絆レベル10のカルデア   作:ヒラガナ

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更新が遅れてすみません。

久しぶりの人のための肉食カルデア解説

①藤丸立香はサーヴァントとの絆を強制的(ココ重要!)に深める『サーヴァント特攻(ハート)』スキルを持っています。

②所属サーヴァントは絆レベル10がほとんどで、みんな藤丸立香を狙っています。

③マシュはフォウ君の人類悪因子を取り込んで、デンジャラスビーストに進化しています。絆レベルはバグっています。

④立香がサーヴァントに襲われるシーンを鑑賞する集団・愉悦部が存在します。(部長:英雄王。現部員:扇動好きのローマ皇帝、ファウストの悪魔、ルネサンス期の錬金術師、魔術王の父、大江山の客将。マスコット:フォウ)

⑤現在は一部四章のロンドン修復後です。


第五話:藤丸立香のグランドオーダー①

その時は前触れなくやって来る。

たとえ『チェイテピラミッド姫路城攻略戦』の最中で、藤丸立香が混乱と焦燥の真っただ中にいようと関係ない。その時はこちらの事情をガン無視でくるのだ。

 

 

 

最近、刑部姫の様子がおかしいな。オタ活への情熱がナリを潜め、引き籠りに磨きが掛かっている。

こんな思い詰めたサーヴァントは不意に爆発して予想外の行動に出やすく、貞操が危うくなるという予想通りの流れへ帰結するものだ。

 

立香は刑部姫の部屋を訪れた。

心配する素振りを見せて、彼女の中の爆弾を処理するためだ。ひと昔前のギャルゲーかな?

 

「うひゃぁぁぁぁ!! マーちゃんの方からやって来るなんて! 神性持ちの(わたし)が言うのもアレだけど、神展開きたぁぁ!」

 

あるるぅぇぇ?

刑部姫はテンション上げ上げ↑だった。汚部屋の中央に鎮座するコタツ上には同人活動の作業道具が散らばっているし、事前調査とは差異が見られる。

 

俺の知らない間に、刑部姫が快調するような出来事があったのか。たぶん、友達の清姫か黒ひげ氏が動いたんだろう。

 

ならばここに留まる理由はない。

必死に室内へ誘う刑部姫に対し、立香は『紳士たる者、婦女子の部屋にみだりに入らない』論を掲げ、部屋の前でお(いとま)を告げようとした。(いろんな意味で)腐っても刑部姫はアサシンクラス。彼女のテリトリーに入るのは危険極まりない。

 

――が、刑部姫にばかり気を取られたのが敗因だった。

 

「がふぅっ!」

 

刑部姫の使い魔である蝙蝠(こうもり)のバックアタックで背を押され、哀れ立香は部屋の中に連れ込まれた。

 

無論、監視していたマスターガチ勢たちが、この無法を許すはずがない。

自分を藤丸立香の母と思い込んでいる系サーヴァントの風紀委員長を先頭に救出班が刑部姫の部屋へ殺到する。

 

普段の刑部姫なら軽い抵抗の末、あえなく御用となっただろうか今は違う。

先日のサークル回りと立香の来訪でハイテンションになっていた刑部姫は「マーちゃんは(わたし)守護(まも)る!」とコタツ内部と異界を繋げ、チェイテピラミッド姫路城まで後退。徹底抗戦の構えを見せたのである。

 

かくして『チェイテピラミッド姫路城攻略戦』は勃発。

微妙なスキルと宝具と評される刑部姫だが、極めれば防衛に関して馬鹿に出来ない性能となる。

立香が人質になっている事から対城宝具は使えず、かと言って持久戦をすれば立香(の貞操)が危ない! 

ままならぬ状況に攻略側が苛立ちを覚えた――

 

 

そして、その時が来た。

 

 

『なにをやっているんだ、古今東西の英雄が揃いも揃って! 刑部姫は早く立香君を解放するんだ!』

 

Dr.ロマンの通信が戦場に響く。

サーヴァントに対して下手に出やすい彼だが、緊急事態である事と立香の危機が重なり強い口調となっている。

 

『今は争っている場合じゃない! 見つかったんだ、新しい特異点が!』

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「ではブリーフィングを始める――って多い、多いよ! なんだってみんな詰めかけているのさ!」

 

中央管制室にロマン迫真のツッコミが上がる。が、その声は圧倒的な人口密度……いや、サーヴァント密度によって響き渡ることはなかった。

 

カルデアの中でも比較的広い管制室が、今や100以上のサーヴァントで非常に手狭なことになっている。大柄な者が珍しくないサーヴァント業界。スパルタクス、呂布、ヘラクレスなどは2メートルを優に超えているし、ダレイオス三世やロボは夢の3メートル級だ。

そんな輩が団子状になっているのだから暑苦しい事この上ない。まあ、肉薄するカルデア職員たちはサーヴァントのプレッシャーで肝を冷やしているが。

 

ちなみに特異点が見つかった時点でカルデアは第一級戦闘状態に突入しており、立香を襲った罪でシミュレーション送りになっていたサーヴァントたちも緊急事態により現場復帰している。つい先ほどやらかした刑部姫が五体満足に管制室に居られるのもこの為だ。なお、特異点修復後の身の安全は保障されていない。

 

「人理修復に協力的なのは助かるけど、せめて霊体になってくれないかなあ」

 

「仕方ないさ、ロマニ。今の彼らを止められるのは立香君だけで、それも令呪を使用する必要がありそうだ」

 

技術局特別名誉顧問のダ・ヴィンチがロマンの肩をポンポン叩いて、一定の同情を寄せる。

 

「次のレイシフト先はどこですか?」

 

肉食サーヴァントに囲まれ針のムシロな立香が、胃を押さえながら質問した。

 

「ああ! それはね――」

 

声を掛けられたのが嬉しいのか、絆レベル6のロマンは大層嬉しそうに説明する。

 

「北アメリカ大陸。『アメリカ合衆国』と呼ばれる超大国だ。歴史上においてこの国を外すことはできないだろう。魔術的には歯牙にもかけられないけど、歴史的重要性は言わずもがなさ」

 

「アメリカ……えっ? もうちょっと具体的な地名は?」

 

「すまないけど、観測できたのはここまでなんだ」

 

前回の聖杯探索は一都市であるロンドンだったのに対し、今度は北アメリカ大陸ときた。ちょっと探索範囲の振れ幅が大き過ぎんよ~。

 

ま、まさか徒歩で聖杯探索しろって言うのか。北アメリカ大陸だぞ、端から端までどんだけあるんだよ、足の皮がズル剥けるわ!

立香が頭を抱えそうになっていると。

 

「ヒヒーン! 次なる戦場は一つの大陸を股にかけた広大なもの。ならば是非とも私にお乗りください。貴方と共にどこまでも駆けてみせましょう!」

 

無駄に良い声の赤兎馬が己の有用性を主張してきた。

それを引き金にライダー勢が活気づく。

 

「僕の後ろが空いているよ。ブケファラスも君なら食べずに乗せてくれるはずさ!」

 

「ベアー号が吼えてやがる! 大将を俺の背に乗せろ、だとよ! そんじゃオレっちとタンデムだ! 振り落とされんなよ」

 

「高速回転が玉に瑕ですが、タラスクの背を活用してください。心配なさらずに。タラスクが暴れるなら杖でぶん殴って……おほん、杖で小突きますから」

 

「あたしの戦車(チャリオット)、車輪しかないように見えるけどアーケード版ではちゃんと馬が引いているし、空も飛べるんだ。お姉さんに任せなさい」

 

ライダーの強みは機動力。狭いロンドンではいまいちな活躍だった分、ここで立香の好感度を稼ごうと息巻いている。

だが、他クラスのサーヴァントも黙っていない。

 

『魔術に縁のない場所なら、魔術に耐性のないエネミーが多いはず。ここはキャスタークラスを連れて行くべき』

 

『広範囲での探索が必要なら単独行動スキルを持つアーチャークラスが望ましい』

 

『戦場が広大ならば大規模な開戦が予想される。最優のクラスと呼ばれるセイバーを頼りましょう』

 

『なんの戦場の一番槍はランサークラス。剣より槍が強いのは歴史が証明している。しぶとく生き残ってマスターを守るぜ』

 

『情報収集に要人暗殺、効率的な聖杯探索にはアサシンクラスが最適』

 

『■■■■■■■■■■■ーーー! (アピールポイントが思いつかないから、叫んでやる気を見せるスタイル)』

 

サーヴァントの誰もが、自分こそ聖杯探索のお供に相応しい、声高に主張する。霊体にならず管制室へ詰めかけているのも、己を売り込むためであった。

 

 

 

管制室が喧噪に包まれ、やがて熱狂へと昇華されていく。

なぜ、サーヴァントたちがこれほど熱くなり、中心にいる立香が冷えていくのか……答えは、カルデアの歪さにあった。

 

 

通常の聖杯戦争において、サーヴァントはマスターの魔力によって現界している。

しかし、魔力量の少ない素人魔術師の立香では、とてもじゃないが100以上のサーヴァントに魔力を供給できない。

故にカルデアのサーヴァントたちは、電力を魔力に変換して存在を維持していた。

 

カルデア内に居るだけなら消費電力はさほど喰わない。が、レイシフトとなれば話は別だ。

時間跳躍と並行世界移動を同時にこなすレイシフトには、膨大な魔力(電力)が用いられ、レイシフトする人数が増えるほど消費量も増えてしまう。

 

特異点にレイシフトする固定メンバーは二人と一体。

 

マスターである藤丸立香。

召喚サークルを設置する上で欠かせないマシュ・キリエライト。

藤丸立香専属カメラマンのゲオル先生。

 

これに加えて1体連れて行くのがやっと。一応、戦闘時の短時間であれば数体召喚することは可能だが、ほとんどのサーヴァントに出番がない事実は変わらない。

 

レイシフトのサポート枠に入る可能性は1%以下。ソシャゲの最高ランク排出率に匹敵する渋さである。

サーヴァントたちがガチャ廃人並に頭を熱くさせ、議論を紛糾させるのも分かるというものだ。

 

 

――と。

 

「ふはははははは!」

場違いな笑い声が、管制室に響いた。

 

「凡百の英霊どもが耳障りによく吠える! 己の無能をひけらかす趣味でもあるのか?」

 

この金ピカな声は……!

立香が視線を上げると、管制室の中空に英雄王・ギルガメッシュが尊大な表情で浮いていた。

 

「ふん。だが、凡百とは言え英霊。それを100体以上所持していながら戦場に出せるのは数体。残りの戦力は、味方になるのかすら分からなぬ現地の英霊頼り。なんだこれは、(オレ)を腹筋大激痛させたいのか? ふざけた博打に託せるほど、貴様らが修復したい人理は軽いものと見える」

 

痛い所を突かれたのか、カルデア職員らが苦い顔で消沈する。

立香も英雄王と同様の不満を覚えているが、少ないリソースの中で職員たちは必死にやりくりしている。彼らの頑張りを否定はできない。

 

「英雄王! 差し出がましいですが、俺たちは俺たちなりに最善を尽くしてきました。英雄の中の英雄である貴方から言えば、満足できるものではないにしても」

 

「たわけめ」

 

立香の進言は、言葉半ばで一蹴された。

 

ギルガメッシュ王の機嫌を損ねてしまったか……くっ、どうか穏便に。叱責は甘んじて受けますからバビロンの蔵は開けませんように。

いつもの貞操的なドキドキでなく、命の危機を前に立香は動悸を早める。

 

 

英雄王は不遜な言い方はそのままに、しかし発言の流れを変えた。

 

「部下の力量と仕事量を(オレ)が把握していないとでも思ったか。貴様らが限界まで己を行使し、献身しているなんぞ百も承知よ!」

 

「ぎ、ギルガメッシュ王?」

 

「故に特別だ! 今回は特別に(オレ)が動いてやった。感涙に咽びながら聞け!」

 

腕を組み、残忍で寛大な英雄王らしく宣言する。

 

 

「従来の聖杯探索は終わった、これから始まるのは一騎当千の質と数による『蹂躙』。凡百らしく全力で、武でも名誉でも好きなだけ特異点に刻むが良い!」

 




次回は明日か明後日に。
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