俺の親友は前世は男だったけど、今は幼女になった 作:ボルメテウスさん
アニメをベースに書かせてもらいましたが、すぐにネタが切れそうになるので、古本屋でまとめて買った幼女戦記を読みつつ書かせてもらいました。
まだまだ投稿は遅めですが、よろしくお願いします。
雪によって、覆われた戦場の中で、彼らは見つめ合っていた。
着慣れた白いコートを身に纏いながら、アレクはその場を一歩も退かないように立っており、アーニャはその手に持っているナイフを遊びながら、尋ねる。
「さて、アレク。
私は今から、貴様に簡単な質問をする」
「あぁ、良いぞ」
その日、ターニャはアスクに対して威圧的な態度で見つめていた。
部隊にいた多くの者達は、その様子を遠くで眺めながら、話し合っていた。
「一体、何があったんでしょう」
「分からん、だけど、アスクさんに対して、あそこまでの態度で言うのなんて、初めて見ました」
基地へと戻る途中で見かけたアレクを回収する為に降り立ったターニャ。
それは、いつも見る光景だったが、アレクの後ろにあるテントを見て、何かに気づいたように睨んでいた。
部隊の中ではターニャはアスクに対してはとことん甘く、彼の前では恋する乙女というべき態度が多く見られる。
そしてアレクもまたターニャに対しては甘く、彼女の言う事も大抵は聞いていた。
だが、その2人は今はまるで敵対する関係のように互いに睨み合っていた。
「なぜ、敵兵を助けた」
その一言は、部隊全体を揺るがすには十分なぐらいだった。
「俺は医者だ。
それだけで十分だ」
「そうか、だが、それは私に対しての敵対行動とも言えるぞ」
そう、それは単純な話、アレクはいつものように治療を行ったが、それは味方に対してだけではなく、敵兵に対して行われた事であった。
そして、現在、その敵兵の何名がアレクのテントの中で休まれていた。
アレクはその前から一歩も動かない様子だった。
「アレク、分かっていると思うが、今は戦争中だ。
その中で、この場で、敵兵がいるという事はどれだけ危険な事が分かっているのか」
「あぁ分かっているよ。
お前の考えている事ぐらい」
「ならば答えろ」
「敵兵が味方陣地にいるという事は、その敵兵によって暴れる事によって、多くの被害が出る。
さらには敵兵が機密文書など、情報を持ち帰ればそれは味方に対して大きな被害が出る」
「よく分かっているじゃないか、そこは賢いな」
そう、ターニャは普段は見せない悪魔のような笑みを浮かべながら、アレクに対してナイフを突きつける。
「しょっ少佐、それは「良い、お前達は来るな」だけど」
「これは、俺とターニャとの話だ。
大丈夫だから」
そう言い、周りが動きだそうとした部隊の全員を落ち着かせるように言うと共にターニャを見つめる。
「なら、それが分かっていて、なぜ助けた?
あぁ、今度は医者だからと言う理由で言うなよ。
お前のあの態度は少し疑問に思ったからな」
そう言いながら、銃を構えながら、アレクに向けて言う。
「お前は、あの兵士に対して、何か特別な感情を抱いていないか?」
「・・・だとしたら」
「それはなんだ、私よりも大事なのか?」
「どっちも大事だ」
「・・・・」
ターニャはそう言いながら、頭の中にある理屈以上に感情的になりながら、アレクを見つめる。
(ふざけるな、あんな奴らと同等だとっ!!
お前は私がいれば十分なんだ、なのに、なぜ敵を助ける!!
なぜ、私の邪魔をする!!
お前は、私の理解者だろ、ならば、なぜ殺さない!!)
感情的に吐き出しそうになる言葉を必死に我慢しながら、アレクを睨むターニャ。
そんな姿を見て、アレクは
「親父がいる」
「なに?」
「親父があのテントの中にいる。
戦場で死ぬのは兵士にとっては常識、敵を助けるのなんて、今の俺の所属から考えれば愚の骨頂なのは分かっている。
それでも「親への情という訳か」あぁ」
その言葉を聞き、ターニャは
(くだらん)
その一言で片付ける。
前世においても、今世においても、ターニャの、○○○の、親への感情は非常に乾ききっており、どうでも良かった。
そんなのが、何の役に立つ。
そう言わんばかりにテントへ銃を向けようとした瞬間だった。
(待てよ)
その時、ターニャは動きを止めた。
「・・・アレク、そんなに、親が大事か」
「あぁ」
「アレク、私はお前にとっては大切な存在か」
「あぁ」
「ならば、お前は戦争が終われば、また人を救う為に旅立つのか」
「そうだな」
「ならば、私からの提案だ」
そう言うと共に、テントへと銃を構えながら、アレクを見つめる。
「お前の人生を、私によこせ。
そうすれば、お前の父は解放しよう」
その悪魔的な言葉に対して、アレクは
「そんなので良ければ、幾らでも付き合う」
(もらったっ!!)
ターニャはその瞬間、勝ちを確定したように笑みを浮かべる。
「ならば、解放しよう。
あぁ、出発前に、お前の父親と話をしてくる。
なぁに、殺しはしない」
「分かった、信用する」
「感謝する」
そう言い、ターニャはこれまでにない笑みを浮かべながら、テントの中を見つめる。
「ほぅ、なるほど。
お前だったのか、アレクの父親は」
「貴様っ!!」
テントの中へと入ると、ターニャの目に入った男性には見覚えがあった。
銀翼の称号を得るきっかけになった戦いにおいて、そして今回の戦場において銃を奪い取った兵士でもあった。
そんな男性に対して、ターニャは
「いやはや、なんという偶然。
貴殿が出る戦場において、私は多くの幸福が訪れる。
前の戦場では銀翼を、此度の戦場では銃と、そしてあなたの息子。
本当に私が求める多くの物を与えていただき、感謝する」
「貴様っ!!」
「では、近くの味方がいる場所まで案内します。
なぁに、救助まで必要な物資ぐらいは渡しますので、息子さんに助けてもらった命を無駄にしないように、生きてくださいね。
義父様」
笑みを浮かべながら、ターニャはその場を去った。
その一言を最後にターニャはその場からいなくなった。
「さて、行くとするか、アレク」
「分かった」
そう言いながら、アレクはターニャと共に歩き出した。
そして、部隊の全員は、そんなターニャの様子を眺めながらも、ターニャの指示により、持参していた物資をテントの中にいる者達に分け与えると共に去っていく。
「なんでしょう、敵とはいえ」
「同情か?」
「えぇ」
部隊の帰還中、全員がその思いで一杯だった。
テントの中にいた兵士は悲しみにくれている中で、特に印象に残ったのはアレクの父だと思われる人物。
物資を受け取りながら、その拳は強く握りしめ、血が溢れていた。
「これが、戦場という事なのか」
そう言いながら、彼が見つめるのは天使のような笑みを浮かべるターニャと、静かに目を閉じながら進むアレクの姿だった。