キュケ信者「ついに2部5章開幕か。予告映像に出てきた仮面の男がオデュッセウスという噂があるが……キュケオーン(大魔女)の元彼を出すのはやめてくれよぉ」
運営「噂の通り、オデュッセウスだぞ」
キュケ信者「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!」
運営「でも、大魔女は出さないから絡みはないぞ」
キュケ信者「ほっ……出番がないのは悲しいけど今回ばかりは嬉しい」
運営「オデュッセウスは、さっくりアサシンされるからキャラ実装はないぞ」
キュケ信者「やった。マイルームで元彼専用セリフを喋るキュケオーンはいなかったんだね」
―2020年3月―
運営「新イベントやるぞ。大魔女がメインだぞ」
キュケ信者「ファ!? 出番があるにしてもキュケネタでとりあえず場を賑やかすだけの大魔女がメイン!?」
運営「新コマンドコードで麦粥をプレゼントするぞ」
キュケ信者「効果が毒付与ww さすが運営! キュケオーンの扱い方を心得ている!」
運営「イベントタイトルは『アイアイエーの春風』、概要どうぞ」
キュケ信者「………………(概要黙読中)………………な、なにこれ。不安しかない内容やん」
運営「察しの通り、大魔女とオデュッセウスの絡みがメインだぞ」
キュケ信者「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!」
運営「5章で大魔女を登場させなかったのは、二人の物語を一つのイベントにするためだぞ。念入りに描写するぞ」
キュケ信者「これが人間のやることかよぉぉぉぉぉ! 元彼に未練タラタラな推し鯖を見せつけられるなんて! 運営は人の心が分からない!」
―イベント後―
運営「で……どうやった?」
キュケ信者「やっぱ運営の……キュケオーンを……最高やな! (テノヒラクルー)」
「……あれぇ……ここは……ふぐぅ!」
意識を取り戻すと同時に鼻孔をくすぐるのは、圧倒的なまでの男臭さ。
寝ぼけることを許さないショックで、刑部姫は現状を把握した。
(マスターの)純潔(を狙うショタ専)の狩人と同様に、スパルタクスの部屋も立香の写真群を除けば飾り気がない。が、部屋の中央には圧制に耐えうる逞しい作業机が鎮座していた。
スパルタクスは机に向かい執筆中である。はち切れんばかりの背中を丸め原稿に顔を近付け、簡単に握りつぶせるであろうGペンを繊細に操り、「ふはははは! 愛! 愛を!」と時折叫びながら漫画を描く光景と言ったらどうだ。
狂気である。狂気が形を
きよひーの口車に乗らないで大人しく部屋に引き籠っておけば良かったぁ……
刑部姫は心底後悔した。だが心の底と断じるには甘かった、いや浅かった。
「ぬぅ!」
脈絡なくスパルタクスが振り向いた。
「ひぃぃ!?」
「おお! 弱者よ! 目覚めし弱き者よ! 汝に圧制者に負けぬ力を授けん!」
「ま、漫画のレクチャーをしてくれるってことですか? いえいえいえ、作業のお邪魔ですから
「圧制に屈するのは恥ではない! 圧制に心を折る事こそ恥辱なのだ! 汝の内で高ぶる克己! 解放し時のために研鑽すべし!」
――あっ、ダメだこれ。
刑部姫は察した。
叛逆レ先生はコミュ障なんだ。
「弱者よ! 研鑽者よ! 汝を抱擁せん!」
「ぎょえぇ!?」
言うが早いか、スパルタクスは刑部姫をホールドする。再び香り立つ男臭に刑部姫は状態異常を発症、また気絶するかと思われた時。
「ふん!」
「あshjjshgdfd!!」
スパルタクスは刑部姫を高く持ち上げ、作業椅子に叩き降ろした。落雷のような大音量が部屋を駆け抜ける。
「いいいたたたあたたたた!?」
言うまでもなくお尻に深刻なダメージである。「ととと、咄嗟に変化スキルを使わなかったら即死だった!」
刑部姫の悲痛なコメントは大袈裟ではない。事実、彼女が腰を下ろした椅子の間からシュワシュワと金色の靄が立ち昇っている。
「さあ筆を! 力無くても愛はある! 汝の性なる思いを白紙に顕現せよ!」
「じ、実力を見たいってことですかぁぁ?」
バーサーカーらしい文脈無視の発言をおっかなびっくり解釈して、刑部姫は描き始めた。
「ふん! ふん! ふん!」
か、描き辛ぁ……叛逆レ先生ったらメッチャ後ろから覗いてくるし。
身の毛もよだつ時間を乗り越え、刑部姫は藤丸立香を仕上げた。
左斜めに顔を向けた、一番描きやすいアングルのラフ画。バーサーカーの眼光に怯えながら描いたにしては上々の出来じゃないかな? と刑部姫は自己評価しつつ、恐る恐る叛逆レ先生の動向を窺った。
「………………ふーーーむ」
刑部姫の藤丸立香をマジマジと見つめること三十秒。スパルタクスは――
「愛を! 愛を! 己に含有する愛を! 倹約のない十全の愛を!」
突如として叫び始めた。
「い、いけませんでしたかぁ!?
「十全ではない! 万全ではない! 弱者よ、刮目せよ!」
ペンを握る刑部姫の手を、スパルタクスは己の巨大な手で包み込んだ。さらに、刑部姫の背に
叛逆者と引き籠り姫という縁遠きはずの二人は、二枚羽織の羽織なし状態となった。
当然、刑部姫は――こんな『あててんのよ!』はイヤァァ!! と内心で阿鼻叫喚である。
しかし、内なる悲鳴はすぐに沈黙へと変わった。
「――すごっ」
叛逆レ先生が動かしているのはペンではなく、ペンを持った刑部姫の手。
それなのに絶妙なタッチで『藤丸立香』が生み出されていく。
こ、これは!? よく見る押し倒された構図のマーちゃんじゃない!
逆だ。押し倒されたサーヴァント視点のマーちゃんだ! こっちを見下ろして今まさに襲い掛かろうとするマーちゃんだ!
凄い凄い! 天才のソレ!
リアルでもよく目にする怯えた表情のマーちゃんじゃなくて、リアルではお目に掛かれない獰猛なマーちゃん!
でも、クオリティが抜群で妄想が
不快感を忘れ、刑部姫はサバフェス大御所の妙技に酔いしれる。
「先生! 叛逆レ先生! どうやったらこんなスキルが身に付くんですか!?」
「愛! 愛以外の何ものでもない!」
「愛……
「消沈するな、弱者よ! 汝の愛は本物! ただ発達途中である!」
「はったつ……とちゅう……」
「愛は育むもの! 今は小さな種火だろうと幾星霜を経て、大火に至る! 現状に叛逆せよ!」
スパルタクスに刑部姫を応援する気持ちはない。彼はバーサーカーだ。己の信条を放つだけの叛逆者だ。しかし、それ故に虚飾のない熱弁が刑部姫に染み渡っていく。
「紙面に囚われる事なかれ! 万事が愛の糧になる! マスターとの一分一秒を活かさん!」
あっ、そういえば――刑部姫の中で一つの疑問が氷解する。
狂化ランクが高いスパルタクスであるがバーサーカー勢の中において彼は穏健派に属する。シミュレーションへの入退所を繰り返す風紀委員と異なり、素材狩りの刑に処されたこともない。
「おお! 弱者よ! 汝に圧制に叛逆する力を与えん!」
立香の訓練に付き合う事は数あれど、どこぞのスパルタ王のように裸でのトレーニングを強要することもない。
ドン引きするほど健全なサーヴァントなのだ。
どうして、バーサーカーの叛逆レ先生があんなすっごい理性を……ずっと不思議だったけど分かっちゃった。
先生は誰よりもマーちゃんに強くなってほしいんだ。だって先生は叛逆レ先生。圧制に叛逆する者。なら弱者のマーちゃんは襲えない、自分が圧性者になっちゃうから。
だから、マーちゃんを鍛える。襲っても圧性にならないレベルまで鍛える、大手を振ってマーちゃんを押し倒せる日まで我慢に我慢を重ねて……
先生の作品に出てくる攻め攻めのマーちゃんは、先生の夢の到達点! サーヴァントの圧性に叛逆する強者で、先生の圧性ラインをクリアしたマーちゃんなんだ。
脱帽だよ、先生は欲望に叛逆しながら愛を貫く人だったんだ……
「愛は根源! 愛は気力! 愛は妄想! 愛は執着! 愛は技術! 愛はNP! 全ては愛から始まる! おお! 弱者よ! 汝の愛する者をいつ如何なる時も全霊を以て愛さん!」
「分かりました先生! 愛します! マーちゃんを年がら年中愛します! よ~し、ヤッちゃうぞー!!」
すでに第三再臨を終えている刑部姫。しかし、彼女はまだ性長する。藤丸立香という太陽に向かって、暗く湿った世界から手を伸ばす。
かつてない自信と高揚感を抱きながら、叛逆レ先生と「愛!」を叫び、刑部姫はスキルを深めるのであった。ついでにマスターガチ勢沼の深みにハマっていくのであった。
なお、叛逆レ先生の寸評。
『主の方から私に触れてくれる。私の肉体、体液、粘膜を求めてくれる。たとえこれが作り物でも、これが私の夢。ありがとうございます、叛逆レ先生(異物混入犯)』
『未だ垣間見えないマスターの表情。それを補填するには格好の材料ですね。もちろん、いつかは自らの手で撮ってみせますよ(藤丸立香撮影担当)』
『先生の作品に出てくるマスターは酷い命令をしたり、苛めるので嫌いなはずなのに……でも、手を握ってくれて積極的で……胸の中にしまっちゃいたくなります(被虐体質持ち)』
『やめてください。このような執拗な責め苦、物語だとしても死んでしまいます。けれど、語りたくなるのはなぜでしょう……ビクビクン(寝かせない意味で不夜城)』
『叛逆レ先生の教えは目から鱗でした。なにも襲われるだけが先輩じゃないんですね。ところで私の盾は先輩の槍を受け止めるためにあると言っても過言ではありません。ですがこの盾、意外と脆いので少しの突きで壊れる可能性があります。そうなっても気にせず私を貫いてください。大丈夫、受け入れる準備はすでに完了していますから! ガーっと猛った調子でGOして頂けると助かります!(デンジャラスビースト)』
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サークル見学は確実に刑部姫を変えていく。
「やあやあ、サバフェス参加者から教えを乞っているんだろう? しょーがないなぁ、うちは門外不出だけど大魔女として頼られれば応えなくちゃね。
サーヴァント一体一体が、藤丸立香への『愛』を持つ。マスターを豚にしてから
素晴らしき愛。だが、時に争いの種になる。
藤丸立香を陰から
「次回のさばふぇすでは、お館様を模した忍具を販売するでござる。こちらの手裏剣は、とれーにんぐるーむの機材に付着したお館様の汗を塗った物。喰らえばどんなサーヴァントだろうと魅了されるのは必然。もっとも、もったいなくて投げるのに躊躇しまうかと。かく言う拙者も十投中九投は、投げずに懐で
「この改良された『風魔まんじゅう』に注目するとは、刑部姫殿もお目が高い。はい、主殿の似顔絵を刻印したニューバージョンです。慣れれば悪くないと評されていたまんじゅうが主殿の加護によって一個でNPが30は貯まるようになりました。他にも段蔵殿が開発したカラクリ忍具が…………段蔵殿? 顔を伏していかがなされた?」
「……申し訳ない。次回の祭典、段蔵は小太郎殿らとは共に行けませぬ」
「なっ!? なぜですか、母ぅ……いえ、段蔵殿! 僕たちは忠義サークル『忍妊』として主のため励んできたじゃないですか!」
サークルリーダーの風魔小太郎が問いただす、と同時に。
「見苦しい姿ですね、これだから人間出身のサーヴァントはいけません」
「鉄の絆は何物よりも固い。私の炉心がそう訴えています」
「割り込み 謝罪。新たな同盟 認めてくれると 嬉しい」
「ゥゥ……ァゥ……」
「我が空想世界を発展繁栄させるためには、多くの機械が必要である」
メカエリチャン1号機、2号機、哪吒、フランケンシュタイン、バベッジ卿が部屋に乱入してきた。言及するまでもなく(だいたい)ロボ系のサーヴァントたちだ。
パーソナルスペース? 知らない言葉ですね、と言わんばかりにサーヴァントで室内がごった返し、対人能力の低い刑部姫には辛い環境となった。
「引き抜き!? 甘言に惑わされるなど、段蔵殿らしくもない!」
「お許しください。段蔵は作りたいのです。この身が壊れかけのカラクリだろうと、どうしても作りたいのです……マスターを」
「主殿を?」「お館様を?」
「時代遅れのニンジャでも分かるように言えば、1/1汎用人型愛玩ロボット『藤丸立香』」
「見た目はパイロット候補そのもの。これまでに収集した音声データを編集する事で簡単な受け答えも可能です」
メカエリチャン1号と2号が無い胸を張った。
「新時代 到来! 異種姦 有効 為らば ロボ姦も有り!」
「ゥゥ……ァゥ……」
「理論上ではあるが、マスターの人格をトレースすることも出来よう。ただし、周囲を混乱させる分泌物は再現どころか解析不可能」
勢いづくロボ勢。
「ふざけた事を! 主殿のまがい物を生み出すなど言語道断! 僕の目の黒いうちは絶対に許さない!」
「はわわわ。話が誠でしたら一家に一台お館様が……拙者、『くのいち』、『巫女』、『未亡人』と属性過多と言われていますが『ろぼ』もあった気がするでござる」
「千代女殿まで! 気をしっかり持ってください!」
混乱する忍勢。
二つのサークルの諍いが刑部姫には眩しく映った。
あそこまで全力になれる。あそこまで己の主張を押し通そうとする。全ては藤丸立香を思えばこそ……
ロボ勢と忍勢の対立が激しくなる中、こっそり離脱する刑部姫。
多くのサークルで見聞きし学んだモノは、彼女の情欲を掻き立てマスター沼の深みへと誘っていく。
「お疲れさまでした、おっきー。その顔からして成果はあったみたいですね」
サークル巡りを終え自室に戻ると、清姫がコタツに入って立香ネタの艶本を読み漁っていた。
「
「その割には落ち込んでいませんね?」
「とーぜん! 今からネームに取り掛かるからね! 柄じゃないけど熱血モードで行くぞー!」
刑部姫は燃えていた。
原点に帰ろう。自分にとって最萌えのマーちゃんを描こう。誰にどう思われようと、マーちゃんの魅力を最も発揮しているのは自分だ! と豪語する作品を作ろう。
ピンク色の情熱に突き動かされ、刑部姫は一心不乱に原稿に向かう。
次の作品は、『Princess×2』史上最高傑作になるに違いない。
相方の成長ぶりに、清姫はバーサーカーらしからぬ穏やかな笑みを浮かべるのであった――
「それはそうと、きよひー。サークル見学の報酬! マーちゃんの髪の毛は?」
「ちっ、覚えていましたか」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
~おまけ~
もしかしたら二年後くらいに発生するかもしれないカルデアのお話。
虞美人「とうとう来てやったわ、カルデア! 全然呼ばれる気配がないから自力召喚で! さあ、項羽様はどこ! 居るのは分かっているのよ!」
マシュ「あっ。芥さん、もとい虞美人さん。カルデアにいらっしゃったんですね」
虞美人「げえ、マシュ!?」
マシュ「どうしました? 急に怯えて」
虞美人「爆走する変な城で咸陽を更地に変えた輩に遭えば、警戒もするわ! なんなの、敵地とは言え加減しなさいよ」
マシュ「加減? 先輩を消そうとする異聞帯に加減? あははは、虞美人さんも冗談を言うんですね?」
虞美人「ひっ……ま、まあ済んだ事は置いといて。それより項羽様はどこにいるのよ?」
マシュ「項羽さんでしたらおそらく――」
虞美人「この部屋に項羽様が……やっば、緊張してきた。すーはーすーはー、よし。行くわよ、いざ再会の時!」
ドアおーぷん。
虞美人「項羽様! お久しぶりでございます。貴方様の妻、ぐび――――えっ?」
メカエリチャン1号「なかなか筋が良いですね、新入り」
メカエリチャン2号「脇から腰にかけてのラインは見事です。特別に褒めてあげます」
項羽「私は為政者のための装置。そのような道具を仲間として迎え入れた事、未来を担いし者の造形担当に任命してくれた事、各々方にはなんと感謝すれば良いか」
哪吒「礼不要! 皆、ロボ姦の友!」
フラン「ゥゥー! ァゥー!」
バベッジ「1/1汎用人型愛玩ロボット『藤丸立香』Ver.3.1 には多くの発想と出資が必要だ。我こそ感謝しよう」
虞美人「こッ? ここここここ……」
哪吒「ニワトリ?」
虞美人「項羽様ぁぁぁ!? なぜ藤丸の人形をお作りにぃぃ!? おのれぇぇ、藤丸! 項羽様を篭絡したかぁぁぁ!!」
以上、虞美人がサーヴァント特攻(ハート)さんに屈し、藤丸立香を『愛息』と誤認する3日前の出来事。