問題児たちと理を壊す少女が異世界から来るそうですよ? 作:リタン
眼が乾燥しますね。それではどーぞ!
(それにしてもあれって隠れてるつもりなのか?)
瑞月達がいる場所から少し離れた草陰に姿を隠す黒ウサギに内心ツッコム。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭というものの説明する人間が現れるもんじゃねぇのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「・・・この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
(全くです)
黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。
これ以上問題児3人の機嫌を下がらせないように、と腹を括った黒ウサギは姿をみせようとするが
「−−−−−−仕方がねぇな。そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」
一足遅かったようだ。
(・・・うわあ、ご愁傷様)
「なんだ、貴方も気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気づいてたんだろ?巫女サンも」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「・・・へぇ?面白いなお前」
口元は弧を描いているのにその瞳はどこまでも冷たい
3人は殺気の籠った視線を黒ウサギに向ける。
私が気づいている事は確定なのか・・・確かに気づいてたけどさ
「や、やだなあ御三人様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたら嬉しいでございます?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「いいよ」
「あっは、取りつくシマもないですね♪うぅ、話が通じるのが御一人だけとは。」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。しかしその眼は冷静に四人を値踏みしていた。当然その事に気づき、自然と目許が険しくなるがそれを誤摩化す様に眼鏡を掛け直す。
「えい」
「フギャ!」
・・・。猫を抱いていた少女が黒ウサギの耳を根っこから力いっぱい引っ張っていた。何やってるんだろ。そんなに気になるモノ?
「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の成せる業」
「自由にも程があります!」
「へぇ?このウサ耳って本物なのか?」
今度は不良少年がウサ耳を引っ張る。
「・・・・じゃあ私も」
「ちょ、ちょと待−−−−−−!」
今度はお嬢様が左から。左右に思いっきり引っ張られている黒ウサギは言葉にならない悲鳴を上げ、その絶叫をBGMに瑞月は憐れんだ眼を黒ウサギに向けていた。
「−−−−−あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」
(“箱庭”にも学校があるのか?)
半ば本気で涙を浮かべる黒ウサギに若干ズレた事を考えた瑞月。
最初から話を聞く気があった瑞月以外は黒ウサギの話を『聞くだけ聞こう』という程度には耳を傾けている。
「それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ、“箱庭の世界”へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼンさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、御四人様は皆、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競いあう為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は巨大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」
両手を広げて箱庭をアピールする黒ウサギ。
「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」
「YSE!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者”が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっております」
「・・・。“主催者”って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試すための試練と称して開催されるゲームもあれば、コミュニティの力を誇示するために独自開催するグループもございます。特徴として前者は自由参加が多いですが“主催者”が修羅神仏なだけあって凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。しかし、見返りは大きいです。“主催者”次第ですが、新たな“恩恵”を手にする事も夢ではありません。後者は参加のためにチップを用意する必要があります。参加者が敗退すればそれらはすべて“主催者”のコミュニティに寄贈されるシステムです」
聞けば聞く程、「あいつ」が言っていた通りで。独り、静寂を守っていた忌々しいあの空間へ戻りたいとさえ思えた。
黒ウサギの長ったらしい説明が終わり不良少年、基逆廻十六夜が問いかける。
「この世界は・・・・・面白いか?」
『全てを捨ててまで価値のあるものかどうか』
3人は言葉でなくその視線で黒ウサギの応えを待っていた。
「−−−−−YSE。『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」
「私からも、いい?」
「はいっ、なんでしょうか?」
初めて自分から話始めた瑞月に全員の視線が集まる。
ほんの少しの希望を持って瑞月は問いかける。
「『ノルン』・・・。『モイラ』は箱庭で何桁にいるの?」
「そ、それは・・その」
尋ねられたその名前に黒ウサギは驚愕し、目を泳がせる。
・・・おそらくは、3桁より上だろう。
「・・・・?」
「・・・申し訳ありません。黒ウサギには解りません」
「そう。それは悪かった」
申し訳なさそうに耳が垂れてる黒ウサギにあっさりと引き下がる。
「どうして“私”だったのかを知りたかっただけだから」
その言葉に黒ウサギは弾かれたように瑞月を凝視していた。その事に驚くも意味は解らないとでもいうような飛鳥と耀はハテナを浮かべ、十六夜はどこか考えるような顔をする。
「そろそろ黒ウサギの“コミュニティ”とやらに行かないか?こんなに時間が掛かってしまったんだ。待ちぼうけでも喰らっているだろう」
「はいっ!それではご案内します!」
感涙する黒ウサギの姿に苦笑し先を促す。
(良かった、常識人(兎?)がいて。それにしても彼女が『箱庭の貴族』か。)
意外と言えば意外だった。話に聞いていた『月の兎』は箱庭の創始者、帝釈天の眷属でその身に宿る実力は相当なものであるといわれていたからだ。それがまさかの弄られキャラ。
しばらく歩いているとふいに視界が歪んだ。
「・・・っ、」
「おっと」
倒れそうになった瑞月を後ろを歩いていた十六夜が受け止める。その事に反射で手を振り払ってしまった。
「あ・・・、ごめんなさい」
十六夜の驚いた顔に罪悪感を感じ、謝罪する。
「体調でもわりぃのか?」
「持病のようなものだから大丈夫」
箱庭との相性が良かったのか、固く封印されてあったものが一瞬だけ跳ね上がった。
(封印が、緩んでる・・・?)
その事に無意識に心臓の上に手を当てる。その様子を十六夜がみていた事に瑞月は気づかなかった。
改稿しました〜