋に入って、寝顔を拝み、起こす権利を得る。

 

多くのサーヴァントは立香を起こすだけで、それ以上のことはしない。

もし眠っている彼を襲えば最後、全サーヴァントを敵に回すことになって英霊の座への帰還不可避だ。その後、カルデアに自力召喚して戻ってきても周りから塩対応されるのが関の山だろう。

 

「でも、マシュはヤル気だ」

 

今のマシュには禁忌を破る凄みがある。後先考えないヤバさがある。バーサーカーよりデンジャラスな香りがプンプンする。

マシュが勝利者になれば、この部屋には『ギシィィ!! ギシィィ!!』とベッドが軋む音が響き続け、立香は甚大な被害が受けるだろう、主に股間を。

 

「とは言え、あの勢いは最後までもたないよな。キャメロットを動かして、円卓の騎士まで召喚するんだから。どう見ても燃費の悪い宝具だ」

 

都合の良い考察を己に聞かせるものの、不安は消えるはずもなく。

部屋の隅で体育座りになり、迷いに迷って――数分。

 

「いや、しかし、現状を正確に把握しないと対策が取れない」

なけなしの勇気を振り絞って立香は奮起した。

 

恐怖のスパイスは未知である。知らないから怖いのだ。幽霊の正体が枯れ尾花だったみたいに聖拝戦争の趨勢を見届ければ、あら不思議。マシュは途中で負けて、マスターガチ勢の中でもマシなステラさんや忍者たちが勝ち残って、怖い気持ちなんてどこかへ飛んでいきましたヤッター! な未来だってあるかもしれないじゃないか。

 

「頼むよぉ、頼むよぉ」

 

立香は手と手を擦り合わせてから、再びモニターのスイッチを入れた。

 

 

果たして、画面には――

 

 

 

 

『良い顔をするようになったわね。つい昨日までは生娘だったのに、今は立派な娼婦のよう……』

 

『キッカケを作ってくれたのはあなたです。その節は本当にありがとうございました』

 

『失敗だったわ。マシュちゃんが、こんなに素敵な婦女子になるなんて』

 

弓兵もキャメロットも消え、砂礫の大地となった戦場。

最後に立っているのは、マシュとマタ・ハリだった。

いや――うち一人はすでに身体から光の粒子を昇らせ、消失しようとしている。

 

『失敗ついでにまたアドバイスしてあげる。今日の勝利で己惚れないでね。もうマシュちゃんは強敵として認識されてしまった。コソコソ逃げ隠れする私とは違う。どのサーヴァントもあなたを真っ先に排除しようとするわ』

 

『誰が来ても負けません! 先輩への愛でバフ掛かりまくりの私に隙はありません!』

 

『強気なのは結構だけど、マシュちゃんの宝具はお城に侵入した敵には弱いわ。それに頼みの付属英霊は攻撃特化にするため耐久性を犠牲にしていた。なにしろ私の光弾で朽ちてしまったもの。彼、最期は涙目だったわよ』

 

マタ・ハリの指摘にマシュは苦い顔をした。

いくらビースト因子の加護を得たとはいえ、ビーストのように無尽蔵の魔力を扱うことは出来ない。暴虐を楽しんでいるようでいて、見えないところでは魔力を節約しながらマシュは戦っていた。

 

『それでも私は負けません! もっともっと強くなって、サーヴァントの皆さんとついでに魔術王を蹴散らし、先輩とイチャラブの限りを尽くしてみせます!』

 

『うふふふ、頑張りなさい。私だって負けない……虐げられることには慣れているわ。でも、聖拝戦争の自己記録を更新できた。少しずつ、私は、マスターに近付いているのよ……』

 

悔しさと確かな希望を抱いてマタ・ハリは消え――勝利者たるマシュだけが残った。

 

『さようなら、マタ・ハリさん。あなたは同じ男性を愛した、尊敬すべき女性でした……』

 

「マシュ……」

 

(つわもの)どもが夢の跡となった戦場に響くマシュの独白。映像を観る立香は物悲しさを覚えた。

 

『まっ、それはそれとしてです! 聖杯よりも尊い先輩をおそいに……もとい、起こしに行きましょう!』

 

なお、しんみりムードは一瞬で終了。ここからはビースト後輩待望の時間である。

マシュが獣の目で涎を垂らし出したところでシミュレーターの映像は途切れた。

 

「こらあきまへん」

恐れていた事態になってしまった。英霊のみんなは聖拝戦争のペナルティでしばらく霊体化している。救助は望めないだろう。自分の貞操は自分で守らねば。

現在、マシュはシミュレーションルームに居る。ここに来るのにそう時間は掛からないだろう。

 

自室に籠城か、どこかへ避難するか……立香は即断した。

カルデアのセキュリティなんて野獣後輩の前には意味を為さない。それより広大なカルデアの内部でかくれんぼする方が性存率は高いはずだ。

だから――

 

「逃げるんだよぉぉぉ!!」

 

立香はドアを開けて、廊下へと飛びだそうと――

 

 

 

「がおお~~おはようございます、先輩! がおお~~」

 

「あっ、おはようございます。マシュさん(絶望)」

 

現実は無情である。部屋の前にはすでにマシュが立っていた。

 

「お、お、お早い御到着デスね」

 

「兵はセック〇を尊ぶと言います。秒で来ました!」

 

「それを言うなら、兵は拙速(セッソク)を尊ぶ……って、それよりマシュさん。何とも珍妙な格好をしていらっしゃいますが、なぜに……?」

 

逝の予感に苛まれながらも、立香はマシュの服装にツッコミを入れざるを得なかった。

 

「コレですか? せっかく先輩を起こすのです! 正装するのは礼儀ではないでしょうか!?」

 

正装……性装の間違いでは?

 

立香が疑問に思うのも無理はない。

マシュはほぼ全裸で、リンゴの審査的に大丈夫なのか心配になるドスケベな装いをしていた。

彼女は着やせするタイプのようで、紫のファーでちょっとだけ隠れた胸の自己主張感がバリ高である。

クロスした黒紐が申し訳程度に胴を覆い、太ももはこれでもかとムチムチ感を強調し、青少年の理性を喰いにきている。これは(ビースト)ですわ。

 

なお、これからガチに喰われそうな立香はまったく興奮できない模様。

 

「マシュさんのヤル気は十分伝わりました。しかし、誠に残念ながらこちらはもう起床していますから、お帰りくださっても」

 

「ナニを言うのですか! 先輩! まだ、起きていないじゃないですか!?」

 

「はいっ?」

 

「ほら、先輩のセンパイがまだ眠っています」

 

マシュの鋭い眼光が立香の下半身を射抜いた。パンツの中に埋没する立香のリツカ君は、カルデアが肉食ワールドになってからというものAチームに負けないくらい長き眠りについている。

 

「先輩は年齢的に性欲旺盛なはずです! それがオネムなのは健康上問題が発生しているためと断言できます! 起床係として見逃せません! がおお~~!」

 

「ひぃぃ!! ガンド! ガンド! と、止まらねええ! れ、令呪をっ!?」

 

デンジャラスな格好をしたマシュとのバトルが始まった。

 

『起床レイ〇! 野獣と化した後輩』

 

そんなタイトルが似合いのマスターとビーストの闘いは、それはそれは熾烈を極め、カルデア施設に少なくはない被害を与えることになった……

 

 

 

そんなカルデアの一角から。

 

「フォウ……フォォフォォ~~」

 

愉悦ニストとしては垂涎物の光景をウォッチングしながら『ああ、コレだよコレ。これが見たかったんだ。たまらねぇ~ですぜ』と床で悶える人類悪が一匹。

マシュを肉堕ちさせた諸悪の根源であるフォウは、今日も楽しく愉悦ライフを満喫するのであった。

 

 

 

 

 

――――そうだ。私は、本当に、愉悦(うつく)しいものを見た。

身体を交えずとも(こじ)らせる愛はあり、お尻から血を流さなかったからこそ、辿り着ける答えがあった。

おめでとう、カルデアの(都合の)良き(マスター)

 

第四の獣は、君によって新たな嗜好に目覚め、(本来の存在意義をガン無視するようになったのである意味)倒された。

 

 




やっと三話が終わりました。
想定の四倍くらいの文量になってしまいました……長ぇぇ。

四話は間延びせずに、コンパクトに仕上げたいと思います(予定)


と、いう事で。

第四話『藤丸立香と引きこもり姫とサーヴァント・オールシーズンフェスティバル』に続く。



まさか本家の復刻イベントと同じタイミングになるとは……
本家は同人イベントにあるまじきKENZENなフェスティバルですが、本作品は『R-15』タグの加護の下、好き勝手やりたいと思います。
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