俺の親友は前世は男だったけど、今は幼女になった 作:ボルメテウスさん
戦争中は部隊で行動する事が多く、捕虜兼医者である俺もターニャが率いる部隊と一緒に行動するのも必然だった。
彼らとの交流は俺としても嬉しくあり、捕虜という立場や別の国の人間であっても、その中には差別はなく関係は良好だと言えるが
「これはだな」
戦場から遠く離れた現場において、一時的な休みという事もあり酒の準備を行っている物や料理を運ばれる者など暇を持て余している者達は読書や様々な事を行っているが、その中でもダントツに多いのが
「ここまで染みこむとはな」
「あぁ、喫煙者が多すぎる」
タバコを吸う者がとても多く、俺とターニャなど数名は吸わないが、それ以外の大半はタバコを吸っていた。
日本という環境の中でタバコに対して厳しくなっており、喫煙者の数もどんどん減っていたが、現在は戦時中、未だにタバコを吸う人は多くいる。
そんな中で屈強な男達が大量にいるという事もあって、宿の中では既にタバコの匂いで部屋が包まれていた。
その匂いに対して、俺達は苛立ちを感じていた。
俺もターニャも前世ではタバコは余り吸わない方で、不愉快に感じる方だったので、この状況を打破したく思っていた。
「ターニャ、やるか」
「あぁ」
俺達の思惑が一致すると同時に、俺は近くからボードを借り、ターニャは全隊員を呼び出した。
そうやって全員が集まったのを確認すると、ターニャはゆっくりと演説を始める。
「大隊諸君、これからパーティを始める前にしろがね先生からのありがたい授業の始まりだ」
「授業ですか?」
「あぁ諸君の持っている害ある物についてだ」
「タバコがですか?」
「あぁその通りだ。
詳しい説明は、しろがね」
「あぁ」
ターニャに言われると共に、俺は持っている資料を広げ、集まっている隊員に対して、タバコの説明について始めたが
「このように、タバコによって及ぼす害は計り知れない物がある。
タバコには約4000種類の化学物質が含まれており、その中で有害物質が含まれているのは約200種類、発がん性物質は約40種類ある」
「すみません、しろがねさん、もう少し分かりやすくお願いします」
「・・・」
どうやら、思った以上に専門用語を言いすぎたのか、この場にいる全員は目を丸くしながら聞いていた。
それを見ると、ターニャは呆れたように見ていた。
「はぁ、分かった。
それでは、皆にもっと分かりやすく説明すると、一日タバコを一本吸うと、寿命が5分と30秒短くなる」
「なっ」
「それは本当ですか!!」
「あぁ」
さすがにこの説明を聞くと、いかに危険な物なのか理解できたのか、全員が目を丸くしながら叫びだした。
「だがなぁ、タバコを吸えなくなるのは、少しきついな」
「あぁ、しかもいつ死ぬのか分からない戦場だからな。
生き残りたいのもあるが、タバコが吸えなくなって、生活するのは」
それでも、既にタバコに対して強い依存が見える隊員達はそれでもタバコを手放せないように愚痴り始めた。
その言葉に対して、他の隊員からは見えない角度で舌打ちをしていた。
「確かにストレスが溜まるかもしれない。
だがしかし、身体に害になるという事は、戦争の最中で病になったりしてみろ」
「そんな奴は私が銃殺してやる」
「・・・」
その瞬間、ターニャの言葉が真実だという事が分かり、その場にいたターニャ以外の全員が凍ってしまった。
「さて、タバコがいかに人体に悪影響を及ぼすのか、簡単な実験を行う」
「じっ実験?」
「あぁ実験と言っても、タバコを吸うだけだ」
「なっなんだ、それだったら、俺が「あっ馬鹿」えっ?」
「なるほど、では質問だ。
正直に答えろ」
「はっはいっ!!」
俺達二人が放つ迫力に対して屈強そうな奴は身体を縮めてしまう。
「お前は、一日にタバコは何本吸う」
「へっ、それだけですか?」
「あぁ、簡単な質問だ。
あぁこれは好きな数吸えたらで良いからな」
「えぇ、そうだな、俺だったら2箱は吸えます」
「ほぅ」
その言葉を聞いたターニャは懐から取り出したのはタバコだった。
何か疑問に思ったが、手に持ったタバコの箱はそのまま開けて、口の中へと突っ込む。
「がっ!!」
「ほらほらぁ、まだもう一本残っているぞ。
足りないから、耳でも良いか」
「えったっ隊長」
「このように、一日吸うタバコを実際に吸ってみると」
その言葉と共に火を付けて、タバコに煙が出始める。
するとタバコを吸っていた奴は瞬く間に白目になり10秒も満たない内に倒れてしまう。
「このように、たちまち失神状態になる」
「いや、これは普通に失神になりますよ、タバコとは関係なく!!」
「何を言っている。
身体に害がなるとは、この状態になるという事だぞ」
タバコの恐ろしさについて説明をしていると、未だに失神している隊員を見て、おろおろしている奴らを見る。
「いいか貴様ら。
タバコは害でしかない、その煙は敵に居場所をばれさせ、火薬に火がつき暴発する可能性がある。
なので、今後一切のタバコを禁止する」
「そっそんな!!
それでは、我々は今後、何をすれば良いんですか!!」
「そうだ、これは余りにも横暴だ!!」
そう言い、その場にいる大多数の隊員達が文句を言っている。
だが、一方でタバコの恐ろしさを知ってしまった以上に、下手にタバコに戻ろうとする奴もいないだろう。
「あっあります!!」
「えっ?」
「はい、タバコ変わりになり、煙も火も必要にならず、しかも緊急事態には約に立つ物が!!」
「そんな物があるのかっ!!」
それについては聞いていなかったので俺もターニャも驚きを隠せなかった。
意見を言ったヴィーシャが胸元にしまい込んでいた物を上に掲げながら、それを見せた。
「ガムです!!」
「おおぉ!!」
「「がっガム」」
まさかの答えに対して、俺達は惚けており、なるほどと納得したように隊員達が驚いていた。
「確か、ガムってこの時代ぐらいは」
「まぁガムぐらいならば」
「「よっしゃああぁ!!」」
その一言と共に、場は収まった。
まぁ当初の目的であるタバコ廃止は成功した事だから、良しとしよう。
「まったく、ガムでここまでとはな」
そう甘く見ていた。
だが、後日、俺達の元へと届けられたのは、ガムの購入によって減らされた給料だった。
一体何が起きたのかと混乱していたが、どうやらタバコ廃止運動が俺とターニャの二人で行った為、その代用品であるガムの金額は全て俺達に降りかかってきたようだ。
さらに、この時代では数少ない甘味料という事もあって、消費量は半端なく、その為
「きゅっ給料の半分だとっ!?」
「・・・・」
煙による脅威は去ったが、代わりに訪れたのは金が半分になるという事態だった。