絆レベル10のカルデア   作:ヒラガナ

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すみません。サーヴァントたちが好き勝手動き回ってしまったので、話が長くなりました。二話は三つに分けさせてもらいます。

次の投稿こそ後編です(決意表明


第二話:藤丸立香とキュケえもんと名探偵(中編)

そのサーヴァントの部屋に入室した瞬間、立香は動揺した。

『君は数合わせの予定だったけどゴメン、他が全滅したからたった一人のマスターとして世界を救ってね』と人類史上最大の無茶振りをされた時に勝るとも劣らない衝撃を受けてしまう。

 

一目で分かる、間違いない! 目の前にいる『彼女』こそ自分の下着を盗んだ犯人だ。いや、犯人以上のナニかだ!

 

「お待ちしておりました」

立香とホームズの来訪を予想していたのか、彼女は平静な態度だった。

 

「その様子からして言い逃れはしないのだね、賢明な判断だ。もっとも犯行現場に礼装をあえて残したり、朝食時という多くのサーヴァントがアリバイを持つ時間帯での犯行から察するに……君は()()()()()()()のだろう?」

 

「なっ、ホームズさん!? 捕まったら『素材狩りの刑』なんですよ!」

 

「それだよ、マスター。彼女は受刑者としてシミュレーターに入りたかったのだ。先に送還された姉二人を追うために」

 

「あっ……」

ホームズの言葉がトリガーとなり、立香は思い出す。

 

 

 

――あれは先週のこと。

 

フランス組サーヴァントのお茶会に(半強制的)に参加した立香は、内装がフランス王宮風になったマリー・アントワネットの部屋でクッキーを摘み、紅茶を嗜んでいた。

 

主催者のマリーは毒にも薬にもならないふわっふわな話題を振ってくる。

アマデウスは部屋に備え付けのピアノで天才的な演奏を披露する。

絆レベル10になってから赤面症を患うサンソンは会話に入ろうと四苦八苦する。

フランス王家とマスターの騎士・デオンは一歩引いた所から茶会を見守っている。その立ち位置が入口ドアの前になっているのは偶然であり、立香の逃亡を防ぐ意図はあろうはずもない。ないのである。

 

なんだかんだ平和に茶会は進んでいた――と、そんな時。

 

「お、おや? こ、困ったな。お菓子がなくなってしまった」

 

立香と同じ空間にいて緊張しているのか、サンソンが噛み噛みになりながら空の皿を持ち上げる。その動作と言葉が何故かわざとらしい。

 

「まあ!? でも大丈夫よ」

マリーは柔和な表情を浮かべ……けれど目からハイライトを消して言った。

 

 

 

 

 

「お菓子がなければマスターを食べればいいじゃない」

 

 

マズいですよ! 立香の『危険予知(貞)』が遅まきながら警報を発した。

 

ぐっ……身体が不自然に熱い。しまった、食事に何か盛られたか。毒に耐性がある立香だが、媚薬関連はまだまだ未熟である。

 

さらにアマデウスの弾く曲が、いつの間にかR指定フランス映画の、エマニュエルな感じになっていた。この心遣いには魔性菩薩さんもニッコリであろう。

 

 

「ヤラせるか! こんな事もあろうかとっ!」

 

 

立香は懐から煙幕玉を取り出し、床に思いっきり投げつけた。風魔出身の忠忍から万が一のためと渡されたとっておきだ。

 

次の瞬間、お茶会の会場を煙が満たした。一メートル先も見えない、完全なる白の空間だ。

 

「きゃあ! ケホケホ。私のマスター! どこに行ってしまわれたの? 心配しないで、ギロチンより痛くしないわ」

「任せて、マリア。最下層サーヴァントの僕だけど耳には自信があるんだ。必ずマスターを捕らえるから」

「怖がらせてどうする、アマデウス。聞いてくれマスター。僕は人体研究をしている。力を抜いて、お尻を預けて欲しい。苦痛は与えない」

 

 

ヴィヴ・ラ・マスターしたフランス勢の相手をしていられるか。

立香は最近()えたスキル『気配遮断C』を発動して逃走する。その機敏さは、下手なアサシンサーヴァントより上だった。

 

一騎当千の強漢魔たちに抵抗するべく進化する立香、すでに人としての(ことわり)から外れかかっている。まあ、世の中にはマスターのくせに英雄王とタイマンして勝つ自己犠牲野郎もいるし多少はね。

 

 

フランス王妃の部屋を出るには、鉄壁の門番を突破しなくてはならない。かの百合騎士は立香の天敵・性別あやふやサーヴァント。しかも理性蒸発騎士より慎重なので手ごわい。

 

「大丈夫、私なら出来るさ」

警戒しているそばからこれだ。今の掛け声からして防御系スキルを発動したのだろう。ずるずると遅滞戦術を取られれば煙が晴れて万事休すだ。

 

迷っている時間はない。

令呪を切るには声を出さなければならず、しかも一体にしか効果はない。

ならば……こんな事もあろうかとパート2、立香は用心のためにカルデア戦闘服を普段着の下に着ていた。

 

この魔術礼装には『ガンド』という機能が搭載されている。相手の動きを止める呪術で、魔獣だろうと神獣だろうとサーヴァントだろうと、果ては魔術王にすら効いてしまうたまげる機能である。

もっとクールタイムを短縮して、はよ。

 

なお、立香は『ガンド』を敵に使ったことがなく、標的は味方サーヴァント一択。

レイシフト中の戦闘はサーヴァントの気を高ぶらせやすい。なのでガンドは、戦闘からの流れでマスターを襲っちゃうお茶目なサーヴァントをチン静、もとい鎮静するべく使用されているのだ。

 

「うぐぅぅ」

デオンは強い弱体耐性を誇るものの、今回は立香の悪運に屈した。ガンドの呪いによって、守護騎士は膝を床に突いたのである。

 

「わ、私は王家の百合に勝利を誓い……マスターの菊に勝利を刻む……なのに」

 

防御特化のデオンくんちゃん、性癖は攻撃寄りだった模様。

立香はお尻に力を入れつつデオンを抜き去り、肉食化したフランス領から脱した。

 

 

とりあえずフランス勢はシミュレーターの中で頭を冷やしてもらわないと。

廊下を走りながら立香は端末を操り、影の風紀委員長に一報を入れた。

 

「乱しましたね、カルデアの風紀を! 私の息子を! 容赦しません、粛清です!」

 

私情を挟みながら影の風紀委員長はフランス勢の摘発を快諾した。

ふぅ、これでめでたし、めでたし。

肩の荷が下り、立香は長めの息を吐いた。

 

なお、影の風紀委員長はこの翌日に下着泥棒で逮捕されるのだが……それは、また別の話。

 

 

 

自室に戻った立香。しかし、彼の受難は終わらない。

 

「おかえりなさい。いい天気ね、マスター。こんな日はお出かけしたくなるわ。ねえ、()

 

「そうね、()。形のない島の洞穴はどうかしら? ほの暗い穴の底でイケない遊びをしましょ」

 

「うふふ、直接女神から寵愛を受けるだなんてマスターは幸せ者ね。心行くまで楽しみましょう」

 

男の理想を具現化した女神・ステンノとエウリュアレがベッドに寝そべっていた。

神の造形美をこれでもかと見せつける容姿。特に精巧でありながらSッ気が混じる表情は一部の人間に特攻属性を持つ。

 

二人が絡み合ってベッドを占有している情景は蠱惑的に尽きる。たまらず立香の心臓は早鐘を打ち……そうになったが。

 

「この匂い……いいわ。とっても」

「うふふ、癖になりそう」

 

ステンノとエウリュアレはお出かけのお誘いをしつつ、シーツを自らの鼻に押し付けて持ち主の残り香を吸収せんとクンカクンカ励んでいた。いろいろと台無しだ。

 

「せっかくの話なんですけど、もう遅い時間ですし、また後日ということで」

 

ザ・日本人的な断り文句で要求をはね退ける立香へ、女神たちは残酷な笑みを送った。

 

「あら残念。あまり手荒な真似はしたくなかったんだけど」

「仕方ないわ、()。女神の心を踏みにじるとどうなるか教えてあげましょう。手取り、足取り、腰取りね」

 

ステンノとエウリュアレは、喰らった者を愛の奴隷に変える宝具を発動した。

 

 

女神の微笑(スマイル・オブ・ザ・ステンノ)

女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)

 

 

自信満々で放つ二人。下僕になった立香を如何なる方法で愛してやろうか、と彼女らの頭はピンク色の妄想で一杯になっていただろう……が、ダメ!

 

忘れてはならない。立香の服は一見カルデア支給のものと同等だが、その実キュケえもんの愛情盛り盛りの特別製なのだ。

高性能を誇り、機能の一つとして『魅了耐性』が施されている。

 

『可愛いピグレットに唾つける輩は、たとえ神でもぶっ倒す!』

大魔女は敵に回すと厄介だが味方だとこの上なく心強い。恋愛敗北者の意地によって完全なる『魅力耐性』が実現した。魔力A+の女神の誘惑だろうと突っぱねるのだ。

 

「お、お二人とも。宝具は人のいない方に向けて撃たないといけませんって」

 

「えー! なんでケロっとしているのよ」

「まだ慌てる時間じゃないわ。もう一度よ、()

 

と、悠長に二度目の宝具を打とうとした女神たち。甘ちゃんである。

立香の部屋の周囲は魔力センサーが幾重にも仕掛けられていたり、サーヴァントたちの使い魔が監視している。

そんな場所で宝具を使うなら一発勝負が鉄則。次があると思っている時点で女神たちは二流だ。

 

突如として天井から忍者サーヴァント三体が降下し、壁や床下から無数のハサンが湧き、ドアをぶち破って三騎士のサーヴァントたちも殺到する。

 

一秒も経たずに女神たちは勝利から見放された。

 

ステンノとエウリュアレの最大の武器は相手を魅了すること。

しかし、女性には効かないし、男性サーヴァントは立香の魅了に掛かったも同然なので今更女神に(うつつ)を抜かしたりはしない。つまり唯一の武器は無用の長物と成り下がり、女神二人は完全に詰んでしまったのである。南無南無。

 

ちなみに本来なら一度目の宝具が打たれる前に女神たちは制圧されていただろう。それが出来なかったのは、影の風紀委員長を始めサーヴァントの多くがフランス組を拘束してシミュレータールームまで連行するのに忙しかったためだ。

(ほぼ)同時多発エロは悪い文明。

 

 

そういうわけで、マリーアントワネット、アマデウス、サンソン、デオン、ステンノ、エウリュアレの六体がシミュレーター内に送還された。一日の受刑者としては平均よりやや多めの数値であるし、珍しくバーサーカー以外のクラスで占められた日だった。なので、立香の記憶に残っている。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「じゃあ、あなたはステンノさんとエウリュアレさんの救援のために?」

 

立香の問いにゴルゴーン三姉妹の末妹であり、下着泥棒のメドゥーサは肯く。

170を超える身長に、ボディコンワンピースのセクシーなお姉さん。どう見ても下着を盗むより盗まれる側だ。

 

メドゥーサは沈痛な胸の内を吐き出した。

 

「上姉様も下姉様も戦える方ではありません。素材狩りなど不可能です。こうしている間にもエネミーに襲われているかと思うと……私は居ても立ってもいられずに……」

 

「『素材狩りの刑』に処された者はシミュレーター内の犯罪者用区画へと飛ばされる。合流しようとするなら自らも犯罪に手を染める必要があった、そういうわけか」

ホームズがさらっと補足を入れる。事件発生前は素材狩りの刑を知らなかったのに、情報収集能力が半端ない。

 

 

ステンノとエウリュアレが戦えない。せやろか?

 

藤丸立香は勉強熱心なマスターだ。カルデア内護身術の一環としてサーヴァントたちの主義趣向を把握する彼が、戦闘能力に目を向けないわけがない。

 

サーヴァントたちは聖拝戦争や素材狩りの刑を日夜行っているので、戦闘能力の向上が著しい。レイシフト中を除けば、立香は常に100体以上のサーヴァントを観察・調査してデータを更新している。言うまでもなく殺人級の仕事量だ。しかし、サボればせっかく構築したカルデア内護身術が時代遅れとなる……それは立香の貞操と人類の終焉を指す。やるしかない。

 

立香の見立てでは、ステンノもエウリュアレも十分強い。

元は無力な女神だったかもしれないが、サーヴァントとなった彼女らは対男性の切り札として有用だ。基本ステータスでも末妹と同等かそれ以上。

メドゥーサの心配は杞憂もいいところである。とは言え、姉を思いやるメドゥーサに現実的な意見をぶつけるほど立香は冷血ではなかった。

 

「上姉様と下姉様のため……いえ、これは言い訳ですね。いくら二人のためとは言え、マスターのパンツを盗んで良い理由にはなりません。あなたの心を傷つけてしまい、大変申し訳ありませんでした」

 

メドゥーサが深々と頭を下げた。高身長の彼女の謝罪には迫力がある。

 

動機は分かった。告白が全て真実ならば、最大限の恩赦が下るよう手を尽くそう。立香はそう誓った……もし、本当に告白が真実ならばの話だが。

 

「犯罪者を擁護するわけではないが、彼女はパンツを一枚しか盗まなかった。二枚でも三枚でも掴める機会があったにも関わらずだ。それに物的証拠と状況証拠を多く残して、早急に捕まろうとした。彼女の自供は()()正しいだろう」

 

引っかかる言い方をするホームズ。立香が気付く程度の虚偽、名探偵も下着泥棒の自供を鵜呑みにしていない。

 

立香には納得出来ない事があった。捕まりたいなら現行犯逮捕された方が手っ取り早い。立香の在室中に堂々と入ってきて、堂々とタンスを開け、堂々とパンツを盗めばいい。なのにメドゥーサは一番簡単な方法を選ばなかった。

 

それに彼女は罪は認めても、パンツを返そうとしないし在処(ありか)を吐こうともしない。

 

残酷かもしれないけど、俺のため人類のため変態サーヴァントは矯正しなければならないんだ!

真実を追究すべく立香は攻めた。

 

「シミュレーター行きの前にパンツを返してください」

 

「うっ」

返品要求にメドゥーサは戸惑いを大いに見せる。

 

「マスターのパンツは……とある場所に隠してまして……回収するのに少々時間を要します。私が刑期を終えて社会復帰するまでお待ちくださいませんか?」

 

「清姫じゃなくても分かります。嘘ですよね」

 

「な、なにを証拠に……!?」

 

「だって――パンツは今、ここにあります。もっと言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぐぐむむむっ!?」

聖剣エクスカリバーで横殴りされたかのように後退するメドゥーサ。嘘を隠すのが致命的に下手糞だ。

 

「そ、そこまでハッキリおっしゃるのなら調べてください。私がマスターのパンツを装着して堪能中なのか……この身体を直に触っても構いません。むしろ推奨します」

 

メドゥーサがモジモジしながら身体を差し出してくる。艶めかしい腰つきや太ももが強調された彼女のボディラインがグッと近付いてきたのだ。健全な青少年には刺激が強すぎる。

 

が、残念。盗んだパンツをこれ見よがしに装着するメドゥーサはあまりに変態だった。立香の野生が尻込みするほどに……

 

「じゃ、お言葉に甘えて。回収させてもらいます」

 

立香はメドゥーサのエロティックな身体へとゆっくり手を伸ばす。

 

「はぁはぁはぁ……マスター」

性愛の対象であるマスターが、自身の下半身を……弱い所を触ろうとしている。メドゥーサの呼吸が興奮で荒ぶる。

 

姉のオモチャなので目立たないが、メドゥーサはなかなかの性欲モンスターだ。

男だろうと女だろうと気に入れば狙うし、並行世界で不幸ガン積み少女のサーヴァントだった時は、夢の中ならノーカンとマスターの恋人に粉を掛けたりもしていた。

そんな彼女が藤丸立香のサーヴァントとなり、絆レベルが10になった。ならば性欲が大爆発するのは当然の帰結である。

 

 

「触りましたよ、これですよね」

立香がメドゥーサの大切な部分に手を掛けた。

 

「あっ……や、やめっ! やめてください。そこは……!?」

 

「ええい! こんな所に付けるなんてナニ考えているんですか!」

 

立香は無理やり引っ張って、メドゥーサの大事なところからパンツを奪い返した――そう。

 

 

 

 

 

彼女が『バイザー』として装着していたパンツを。

 

 

 

メドゥーサは知名度の高い神であり、モンスターである。

彼女の最大の特徴は見た相手を石に変える魔眼だ。石化機能はON・OFFの切り替え可能なため、目にバイザーを装着する必要はない。

実際、メドゥーサがバイザーを付けるのは立香に格好良さアピールをする時のみだった。

 

バイザーは蛇を想起させるデザインでセンスは悪くない。

しかし、今日のメドゥーサはどこかで見たことのある物をバイザーにしていた。

 

あれ? あの模様に、あの生地って俺のトランクスじゃね? 畳んだトランクスの両端にバンドを付けて目を覆ってね? 

 

いや……まさか、そんな馬鹿な……う、嘘だるるるぅぅぉぉぉ!?

 

 

メドゥーサの部屋に入った直後、立香の脳内は大混乱に陥った。

そら外見クールなお姉さんが、何食わぬ顔で自分のパンツをバイザーにしていたら頭が真っ白になりますわ。

 

多少の変態行動ならどんどん流す藤丸立香でも無理だった。

己の快楽を追求しつつ「姉を助けたくてパンツを盗みました」と、ほざくメドゥーサをどうしてもスルー出来なかった。

『ええー? ほんとにござるかぁ?』と思わざるを得なかった。

 

もうやだ、このカルデア。

 

 

 

 

たっぷりのペナルティを受け、メドゥーサは姉たちと同じエリアへ送還された。

 

「嫌な事件だったね」

彼女を見送った後、心底疲れた立香にホームズが声を掛けた。

 

「しばらくカルデアから離れたいです。早く次の特異点見つからないかな」

 

「先ほどはすまなかった。辛い場面を君に喋らせてしまって」

 

途中からホームズの口数が少ないと思っていたら、メドゥーサを問いただすのが嫌だったのか。さすがの名探偵も超級の下着泥棒は相手にしたくない模様。

 

「こんな事件に関わってくれただけでもホームズさんには感謝しています。幕くらいは自分で降ろさないと」

 

「君は強いな……しかし、無理をしてはいけない。私の方でマスターの負担が軽減されるよう手を打とう」

 

「何かアイディアがあるんですか?」

 

「あるにはあるが……ふっ、()()()()()()()()()()()

初めてホームズが笑った。人を喰ったような、だが子どものような無邪気な笑みだった。

 

 

 

 

 

「ところで、取り戻したパンツはどうするのかね? また履くのかい」

 

「迷っています」

 

メドゥーサの魔眼と直に接触していたパンツ。履いた瞬間に石化の呪いが発動したらどうしよう?

己の(カリバー)が石のように固くなる分は許容出来るが、本当に石になったら笑い話にもならない。

 

「不安なら私が預かろう。呪いがあるのならマスターの近くに置くのは反対であるし、解呪の出来るサーヴァントがいないか探してみよう」

 

「い、いえ。そこまでしていただかなくても」

 

「最初に言っただろう。今回は新参者としてマスターへの貢献度を稼ぐつもりだと。私に任せてくれたまえ」

 

「ホームズさん……」

 

なんて頼りになるサーヴァントなのだろう。「では、預かるよ」と立香のパンツを証拠品袋に厳重に保管し、持ち去っていくホームズ。

彼の背中を眺めながら立香は大いに感謝した――

 

 

まあ、それはそれとして魔眼でホームズの絆レベルを確認すると、召喚早々なのに『8』を示していた。

 

立香は名探偵との今後の交流に思いを馳せ、大いに苦悩するのであった。

 

 




サブタイトルにもなっているキュケえもんの霊圧が消えた……

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